丸山正樹のレビュー一覧
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居所不明児童の問題を扱ったお話
フリーランスカメラマンの二村直は、恋人で小学校教師の祥子から妊娠を告げられる。気に障る親のせいか、自分の子供を持つことに拒否感がある直は結婚や堕胎の提案をためらう。
その問題とは別に、祥子の教え子で父親と共に連絡が取れなくなった紗智を探すことになった直が、手がかりの情報を元に名古屋に向かった先での出来事。
居所不明児童、棄児、虐待、少女売春、売春斡旋、ストリートチルドレンなど……
居所不明児童
連絡を取れない子供、親とともに所在がわからない等の子供たち
行方不明や虐待のニュースを見かけるたびに、実態の数としてはどのくらいの規模感なのかと心がざわつく
普段自分たちが見える光景では、そんな境遇の子供たちはほぼ見かけない
しかし、実際に存在はするわけで、しかも表沙汰になっていない数を含めれば……
直の行動や言動に批判的な人がいるのも納得
ただ、そんな男がいることも確かですけどね
私個人も、別に自分の血縁としての子供はいなくてもよいと思ってたからなぁ……
だからといって敢えて拒むほどでもないですけど
まぁ、作中でもあったように義理の関係でも色々とありますからねぇ……
物語全体として、親とは何か?が問われている
昔は尊属殺人という枠組みがあったけど、今はなくなていて
別に親だろうが他人だろうが殺人は同じ罪
しかし、親が子を殺した場合はどうか?
親が子供を殺しても、他の殺人よりは軽くなっているのが実情という視点ははっとさせられた
被害者家族=加害者という構図は、視認に口なしとばかりに親の事情のみが鑑みられて減刑される傾向があるよう
確かに、殺すに至った理由はあるんだろうけどさ、大抵は子供に責任はないわけで、やはり心が痛むなぁ
情緒障害児短期治療施設という存在を初めて知る
「生き延びた」子達は是非とも社会に参画してもらいたいものですね
ただ、それまでの境遇により難しい場合があるのですね
河原やシバリのような、同じ経験をした人たちもその一助になっているといいなぁ
あと、終盤にデフ・ヴォィスシリーズのアノ人が登場
都道府県をまたいでの出向とか、キャリアでもなきゃねぇよw -
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居所不明児童、という言葉をこの作品で知った。
虐待などによってうまれるそういった子どもやストリートチルドレンの背景や、暮らしについても描かれているドキュメンタリーとも言える小説。
話としては、お父さんとともに行方不明になった婚約者が担任で受け持っている娘を、なんとなくのきっかけで主人公が追っていく…というのがメインストーリー。
その主軸をもとに、主人公と家族の関係、婚約者との関係、仕事との向き合い方、関連する登場人物の背景などがしっかりと描かれているので、物語に深みが出ている。
デブヴォイスの時もそうだけど、この作者さんはその辺り上手いなと思う。
デフボォイスを読んでいると、少しオヤっと思える登場人物もいたりします。 -
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主人公の荒井尚人が手話通訳者として、そして過去に警察事務官をしていたことから法廷の通訳もこなす。
そんな中で、荒井も家族を持ち、悩んで子どもを持つことを選択する。
そして生まれてきた瞳美はろう者だった…
母親のみゆきは、聴者に近づけるよう人工内耳を手術で埋め込みたい、と悩み、最後にろう者として育てる決断をする。
荒井家に産まれた瞳美は、かなり恵まれた環境だと思う。でもここでコーダとして育ち当たり前に日本手話を使いこなせる荒井と、小さい頃から面白がってアラチャンの手話を覚え使いこなせる美和の間で、以前、万一子どもが、ろう者だとしてもわたしが覚える!と言ったことが自分の枷になり、みゆきは別の意味で孤立していく。
聴者とろう者、という単純な分類でなく、聴者の中でのさらに分類があるという事実に打ちのめされる。
そしてろう者同士のカップルが初めての出産を無事に終えることができなかったこと。
ろう者は電話をかけられない。
そして単純な通訳では医療用語も含め理解できない。しかもろう者自身、聴者の会話に詳しくない、聴者の事情に詳しくない、そんなさまざまなことから、荒井のように、ろう者に寄り添った通訳をできる、心がける人は、今後ますます重宝されるのだろう。
静かなる男も悲しい話で、郷里にいた時はにぎやかな男だったというのが、その後の大変だと思われる人生を思い起こさせ、辛い気持ちになる。
でもその男のとった行動により、認知症で理解が難しい母親に伝えられたのなら、せめてもの幸いだったのか。
最後の法廷のさざめきは、なんとなく先は読めるが、悲しい話で現実だと思った。まだまだ日本の現実はここまでなのだ、と。、
法廷で誰もろう者の手話の、言葉にならない叫びを止められないというくだりは、皮肉なものだと思った。
最後にHAL がちらっと出てくる。
クールサイレントと騒ぎ立てられ。自分がどうすればいいのか繰り人形になってしまい、わからなくなってしまったHAL が新たな活動を始めたのなら、本当に嬉しい。
今回の本は短編がいくつもあるので、前2作を読んでいなくても大丈夫だと思う。
全く今まで興味もなかったろう者のことを、考えるきっかけを与えてくれた作者に感謝してます。
ありがとうございます。
この本の続編も、他の本も読んでみようと思います。
手話を始めるかどうかはわからないけど、少なくとも考えなきゃいけない問題に気づいた。
3作目のこれが一番いいかもしれない。
書くテーマとして難しくデリケートな問題だと思うが、ライフワークとして是非続けて、日本のろう者文化を変えていくくらいのパワーになることを祈ってます。 -
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デフヴォイスシリーズ第三弾!
