加藤陽子のレビュー一覧
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満州事変前には東大学生でも満蒙を守るためには武力行使やむなしとのアンケート結果が9割。満州事変は陸軍の暴走というイメージだったが、すでに国民全体に戦争への空気が醸成されていたという事実は考えさせられる。自分がその時にその場にいたらどう判断したのか。
世論に流される無垢な国民の1人なのか、補助金目当てに満州に多くの農民を送り込んだ役人なのか、それとも反対した村長なのか。
また、当時の日本は日中戦争を戦争と思っておらず、討匪戦との位置付けだった事と、9.11の後のアメリカの対テロへの感覚が同じというのは面白い見方。
今の日本は国防への関心が高まっており、勇ましい意見が国民に醸成されつつある。
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ネタバレ勉強になった。『侍女の物語』に見られる女性の分断は、男女雇用機会均等法や派遣法などによって現実に起きている、といわれると、たしかにそういう見方もあるなと気付かされた。専業主婦、一般職、総合職…
ルネ・ジラールの欲望の三角形の話は聞いたことがあったので、それが上野千鶴子さんの話に出てきて嬉しかった。たしかに、頼朝の女ばかり口説く「鎌倉殿の十三人」の三浦義村はそれだなと思う。
男は男に認められることで男になるが、女は男に認められることで女になる、その性の非対称性もわかりやすかった。結局この社会はそんな家父長制の尾っぽを引きずったホモソーシャルな社会だけれど、会社と半身で関わる・プライベートを大切に -
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2023.1.2放送のものに、放送では伝えられなかった内容を加えさらに充実させた1冊です、とディレクター山田氏の「はじめに」弁。
「伊藤野枝」は番組では辻潤と大杉栄との関係と28歳までに7人の子供を出産、というのがとても印象に残ってしまってあまりいい印象は無かったのだが、加藤陽子氏の活字を読むと、思索の人ではあったのかもという印象が少し増えた。明治28年の生まれで生家は没落はしていても潤沢だったころの生活の名残があり、労働者の開放を思想しながらも、女工たちの生活との間には一線がひかれている、などのことが改めて分かった。
「侍女の物語」では筋書きや登場人物の意味付けが書かれていて、気づかなか -
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紹介されている本はどれも興味深かった。
ジュディス・ハーマンの心的外傷と回復は、特に読みたいと思った。
・伊藤野枝の「階級的反感」にはめちゃくちゃ共感する。
正義に燃え、階級による格差や差別をなくしたいと思って活動しているのに、(活動による救済の対象である)労働者階級と仲良くできない。相手には拒まれてしまうし、相手のそんな振る舞いに自分も苛立ってしまう。
それを率直に認めて見つめるのは勇気がいるがとても大切なこと(今のリベラル知識人に足りていないこと)。
そして、上間陽子の「階層的な違いや壁は確かに存在する。でもそこからだけどな、そこからスタートすればいい」というのは説得力があった。
・アト -
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この方の「歴史観」歴史へのスタンスは素晴らしい 権力に対峙し軸がブレない
だから政府は恐れ、学術会議から外したと理解できる 実力を認識している
1.危機の指導者 長期的戦略思考力とは
対米戦争で長期化は回避と理解はしているが、具体策ないまま開戦 最悪
ロジスティクスの算段が出来る指導者の不在
2.戦後の「天皇退位規定」天皇の戦争責任論 一般人として極東軍事裁判
3.危機対応 平時も戦時も基本は同じ「構想手法」(下平拓哉防衛省)
①現状の把握 ②問題の析出 ③解決策の案出
4.現代資本主義経済体制の閉塞 水野和夫氏
1971 ニクソン・ショック
1973 オイルショック
5.必要な政 -
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複数の切り口からの情報、考察を以って、当時の状況をうまく分析、評価している。
その意味で、分かり易いか?というと、そのような感想はなく、その理由は、日本が満州事変、日中戦争へと進むことについて極めて中途半端な、なし崩し的な判断で進んでいることがよく理解できるからだ。
誤算は、
・中国に対しての英米の思惑。国際金融、市場として日本に独占されることを良しとしていなかった。
・満州国設立に典型的に言えることだが、中国人のナショナリズムを過小に評価していた。(五族協和は、結局は絵に描いた餅でしかなかった)
日本はワシントン体制下、大国の一員になっていたものの、結局、反ワシントン体制側につくことにな -