スティーヴン・キングのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
原著2015年刊のキング短編集の2分冊目。
1分冊目よりも「ホラー以外」の、普通小説的な作品が多いが、やはり語りの面白さは変わらない。キングの大好きな野球の話に、犯罪要素が絡んでくる「鉄壁ビリー」が最も印象的だった。
キングの小説を読むとき、ストーリー展開に惹き付けられながらも、文章の味わいに同時に浸らせられる。地の文の、とりわけ登場人物のモノローグの部分に魅力があって、そこに醍醐味を感じるのだが、従って読むスピードは遅くなる。日本のこんにちのエンタメ小説を読むのよりも、ずっと遅いのである。
ストーリー展開に的を絞り、描写は最低限に抑制する作法がエンタメ系では常識的であり、この面では東野圭吾さんの文体および作法が効率性を精緻に追求していて機能的な美をも思わせるものがあるが、スティーヴン・キングにおいては描写や独白など、必ずしもストーリー展開優先の法則に則らない書き方に味がある。
長い長編小説でストーリーがサスペンスフルに盛り上がってくると、先が気になるあまり読む速度を上げたくなるのだが、キングの短編ではそんな「加速の欲求」が起きるまで至らず、最後までじっくりと読むことになる。だからキングの短編集を読むのは、私の場合、比較的時間がかかるのだということに気づいた。
比較的緩慢な速度となる小説ストリームの流れ方は、どちらかというと芸術的(純文学的)なそれに似ている。モノローグが肉薄してきて、その緊迫に捕らえられストリームの生に没入してしまうこの体験は、やはりドストエフスキーや太宰治のような文学と共通しており、それが得がたい時間、衝迫の体験として記憶される。
スティーヴン・キングを読むことは、やはり映画を見ることとは全然違う、あくまでも小説的な出来事の体感だ。 -
Posted by ブクログ
スティーブンキングの代表作の一冊。
死んだペットを埋めると生き返る墓地の話。
墓地の近所に引っ越してきた主人公一家。ある日、事故で死んだ飼い猫を生き返らせたことが成功体験になり、事故で死亡した幼い息子をペット墓地に埋める主人公。しかし、生き返った生き物は生前とは違う行動を取るようになる。
死んだ家族を生き返らせる、というモチーフから「猿の手」を連想させるが、小説内で主人公も「猿の手」のことを思い浮かべている。「猿の手」では、死体が家のドアをノックするところまでで追い返すが、もし受け入れたらどうなるか、というアイデアが本書のスタートのような気がする。
ホラーのスタイルを取ってはいるが、本質は家族愛の話だと思った。姿形が変わっても死んだ家族と会いたいのか?大きなリスクを取ってでも行動を起こす姿に家族愛を感じる。
キング作品にしては翻訳は読みやすい。
一方で登場人物の独白や心理描写が大量であり、かつ、情景描写も多い。アメリカ文化に馴染みがないと文章から想像しづらい場面も多く、読み進めるのにエネルギーが必要だった。
旧作のキング脚本の映画の方が物語のテーマが分かりやすいかもしれない。 -
Posted by ブクログ
んでこれは『氷』とは打って変わって、長く親しんできた著者による新たな挑戦「探偵小説」の第3部にして、本領発揮のスーパーナチュラルへ回帰した、実にリーダビリティが高くて、ストレートに心に響く物語。
最悪のシリアルキラーが、脳に損傷を受けて動きもままならないまま怒りや憎しみを募らせていく様も、また一転、自殺に対して決してしてはならないものだと強く訴えるテーマも、かつて交通事故で長く死線をさまよったご本人のうちに育ったものなのでしょう。心動かされます。
書いておく。
「ある人たちが魂を売ってでも手に入れたがっているものを…つまり、苦痛と無縁の健康な肉体を…あっさり無頓着に浪費してしまう人たちもいる、という思いだ。なぜそんなことをする? なぜなら、そういった人たちはめをふさいでいるか、怯えの感情があまりにも強いか、あるいは自分のことだけで精一杯であるせいで、地球がつくる暗いカーブの先にある次の夜明けを見通せずにいるからだ。次の夜明けは必ず訪れる…人が息を吸っているかぎり」
息をしつづけよう。 -
Posted by ブクログ
いやぁ、長かった。
ようやく読み終わった。ほぼ8ヶ月。
その間、自分のこの事件(ケネディ大統領暗殺事件)に関する知識を補完するために、結構調べたり、映画やドキュメンタリー番組を見たりしながら読み進めてたので、そりゃもう時間がかかった。
作者のキング氏はあとがきで述べているように98%オズワルド単独犯説の支持者であるわけだけれども、作中のアルは95%ととの描写がある。
しかしとてもじゃないが数ある陰謀論を退けて、あの奇跡の、まさに針の穴を通すような軍前の積み重なりによる暗殺が成し遂げられたとは、個人的にはほとんど信じられない。
まあ、それはともかくとして。
もし、時間をさかのぼって歴史を改変できたら、というSFの中でも最も魅力的なテーマのひとつを、稀代のストーリーテラー、スティーブン・キング氏がその魅力溢れる筆致であますことなく我々に与えてくれたこの一冊(実際には上中下3冊の分冊だけれど)これは素晴らしかった。
とても楽しい250日間だった。