坂木司のレビュー一覧
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本屋を舞台にしたアンソロジーだが、読み終えてみると、「人はどうやって人とつながるのか」「自分の居場所をどうつくるのか」を描いた一冊だったように思う。
印象に残ったのは、本が人と人との間に、ちょうどいい距離をつくっていることだ。
瀬尾まいこの「続きは書店で」にあった「本の中に友達って結構いますよね」という言葉が好きだった。登場人物が友達になり、本そのものが友達にも先生にもなる。本を読むことは一人ですることだけれど、実はたくさんの人と出会うことでもある。
「悩み事は口にした時点でほぼ解決に近い」という言葉も心に残った。すぐに答えを出したり、アドバイスしたりするだけが人を助けることではない。ただ話を聞いてもらうことにも意味がある。
一穂ミチの「勉強はずっとするものです」という言葉もいい。学校を卒業しても、仕事や読書、人との関わりの中で学びは続いていく。年齢を重ねるほど、この言葉の意味を感じる。
また、坂木司の、地域で商売するなら「先に自分が客になる」という考え方も印象的だった。相手や地域に何かをしてあげるのではなく、まず自分もその関係の中に入っていく。仕事にも通じる考え方だと思う。
凪良ゆうの「小鳥たち」では、「誰にも手出しできない私だけの居場所が欲しい」という思いと、「浮き輪を投げてくれる人が私にもいる」という言葉が心に残った。自分だけの居場所を持つことと、誰かに支えてもらうこと。その両方があっていいのだと思う。
そして最後の三浦しをんの「人の心の見晴らしを良くするのが本屋の務めだ」という言葉は、この本全体を表しているように感じた。
本屋は、一人になれるのに孤独ではない。知らない誰かの人生や考えに触れ、自分の世界を少し広げることができる場所だ。
だから私は本屋が好きなのだと思う。
この本を読み終えて、また本屋に行きたくなる。そして本を買う。
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Posted by ブクログ
ネタバレ書店への愛を込めて贈る珠玉のアンソロジー。
私は瀬尾まいこさん、三浦しをんさん以外は初読みの作家さんだったけれど、本との新しい出会いや、書店の存在価値について改めて考えさせられる作品ばかりだった。
やっぱり私は書店が好きだ♪
・続きは書店で(瀬尾まいこ)
あと1ヶ月で閉店してしまう書店にアルバイトで入った菅原くんと、占いをやっている主人公(ルイーズ)の交流の物語。
菅原くんが友達を100人作ろうとしていたけど、友達は必ずしも人ではなくて、本そのものだったり登場人物に対しても友達という感情を抱く視野が新鮮だと思った。
自分にとって支えになる本や登場人物が力を与えてくれることもある。素敵なお話だった。
・歌うように生きて(一穂ミチ)
飲み会で出会った中国人のリウと潤。潤はリウにルンと呼ばれ、二人の交流がスタートし毎週会うような仲になる。大学の生協にある書店で待ち合わせし、大学構内で会うようになる二人だった。
ところがある日、リウは家庭の事情で突然中国に帰国することになる。
そこから数年後リウが逮捕されたとネットニュースで知った潤。過去のことを振り返りながらも、ちょっと切ないけれど、純粋なリウのために居場所の作ろうと日本語と中国語の書籍の並ぶブックカフェを立ち上げた潤。
2016年〜2025年の時系列でストーリーが展開されていくけれど、リウと潤(ルン)の素朴なやり取りに胸が熱くなるところがあった。リウがいつかまた潤(ルン)と再開できる日が来ますように…!
