加藤陽子のレビュー一覧
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半藤一利さん、加藤陽子さん、そして編者の保坂正康さんによる対話形式で進む、1931年の満州事変から1941年の日米開戦までの、特に日本がとった行動とその背景について説明してくれる。
軍部を中心とした思い込み、慢心、根拠のない自信、精神論。今までおぼろげながら認識していた昭和史を再認識させてくれた。
折しもロシアによるウクライナ侵攻が進められ、おとしどころが見えない状態だ。一端戦争になれば、終結が難しくなることが現代でも読み取れる。
ただ、お粗末ながら当時民主主義国であり、第一次世界大戦の教訓からつくられた、国際連盟の常任理事国5ヵ国の一翼を担っていた日本ですら、戦争への道を選んでいったのだ -
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憲法学、政治学、歴史学と3つの視点から今を読み解く。あまりにも刺激的で、新書をこんなに真剣に読み込んだのは本当に久しぶりである。
地に足がついた議論。
日本は防衛費増税だの、敵基地攻撃能力の保持だの様々な論点がいきなり飛び出してきた。きっちり議論も分析も、歴史に学ぶこともない、とてもふわふわした捉えどころのない首相、政府の見解に、どうしようもない不安と怒りを感じているけれど、こうやって、ひとつひとつ立ち止まって考えたい。
戦争は始まってしまったらすぐには終わらないのだ。たくさんの人の生活、命が左右されるのだ。そのことにもっと冷静に想像力を働かせたい。 -
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歴史を学ぶ意義を重く認識させてくれる名著 「歴史は『物語』として理解される」
ここに歴史の面白さと同時に「怖さ」がある
1.国家の統合 ①統治=政治 ②統帥=軍隊 明治は分立 民主国家は政治優位
日本・ドイツは後発国、ゆえに政治の熟成を待てず、皇帝主導・軍優位の国家体制
2.日本の稚拙な植民地経営
朝鮮の創氏改名 「文化」最大の難問 ジリアン・テッドANTHROPOLOGY
満洲の犠牲『物語』英霊20万人 戦費10億円 > サンクコスト経済合理性
→満蒙は特殊権益 冷静な議論できず 石原莞爾「日本の生命線」=空論
石橋湛山「植民地経営はペイしない」小日本主義・満洲放棄論
3.対米開 -
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小説家の奥泉さんと歴史学者の加藤さんの対談集。
単一の物語に回収されないように歴史を語るべきとはポストモダン以来の歴史の見方だとは思うのだけれど、それをアジア・太平洋戦争に当てはめて語ってくれている。
当初単なる軍人のモラルだった軍人勅諭が変質し政治に関わることの正当化に使われたところから、共通の思想的バックボーンがない日本という事情に気がついた新渡戸稲造が作った武士道の話、満州国・国連脱退はまだ相手側の顔を立てるつもりもあったなど、勉強になることは多い。
その中でもやはり白眉は色々な小説に基づきながら、当時の状況を考える後半部。将校の目からだけでなく、一般兵の目からみた戦争をみることで、軍隊 -
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日本が戦争へと向かっていくまでの歩みを史料から読み解いている。6回に渡る講演を書籍としたものなので、会話をするかのごとく進行する。
世界が日本にどうすのか問いかけられた3つの交渉を史料から読み解き、当時の状況を適切に理解することを目指している。
一つ目の交渉は、1931年9月に関東軍が主導した満州事変に対して、国際連盟から派遣された調査団が作成したリットン報告書をめぐる交渉。
二つ目の交渉は、1940年9月の日独伊三国軍事同盟条約締結について。
三つ目の交渉は、1941年4月から11月までに行われた日米交渉。
最後の注釈に、本書の参考図書もあり、講義を再演しようと思えばできるかもしれない。歴史 -