町田康のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
「どつぼ超然」の待望の続編。毎度のことながら、独特のビート、言葉をチョイスする才能に痺れます。町田康さんは別の本で、「人間の無意識を書くのが文学だ」とおっしゃっていたと記憶していますが、たとえばこんな個所。
「腹に穴があいたような顔をしてじとっとした雰囲気を醸成していた。腹の突き出たちょび髭をはやかした男が図面を手に俯いてじっとしていた。マラカイボ油田、という言葉が頭に浮かんですぐに消えた」(P30)
なぜ、「マラカイボ油田」なんて言葉が突然出るのでしょう。でも、なぜか「ああ、こういうことってあるよな」と腑に落ちるんです。
凡百の作家にはとても出来る芸当ではありません。
ただ、何度も申し上げるように、著者には「告白」や「宿屋めぐり」のような長編を期待します。 -
Posted by ブクログ
ふざけた文体や内容がまさに世の中に対する強い批判であり、天邪鬼な人たちの気持ちを代弁しているように感じます。
主人公の心の奥にある暗い感情が妄想を生み暴走していくのだけれど、しかいながら現実に生きているというジレンマをどのように消化していけばいいのか?みんな持っている心の叫びのように感じます。そして、みんなぎりぎりで消化しているだけなのでしょう。
最後の一文
「穴の手前で振り返ると、青空。きれぎれになって腐敗していて。」
を読んだとき愕然した気持ちになりました。
暗闇から覗く青空の美しさの描画の美しさに加えて、腐敗していてというギャップ。何より本の内容を集約した表現に胸が苦しくなり、余韻が残りました。
世の中が少し辛いと感じたときや何か自分だけ浮いているように感じたときに読んでみてはいかがでしょう。決して救われる感じの優しさはないかもしれませんが、少し楽になるかもしれません。 -
Posted by ブクログ
パンク歌手マーチダ・コーが見舞われた、業界外道どもとの齟齬の数々を活写した、短編小説。
フィクション。だったらいいな。であってほしいな。じゃないと怖すぎるものな。でも、嗚呼、多分半分以上実話なんだろうな。と、次から次に巻き起こる食い違いすれ違いコミュニケーション不全の嵐に戦慄。
松尾スズキが解説にて「ぬる~い悪夢」と表現しているのが言いえて妙。
自分の芸術的センスに自家中毒を起こしているとしか思えないアーティスト外道や、誇大妄想にどっぷり浸かってもはや現実が見えなくなっているプロデューサー外道などなど、とにかく芸能界とは恐ろしい所だべ。んだんだ。
「地獄のボランティア」における「ボランティア」考には大変に考えさせられた。いるよね、こういうボランティア。 -
Posted by ブクログ
町田康のうくくなエッセイ。
偏屈にだけはなりたくないと誓って生きてきたにもかかわらず、パンクに目覚めて爾来、偏屈な急坂を只管、転げ落ちるばかりであったという人生。
このままではあかん、脱・偏屈と、大嫌いなカラオケを歌い、厭悪する温泉旅行に向かい、忌諱するミュージカルを観劇し、北海道で蟹を喰らい等々、あらゆる試みをするも撃沈。事はちくとも捗捗しくならぬ。
そんなマーチダさんの当エッセイは、なんだか小説のようにも読めて、僕の中ではかなりお気に入りの作品。
「自由ってアホだよね。」、「虚ろ飯、うつけ飯」、「俺をなめるな。侮蔑すな。」、「ちゃんとしたいと思ってね。」、「個人の暴れん坊」など傑作が詰まっています。
注意すべきは、おもしろすぎて、電車の中でひとり読んでへらへら笑っていると、変質者と間違えられて、①他の乗客に避けられる、②駅に到着した折に駅員に密告される、③挙句、警察に通報される、といった弊害の顕現する虞があります。
ですから、お家で・ひとりでこっそり読みましょう、と言いたいところですが、その場合に於いても、①へらへら笑っている様子を家族に目撃されて気まずくなる、②喫している珈琲をPC画面に向かって激しく噴き出す、③ひとりであることをいいことに蛍踊りを踊る姿をやはり家族に目撃されて気まずくなる、といった弊害の顕現する虞があります。
それやったら、読まれへんやんってことになるわけで、はたして僕はどうやってこの本を読んだのでしょう。うくく。