主人公の設定が秀逸。お菓子好きだから和菓子で働こうというぽっちゃり女子というだけで好きになれる。彦摩呂しかりホンジャマカ石塚しかり、恰幅のいい人がお勧めする食べ物は美味しく見えるし。杏子視点で話が進んでいくので、主人公に好感が持てると物語に入り込みやすい。
最初は杏子の慣れない職場への不安な心情もあってかビリピリした空気だったので、「椿店長に裏の顔がある」と立花さんが言った時、「物凄いパワハラ上司」とか「デパート内の誰々と不倫している」とかだったらどうしようと思ったけど「株をやっている時に性格が激しくなる」ぐらいの温度感で安心。
個性的な面々の活躍に思わず笑いが漏れる。杏子のツッコミが上手で面白い。杏子が冷静に自分の身の丈を理解しているので自虐も活きている。
自分も百貨店で働く機会があるので、建物の中が迷路みたいとか、不便な造りにしているのは何か理由があるのか考えてみたりとか共感できる描写もあった。
「萩と牡丹」で椿店長と松本三太が杏子を取り合うシーンで何故か感動した。自分はこれだけ人間として愛され店員として求められる場面があっただろうか?と身につまされた。
「」にセリフを収めたり収めなかったりすることで、長い台詞もテンポ良く読める。
三太がクリスマスにサンタとして杏子に和菓子をプレゼントしてた。三太の「星夜」と立花さんの「甘露屋(スイートホーム)」はとても良い作品。特に甘露屋は少し前の楠田さんが老人ホームにお総菜を差し入れている様子や杏子の実家の温かさも感じられて上手いし感動した。
「クレーム対応の時は内容はさておきお客様をよけ見ることだよ」という楠田さんの教えは金言。
ラストの杏子と立花さんの「杏子が大福みたい」問題の小競り合いが微笑ましい。続編はどうかわからないけど、恋愛にならないのがいいよな。
現時点で4作品続いているらしく、どんどん作品内の時間は流れていくんやろうけど、ずっと単話の日常的な話が見たいなぁ。
続編も楽しみです。