町田康のレビュー一覧
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戦国時代を舞台にした小説といえば、通常は戦国大名やその家臣の活躍を描いた歴史小説が挙げられるであろう。本作もまた武田信玄軍の一員を主人公にしているのだが、しかしその身分は武士ではなく、みずから軍に加わった農民である。これだけでもめずらしい設定であるといえるが、しかし本作の特異な点を挙げるとすれば、そのようなことではないであろう。とにかく、人が死ぬのである。中上健次の「紀州サーガ」にも似たような、田舎の前時代的な社会を描いているため、系図がないと容易に把握できないぐらい多くの人物が登場するのであるが、その大半がつぎつぎに亡くなってしまう。当時の平均寿命などを考えれば、それはとくにおかしいわけでも
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ネタバレ【本の内容】
権現市へ買い物に出かけたところ、うら寂しい祭りの主催者に見込まれ、「権現躑躅踊り」のリハーサルに立ち会う。
踊りは拙劣。
もはや恥辱。
辟易する男の顛末を描いて川端康成文学賞を受賞した表題作や、理不尽な御老公が市中を混乱に陥れる、“水戸黄門”の町田バージョン「逆水戸」など、著者初の短編集。
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[ POP ]
町田康の小説を読むと、真夏日の炎天下、道に迷っているような気分になる。
頭がぼんやりして思考が空回りし、周囲から聞こえてくる会話はリズムと不快なニュアンスが強調される。
パニックになっている頭がふいに悲しい思い出を引っ張り出してくる……。
町田康 -
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【本の内容】
僕は作家だ。
だが執筆中の小説はまったく進まない。
たまには本当のことを書きたい。
これはフィクションに疲れたマイナー作家の、ささやかな休暇としての日記だ。
誰にも見せないのだから嘘は書かない。
そういう意味で、僕はこの日記を真実真正日記と名づけよう。
虚と実のあわいを絶妙に描き出す慟哭の記録。
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日記の書きはじめ/比々さん/文差点の騒動
新店コンドル/矢村の素晴らしい文学/暴動の予感
猿の不安/執筆の停滞/鈍くさい店でスカタン
ブライトな若者/コンドルの不始末/花火と爆撃狂
嫉妬の感情/撮影所見学/鰻の食べ過ぎで苦しい
言葉が通じない/海もどきの怪/農 -
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【本の内容】
金がない、仕事もない、うるおいすらない無為の日々を一発逆転する最後の秘策。
それはメルヘン執筆。
こんなわたしに人生の茶柱は立つのか?!
あまりにも過激な堕落の美学に大反響を呼んだ「夫婦茶碗」。
金とドラッグと女に翻弄される元パンクロッカー(愛猫家)の大逃避行「人間の屑」。
すべてを失った時にこそ、新世界の福音が鳴り響く!
日本文芸最強の堕天使の傑作二編。
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[ POP ]
擬古典のような文体と、今は無き軽薄体のドッキングという町田文体は読んでいて途轍もなく疲れる。
読む前からなんとなくハマれそうだと思っていたし、最近注目の町田氏だけに、誠に残念。 -
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芥川賞作家・町田康氏を飼い犬であるスピンクの目から描いたエッセイ集です。作家の日常とかわいい犬たちの掛け合いが面白いのと、「命」と言うものに向き合うと言うことを教えられます。
町田康さんが飼っているスタンダードプードルのスピンク。彼が「主人・ポチ」と言ってその目線でつづられる日常です。かねてからこの本をずっと読みたかったので 今回手に入ってうれしい限りです。
スピンクのこともいいのですが、個人的にはスピンクの兄弟犬であるキューティー・セバスチャンのことのほうにどうしても目が行ってしまいました。
彼はいろいろと複雑な経緯で飼い主とブリーダーの間をたらいまわしにされて、主人・ポチこと -
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『目を覚ましたらブラインドから縞の光が差しこんでいた。
素晴らしいことだと思う。
太陽が僕たちに降り注いで生命が育つ。大地が潤う。そんななかで自然の一部として僕らは生きているんだ。そのこと自体がとてもありがたい。感謝。誰へ? すべてにだよ。すべてに感謝して生きていく。空に、海に、きみに、自分に。』
『それぞれがそれぞれとしてそこにある。それこそが素晴らしい。空が美しい。感謝。』
『それぞれがそれぞれであること。
それが一番大事だと思う。
それぞれが大事なのさ。』
『けど同じことなんだよ。だってこんなに心がひとつになってるじゃないか。同じ、同じなんだよ。それぞれがそれぞれにみな同じひとつの -
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「鶴の壺」
むかし一緒に暮らしてた女が死にかけてるらしい
というので見舞いに出向いたがなんだかんだあって引き返す
つるつるの壺はたぶん関係ない
「矢細君のストーン」
テレビ観戦で応援してたボクシング王者の敗北を機に
自らの石信仰をあっさり放棄するエキセントリック友人の話
「工夫の減さん」
ケチで怠惰な己の性格を満足させるために
様々な工夫を凝らしては
たいてい大失敗を繰り返す友人の話
「権現の踊り子」
承認欲求の多い料理店
悲惨な踊りとパワハラを見せられて逃げることができない
「ふくみ笑い」
現実と被害妄想の区別がつかなくなって
気づいたらおそろしい世界にトリップしてる
「逆水戸」
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<狂気のほむら>が大好きだった。以下抜粋。
最近では各家庭に炊飯器というものが普及して主婦の労働というものはよほど楽になったと思われるが、これがむかつく。~中略~ 黙って引き下がるのも口惜しいので、「この大馬鹿者」「野暮天」「てめえの面なんざぁ見たくもねぇんだよ」「死にやがれ、くそ野郎が」などと罵倒するのだけれども、敵は機械。自分の各種罵倒に対して、なんら反応を示すことはなく、ひたすら飯を炊き、これを保温し続けるのである。
中略~つまり、これを水着、というのであって、着物の名称としてこれほど珍妙なものはないということが知れるのである。だいたいにおいて、着物というものは水にぬれないという -
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夏目漱石の「坊っちゃん」は権力者たちの横暴に対し
正義感から怒りの鉄拳をくらわすが
しかし最終的には敗北して田舎町を追われ
東京へと帰っていったのであった
町田康の「へらへらぼっちゃん」は東京に住み
パンクを歌ったり映画に出たり面白エッセーを書くなどして暮らしている
一見、抑圧とは無縁のフリーダムな人生であるが
結局は社会人である、時には卑屈になるし、満員電車にも乗らねばならぬ
なにより生活が不安定だ
それらの鬱屈をはらすべく、頻繁に飲酒をおこなうのだが
酔っぱらうと生来の無鉄砲が顔を出し、損ばかりすることになると
そういうわけである
でもどうにかなる日々
これは小説家デビュー前後、新聞・