木下昌輝のレビュー一覧

  • 決戦!賤ヶ岳

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    ネタバレ

    20代の頃、テント泊をしながら琵琶湖まで行った時に偶然立ち寄った賤ケ岳。リフトに乗って山頂まで行ったが、当時は七本槍の逸話など知らず、漫然と観光してしまった。本書を読むまでも、加藤清正、福島正則と、かろうじて加藤嘉明は知っていても、他の武将のことはあまり知らなかった。七本槍が秀吉のプロパガンダだという見方は新鮮だ。加藤嘉明に、賤ケ岳で討死にした石川兵助が寄せた想い(男色)の物語も、その時代にはあり得ることと興味深かった。織豊時代から関ケ原にかけて、敵の敵は味方ではない複雑な駆け引きを想像するのも楽しいな。

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    2026年09月25日
  • 決戦!関ヶ原

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    これは秀逸。
    戦国時代の脇役の心理がわかる。作者によって見方が少しづつ変わるのも面白い。作品の並びも素晴らしい。秀吉の朝鮮出兵が与えた武将らの心持ちが、それ以降の人生を変えていく様もしゆういつ。
    ・人を致して、伊藤潤
    人に致されてきた家康、今回も三成が取り除きたいと考えた武将に絡む策に乗る。
    ・笹を噛ませよ、吉川永青
    敗軍の将につかい続けた槍の名手可児歳三、とった首には笹を噛ませる。一番槍を横取りした味方の井伊直政を追う。何のために戦うかを学んだ才蔵、直政の配慮。
    ・有楽斎の城、天野純希
    信長の13歳下の弟、父信秀の11番目の男子として生まれた。武芸よりも芸事。武運にも見放され茶の湯にハマる。武将らからは蔑まれるものの兄の威光で本能寺後も配慮される。その有楽の心の動きを一人称で追う。
    ・怪僧恵瓊、木下昌輝
    恵瓊は元々武田の一棟、安芸の武田。信長や秀吉の行先を予言。父が毛利に殺された恨みは忘れてはいない。毛利に恨みと感謝、どのような策を練るのか。吉川広家を主人公に展開。
    ・丸に十文字、矢野隆
    島津維新義弘、激情の男。家康の依頼に意気を感じたものの、また三成は三成、急激に冷めた心を、また、燃え上がらせたものは。
    ・真紅の米、冲方丁
    小早川金吾中納言秀秋、子どもの頃から必要なものは全て与えられてきた。食としての米、財政としての米、を知り、朝鮮出兵の総大将も経験。三成の所業に不満。こだわった米に毒。
    ・狐狼なり、葉室麟
    三成は誤算ではなく、自ら計算づくでこの結果を導いたと言う。これは無理あるんちゃう?と思いました。すいません。

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    2026年03月03日
  • 宇喜多の捨て嫁

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    第92回オール読物新人賞、直木賞候補、第4回歴史時代作家クラブ賞新人賞、第9回舟橋聖一文学賞、第2回高校生直木賞受賞作。

    中国の雄、宇喜田直家にまつわる短編集。直家は殺した卑怯だと昔から言われているものの、舅殺しも婿殺しも旧主浦上宗景の命令だし、娘たちが不幸な転帰になったのも浦上のせいだし、なんか浦上宗景さん、疑心暗鬼なのは自分でなんとかしろよと思う。
    私は直家が好きなのだ。特にご飯ないから略奪やめてみんなで月何回とか絶食して、家臣まで従った話。いい人だったんだろうなぁと思う。
    晩年に息子が産まれたのはよかった。

    あと医学的に尻はすというのの真偽は知らないが、切開して清潔な水で洗って乾燥させたらあんまり再発しないよと医者は思う。活用してくれ。

    第1話 宇喜田直家はいろいろな人を暗殺してその結果、家族たちが犠牲になった。妻の父が暗殺されて妻が自殺してしまったし、長姉の初の夫松田元賢も殺されて初は自殺。二女楓の夫伊賀久隆は初の夫を攻めたため、楓は精神錯乱してしまった。三女小梅は今浦上宗辰に嫁いでいる。そして四女於葉も嫁ごうとしていた。

    第2話 宇喜田直家の祖父は島村盛実に暗殺された。父は無様に逃げた。直家は大きくなって旧主浦上宗景に仕え、初手柄を挙げる。

    第3話 直家は妻を娶った。沼城城主中山備中信正の娘、お富。食べ物が足りないため、月に数度絶食している。妻の妊娠中、直家は尼子勢に囲まれた。そこに富の父が後ろ詰をしてくれて助かった。その後富の父はいろいろ助けてくれた。砥石山城を攻めた時も、経済的援助も、料理を教えてくれさえもした。だが主の浦上宗景より舅を討ち取るよう命ぜられる。ただの疑心暗鬼から来た命令だったが、逆らえない。舅を討ったのに、浦上より島村が差し向けられ殺されそうになるが、これを討ち取る。しかし妻の富は父に殉じてしまった。

