あらすじ
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人気シリーズ「乙女の本棚」第29弾は、文豪・泉鏡花×イラストレーター・しきみのコラボレーション!
戯曲としても画集としても楽しめる、魅惑の1冊。全イラスト描き下ろし。
人の生命のどうなろうと、それを私が知る事か!
......恋には我身の生命も要らぬ。
竜神が住むといわれる夜叉ヶ池。1日3回鐘を撞かなければ、池から津波が起こり、村は水の底に沈んでしまうという言い伝えがあった。
泉鏡花の名作が、有名ゲームのキャラクターデザインなどで知られ、本シリーズでは萩原朔太郎『猫町』、『詩集『青猫』より』、江戸川乱歩『押絵と旅する男』、夏目漱石『夢十夜』、坂口安吾『桜の森の満開の下』、谷崎潤一郎『魔術師』を担当する大人気イラストレーター・しきみによって描かれる。
名作文学と現代の美麗なイラストが融合した、珠玉のコラボレーション・シリーズ。
自分の本棚に飾っておきたい。大切なあの人にプレゼントしたい。そんな気持ちになる「乙女の本棚」シリーズの1冊。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
夜叉ヶ池には龍神が封じ込められている。自由を求める龍神は、遠い昔に人と約定を交わした。麓の鐘を必ず日に三度、撞き鳴らすこと。一度でも忘れたら、夜叉ヶ池から津波が起こり、村も里も水底に沈むであろう。
文学士で僧の山沢学円は越前琴弾谷で旧友の萩原晃に再会する。晃は、妻の百合と共に鐘楼守をしていた。
夜叉ヶ池の主•白雪は、白山千蛇ヶ池の主が思い人で、会いたくてたまらない。
"義理も仁義も心得て、長生きしたくば勝手におし。…生命のために恋は棄てない"
しかし、家を留守にした晃を慕い歌う百合の子守唄を聞いて約定を思い出す。
折しも旱魃続きの夏。村の人々は、夜叉ヶ池の雨乞いに、村一番の美女の百合を人身御供にしようとする…
再読。
突然思い立ったのは、やはり元旦の地震があったから。被災された方々の話を聞くといたたまれない思いが募る。僧の学円はこの地に多い本願寺派の僧侶。宗門とは何かを考える中で、この作品がまた読みたくなっていた所だった。
この立東舎のシリーズは、近代文学の短編を、最新のデジタルアート系のイラストで飾っていてなかなか美麗な装丁。とても良い取り組みだと思います。
Posted by ブクログ
舞台の台本のような本だった。
少し見慣れない単語が出てくるので、辞書を引き引き読んだ。結構面白い。
夜叉ケ池という池の麓から帰ってこない晃を訪ねて学円が村にくる。晃は百合という女性と暮らしていて、村で鐘をつく仕事をしているのだと言う。代々、鐘を1日に三度鳴らさねば、村が山津波で滅ぶのだと言う。
村人たちは信じていないものも多いが、先代の爺さんはやり遂げる。この鐘本当に効果があり、魑魅魍魎の世界が描かれたときも「鐘が鳴っているから」と村を滅ぼせない。
ただここの村人は最悪で、旱が来たら「村1番の美女を裸にして牛の背に乗せて夜叉ケ池まで運び、そこで男たちが宴会をする」という行事をやる。もちろん美女本人の有無も言わさず、旦那が留守の隙に攫ってきていて狼藉もいいところ。1日だけだよと村人は言うけど、明らかにただ裸にされて牛の背に乗っているだけではないだろう。酒の入った男に襲われるのも混みで考えると、神仏への雨の祈願、と言うより、旱で村人の溜まったストレスの発散、の意味合いが強いように思う。福井の山あいの村で、都会との往来が少ない立地だと、女性に逃げ場がなくて最悪の習慣だと言える。現に、以前の美女に選ばれた白雪は、その後居た堪れなくて死んでしまっているし。
晃も百合も死んでしまい、ま、こんな村滅んじまえばいいな!と鐘はつかれず村は滅ぶ中、夜叉となった晃、百合、白雪の笑顔が見れるラストは圧巻!