今回も初めて知ることもたくさん。また新たな世界を見せて頂きました。
丸山さんの社会派小説は、毎回心に訴えかけられるものがあって勉強になる。
広く読まれて欲しい作品です。
*「慟哭は聴こえない」
産婦人科での通訳。
読後、胸を抉られる思いでした。
医療通訳をめぐる問題や聴覚障がい者の緊急通報に関する問題の深刻さを改めて感じた。
*「法廷のさざめき」
勤め先を雇用裁判で訴えた民事裁判の通訳。
悲しいけどリアルな現実なんだろうな…と。障がい者雇用は進んでも人への理解が同じように進んでいるわけではない。
原告の悲痛な言葉が胸に刺さりました。
『医療関係者は、しばしば意思の疎通ができていないことを「受け手側」の問題とする。しかし、これは本来双方の問題のはずだ。コミュニケーションが十分にとれていないと、患者が医師の言うことを理解していないだけでなく、医師の方も患者の状態を正確に把握できていないことになる』 -
購入済み
心に沁みます
デフ・ヴォイスシリーズで初めて読んだ作家さんです。文章も場面転換も分かりやすく読みやすいです。でもサクサク読んでしまう軽い内容ではなく、本当に心に沁みる良い小説でした。
手話の種類や『聴こえ』の度合いなどについても勉強になることが多く、もっと理解していきたいと思いました。 -
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「デフ・ヴォイス」シリーズ第3弾。手話通訳士・荒井の仕事を横軸に、みゆき・美和との家族としての成長、甥っ子(兄の息子)司の悩みを縦軸に6年間が描かれています。
第1話「慟哭は聴こえない」
男性通訳者は歓迎されない産婦人科での通訳。初めての出産を控えたろうの夫婦と出会う。
美和は小学3年生。
冒頭の居酒屋でのトラブルには、蛇の目寿司事件が思い出されます。
第2話「クール・サイレント」
ろうの人気モデルHALの通訳を引き受ける。テレビ業界が求める「かっこいい手話」とは?
美和は小学5年生。2016年の設定。
第3話「静かな男」
廃業した安宿で変死体が発見される。この事件を何森が担当。亡くなった男がろう者だった可能性が出てくる。
あとがきにある通り、愛媛県の「宮窪手話」をモデルにした話。
第2話の1年後くらい?