    第4話 直家の祖父能家は智略に長けた謀将で、浦上宗景には恐ろしかったから、兄を唆して討たせた。浦上宗景は直家をみている。舅を討たせてから生まれ変わったように、謀略でどんどん所領を拡大している。だが宗景は気に入らない。直家は大きくなりすぎた。敵が勝つように密使を送っても、直家は返り討ちにしてしまう。
    直家を正面から討伐することにした。直家の長女初の婿の家、松田将監の家をけしかける。しかし宇喜田家次女楓の夫が、松田家を囲んで滅ぼした。
    急に直家を滅ぼそうとしていたのがバカバカしくなって、三女小梅をもらう約束をしてしまった。

    第5話 浦上松之氶は直家と婿と舅の仲になることになった。松之氶は直家を討つ気だった。直家は山陽道の通る石山城へ移ろうとしていた。捨てゆく沼城に松之氶に譲るという。

    第6話 江見河原源五郎の主、浦上政宗は明日小寺官兵衛の妹を娶る。しかし赤松家に攻め入られて、浦上政宗は命を落とした。
    3年後、次男の浦上誠宗がまた小寺官兵衛の妹を娶ることになった。学士にしてやると言われて、江見河原源五郎は浦上誠宗の首をとって宇喜田に渡した。
    あれから10年、浦上家はもうない。
    次女楓の夫伊賀久隆は毒殺した。四女於葉の夫も殺した。直家死去。

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    2026年03月02日
  • 豊臣家の包丁人

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    今年の大河ドラマ『豊臣兄弟』は、久しぶりの戦国物でそれなりに楽しんで観ています。ただ「なんで今また秀吉なの?」と言う感覚もありました。『豊臣家の包丁人』(木下昌輝)はそんな時に見つけて読んだ本です。豊臣に仕えた料理人と弟の小一郎(豊臣秀長)を主人公にして、秀吉が出世をして行く痛快担でした。ただ出世するだけでなく、料理人が、いくさの前に下魚を使って作る兵達を鼓舞する蒲鉾が美味そうだったり、めしが大事な場面で物語を動かして行きます。ドラマも同じ様に今後更に面白くなってくるのでしょう。小一郎が主人公なので、調整力やその葛藤が見所みたいです。仲野大河さんと言う役者知らなかったですが、爽やかさが気持ちいいです。私も組織の中で何か参考になるものないかとか考えて観ているところです。

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    2026年02月15日
  • 宇喜多の捨て嫁

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    ネタバレ

    数々の謀略でのしあがった戦国大名、宇喜多直家をめぐる短編集。といってもそれぞれつながりがある。ひとつひとつがすさまじい読後感だ。戦国の習いとはいえ、あまりにむごい。ただ終盤で流民が語るところによると、民にはよい殿様だった。直家も恐ろしいが主君の浦上宗景はまさにサイコパス。中盤の迫力たるや…。

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    2026年02月12日
  • 豊臣家の包丁人

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    ネタバレ

    実在の包丁人、大角与左衛門を主人公に豊臣兄弟、家康のあたりを書いた本
    そもそも内容はフィクションだろうし、豊臣兄弟が主になりがちではあるが、料理の視点で面白く書かれており、よい本ですなぁと思った。
    特に、秀吉の晩年の心理描写、秀頼の心理描写(淀の描写含む)は、ホントかどうかは別として新鮮で秀逸
    著者の実力が垣間見える

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    2026年02月10日
  • 豊臣家の包丁人

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    ネタバレ

    表現は悪いけど、序盤は「信長のシェフの焼き直しか…」とガッカリしていたけど、中盤『孝行飯』から一気に深みが加速して最後は爽やかに〆られた。大河ドラマ前に読めてよかった

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    2025年12月10日
  • 豊臣家の包丁人

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    秀吉と秀長が喧嘩した。まだまだ足軽上がりの頃だ。数年口をきかなかった。そこへ料理人がやってきて、雉の内臓を味噌で煮た物を作る。臭くて食べられないだろうと秀長が思うのに、それは意外にもとても美味しかった。
    「食えない腑を料理にするもしないも、味噌次第だ」という料理人。食えない男である藤吉郎を、うまく世間に渡らせるのはお前次第だと言われた気がした秀長。秀吉と仲直りをし、兄を盛り立てていく覚悟を決める。

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    2025年11月13日
  • 宇喜多の捨て嫁

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    宇喜多直家といえば,裏切りや誅殺など,謀略の限りを尽くして備前を統一した梟雄として知られているが,彼とその関係者を主人公とした5つの短編からなるのが本書.
    違った主人公を通して複数の角度から直家を描くことにより,謀略に対する読者の見方も変わってくるはずだ.
    傑作です.