ただ京大の先生で本願寺派の坊主の山沢学円も死ぬように思うが、そこは良かったのか?3歳の子供がいるんだよ?
Posted by ブクログ
このシリーズにしてはページ数が多くどちらかと言うと絵というより文字という感じ。
最後ってハッピーエンドなのか?
姫様の天真爛漫?自由な発言が姫って感じで良かった。
Posted by ブクログ
はい、三十五オネエ
まさかの戯曲!
そして戯曲と『乙女の本棚』って相性いいんではなかろうか
だいたい泉鏡花の世界観なんて簡単に分からんのだからね
しかも意味もなく戯曲になんかされた日にゃちんぷんかんぷんに決まってます(いや意味はあるだろ)
そこで『乙女の本棚』ですよ
こうなってくると話は変わってきますよ
なんか色々教訓が込められていたような気もしなくはないような感じにもとれなくなくもないようなあるようなね
天才すぎる泉鏡花をぐっと近付けてくれます
すごいな二十一世紀
Posted by ブクログ
乙女の本棚シリーズから、泉鏡花さんとしきみさんのコラボ作品「夜叉ヶ池」です。しきみさんのイラストは、「夜叉ヶ池」らしく青緑を基調としたもので雰囲気出てます。が…戯曲??何??しかも、今回も難しい…ってところから(^-^;)
竜神が住むといわれる夜叉ヶ池。1日3回鐘を撞かなければ、池から津波が起こり、村は水の底に沈んでしまうという言い伝えがあった…それを守るのが萩原晃・百合夫婦だった。一方その言い伝えがあるために剣ヶ峰に行けない夜叉ケ池に住む白雪姫…この2つの恋の行方を戯曲で表現しているのがこの作品…でいいかな(汗)。
ラストがまた息をのむ展開で…さすが泉鏡花さんです!!難しい…読めるかなぁ…と思わせておいて、気が付くとこの世界に引きずり込まれてしまったような…そんな感じなんです。深い深い作品でした。
Posted by ブクログ
幻惑幻想。
浮世離れした幻想に片足をいれたような夫婦と、下界といっていい現実世界に蠢く村人や権力者。
それに夜叉ヶ池の幻想そのものの住人たち。
この世ならざる夜叉ヶ池の住人たちとは直接関係はなく話が進むが、最後には幻想幻惑がすべてを飲み込む。
池の堰が切れたように。
さすが、泉鏡花先生。戯曲では天守物語が名高いけれど、それと比べても幻想の度合いと、美しさが際立つ。
冒頭の場面描写に「水辺の菖蒲」があったけれど、「妖剣紀聞」で菖蒲を好んでいた旨が書かれていたので、あわせて読むと、水辺の描写の美しさ・菖蒲の描くことへのこだわりがわかる…かも?
Posted by ブクログ
何の知識もなく読んだけど、これって舞台の台本的なもの?そういう体?
しきみさんのキレイでかわいいイラストのおかげで最後まで読めた。なかなか読み慣れず、状況把握するのも難しかった…。
Posted by ブクログ
乙女の本棚シリーズの一冊。
泉鏡花の戯曲に、今風のイラストをつける。
いくらかは読みやすくなっているのかな。大人が普通に読んでも、わかりにくいからな。イラストでもないと、このシリーズのターゲットである乙女にはかなり読みづらいだろう。
このシリーズは多分、注釈はつけないことにしているんだと思うけど、解説くらいはあってもいいのかもしれない。
Posted by ブクログ
乙女の本棚シリーズ。読みにくくてビックリ。戯曲風の構成と昔の文体のおかげで、読むのが大変でした。
それでもかわいらしい絵のおかげで、少し理解しやすくなっています。特に白雪の眷属達の姿が描かれていたのがありがたかったです。
それにしても、こんなお話だったとは。村人の身勝手さに呆れ、展開に驚きました。
原典で読むのは難しそうなので、このシリーズで読めて良かったです。
Posted by ブクログ
泉鏡花文学忌、死因は肺腫瘍
泉鏡花の戯曲 1913年
戯曲を読むのは難しく
夜叉ヶ池の龍神との約束の鐘
日に三度鳴らす役目を負った青年と美しき妻
