しきみのレビュー一覧
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人の夢の話って本当につまらない。その人の中の知識の共有のないまま、ランダムで不条理で支離滅裂だからだろう。
でも夏目漱石のこの作品は名作としてずっと残っている。
まず、第一夜の死の床にある女との会話がロマンチックだ。「百年待っていてください」という頼みも、真珠貝で掘り起こすところも。彼女の姿ではないけど、百合の花で再会とするところは、ブッダの生まれ変わりの話みたいだといつも思う。
第三夜の目が見えない子供を負ぶう話も、ちょっとホラー仕立てで面白い。
第十夜は、水菓子やの水蜜桃、林檎、枇杷と色鮮やかな果物を描写する漢字の単語が美しい。
イラストが美しいし、夢十夜の雰囲気ともとても合っている。特 -
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『今昔奈良物語』の『桜の森の満開の下』のパロディー短編を読んだときにわからない部分があったので、今回読んでみました。挿絵とレイアウトのおかげでとても読みやすくなって、文豪作品の敷居がぐっと低くなりました。
鈴鹿峠にある桜の森の花の下では花の季節になると、旅人は気が変になってしまう。この山に住む山賊は情容赦なく着物をはぎ人の命を絶つが、やはりこの花の下に来ると怖くなってしまうのだ。山賊がいつものように街道で男の着物と一緒に妻をさらう。山賊にはすでに7人の妻がおり、その女は他の妻たちを次々と殺すよう山賊に言う…
現代では絶対に出版できない内容。とても残酷なのですが、この山賊がそうであるように、 -
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夜叉ヶ池には龍神が封じ込められている。自由を求める龍神は、遠い昔に人と約定を交わした。麓の鐘を必ず日に三度、撞き鳴らすこと。一度でも忘れたら、夜叉ヶ池から津波が起こり、村も里も水底に沈むであろう。
文学士で僧の山沢学円は越前琴弾谷で旧友の萩原晃に再会する。晃は、妻の百合と共に鐘楼守をしていた。
夜叉ヶ池の主•白雪は、白山千蛇ヶ池の主が思い人で、会いたくてたまらない。
"義理も仁義も心得て、長生きしたくば勝手におし。…生命のために恋は棄てない"
しかし、家を留守にした晃を慕い歌う百合の子守唄を聞いて約定を思い出す。
折しも旱魃続きの夏。村の人々は、夜叉ヶ池の雨乞いに、村 -
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坂口安吾は、残酷でセンセーショナルな作品を書くイメージがあったが、この恋愛論は真面目な論説文でそのギャップに驚いた。
物語でない論説文にイラストが入ると、物語を読んでいるような気分になり不思議な感じがした。普段とっつきにくい論説文もこのようにコラボして、イメージが広がる形でどんどん読めたらいいのに、と思った。
恋と愛のニュアンスの違い、日本語の多様な同義語が雰囲気的過ぎるという話には、納得感があった。万葉集や古今集の恋歌が、動物の本能の叫びに過ぎないと切り捨てるのも、なんとも清々しい。人生とは、その本能の世界から抜けてめいめいが世界を建設するもの、常識という規則で満たされなくなった心が、良俗に -
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この本で起こる現象と同じ経験をした人はいますか?
「いつも見慣れた風景が、すっかり珍しく変わってしまって、全く別の違った世界に見える。夢から覚め、現実の正しい方位を認識する。そして一旦それが解れば、始めに見た異常の景色は、平常通りの見慣れたつまらないものに変わってしまう。」
「三半規管の喪失」
この現象に私は身に覚えがありました。ずっと気になっていたことなので、この本の考察などを読んでみると、ただ方向音痴なために右と左が逆になってしまって、景色が全く違うように見えるという自分なりの結果が出ました。
この現象について私なりに考えました。
上記のように、萩原さんには全く違う場所に見えたため、い