【感想・ネタバレ】この国の戦争 太平洋戦争をどう読むかのレビュー

あらすじ

あの戦争をどう考えればよいのか。なぜあんなことになったのか。戦争を描いてきた小説家と戦争を研究してきた歴史家が、必読史料に触れ、文芸作品や手記なども読みながら、改めて考える。

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Posted by ブクログ

歴史学と文学の先鋭が混じり合い、戦争が浮き上がる様はとてもスリリングであり、とても読み応えがあった。

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2024年08月30日

Posted by ブクログ

歴史を学ぶ意義を重く認識させてくれる名著 「歴史は『物語』として理解される」
ここに歴史の面白さと同時に「怖さ」がある
1.国家の統合 ①統治=政治 ②統帥=軍隊 明治は分立 民主国家は政治優位
 日本・ドイツは後発国、ゆえに政治の熟成を待てず、皇帝主導・軍優位の国家体制
2.日本の稚拙な植民地経営
 朝鮮の創氏改名 「文化」最大の難問 ジリアン・テッドANTHROPOLOGY
 満洲の犠牲『物語』英霊20万人 戦費10億円 > サンクコスト経済合理性
 →満蒙は特殊権益 冷静な議論できず 石原莞爾「日本の生命線」=空論
  石橋湛山「植民地経営はペイしない」小日本主義・満洲放棄論
3.対米開戦の意図 「長期持久戦もあり」→帝都空襲・ミッドウェー敗北で挫折
 米国 ソ連支援のための対日圧力 対独戦略の要
4.最大の問題は「1944年6月サイパン陥落以降の戦争継続」止められなかった
 戦死者の圧倒的多数 しかも餓死者を多く
☆「戦争を止める」国家機能が働かないのが、日本の最大の問題
5.負け方 戦艦大和の特攻 3,000人の若人を殺した 年寄りで出撃は?
6.日本軍の組織論
 山本七平 組織の自転 員数主義 事大主義 前例主義 保守主義 形式主義
 司馬遷の国家観 皇帝への忖度無く、客観的な歴史叙述
 日本は「天皇の皇統に世界構想を見た」 

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2022年09月19日

Posted by ブクログ

小説家の奥泉さんと歴史学者の加藤さんの対談集。
単一の物語に回収されないように歴史を語るべきとはポストモダン以来の歴史の見方だとは思うのだけれど、それをアジア・太平洋戦争に当てはめて語ってくれている。
当初単なる軍人のモラルだった軍人勅諭が変質し政治に関わることの正当化に使われたところから、共通の思想的バックボーンがない日本という事情に気がついた新渡戸稲造が作った武士道の話、満州国・国連脱退はまだ相手側の顔を立てるつもりもあったなど、勉強になることは多い。
その中でもやはり白眉は色々な小説に基づきながら、当時の状況を考える後半部。将校の目からだけでなく、一般兵の目からみた戦争をみることで、軍隊の評価も変わるということ。その意味で海軍が最も何のために戦っているか、なぜ死ぬのかがわからないのではないか。甲板にすら出られず船内でのみ働いていて、沈められてしまうのだから、、、。
紹介された小説は読んでみたい。改めて複数の視点を持つことの重要性に気がつかされた。

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2022年09月12日

Posted by ブクログ

歴史は「物語」の形でしか語られ得ず、またそうならなければ人を動かす力を持ち得ない。多くの国々で、明白に贋物とわかる歴史の「物語」が流通する現状があるのも事実だ。

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2022年09月04日

Posted by ブクログ

歴史学者と歴史物語を批評的に読む小説家が対談という形で、太平洋戦争とは何か、なぜ始めたのか、なぜ止められなかったのかについて、太平洋戦争に関する書籍の紹介について語っている。当事者の日記やメモ、書簡、様々な書籍から太平洋戦争について詳細に解説されており、映画やドラマなどで流布している物語的な歴史とは異なる内容が知れて良かった。偏った主張はなくフラットに記載されており、ポツダム宣言についても様々な資料からそこに至る経過が示され、敗戦した日本だけでなく、戦勝国もその事実を知り互いに学ぶ必要があると思った。

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2022年09月03日

Posted by ブクログ

「物語なしに現実というまのを認識できない仕組みの中に生きている」
戦争を正当化する「わかりやすい物語」が必要だったに納得。

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2022年08月28日

Posted by ブクログ

想定読者層はある程度の時代背景の知識画求められているのだろう。手とり足取り噛み砕いて話をしてくれる訳ではないが、明確かつ端的なやり取りは腹落ちもいい。
歴史を単層的かつ都合よく物語化することの危険性は、まさにその通りだと思う。日本だけではなく世界中で同じような傾向が発生しているように感じている。とても怖い。

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2022年08月06日

Posted by ブクログ

帯に、「神話」より「対話」を! とあるが、まさにそれ。
人は歴史を物語として理解するが、その認知に落とし穴がある、という、冷静になればまあ当然の意見を、何度も、多方面から、手を変え品を変え、しつこく、投げかけてくるのが、奥泉光の小説だ。
ネチネチ、しかしユーモラスに、文体の工夫、引用の多層性、書く人であると同時に読む人。
ユーモアは奥泉光の生来の志向だと思うが、同時に認識をズラす(物語批判)ための意図的な武器でもある。
その材料を提供してくれる歴史学者との対談が、面白くないわけがない。
上のテーゼに加えて、改めて気づかせてもらったのが、軍部と国民の間に「社会」が挟まる時間的余裕が、日本の近代化にはなかったということ。
このへんが夏目漱石の心の乱れにもつながっているのかしらん。



目次
 はじめに(奥泉光)
 Ⅰ 太平洋戦争とは何かを考えるために
  戦争と物語
  国民統合の方法としての軍隊
  お天道様と公道
  民衆にとって天皇とは?
  自制を失う「帝国」
  主権線・利益線論と物語としての日露戦争
  不戦条約と軍隊像の転換
  リットン報告書を拒絶、そして満州事変へ ……
 Ⅱ なぜ始めたのか、なぜ止められなかったのか
  なぜ満州か
  国際連盟脱退と各国の思惑
  感情に訴える国民向けの宣伝
  陸海軍共通の仮想敵・アメリカ
  南進論と三国同盟の要点
  変わりゆく「中立」
  「もやもや」が消えてゆく
  対米開戦の裏側
  日本の勝算?
  日本的「空気」という謎 ……
 【解説コラム】「ポツダム宣言」を読む/「終戦の詔書」を読む
 Ⅲ 太平洋戦争を「読む」 
  戦争を支える気分――清沢洌『暗黒日記』
  物語を批判する小説――田中小実昌『ポロポロ』
  個人と国家の媒体なき対峙――山田風太郎『戦中派不戦日記』
  現代日本のこと?――山本七平『一下級将校の見た帝国陸軍』 ……
 おわりに(加藤陽子)

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2025年06月02日

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