【感想・ネタバレ】歴史の本棚のレビュー

あらすじ

日本近現代史の泰斗、東京大学教授の加藤陽子氏は「本読みの名手」でもある。「この人の書評は面白い」「読書の幅が広がる」など、高い評価を得ている。単なる本の内容紹介にとどまらず、世の中の動きや世界の情勢に読者の目を向けさせ、考えるきっかけを作ってくれる、非常に示唆に富む書評だ。
それぞれの本の書き手が、いかなる分析視角によって紡ぎ出したのか。研究書、小説、ノンフィクション、エッセイ、写真集など、加藤氏の感性ですくい上げた名著を紹介する。
【本書の内容】
●『神聖喜劇』(全5巻、大西巨人=著、光文社文庫)
●『歴史と国家
19世紀日本のナショナル・アイデンティティと学問』(マーガレット・メール=著/千葉功、松沢裕作=訳者代表、東京大学出版会)
●『毒親介護』(石川結貴=著、文春新書)
●『歴史としての日教組(上)(下)』(広田照幸=編、名古屋大学出版会)
●『インビジブル』(坂上泉=著、文藝春秋)
●『歌集
形相』(南原繁=著、岩波文庫)
●『死者の書
身毒丸』(折口信夫=著、中公文庫)
●『「東京裁判」を読む』(半藤一利、保阪正康、井上亮=著、日経ビジネス人文庫)
●『戦線』(林芙美子=著、中公文庫)
●『国際メディア情報戦』(高木徹=著、講談社現代新書)
●『小林秀雄の流儀』(山本七平=著、文春学藝ライブラリー)
●『帝国の参謀
アンドリュー・マーシャルと米国の軍事戦略』(アンドリュー・クレピネヴィッチ、バリー・ワッツ=著/北川知子=訳、日経BP)
●『わが青春無頼帖』(柴田錬三郎=著、中公文庫〈現在は増補版、単行本は新潮社〉)
●『民藝四十年』(柳宗悦=著、岩波文庫)
●『ミシンと日本の近代
消費者の創出』(アンドルー・ゴードン=著/大島かおり=訳、みすず書房)
●『たまきはる』(神藏美子=著、リトル・モア)
ほか

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Posted by ブクログ

日本近現代史が専門の歴史学者加藤陽子氏による書評集で、テーマは「未来のために過去はある」、つまり歴史に学ぶっていうことなんだけど、わたしにはかなり難しかった。挙げられている本も専門的な本が多いし、評している文章の言葉も堅く難しく感じて、集中して読まないとよく理解できないような。わたしは歴史苦手なので基本的なことがわかっていないっていうことも大ありなんだけども。それでも、(挙げられている本は読めないとしても)書評をなんとか読むだけでも勉強になり、知識が若干増える気はしたので、ためになったと思う、思いたい。

そんななかでも、著者にとっては楽しみとして読む本と思われる、あるいは新聞の書評欄に掲載された一般人向け?の本かもと思われる本をメモ。例えば坂本泉「インビジブル」は読んでみたい。この坂本泉氏って存じ上げなかったんだけど、ネットで検索するうちこの方が選ぶおすすめ戦後史の小説というページにいきあたり、そこからまた読んだことのない作家を知り、読みたい本が増えた!!「昭和史」的な小説ってたくさんあるじゃん、と。あと、脚本家井上ひさしが東京裁判三部作という芝居を書いているとか初めて認識したし、著者が角幡唯介は全部読んでいるとか、いろいろこれからの読書の参考になりそう。

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2025年01月03日

Posted by ブクログ

ネタバレ

歴史には、様々な切り込み方がある。特に情報の多い近代については、どこに立脚するかで見える歴史が変化する。歴史の専門書を紐解くことは、ほぼ無い。けれど、そのエッセンスだけでも十分に楽しかった。「歴史を知る読書」より、自分には感じる面が多かった。

