加藤陽子のレビュー一覧
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事前にこのあたりの知識をもっていないと少々難解な内容です。新書だからといって侮るなかれ。少なくとも理系大学5年生の知識では結構難しいと感じました。
「それでも、日本人は戦争を選んだ」という同じ著者の本を読み、この本も同じような感じかと思って購入したのですが、少々あてがはずれました。
歴史を単なる知識、としてではなく「問い」としてとらえるその姿勢には変わりがなかったのですが、今回は「問い」にたどり着くまでの前提となる知識、解説が多すぎたような気がしました。
それでも内容は示唆に富むものは多いとは思います。特にp268以降の内容は、今の日本人のとある考え方が昔から何一つ変わっていないものだと -
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加藤陽子の戦争の日本近現代史を読みました。「東大式レッスン!征韓論から太平洋戦争まで」と言う副題が付いている、明治維新以降の日本の外交戦略について解説された本でした。明治維新以降、日本の指導者たちが日本を先進国の仲間入りをさせるために、どのような施策をとって国民に説明していたのか、国民はそれに対してどのように反応したのか、と言うことが解説されています。日本人が国際的に有利な条件で外交をするために国防を充実すべきであるという方針の下で軍備の拡充を行っていく中でも、国民の中には負担増に反対する意見もあったというのが面白いと思いました。しかし、一番知りたかった、なぜ満州事変から(無謀と思われる)太平
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シリーズ日本近現代史のちょうど真中、第5巻は、近現代史の中でも昭和日本の大きな転換点(そして現在の歴史解釈ではでは大きな誤ち)として記憶される第二次世界対戦への歩みを記述した一冊。
柳条湖事件から盧溝橋事件に端を発っする満州国建国まで、このわずか5年ほどの期間は、単純に「日本の帝国主義的拡大」と記載されるような時期ではなく、むしろ「単なる国境侵略という事件には非ず」とリットン報告書に記されたように、各国それぞれの国内外事情と思惑が複雑に交差し、相互にバランスを取ろうとした試みの結果であった。そして、様々な選択肢が提示された中で、唯一選択されたのが人類の歴史上最も悲惨な戦争であったことは痛恨の -
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「あとがき」で作者が「軍隊については嫌というほど書いた」と述べるほど軍隊の動向を中心として書かれた内容です。時代は満州事変から日中戦争、1930年代というほうが分かりやすいと思いますが、1930年代の日本史について幅広く論じているわけではなくひたすら満州事変や日中戦争に関係する国内動向、国際動向、日中関係などなどを「詳細」に記述しています。この時期を取り扱うさいにありがちな政治的偏向はとくに見られず、史料をもとに学術的に述べられています。とにもかくにも、日本近代の通史の一環としてよりも、日中関係史として読んだほうがよいのかもしれません。
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国会開設が未だならなかった明治期の民権派の論理は、地方に於いても国権の確立のためには民権の樹立が必須であるとの認識が強靭であったのであって、後に国権が優位にたつという論理構成にはなっていなかった。国権の必要性は、不平等条約から開放が、緊急の要諦であり、また列強による支配から逃れる道であるという認識を基にしていた。
対中21か条の要求
加藤高明外相
山東省についてドイツと協定すべき内容について中国は承認を与えなければならない。山東省還付について、中国の対戦参加によって、揉める。ドイツから一旦は山東省を引き取り、後に中国に返還するという「要求」。
旅順・大連の租借期限と南満州鉄道、安泰鉄道の -
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本書は、簡単に批評できないほど内容の濃い本であり、熟読玩味するだけの価値がある。
日本はなぜ中国に攻め入り、泥沼に陥るような戦争を行ったのか。それを行った論理はなんだったのか。本書はそれを国内、中国、そしてイギリス、ドイツ、ソ連、アメリカといった勢力とのかかわりから明らかにする。
満州での治安の悪さ、日貨排斥は国際法違反に映った。なぜ排斥がおこるかを考えないのは滑稽だが。そして、その利権を守るため、つまり「自衛」と称して軍隊を発動し、頑迷な中国を懲らしめようとしたのである。だらしない中国にかわって東洋の盟主として新たな秩序を打ち立てようとしたのである。
日中戦争を「侵略」と言ってしまうのは