・手に取って見てみろよ(坂木司)
本屋の前で振られた浅井と友人の高木が、高木の祖父母の故郷の岡山のシャッター商店街でお店を開店させるというお話。
本屋の利益率が良くない現実ではあるが、インターネットではなく手に取って本を選べる魅力や、人が集まる空間を作るって素敵なことだと思った。
・小鳥たち(凪良ゆう)
離婚して地元に戻り、父の書店を継ぐと決めた一葉。書店の中にカフェを作ることにした改装中の時期に、同級生の越智が来店し交流がスタートする。越智も家庭の不和や仕事のことで適応障害で地元に戻っていた。
改装後のお店も、今までの常連さんにプラスして越智のようなお客さんも増え、居場所を作り出している一葉。奮闘しながらも結婚や離婚を経験し、「一周回って、わたしは見失った本来のわたしに戻ったと思えばいい。」と前向きになっている姿に励まされた。私も一葉と同年代〜。元気をもらったお話だった。
・見晴らし書店の一日(三浦しをん)
東京の西の郊外で曽祖父が始めた小さな書店「見晴らし書店」。今は祖母と父親と主人公の花布で営んでいる。パートアルバイトさんと、地元の常連さんとの一日。
本の配達も行っている見晴らし書店。「まほろ市」にある設定のようで、「まほろ駅前」シリーズのファンとしては嬉しい気持ちになった♪
書店は高齢者を見守る街のセーフティネットとしても機能していて、街の大切な一つの要素になっているなぁと実感。街の書店は減る一方だけど、書店の存続を希望する人は意外と少なくないのかもしれない。 -
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成人式を迎えても、大人になった実感のないアンちゃん。「みつ屋」で働きながら、他店舗の同世代との出会いや百貨店の催事、友達との金沢旅行を通して、また少し新しい世界へ踏み出していくシリーズ第3弾。
自分とは正反対の桐生さん。その長所ばかりが目に入り、自分の良さが見えなくなってしまうアンちゃん。でも催事を通して見えてくるのは、優劣ではなく、それぞれに得意なことがあるということ。まさに適材適所。二人が互いの良さに気づける場所を作った椿店長たちの温かさもいい。百貨店の催事の裏側を知る楽しさもあり、仕事小説としても面白かった。
友達との金沢旅行では、仕事を離れたリラックスしたアンちゃんが新鮮。昔の彼女を知る友達だからこそ見える変化があり、本人が思っている以上にちゃんと成長しているんだな、と嬉しくなった。
食、和菓子、仕事、職場の人たち、お客さん、友達、新しく知る世界。アンちゃんの周りには、いつの間にかたくさんの「好き」が増えている。そして、ひとりの人に向ける感情。好きなのに素直になれない、自分でも認めきれない、だからうまく言葉にもできない。そんな名前をつけきれない感情の揺れを、無理に言葉にしてしまわず描いているのが絶妙で、物凄く共感した。
そして物語は、シリーズ最大とも思える転機へ。詳しくは書けないけれど、ここは泣けた。好きなものが増えることは幸せだけれど、大切なものが増えるほど、変わってしまうことは寂しい。楽しく優しいだけでは終わらせないところに、この物語の深みを改めて感じた。
愛情にも、いろいろある。誰かに向けるもの、誰かから受け取るもの、気づかないうちに育っているもの、そして自分でもまだ名前をつけられないもの。そんな様々な愛情を描くからこそ、このシリーズが好きなのだと思う。次巻がどうなるのか、気になって仕方がない。 -
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デパ地下の和菓子店「みつ屋」で働き始めて8か月。仕事にも少しずつ慣れてきたアンちゃんが、和菓子にまつわる謎や人々の想いに触れながら、成長していくシリーズ第2弾。
世界は広がり、人物は深くなる。前作では「みつ屋」を中心にしていた物語に、柏木さんや立花さんの師匠、他店舗とのつながりが加わり、和菓子と洋菓子の対比も見えてくる。一方で、みつ屋の面々はさらに深く描かれ、完璧に思えた先輩・立花さんの弱さや迷いが見えたことで、人物にも作品にもぐっと奥行きが増した。
もともと就職や仕事に積極的だったわけではないアンちゃんが、仕事の楽しさを知り、人と触れ合うたびに少しずつ前向きになっていく。その成長が嬉しくて、読んでいるこちらまで元気をもらえる。
食の物語だからこそ描かれる、震災後のエピソードも印象に残った。重すぎず、だからといって決して軽く扱わない。その距離感にも、このシリーズらしい優しさを感じる。
何者になるのか、何をしたいのか、まだ答えが見つからなくてもいい。好きなものを見つけ、人と出会い、昨日より少し前を向く。そんなアンちゃんの一歩一歩こそが「青春」なのかもしれない。次はどんな人と出会い、どんな和菓子の世界を見せてくれるのか。ますます「みつ屋」に通いたくなった。 -
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優しくて、柔らかくて、ほんのり甘い物語。
日常的なお仕事の中で起こるミステリー。作品の中で共に考えているような気持ちにさせてくれます。
主人公の存在や、成長の描き方で華やかになっていて、個性的な登場人物達がさらにそれを彩ってくれました。
1エピソードずつ大きな満足感が得られる、とても心地よい作品です。
そして、とにかく和菓子が食べたくなります。
文字だけでこんなにも美味しそうと感じられるものなのかと、感動しました。
普段は洋菓子ばかり食べていますが、明日のお休みは和菓子屋さんに行ってみようと思っています。
物語も楽しめて、その後和菓子も楽しみたくなる、1冊で2度美味しい素敵な名作です。