第4話「法定のさざめき」
「フェロウシップ」から民事裁判の手話通訳依頼。ろうの女性が雇用差別で会社を訴えるという。
第2話の終わりから2年半後。障害者の法定雇用率が民間で「昨年の四月から二・二%に引き上げられました」とあるので、2019年の設定。
各話メインテーマ以外にも、今回もさまざまな課題がてんこ盛りです。人工内耳、インテグレーション、きょうだい児の気持ち、などなど。こんなに書いちゃったら、もう続編はないのでは?と心配になりましたが、そういえば前の2作のときも同じことを思ったのでした。杞憂杞憂。 -
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この作品を通して、仲間がいないこと、マイノリティであることの苦悩について考えることができました。
荒井は小さな頃からcodaとして家族の中でマイノリティであり、社会に出たあとも正義感の強さから全警察官を敵に回してマイノリティとなっていました。
そんな荒井が、自分と同じ立場・同じ考え方の人がいると気がついた時の安堵が印象的でした。
昨今、「coda」や「ヤングケアラー」、「アセクシャル」など、自身の立場や性質に関する用語が日常的に取り入れられていると感じますが、これによって「自分だけじゃないんだ」「自分と同じ人がいるんだ」と思える人が増えるというのは、とても大切なことなのかもしれないと思いました。 -
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「デフ・ヴォイス」5冊目にして完結編。
英知と同じ高校に進むために頑張って入試を突破した美和の視点を中心に描かれる物語。
最終章に入るまでは、コロナ禍の収束に連れて徐々に戻ってくる荒井への依頼、荒井の存在が枷になるみゆきの昇進試験、思いを寄せる英知との進まぬ関係、ろう者の男の子が好きだと言う司の交際相手などなど、荒井家を取り巻く様々な出来事が描かれていく。
聴覚障害を中心に様々な障害について新たな知識と気づきを与えてもらったこのシリーズだったが、今回もまた、電話リレーサービスのこと、盲ろう者の生活、ろう者への差別事案など、知らなかったこと考えさせられることが多くあった。
観覧車に聴覚障害者だけでは乗れないことについて、話し合いで解決されていくプロセスはとても感動的だったが、世間一般では声が上がることもなく不合理な規則が続いているだろうことも想像に難くなく、解決の良い事例が広く共有されていくことを願った。
そして、瞳美が進んだ支援学校での“事件”に端を発し行われることになった裁判を描いた最終章はこれまでのシリーズの集大成と言える内容。
手話が言語であること、日本手話と日本語対応手話は異なる言語であること、障害の程度により最も適当の形態や手段が用いられなければならないこと……、これまでこのシリーズで押さえられてきたことが詰まった、裁判最終日のやり取りを緊張感を持って読んだ。
私たちのことを、私たち抜きで決めないでください(Nothing About Us Without Us)、障害者の権利の歴史を学ぶ時には必ず出てくるこの言葉だが、今更ながらに心に響いた。
第3話で登場したHALくんが立派になって戻って来たり、警察を辞めた後の何森が登場したりも含めて、完結に相応しい内容だった。
終わってしまうのが惜しいシリーズだが、作者さんのあとがきに、ここで終えようと決めた理由のひとつとして『「伝えたいこと」と「エンターテインメント性」のバランスが自分の中で危うくなってきた』ということを挙げられている。
本書も内容としてはとても充実していたと思うが、裁判のシーンが際立ち過ぎて話の面白さとしてはシリーズ序盤のほどはなく、荒井と瑠美の関係の描かれ方やみゆきと美和が自分のこれからを裁判の帰趨によって選ぼうとする流れなど話としてはいささか無理を感じたところも確か。
これからは何森のシリーズの中で、荒井家のその後も語られることになるかもしれないということで、それを楽しみにしておこう。 -
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デフ・ヴォイスのシリーズの最終巻。
このシリーズで初めてコーダについて知った。それからずっと読んでいるが、主人公の荒井尚人には妻のみゆき、美和と瞳美の2人の娘が家族となっている。さまざまな紆余曲折があり、ろう者にとっての色々な問題が俎上に上がってきた。今回は、教育である。
そして、英知と美和、尚人とみゆきの関係も一つのターニングポイントをむかえている。
難しい問題なので、読んでいくと頭の中がぐるぐるしてくるが、当事者が声を上げること、支援する人が問題の理解に努めることの大切さと難しさを痛切に感じた。日本手話と日本語対応手話があるなんて、全く知らなかったし、、、。
ただ、知るだけでも応援になるのではないかと思うので、このシリーズは、本当に読んでよかったと思う。 -
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私の周りには「聴こえない人」はいません
周りにいるのは「聴こえる人」たちだけです
つまり、今まで「ろう者」と関わることもなければ、「手話」を必要としたこともありません
人は身近にその環境がなければ、関心も持たず知識も不足することでしょう
けど、それは仕方がないことだと思います
だって自分にはそれが必要ないことだし、自分の環境や生活に必要なことは人それぞれ違うのだから
ただそれでも、「聴こえる人」と「聴こえない人」が垣根を越えて分かり合えたら単純にすばらしいことだとは思いませんか?
そのために何か特別なことをしよう意気込む必要はないと思います
難しく考えることもないと思います
自分とは関係がないと思っていることにもほんのちょっとだけでいいから興味を持ってみる、それだけでいいと思います
まずはちょっとだけ『デフ・ヴォイスシリーズ』を読んでみることから始めてみませんか?