木下昌輝のレビュー一覧
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織田信長は、歴史時代小説で取り上げられることの多い人物の中でもその最もたる一人だろう。
それゆえ、作家は独自性新規性を如何に表すかに注力せざるを得ない。
本書では、「恐怖」をキーワードに、様々な場面で信長の行動を繋いでいる。
「あれ以来、信長は恐怖を感じたことがない」
大阪本願寺との死闘にけりがついて、信長が得たもの「それは恐怖だ」
「光秀と信長は似ているが、決定的に違うところがある。それは、恐怖を知っているか、否かだ」
日本に恐怖させる存在が見いだせないことから、朝鮮、明国、天竺を征討することに、信長は思い至る。
横死により果たせなかったことを実行したのが、秀吉ということか。 -
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著名作家のアンソロジー『足利の血脈』ですが、副題で、さくら一族の聖戦と付け加えたい。鎌倉公方〜古河公方・堀川公方の興亡と支える忍者の物語。読後としては足利の歴史よりさくら一族の伝奇。面白い企画かと思いますが、個人的には各作品の波が合わず、一人の作家の連作の方が読みやすかったのでは思います。しかし第七話は最終話にふさわしく感動しました。本作は二度目の方が良いかもしれません。
足利義輝弑逆から織田信長謀殺はもっと盛り上げて欲しいところです。しかし敵城に大胆に忍びこめる信長の忍びは、どうして光秀の京洛進入を安々と許したのか?疑問のままです。某歴史の専門家は本能寺の変に即応した秀吉は忍びを信長の -
ネタバレ 購入済み
西軍の要
宇喜多秀家。
謀将の父、直家の息子として生まれ
秀吉の後見を経て、やがて大大名として名を馳せる。
ただし、配下の派閥争いを裁くだけの手腕は無く、御家の切盛りもままならぬままに関ヶ原へと向かう。
豊臣家に対し、忠実に仕えたイメージから
清廉潔白で真っ直ぐな人物という描かれ方をすることが多く、本作でも地元に根付いた民の為に戦う決意を固める…といった優しい部分が描かれている。
ただし、個人的なイメージとしては
爽やかな振る舞いの裏で喧嘩っ早く、他者を下に見る傾向がある人物と思っている。
(立花宗茂とのエピソード等)
それは悪い事ではなく、誇りある武将として己の存在に一切の疑問を -
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ネタバレ妖艶な芸能の徒が安土桃山時代を動かしていく歴史小説。
同時代を描いた大河ドラマ「麒麟がくる」が終わったので読みました。
著者の作品はマイナーな実在人物を取り扱うので勉強になります。
森仙千代(忠政)、簗田河内守に始まり、梅若太夫、瀬田掃部、蒔田淡路守、波多野図書、陶義清、不破万作、井戸宇衛門、名古屋山三郎と盛りだくさんです。
大河ドラマで描かれなかった丹波八上攻めが描かれていてよかったです。
物語として、はじめはTVでは描けないような念友(衆道)の話かと思いましたが、一人の人物が歴史の大きな事件に関与する伝奇ものとも取れました。
しかし、主人公の正体がわかった後の最終章で多様性を守る人の物語 -
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緊急事態宣言の中、令和二年のGWに読んだ歴史小説です。何も活動のできなかったGWでしたので、読書だけが楽しみでした。
この本は有名な本能寺の変を題材にしていますが、7人の武将の立場から見た形でストーリーが展開しています。新しい歴史小説の形で楽しいです、事件現場の空から中継を見ている感じです。
以下は気になったポイントです。
・源頼朝の鎌倉幕府も、足利尊氏の室町幕府も、どちらも憎悪と野心をたぎらせた親族と家臣達が互いに憎しみ合いながら敵と戦っていた。だからこそ彼らは幕府を開けた(p67)
・肩衝(かたつき)とは肩の部分が尖った茶入れで、楢柴は初花肩衝、新田肩衝と並び「天下三肩衝」と称され -
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う~ん、これは評価が難しい。思ってたのと違って面白いという部分と、思ってたのと違ってガッカリという部分が混ざりあって何とも言えない読後感。
織田信長、森乱(蘭丸)、明智光秀、梅若太夫、千宗易(利休)、豊臣秀次、不破万作、豊臣秀吉、徳川家康…様々な武将や武士や芸能者たちがある者に惑わされ心を揺さぶられやがて破滅へ追いやられていく。その者の名は…加賀邦ノ介。
武士の衆道の世界がベースにあるのだが、第一章、第二章では単なる恋情や芸道の上での嫉妬にかられて…というよくある話。主従や立場の違いを超えた『一対一』の関係、『たがいの心と体を共有し、一心同体になること』という、死線を共にする武士ならではの -
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戦国時代のあらゆるifを紡げる木下さん、こんな角度もお持ちなのか。。“通好みの安土桃山エログロ傾奇ファンタジー”というかんじ。三英傑すべてにダメージを与える邦之介、、いやダメージではないのかな。その正体もだれもが知るところの人物で。うーん。こういう仮説を生み出せるってとこがまずスゴイ。
これは映像化は難しいだろうなあ。脳内に描くのですら、邦之介が見ている色を想像するのも、能の躰捌きをイメージするにも、読み手側に器が要求されて、読み手としての力不足を感じてしまった。にしても、有名な鶴の汁の場面とか、光秀の饗応失態は実は。。みたいなのも、今更なかなか手をつけにくい場面に斬新に斬り込んでるよなあ。歌