【感想・ネタバレ】わたしのいないテーブルでのレビュー

あらすじ

新型コロナウイルスが蔓延する2020年春、手話通訳士の荒井尚人の家庭も様々な影響を被っていた。刑事である妻・みゆきは感染の危険にさらされながら勤務をせざるを得ず、一方の荒井は休校、休園となった二人の娘の面倒をみるため手話通訳の仕事ができない。そんな中、旧知のNPOから、ある事件の支援チームへの協力依頼が来る。女性ろう者が、口論の末に実母を包丁で刺したという事件のサポートだ。聴者である母親との間に何が? “コロナ禍でのろう者の苦悩”、“家庭でのろう者の孤独”をテーマに描く、〈デフ・ヴォイス〉シリーズ第4弾。/解説=佐久間文子

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Posted by ブクログ

ネタバレ

自分の子どもが聴こえない子どもだった場合、先天性にしろ後天性にしろ、親は、せめてどちらかの親は手話を覚えるものだと思っていました。
覚えて、子どもとコミュニケーションをとるものだと思っていました。
それが、まさか結構な数の親が手話をさせないで口話をさせているなんて。
手話をする子どもと一緒に歩くのが恥ずかしいと、それを子どもに言う親がいるなんて。
これが小説の中の話でなく、現実の話だということに衝撃を受けました。

瞳の今後が気になります。
案じられてなりません。

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2025年08月29日

Posted by ブクログ

ディナーテーブル症候群という言葉自体はきいたことがあったし、概要もある程度は知っていたけれど、いざ当事者の声を読むとかなりきついものがある。
毎度のことではあるが、今回は特に全体的に入念なリサーチのもと書かれていて、ろう文化・ろう者を取り巻く社会のことがよくわかるものだった。SNSでろう者が日々呟いていることがまさに出てきて、より心に重くのしかかるものになった。正直、ろう者と聴者の分断は完全に無くなることはないと思っているけれど、少なくとも自分はニュートラルでありたいと願う人はこのシリーズを読んでほしい。きっともう読んでいるかもしれないね。

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2025年07月05日

Posted by ブクログ

見えない は 疑似体験できる気がするが
聞こえない は なかなか難しい
音が無いのに 聞こえる気がするなんて
紛らわしい事もあるようだし

聞こえる家族の中で自分だけ聞こえない
聞こえない家族の中で自分だけ聞こえる
どちらも孤独感は想像を越えていると思う

お互いに歩み寄れると良いのにと思うのは
当事者ではないからかもしれないけれど
少しずつでも考えていたいとは思う

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2025年07月05日

Posted by ブクログ

丸山正樹『わたしのいないテーブルで デフ・ヴォイス』創元推理文庫。

『コーダ』の手話通訳士・荒井尚人を主人公にした『デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士』シリーズ第4弾。

『デフ・ヴォイス』とは、ろう者の発する明瞭でない声、何を言っているか判然としない言葉のことで、『コーダ』とは、ろう者の両親から産まれた聴者のことである。著者は一般の人が全く知らない聴覚障害者について誤解することが無いよう非常に気を使ってその実態を極めて詳しく、正確に描いていることが良く解る。

今回は『ディナーテーブル症候群』という家族や友人、仲間と交われない聴覚障害者の苦悩がテーマとなっている。ページを捲る度に聴覚障害者の苦悩や家族の温かさに触れ、涙目になってしまった。

聴こえる者と聴こえない者。丸山正樹が描く小説には、悪い人間など一人として居ない。


手話通訳士の荒井尚人は、妻で刑事のみゆき、高校受験を間近に控える美和、ろう学校の幼稚部に通う瞳美の4人で暮らしていた。2020年、コロナ禍の影響で荒井は手話通訳士の仕事を控え、刑事として働くみゆきに代わり、家事と育児を担当していた。

そんな中、荒井の元に旧知のNPO団体から、ろう者の娘が実母に対する傷害事件のサポートを依頼が入る。一度は断ったものの、ろう者である被疑者が徹底して黙秘を続けていると聞き、依頼を受けることにした。

何故、被疑者となった娘は実母を包丁で指したのか……

本体価格760円
★★★★★

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2025年05月30日

Posted by ブクログ

「デフ・ヴォイス」4冊目。コロナ禍の下での荒井と家族の物語。

今朝の朝日新聞「天声人語」に、1880年にミラノで行われた聴覚障害教育国際会議での決議(ろう者教育では口話法が手話より優先されるとされた)のことが載っている。
2010年のバンクーバーでの会議でその決議が完全撤回されるまで日本も含めて多くの国々の教育現場で手話が禁止されてきたこと、50年ほど前から手話を独自の言語として認める動きが出始めたこと、今のニュージーランドでは手話が英語・マオリ語に次ぐ公用語になっていることなどが紹介されており、日本で初めてとなるデフリンピックの開幕を契機に、ろう者のコミュニケーションについても考えたいと結ばれている。

バンクーバでーの決議があり、手話は文化を担う一言語であると認められつつある一方、作中、みゆきの実母・園子が預けられた荒井家のろう児・瞳美に「声で話すこと」を教えるように、聴こえる側からすると自分と同じように口から言葉を発することを望む気持ちを消せないことも想像できる。 
そうして母・みゆきを喜ばそうとする瞳美の姿や、それを嬉しく思いつつも、園子には二度とそのようなことを教えないでと言わなければならないみゆきの気持ちがなかなかに辛い。

そうした、自分以外の家族はみな聴者というろう者が起こした傷害事件のサポートを依頼された荒井の姿が描かれる本作。
被疑者のろう者が母親を刺した理由を明らかにしていく謎解きに、ディナーテーブル症候群(ろう者が、聴者の家族が多数を占める食卓で会話の輪から取り残され、疎外感や孤独を感じる状況)や口話法が手話よりも優れているというまだまだ消えない考え方を絡めて語られる話は、ミステリーとして楽しめるのはもとより、ろう者のコミュニケーションについてもとても深い学びにつながるものだった。
コロナ禍での手話通訳者のマスクの話題や手話に関する“美談”について、また、旧優生保護法の違憲性を争う裁判のことなども興味深く。


私たちの会社でも多くの障害者を雇用しているが多くは知的障害者・精神障害者で聴覚障害者はほとんどおらず、先日も就労を見据えての見学の依頼があったが、手話ができる人がいないため口話ができる人でないと難しいとお断りせざるを得なかった。
このシリーズを読み続けている者としては、申し訳なさとともに、この受入れ体制を恥じ入るばかり。

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2025年11月16日

Posted by ブクログ

「『ディナーテーブル症候群』という名がついたことで、こうして大勢が『同じようなことを経験した』『私も』と声を上げ始めた」

このような現象は、例えば「ヤングケアラー」や「LGBTQ+」などにも当てはまるのではないかと思います。

自分の中でもやもやしていたことに名前がつくということは、そのような問題を解決する第一歩になるのだと感じました。

「手話を覚えたらバカになると思っていた」という母親。どういう根拠があってのことかわからず理解に苦しみました。

親の無理解で、ろう者の子どもの第一言語になるはずの手話を取り上げられるのは虐待に当たるのではないかとさえ思いました。

本書の記述がどこまで現実の問題なのかわかりませんが、せめて家族は良き理解者であってほしいです。

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2025年07月24日

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