加藤陽子のレビュー一覧
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タイトルにあるように、太平洋戦争に突入するまでの重要な交渉事にスポットを当てて、歴史を紐解いています。①リットン調査団の報告から始まる国際連盟脱退について②日独伊三国同盟について③ハル・野村交渉に始まる日米交渉と、三つの交渉を挙げています。「~これら三つに共通しているのは、これらの案件が日本の近代史上において歴史の転換点だっただけでなく、日本と世界が火花を散らすように議論を戦わせ、日本が世界と対峙した問題だった~」(94頁)
東大教授である著者が、高校生相手に(一部中学生もいますが)6回連続の特別講義をしたものをベースに本書は書かれています。その為わかりやすく書かれてはいますが、中身は非常に -
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2010/3/5 R25を見て予約、2011/2/1借りる。2/27 読み終わる。
まず、あとがきから読み始める。
高校の講義を書籍化ということなので、読みやすい。
が、内容は深くかつ論理的・客観的、歴史は科学!
日清戦争から太平洋戦争までを通して 世界的な視野と多くの史料を基に書かれたすばらしい本です。
太平洋戦争というと、よく見聞きするのは、
日本本土が受けた攻撃と被害、南方や満州などでの兵士の苦闘など。
タイトルを見たときは、湿っぽく過去にとらわれた内容の本かと思い 読むのをためらいそうになったが、
本書では、太平洋戦争までが、過去の歴史として分析されていて、ちょっと驚き。
この本の -
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前作「それでも日本人は戦争を選んだ」に感銘を受けて読んだ。
真珠湾の「ローズベルト陰謀論」の全面否定は、意外だったが、説得力のある内容だったので、自分の認識を改めた。
教育の影響は勿論甚大なのだろうが、泥沼の日中戦や勝てる見込みの無い日米戦に民意諸共嵌り込んだ根本原因は、「10万人の英霊と20億円の戦費を投入した日露戦の成果を手放したく無い」という、既得権への執着に行き着くのだろうなと感じた。(行動経済学的視点から)
そうであれば、こうしたベストでない選択をするリスクは、日本人固有のものというより、人間のDNAレベルのものだろうから、余程意識的でないと、再現するリスクがありそうだ。 -
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ネタバレ非常にわかり易く解説された講義です。
歴史から学ぶというけれど、結果を知っているからこそ振り返る事ができ、その選択肢の評価ができる。
時の為政者たちは本当にいろいろ考えを巡らせていることがわかるが、総意としての選択肢は一つ。
今回、失敗と言ってしまっているが、そう言っていいのだろうか。確かに沢山の人が亡くなったわけだけど、その選択肢の結果である今の日本は失敗なのか。
過去を総括するのもいいけど、歴史に学ぶのは未来に対してだけでいい。
少なくとも、今の為政者たちが、半径3mの幸せを考えている群衆へのプロパガンダやアジテーションの方法を歴史から学ぶことがないことを望む。 -
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率直に言って難しかった。
歴史は大好きだけど、近現代史は苦手だ。嫌いといってもいい。なぜって怖いから。大正や昭和なんて新しすぎて歴史って感じがしないし、ただただ戦争ってものが怖い。
だからずーーーーっと避けてきた。火垂るの墓だって怖いから見ない。
戦争の悲惨さや恐ろしさは、NHKの番組で毎年いやというほどやるし、学校でも習うし、正直辟易さえしていたから子供の頃から若い頃までは避けてきた。
けれど、ここ数年で日本はどんどん良くない風に変わっていっているように感じる。数に物言わせて必要かどうかもよくわからない法律ができたり、何か起きればマスコミ国民の一斉バッシング。忖度なんて言葉が流行語になっち -
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大日本帝国はなぜ国際連盟脱退とか、三国同盟とか、対米開戦とか、今からすると一寸先も見えない阿呆な選択をしてきたのかという疑問に対して、史料に丁寧にあたることで「答えよう」というより「考えていこう」という試みである。ただ一つの答えが書いてあるというタイプの本ではない。ゆたかな枝葉がある、得がたい一冊と言えるだろう。
4章で、ゾルゲのスパイグループの一員として活動したというジャーナリスト・尾崎秀美の言を引いているところが興味深い。
〈日本国内の庶民的意向は、支配層の苦悩とほとんど無関係に反英米的なことである。[中略][それもそもそも]満州事変以来十年、民衆はこの方向のみ歩むことを、指導者階級に -
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リットン調査団、日独伊三国同盟、日米交渉。世界から日本に突きつけられた3つの局面で、日本がそれぞれどんな状況下でどんな選択をし戦争に突き進んでいったのか。中高生向けの講義をまとめたもの。
この内容を理解し、投げかけられた問いに対し各自がネットや文献を駆使し調べて答えを探っていくとはなんという意識高い中高生!!
こんな若者達が素直に成長していけば日本の未来も捨てたもんではないと思わせてくれる。是非中高生に向けて学校の授業に取り入れて欲しいのと同時に大人も読むべき一冊。
戦争という決断を下しめ、昭和天皇でさえ抗えなかった”時の勢力”とは何だったのか。
フェイクニュース溢れるポスト・トゥルース -
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中高生を対象とした講義録の第ニ作。
一作目につづく素晴らしい作品だ。今回は「リットン調査団報告書」「日独伊三国同盟」「日米交渉」の3件につき、どんな選択肢があって、なぜその選択をしたのか、背景はどうだったのかを一次資料を読みながら考えていくもの。なかで日米交渉をしていた1940年前後の国民の意識につき昭和天皇が「国際平和に貢献するために同盟を結んだし、国際連盟を脱退したのもそのためなのに、国民には英米に対抗するためと伝わっているのはまことにおもしろくない」としているのには泣けた。情報の公開もできてなかったけど、教育も足りなかったわけだ。 -
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第二次世界大戦まで日本社会がどのように戦争にかかわり、正当化し、それに対してどんな反論がなされてきたのか。些細な文献も取り上げ考証し、緻密な論理を組み立てます。
仮想敵国という言葉の"仮想"がいつなくなるかわからない時代にあって、戦争による他国領地の占領は自衛的方策としてリアリティがあったのでしょう。
しかしそれはいまや空論でしかありません。国際社会が戦争によってもたらされる悲劇、絶望がいかに大きいかを理解したからです。
本書で明らかにされた前時代的な論理を我々が現代に発見するならば、それが如何に悲惨な結果をもたらしたかを思い出すべきでしょう。