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2023年07月27日

Posted by ブクログ

挙げられる作者の大半は聞いたこともない人物ばかりであり
歴史書の類も概観めいた広く浅くといったものに偏りがちな身からすると
サーキュレーターとしての仕事が専門家としての立ち位置から信頼に足るのは疑いないが
平易すぎずそれでいて断念せずに済むような適度な骨太さで書評を編んでいく充実ぶりは、別の分野でもこの書のような案内役が一分野に一冊に限らず広がってくれればと期待したくなる。

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2023年02月27日

Posted by ブクログ

歴史に関心無くても「エッそうだったんだ」と驚きと気づきある、お得本。歴史から炙り出される、この国の現状と世界情勢。歴史を未来を創り出す力にしなければならないが、繰り返されるばかり。ウクライナ侵攻と国際社会の支援も素直に見られなくなる。供物?なんだろうな…結局。「公共的記憶すら持てない日本」「民力含めた広義の国防」「人間の常識に敬意を払いつつ世間の常識を批判する」とても紹介された本まで届きそうにない…無念。

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2022年11月07日

Posted by ブクログ

近現代史を語る上で非常に参考になる書籍を加藤陽子が評する本で、この分野に興味を持つ人々にとっては大変に危険な本だということもできるだろう。というのは次から次に読まなくてはと思ってしまうので、いくら手元に金があっても間に合いそうにない。
 さすが加藤陽子である。

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2022年10月19日

Posted by ブクログ

未来のために過去がある、と言いたくて本書は書かれたそうだ。
前作「この国の形を見つめなおす」の第6章の書評を通じて著者の思考や指向を開陳したスタイルを本作では全面的に展開している。
著者の1930年代の日本の軍事と外交に資するような文献が多い。
それでもジョンルカレや近代史と一見関係のないタイトルも見かける。
全体の構成としては以下の通り
1 国家の役割
2 天皇という孤独
3 戦争の教訓
4 歴史を読む
5 作品に宿る魂

本書で取り上げられた書物はほとんど読んだことのないものばかりだが、以下興味をもったものを記す。
1から「情報参謀」「インビジブル」「帝国の計画とファシズム 革新官僚、満州国と戦時下の日本国家」
2から「天皇と東大」(この書は引用されただけ)「東京裁判を読む」
3から「戦争」大岡昇平
4から「地下道の鳩」
床に入る時のパートナーに相応しいかな?

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2023年12月07日

Posted by ブクログ

以前著者の本を読んで、異論が渦巻く日本の1930年代の歴史を切れ味よく語る学者と常々思っていたところ、学術会議の6人の報道に「さもありなん」と注目して、新刊を待っていたので早速本書を手に取ってみた。
書評にとりあげられた57冊のうち小生が読んだことのある本は「神聖喜劇」(大西巨人)一冊のみ。「あらら」と思いながらも読み進むと、最後の「おわりに」に「本書が対象とした書籍の多くは研究書だ」とある。
小生が読む本の多くは、歴史にしろ政治にしろ、一般向けに分かりやすく紐解いた解説書である。研究書に直接当たるのはちょっとハードルが高い。
しかし、本書の書評をそれなりに楽しめたのは、今まで読んできた一般向けの「解説書」の原典のエッセンスの匂いを嗅ぐことが出来たからと思った。
本書で、第一次世界大戦後の欧州では「経済成長が著しかった・・国際分業が浸透した結果、各国は比較優位業種を淘汰する必要に迫られ、国内に『繁栄の中の苦難』を等しく抱え込むようになっていた・・・この苦難を除去するために社会主義や平和主義の方向での解決を図れば・・・体制転覆の恐れが生じ、膨大な財政出動も必要とされる。体制と財政の二つながらの崩壊を覚悟せねばならなくなった時、各国の政治指導者は『自衛のためのやむにやまれぬ戦争』の道を選択したのではなかったのか」という部分を読んだ時は、現在の世界情勢を思い起こし、ゾクゾクするような興奮を覚えた。
いやー、歴史はやっぱり面白い。

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2022年09月26日

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