加藤陽子のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
NHK教育の「さかのぼり日本史」シリーズの第2弾です。著者は『それでも日本人は「戦争」を選んだ』や岩波新書のシリーズ日本近現代史5『満州事変から日中戦争へ』、講談社のシリーズ天皇の歴史8『昭和天皇と戦争の世紀』など多数の著作のある東大の加藤陽子先生です。さて、本巻が取り扱う時代は昭和のはじめから敗戦まで、西暦でいえば1926~1945年となります。
内容は「指導者たちは、どうして戦争を拡大・長期化させてしまったのか?」(帯より)を4つのターニングポイント、つまり
①マリアナ沖海戦・サイパン陥落(1944年)
②日米開戦(1941年)
③日中戦争(1937年)
④熱河侵攻(1933年)
から説明しています。最初のターニングポイント、サイパン陥落の意味はアメリカ軍爆撃機B29が日本へ往復できる距離まで近づいたということ、つまり「本土空襲」が日程に上ったことです。ちなみに太平洋戦争での兵士の戦死率について、岩手県のデータをもとに推測したところ、1944・45年の2年間で9割ちかくになるそうです。
次に②は国力10倍のアメリカに挑んだというターニングポイントとして歴史に刻まれるのは当然です。
では③は、この日中戦争が長期化することによってずるずると日米開戦まで引きずり込まれたという点で重要です。ちなみに、この戦争は両国ともに「宣戦布告」をしていないので、当時は戦争とは呼ばれませんでした(ここまでは高校日本史の範囲)。ではなぜ両国ともに宣戦布告しなかったかというと、その原因の一つはアメリカでした。アメリカは1935年に「中立法」という法律を制定しており、宣戦布告した、つまり国際法上戦争状態となった国には、自国民がそれに巻き込まれないため「兵器・軍用機材の輸出禁止」「一般の物資・原材料の輸出制限」「金融上の取引制限」などの措置が執られるため、両国とも宣戦布告をしないことがメリットとなるという共通理解があったそうです。ちなみに日中戦争が長引いた原因はいくつかありますが、その一つとして1938年のドイツによる満州国承認まで、ドイツが中心となって中国への軍事物資の売却・顧問団の派遣があったそうです。第一次世界大戦後の戦後賠償に苦しむドイツにとって中国は大事な顧客でした。
最後の④熱河侵攻ですが、これは満州事変後国際連盟が解決努力をしている最中にそれを無視して新たに軍事行動を行った場合には、国際連盟規約の16条で新たに「戦争に訴えたる同盟国は、当然、他のすべての同盟国に対し、戦争行為をなしたものとみなす」とされていたからです。熱河侵攻を天皇が裁可したあと、この問題に築いた当時の斎藤実首相が血相を変えて天皇に裁可取り消しを求めました。そして天皇は裁可取り消しを認めて支持をしました。しかし宮中や元老の西園寺公望は「承認取り消し」を引き留めました。天皇が一度出した命令を取り消すことは天皇の権威を落とすだけでなく、この命令を取り消したら陸軍が公然と天皇に反抗することになりかねなかった、からでした。もう、天皇ですら自らの意志で暴発した軍隊を止めることはできなくなっていたのです。
本書にもありましたが、戦争は始めるよりも終わらせるのが難しい、それはよく言われることですが、希望的・楽観的なチャート図しか描けていなかった太平洋戦争への道のりを、さまざまな視点から述べられています。 -
Posted by ブクログ
ネタバレNHKのさかのぼり日本史をみて、加藤陽子さんの本を読んでみた。佐高信さんとの対談。
加藤さんの
国民を刺激しない形で「その気にさせる」ため、公平で平等に徴兵する。今まで特別待遇だった徴収猶予の対象であった人たち、知識階級の帝国大学の学生などを徴兵していく。そういう人たちを、ガダルカナルやレイテで戦わせる。そういうことを一般の国民は正直「いい気持ち」がしたのではないか。これは、「皆さん等しく不幸です」というところで保っていた社会だ、「不幸の均霑」である。という話。
なるほどなあと思う。今だって、みんな一緒だった仕方ないと思うだろうなあと思う。昔、早くに夫に死なれて4人の子供をたった一人で育てた祖母が「みんな貧乏だったから、うちも生きていけた。戦争中だから生きられた」といってのを思い出した。