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    2025年10月23日
  • まむし三代記

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    斎藤道三といえば、さまざまな調略を駆使し、狡猾で毒々しい方法で下剋上を成し遂げた蝮のような人物であると評されていますが、この物語の斎藤道三は、決してそのような人物としは描かれていなかったのが新鮮でした。物語自体も「国滅ぼし」という、謎の凶器を中心に進んでいくのがとても面白く、最後まで想像を膨らませながら読むことができました。

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    2025年09月28日
  • 宇喜多の捨て嫁

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    ジュンク堂で、本をながめていたら、初対面の素敵なご婦人にオススメされた本。一期一会だと思って購入して読んだら素晴らしい本でした。バラバラの短編を読み進めたかと思ったら、最後の話でなるほどとうならせるまとまった一冊。たくさんの賞を受賞されている本です!

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    2025年09月20日
  • 宇喜多の捨て嫁

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    宇喜多直家といえば、身内であっても謀略や暗殺の限りを尽くすといった冷酷無比な悪人の印象がありましたが、物語を読み進めていくうちに、だんだんと、ただの悪人から悲しい悪人に思えてきたの不思議でした。とくに、「無双の抜刀術」の持ち主という設定は、非常に面白く斬新でした。文章自体が読みやすく、描写も芸術的でありながら明快で、目の前に直家がいるようでした。読み終えとき、宇喜多直家のことがすごく好きになっていました。

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    2025年09月17日
  • 戦国十二刻 始まりのとき

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    こういう歴史物も面白い。1人の生涯ではなく断片的だけど繋がりがあってそれぞれの人生のクライマックスを、繋げていく。面白かった

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    2025年09月06日
  • 決戦!大坂城

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    ネタバレ

    決戦シリーズは、作家ごとのさまざまな解釈を楽しみながら、複数の視点から戦いを立体的に見ることができる良企画。
    大阪城では、「日ノ本一の兵」のラストに情緒を掻き乱された。また、「黄金児」にせよ「男が立たぬ」にせよ、淀殿の陰に隠れて見過ごしがちな秀頼という人間に焦点を当てているのがとても良い。一方、その強烈な母君である淀殿に新しいイメージを与えてくれるのが「鳳凰記」。
    シリーズの他の編も楽しみになる。

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    2025年08月03日
  • 宇喜多の捨て嫁

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    戦国時代のど真ん中を権謀術数のかぎりを尽くして大大名達と渡り合った宇喜多直家。主君に対する下剋上だけでなく、親や娘さえ裏切り死に追いやってものしあがっていく梟雄。彼の知略がこれでもかというほど披露されるが、なぜ彼がそのような人物になったのか、何がそうさせたのかなど、周囲の人部との関わりも含め、複雑な伏線とその回収が見事。血や死臭が漂ってくると思われるほどの筆致がすごい。本当に面白い一冊。

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    2025年07月05日
  • 戦国十二刻 始まりのとき

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    乱世に生きた武将達の転換点となった出来事の最後の一日を、大胆な解釈で鮮やかに描き切った連作短編集。

    点と点が線になり、最終的に一つの面となる物語の構築美は素晴らしいの一言。

    雲煙飛動たる筆致で描かれる最終章では、思わず声が出てしまった。
    連作短編の強みが出た作品でしたね。

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    2025年06月06日
  • 秘色の契り 阿波宝暦明和の変 顛末譚

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    悪党の金蔵含め登場人物が皆、魅力的。藩に殉じるか主君に殉じるか、誰もが大義を掲げ板挟みに…やるせない。「借財をそのままにしておけば、確かに今は争いが起きない。誰も不幸にはならない。しかし、十年後、二十年後に地獄を迎える。わしの息子や孫のためにも改革をなす」人気取りの為に借金膨らませるだけの現代の政治家に読んでもらいたい…「どうせしくじるなら、足掻くだけ足掻いてからしくじったほうが気持ちが良いでしょう」忠兵衛の妻いい。いつの世も女性は強し。徳島ブルーは知らなかったが、4月の遍路でも藍に関わった人物の銅像が道端にあったなぁ。

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    2025年05月16日
  • 秘色の契り 阿波宝暦明和の変 顛末譚

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    徳島藩の財政危機を乗り越えるために小藩の部屋住み次男坊を藩主を迎える。弁の立つ藩主がやる気を出した時、画期的な改革が始まる。
    巻頭に登場人物の顔の絵並べられていて、イメージが掴みやすい。

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    2025年03月27日
  • 秘色の契り 阿波宝暦明和の変 顛末譚

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    史実に基づいているそうだが、かなり乏しい史実からよくもまあこれだけのアクション・サスペンス・エコノミー物語を紡げるものだと感心した。人物が活き活きとしていて250年の時を感じさせない。史実そのものも全く知らなかったが、とても勉強になると同時に面白かった。

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    2025年03月18日
  • 秘色の契り 阿波宝暦明和の変 顛末譚

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    これほど面白いとは思ってなかったが直木賞候補作だったと知り納得した。徳島藩の改革に奮闘する若い武士たちのそれぞれの思いや奮闘ぶりに惹きつけられた。他家から迎えた藩主の頭の良さにも敬服した。
    長い年月を要する努力がどう実を結んだのか、史実に基づく小説らしいからいつか調べてみよう。

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    2025年03月09日