あらすじ
「立派なお坊さんになるのですよ」
母の願いを受けて、安国寺で修行する幼い千菊丸だが、禅寺は腐敗しきっていた。怠惰、折檻、嫉妬、暴力。ひたすら四書五経を学び、よい漢詩を作らんとすることをよすがとする彼の前に将軍寵臣の赤松越後守が現れ、その威光により、一気に周囲の扱いが変わっていく。しかし、赤松は帝の血をひく千菊丸を利用せんとしていることは明らかだった。
建仁寺で周建と名を改め、詩僧として五山の頂点が見えたのにも拘わらず、檄文を残して五山から飛び出して民衆の中に身を投げる。本当の救いとは、人間とは、無とは何なのか。腐敗しきった禅を憎み、己と同じく禅を究めんとする養叟と出会い、その姿に憧れと反発を同時に抱えながら、修行の道なき道をゆくのだった。己の中に流れる南朝と北朝の血、母の野望、数多の死、飢餓……風狂一休の生そのものが、愚かでひたすら美しい歴史小説の傑作。
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一休さんの人生を描いた大河小説。
読みながら、共に悩み、怒り、苦しみ、溜息をつき、時に涙した。本当に、読む手が止まらなかった。本当に素晴らしい作品で、一気に読んでしまった。表紙というか、カバーも良い。木下昌輝の新たな代表作になったと思う。
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明確に小説ということもあって、前に読んだ栗田氏のものに比べて一休の内面を描いていることで等身大に見れるというか、同じ人間としての一休がどう生きたのかが伝わってきた。後小松帝に捨てられることになった母を救えなかった、寄り添えなかったという後悔が一休の原動力になっているというか。
安国寺次代の奈多丸の話とか、稚児が僧侶とかの男色の相手をさせられたりとか禅僧も含めていかに腐敗していたかといった生々しいところもちゃんと描写されている。室町時代の前期中期に疎い自分にとっては土一揆がそれまでと何が違うのかとか、五山十刹の仕組みとか、大徳寺派がどのように堺で勢力を伸ばしたかも勉強になった。
公案などについても綿密に取材したようで、そこも勉強になった。
養叟も素敵な兄貴分として描かれていて、後の対立はなぜかというのも共感しやすい。有名な漢詩や奇矯な振る舞いの背景にある一休の心理も、ただ理解不能な凄い禅僧なんじゃなくて、わかるように書いてくれている。
山名宗全もある意味純粋過ぎて禅病でぶっ壊れてしまった感があって、こういうキャラだったのかなと個人的には新しい視点。伊勢新九郎のマンガのイメージしかなかったので。
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誰もが知っている一休さんを描いた大河歴史小説。
やっぱり応仁の乱の時代は面白い。
一休サイドの話は禅問答(公案)や悟りについての禅僧としての真面目な話で、哲学的で勉強になりました。
歴史小説としては、ほぼ実在の人物が一休と絡むのが面白くて、ほぼ史実に沿っているのが勉強になりました。
僧として謙翁宗為、華叟宗曇、養叟宗頤については本当に知らなくて、やはり偉いお坊さんは偉いだけのものがあるなと思いました。
赤松持貞も知らない人で、途中退場は唐突感がありましたが史実をうまく脚色された感じでした。
地獄大夫も名前くらいしか知らず、一休との絡みは史実のようで驚きました。
山名宗全は大河や漫画を含む他の作品からの自分のイメージとは異なり、新しいイメージがつきました。
ラストの方で北条早雲(伊勢新九郎)の名前が出てきて、現在一押しの歴史漫画「新九郎、奔る!」と繋がってうれしかったです。
とにかく一休さんのスケールと人間関係が大きくて、大河ドラマにもなりそうな気がしました。
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最初天皇の落し子疑惑出た時に「いやいやさすがに設定盛りすぎやろ!史実との違い確認したるわ!!」とwiki見たらガチの話で「ゑ?すみません」となった。ほかの話もうまく行きすぎてさすがにこれは創作かと思った箇所も調べたら史実通りで。主人公すぎる。
自分なりの筋を確立してそれに突き進む姿は、後でそれが誤りと気づいたとしても全てかっこいい。情熱ある生き方は全てかっこいい。
華叟が亡くなる前〜後のシーンが一番印象的だった。風景描写が美しく私も見逃さないように生きようと思ったし、華叟が亡くなる直前の痛みはさっきの美しさとのギャップもあり少しグロテスクさも感じた。その泥臭さ、執念もあまりにかっこいい。映画「セッション」を見ていたときの熱さと似たものを感じた。
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一休さんの幼少期からの生涯を著わした長編ものであった。沢山の仏教用語が出て来て難解の部分があった。当時の世は南北朝あい荒そう時代で仏教界は苦難だったろう。我が家の宗派は臨済宗なので小生も座禅の経験もある。結跏趺坐とはどんな座り方かはわかるな。
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感想
一休さん。有名だが、意外と何をやった人なのかは詳しく分からない。アニメくらいのイメージ。
始まり方が面白く、興味をひく。
「その男は禅僧にもかかわらず、詩と酒と女をこよなく愛した。破戒に手を染めながらも、命を投げ打ち修行に身を投じた。」
禅問答は詭弁の応酬みたいに見える。。。
悟りを求める僧でさえ、栄誉や承認要求に囚われる。人はどこまで行ってもそうなのだろう。そこに抗う一休がカッコよく見える。
一休は応仁の乱の黎明期を生きた人だったんだ。
あらすじ
禅僧一休の生涯を描く。
6歳の千菊丸が安国寺で修行しているところから始まる。禅が廃れていく中、千菊丸は養叟という禅を追求するものと出会う。
17歳になり、五山の建仁寺で周建という名を与えられるようになっていた。母親が南朝の楠木の出、父親は今上帝であることを赤松から知らされ、ヤケを起こす。
建仁寺を破門になった周建は、在野の西金寺で宋純と名を改めて厳しい修行に取り組む。
その後、華叟宗曇に師事する。そこで一休の道号を得る。
やがて赤松越後州の策略により、一休は政争に巻き込まれていく。赤松が紹介した山名小次郎と禅問答をしていたが、ある日、小次郎が赤松を不義姦通の刑で誅する。
華叟が亡くなり、養叟は大徳寺を継いで、五山から離れる。一休は堺で檀家を募る。養叟と相容れなくなり、一休は堺で禅寺を開き、人気者になる。
土一揆で京が包囲される頃、山名小次郎は劣勢の中、超然としていた。一休は小次郎に宗全の名を授ける。
宗全が南主を担ぎ上げて、反乱を起こそうとしていたところを宗全に殺されそうになりながら、一休が防ぐ。
その後、大徳寺の住持となり、生涯を閉じる。
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前半は、よかった。後半はかなりひっちゃかめっちゃかに感じてしまい、なんというか、読んでてスッキリしない感覚で、もう少しシンプルに楽しみたかったかなと。