家の光の小説を読んで満洲への移民が敷居の低いものになったという話も納得した。国の欲するブームを作ることがマスコミはうまい。
以前、歴史の教科書に、社会を学ぶのはだまされないためです。と書いてあったけど本当にその通りだと思う。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ[ 内容 ]
「満蒙の沃野を頂戴しようではないか」-煽動の背景に何があったのか。
満蒙とは元来いかなる地域を指していたのか。
一九三一年の鉄道爆破作戦は、やがて政党内閣制の崩壊、国際連盟脱退、二・二六事件などへと連なってゆく。
危機の三〇年代の始まりから長期持久戦への移行まで。
日中双方の「戦争の論理」を精緻にたどる。
[ 目次 ]
第1章 満州事変の四つの特質(相手の不在 政治と軍人 事変のかたち 膨張する満蒙概念)
第2章 特殊権益をめぐる攻防(列国は承認していたのか アメリカ外交のめざしたもの 新四国借款団 不戦条約と自衛権)
第3章 突破された三つの前提(二つの体制 張作霖の時代の終わり 国防論の地平)
第4章 国際連盟脱退まで(直接交渉か連盟提訴か ジュネーブで 焦土外交の裏面)
第5章 日中戦争へ(外交戦 二つの事件 宣戦布告なき戦争)
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ] -
Posted by ブクログ
ネタバレ[ 内容 ]
「対米戦争の目的は何だったのか」、「陸軍エリートはどこで問違えた」等、戦後六十余年、「あの戦争」に改めて向き合った六人の論客が、参戦から敗戦までの疑問を徹底的に掘り下げる。
「文藝春秋」読者賞受賞。
[ 目次 ]
第1部 座談会・あの戦争になぜ負けたのか(対米戦争の目的は何だったのか;ヒトラーとの同盟は昭和史の謎;開明派・海軍が持つ致命的欠点;陸軍エリートはどこで間違えた ほか)
第2部 あの戦争に思うこと(空しかった首脳会議;八月九日の最高戦争指導会議;私の太平洋戦争観;果たされなかった死者との約束 ほか)
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ] -
Posted by ブクログ
時の権力者たちが、戦争の「大義名分」を如何に得たかの分析。
前半の日露戦争・第一次大戦あたりまではかなり説得力があったのだが、日中戦争以降は、僕の読み込みが足りないせいもあるのだろうが、ちょっと迫力不足のような印象を受けた。
背景としてアメリカの世界戦略があって、戦略は石原莞爾のグランドデザインのとおりです、というふうに読めてしまって、あれれ、それでいいの?政府と軍部と関東軍の思惑は、結局のところ一緒なの?という感じ。
とはいえ、いわゆる後知恵なしのフェアーな立場で分析がなされていることは良いと思ったし、その時々の世界情勢に応じて外交と戦争を連続的に捉えるという見方はとても新鮮だった。 -
Posted by ブクログ
東大の教授である筆者が栄光学園にて5日間特別講義をした内容を書籍化したもの。
日清、日露、第一次世界大戦、日中、第二次世界大戦の5つについて当時の情勢、文化、特に軍部の動きなどを事細かに解説し、何故戦争が起きたのかを語っている。
学園の生徒との対話形式の叙述はわかりやすく、また考えさせられる。
語り口も軽やかでほとんど知識が無くても内容についていけるようになっている。
本書では何より、実際の感覚とのズレを意識的に認識させられる点が面白く、自分、ひいては普通に(授業として)歴史を学んだ人間がある種の思い込みを持って戦争を理解してることが明らかになる。また、学校の歴史の授業がいかに学ぶ生徒にわかりやすく“改竄”してあるか(理解を早めるという意味合いも勿論含まれる)が見えてくる。
勉強になる、というより、これを機会に歴史をもう一度勉強したくなる、そんな歴史書。
戦争ものの著作が好きな人ならお腹いっぱいになること請け合い。
近現代史に興味が無い人(自分も含め)も、引き込まれる非常に良質かつセンシティブな事実やデータが満載で、是非とも一読をオススメしたい。 -
Posted by ブクログ
[ 内容 ]
日本はなぜ太平洋戦争に突入したのか?
