坂木司のレビュー一覧
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成人式を迎えても、大人になった実感のないアンちゃん。「みつ屋」で働きながら、他店舗の同世代との出会いや百貨店の催事、友達との金沢旅行を通して、また少し新しい世界へ踏み出していくシリーズ第3弾。
自分とは正反対の桐生さん。その長所ばかりが目に入り、自分の良さが見えなくなってしまうアンちゃん。でも催事を通して見えてくるのは、優劣ではなく、それぞれに得意なことがあるということ。まさに適材適所。二人が互いの良さに気づける場所を作った椿店長たちの温かさもいい。百貨店の催事の裏側を知る楽しさもあり、仕事小説としても面白かった。
友達との金沢旅行では、仕事を離れたリラックスしたアンちゃんが新鮮。昔の彼女を知る友達だからこそ見える変化があり、本人が思っている以上にちゃんと成長しているんだな、と嬉しくなった。
食、和菓子、仕事、職場の人たち、お客さん、友達、新しく知る世界。アンちゃんの周りには、いつの間にかたくさんの「好き」が増えている。そして、ひとりの人に向ける感情。好きなのに素直になれない、自分でも認めきれない、だからうまく言葉にもできない。そんな名前をつけきれない感情の揺れを、無理に言葉にしてしまわず描いているのが絶妙で、物凄く共感した。
そして物語は、シリーズ最大とも思える転機へ。詳しくは書けないけれど、ここは泣けた。好きなものが増えることは幸せだけれど、大切なものが増えるほど、変わってしまうことは寂しい。楽しく優しいだけでは終わらせないところに、この物語の深みを改めて感じた。
愛情にも、いろいろある。誰かに向けるもの、誰かから受け取るもの、気づかないうちに育っているもの、そして自分でもまだ名前をつけられないもの。そんな様々な愛情を描くからこそ、このシリーズが好きなのだと思う。次巻がどうなるのか、気になって仕方がない。 -
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デパ地下の和菓子店「みつ屋」で働き始めて8か月。仕事にも少しずつ慣れてきたアンちゃんが、和菓子にまつわる謎や人々の想いに触れながら、成長していくシリーズ第2弾。
世界は広がり、人物は深くなる。前作では「みつ屋」を中心にしていた物語に、柏木さんや立花さんの師匠、他店舗とのつながりが加わり、和菓子と洋菓子の対比も見えてくる。一方で、みつ屋の面々はさらに深く描かれ、完璧に思えた先輩・立花さんの弱さや迷いが見えたことで、人物にも作品にもぐっと奥行きが増した。
もともと就職や仕事に積極的だったわけではないアンちゃんが、仕事の楽しさを知り、人と触れ合うたびに少しずつ前向きになっていく。その成長が嬉しくて、読んでいるこちらまで元気をもらえる。
食の物語だからこそ描かれる、震災後のエピソードも印象に残った。重すぎず、だからといって決して軽く扱わない。その距離感にも、このシリーズらしい優しさを感じる。
何者になるのか、何をしたいのか、まだ答えが見つからなくてもいい。好きなものを見つけ、人と出会い、昨日より少し前を向く。そんなアンちゃんの一歩一歩こそが「青春」なのかもしれない。次はどんな人と出会い、どんな和菓子の世界を見せてくれるのか。ますます「みつ屋」に通いたくなった。 -
Posted by ブクログ
優しくて、柔らかくて、ほんのり甘い物語。
日常的なお仕事の中で起こるミステリー。作品の中で共に考えているような気持ちにさせてくれます。
主人公の存在や、成長の描き方で華やかになっていて、個性的な登場人物達がさらにそれを彩ってくれました。
1エピソードずつ大きな満足感が得られる、とても心地よい作品です。
そして、とにかく和菓子が食べたくなります。
文字だけでこんなにも美味しそうと感じられるものなのかと、感動しました。
普段は洋菓子ばかり食べていますが、明日のお休みは和菓子屋さんに行ってみようと思っています。
物語も楽しめて、その後和菓子も楽しみたくなる、1冊で2度美味しい素敵な名作です。