夜叉ヶ池の主、白雪姫は人間との約束を守り池を守るが剣ケ峰の恋人の所に行きたくて仕方ない
激しい日照りに村人は、雨乞いの生贄に美しい妻を選ぶ
それを知った夫と友人は命をかけて抵抗する
妻は自死、夫は後を追い池の中へ
約束は守られずつかれる事のなくなった鐘
白雪姫は恋人の元へ
村は大洪水となり、愚かな村人は魚となる
姫と妻 ふたりの女の物語
しきみさん、このイラストは大変でした
さすがに乙女の本棚にならなければ戯曲は読まなかったので、ありがとうございました
Posted by ブクログ
線がくっきりしているからか、キャラクターの顔が今どきすぎるからか、私の中の泉鏡花作品のイメージとは合わなかった。蟹と鯉は可愛い。
話の内容もなんとなく分かるのだが、やはり昔の書き方のままなのでいくらか読みにくく、解説のあった方がありがたい。
雨乞いの生贄として美女の裸体というのが如何にもだが、私が代わりに脱いで生贄になりますとも!と、夫や僧らが言うのは面白かった。
そこからの展開があっという間で、気づくとサラッとした一文で主要人物が死んでいく。
〆が白雪が百合に子守唄を頼もうというのが、ブラックな絵本みがあって良い。
Posted by ブクログ
舞台の台本のような書き方で、読み慣れていないからか、場面転換についていけず、疑問ばかり浮かび、よくわからないところが多かった。
伝承に縛られるって、すごく息苦しい。
ウソかホントかも分からないことに、人生を捧げて、他の人の命を楯に、自分の自由を奪われてしまっている鐘守の感じは、憐れな気がした。
他人のために生きるというのも、度を越すと辛くなる。自分が満たされたからこそ、他人に優しくする。そういう順番が大切だと思った。
大事な約束だと皆が思うのなら、一人に押しつけずに、皆で分担すればいいのに。一人の犠牲の上にあぐらをかいて生きようとするのは、生贄のようで気持ちの良いものではない。
皆が気持ちよく生きていける方法を考えていくことが重要だと感じた。
Posted by ブクログ
知らなかったから無意識なのだが、似たような話を続けて読んだのは……これもシンクロニシティというのだろうか。
きれいなイラストではあるのだが、この物語には現代的すぎる気がする。
結末は、正直いい気味である。約束を守る、池に棲む姫と鐘撞守夫婦の対極にいる、こういう村人みたいな集団はほんとに嫌い。もっともらしい顔した宗教者や教育者がいるのが情けないし、虫唾が走る。
Posted by ブクログ
幻想的かつ涼やかな印象で、夏に読もうと思っていたらぴったりだった。
越前にある「夜叉ヶ池」には、水害をもたらす竜神が封じ込められているという言い伝えがあった。そしてその竜神を鎮めておくためには、日に三度の鐘を鳴らし続けなければならず、今では土地に移り住んだ若夫婦がその役目を担っていた。
しかし未曾有の日照りがつづいていたとある夜、旧友と再会した夫が、夜叉ヶ池を案内しようと留守にしたところ、妻の百合を雨乞いの生贄にしようと企んだ町の者が捕らえにやってきて——
という戯曲。竜神こと夜叉ヶ池の主人は、白雪姫という名のキュートなプリンセス。好きな人がいるのに、封じ込められているせいで会いにゆけず日々鬱憤をためこんでいる。強行突破しようとするやいなや家臣(魚である)たちが必死に引き留める様子がおもしろい。
竜神だって恋する乙女なんである。「生命のために恋は棄てない。お退き、お退き。」が痺れる。
そんな押し問答をしているところに、留守番中の百合の歌声が響いてくるのだが、百合もまた恋しい人(夫)の帰りを待ってさみしい思いをしていることを知った白雪姫が、
「この家の二人は、嫉しいが、羨ましい。」
と、自分にとっては憎き存在でありながらも理解を示すところが彼女のキュートさをより際立たせる。
ラストにかけての展開もドラマチックでとても面白かった。
イラストレーターのしきみさんによる、最後の見開きカットでの穏やかな笑顔の三人がとても素敵だった。