明治維新以降の「戦争の論理」を解明した画期的近代日本論。
[ 目次 ]
第1講 「戦争」を学ぶ意味は何か
第2講 軍備拡張論はいかにして受け入れられたか
第3講 日本にとって朝鮮半島はなぜ重要だったか
第4講 利益線論はいかにして誕生したか
第5講 なぜ清は「改革を拒絶する国」とされたのか
第6講 なぜロシアは「文明の敵」とされたのか
第7講 第一次世界大戦が日本に与えた真の衝撃とは何か
第8講 なぜ満州事変は起こされたのか
第9講 なぜ日中・太平洋戦争への拡大したのか
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ] -
Posted by ブクログ
近現代の日本が何故対外戦争を仕掛けたのか。
高校までの授業じゃそんな事は教えない。
何故なら
『日本史は高々、入試に使う科目であり、暗記科目に過ぎない。せいぜい常識として我が国の事を知る為。』
と言う前提程度しか教える方も学ぶ方も考えていないからだ。
だが、この本は東大生に教えた、『教育』ではない『教養』の本である。
高校までに習った(一部範囲外)歴史をベースに、何故戦争を侵したのか。
それを、丁寧に論証→考察を重ねて説明して下さっている本なのだ。
『何故戦争を起こしたのか。』
これを知ることは非常に大切なこと。
マスメディアに動かされやすい、世の中に対して、常に冷静な視点を持つ事が出来るからである。歴史とは、私達人間が重ねてきた、成功と失敗の時間の賜物。
それを学ぶ事は、人間が進歩する上で、非常に大切な事である。
星を4つにした理由は、証拠論証→考察に丁寧過ぎるが故の脆さ。
論証部分には確かに、何故民衆が、政府の主張や過熱する紙上論を受け入れていったかが書いてある。
だが、果たしてそれだけだろうか。
民衆側にも、不満があったり、むしろ政府側が民衆に圧されたと言う考え方があっても良いのではないだろうか。
また、周りに影響されやすく、人の目を気にするなどの日本人の性質を考慮すべきではないか?
そういう点も留意した上での考察ではないように思えるので、星4つ。 -
Posted by ブクログ
国民や世論というのは本当に流されやすく、熱狂に走りやすいものである。万国共通ではあろうが、特に日本人は日々のマスコミ報道でも顕著なとおり、与えられた情報に過敏に反応し、熱狂しやすいという性質があるのではないか。
昭和の戦争だって「軍部がわるかった」というのが一面真実であっても、世論をかき立てて自ら方向を見失い、戦争に突入していった国民にも大きな責任があったのである。
現代においても、日本人は極端な熱狂によって、重要な問題で誤った方向に進みかねない危険をはらんでいる。外交、軍事、あるいは内政においてもそうである。
不幸な歴史を繰り返さないよう、軍だけでなく世論がいかに戦争を許容し、あるいは戦争を望んでいったのかを、冷静に見つめる必要がある。 -
Posted by ブクログ
大変勉強になりました。自分はあまり頭がよくないので、少しずつ読んで、頭を整理して、の繰り返しで、読むのに時間がかかりました。歴史そのものを知ることが勉強になったというよりも、文中で『歴史を学ぶ意味』を教えてもらい、『歴史学の手法や考え方』を学べたことが勉強になりました。歴史学の手法や考え方(詳しくは省きますが、人間の行動や認識の変化はどうして起こったのかという「問い」について考えること)は、日々の生活や仕事に必要な能力を鍛えることができるというのが、歴史を学ぶ意味ですが、私は歴史が好きなので、好きなことを通して、これから能力を磨いていければいいなと思いました。