あらすじ
『秘色の契り 阿波宝暦明和の変 顛末譚』著者の言葉 木下昌輝
江戸時代、こんなにややこしい殿様は他にいなかったかもしれない。
小藩から25万石の大藩に養子入りし、苛烈な藩政改革に取り組んだ。
誰にも負けぬ弁舌と知識、厳しい倹約令と公共投資の両立、当時の身分制度を破壊する新法、そして、どこにもない市を生み出そうとしたが……
蜂須賀重喜という男が愚者なのか賢者なのか、勝者なのか敗者なのか。
皆様の目で確かめてください。
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三十万両もの巨額の借財を抱える徳島藩。藩政改革を担ったのは、型破りな人物だった。
気鋭の作家・木下昌輝が、現代にも通じる政治改革と、経済立て直しを目指す藩主と家臣団の奮闘を描く。
阿波には特産の藍があった。
江戸時代中期の宝歴3年(1753年)から、明和6年(1769年)に起こった徳島県蜂須賀藩のお家騒動の真相とは…。
徳島藩蜂須賀家の物頭、柏木忠兵衛は新藩主候補・佐竹岩五郎との面会のため、江戸に急いだ。藩の財政はひっ迫している。
新たなまとめ役が必要だった。しかし――。
「政(まつりごと)には興味なし」
新藩主となった岩五郎改め、第十第藩主・蜂須賀重喜はそう言い放つ!
家老たちの専横に抗して、藩主の直仕置(直政治)による藩政改革をめざす忠兵衛ら中堅家臣団。
対立が激化するなか、新藩主が打ち出した驚きの改革案とは!?
そして、徳島藩を狙う大がかりな陰謀とは……。
「殿と一緒にやりたいのです!」
アクション&サスペンス満載、著者渾身の痛快歴史エンタテイメント長編!
徳島藩を二分する家臣団の対立が勃発する。
新藩主として第十代藩主・蜂須賀重喜を迎え、気鋭の中老たちは、藩政改革と藍玉の流通を取り戻そうと闘い始めた…。
ところが、新藩主はあまりにも斬新な改革案を打ち出した!
特産品の「藍」は借財に苦しむ藩を救うのか?
「改革で大切なのは、人の心を変えること!」
感情タグBEST3
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これほど面白いとは思ってなかったが直木賞候補作だったと知り納得した。徳島藩の改革に奮闘する若い武士たちのそれぞれの思いや奮闘ぶりに惹きつけられた。他家から迎えた藩主の頭の良さにも敬服した。
長い年月を要する努力がどう実を結んだのか、史実に基づく小説らしいからいつか調べてみよう。
Posted by ブクログ
2025.2.19発売の雑誌『CU』の書評コラムで紹介させていただいた1冊。直木賞候補にも選ばれた歴史エンターテインメント!ばちくそ面白かった!!
舞台は江戸時代の阿波藩(今の徳島県+淡路島)。
改革を進めたい殿様と、既得権益を守りたい老中たち。混乱する徳島から漁夫の利を得ようとする大坂の商人たち。今の政治ドラマにも共通するところがあり、昔からこんなんやってたんやな~と思わずにいられなかった。
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徳島藩の藩主となった蜂須賀重喜は明君か暗君なのか。その政治手腕はいかに評価されるのか。歴史が評価するのだろうが、政治を動かしている当時の当事者は何が正解なのか模索しながら政を進める。政治改革が必要なのはみんが分かっているが、何をやろうとしても必ず反対する人も出てくるのは現代と変わらない。100年先を考えて重喜と柏木忠兵衛は藍で染めた手拭いで誓いを結ぶ。政敵との謀略が飛び交うところ、やり遂げる姿は爽快だ。時代小説だが現代小説のようにも読める。それだけ人間のやることの本質は変わってないのだなあと改めて思った。
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これは江戸時代物における池井戸潤作品かと思うような大逆転のストーリー。何度も鳥肌がたちました。
徳島藩というあまり馴染みのない場所の江戸中期を舞台とした藩政の大改革を志す物語。
タイトルの秘色という言葉、全くピンと来ませんでしたが熱い誓いはここから始まります。
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江戸中期、末期養子として阿波徳島藩主となった蜂須賀重喜が進める藩内改革。
旧態依然とした藩政により借財30万両の財政危機にあった徳島藩で、適材適所を狙った約席役高の制、支出を抑える倹約令、大阪商人の良いようにされていた特産品の藍の藩専売化による藩収の増加など、打つ手は正しく思えるが、作中で忠兵衛らが「百年早い」と言うように性急過ぎるきらいはあった。
歴史ものだが、あくどい大阪商人金蔵、怪しい平島公方(実在)などを配し、5家老の失脚などの史実も絡めて、権謀術数渦巻くエンタテインメントとなっている。
重喜を頭が切れすぎ人心に疎い人物としていることで、物語は成立している。
重喜の改革は、その後の阿波国文庫、藍大市などで実を結び、全国の藍商人が集まる徳島は大いに賑わったという。
重喜は最後に押込となるが、大分以前に読んだ笠谷和比古の「主君「押込」の構造」の第一章がまさにこの阿波蜂須賀家の君臣抗争となっていた。再読せねば。
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これも前回(24年下半期)の直木賞候補作。これで読むの受賞作入れて4冊目だが、どの話もさすがにしっかりしてる。江戸中期の阿波蜂須賀藩の話だが、全く知らなかったので興味深かったし、重喜と忠兵衛のタッグは面白かった。でも、ちょっと文章が読み辛かったな。木下さんの作品は結構出てるようだし、他のも読んでみよう
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江戸中期の阿波藩改革歴史小説。
10代藩主蜂須賀重喜が藍産業にて藩政改革を使用とする物語で、資料が少なすぎるようで物語としては作りやすくもあり作り難くもありそうです。
その点はさすが著者に抜かりはありません。
虚実ないまぜの登場人物が悪と正義に対峙して奮闘するのは、時代劇としても経済小説としても政治小説としても面白くできていると思います。
史実に則っているため、勧善懲悪でハッピーエンドとはならないのですが、後日譚の余韻も含めて、良かったと思える小説でした。
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徳島藩の末期養子となった蜂須賀重喜と家来の忠兵永衛をはじめとする若手が、藩政改革と藍産業にまつわる制度改革を進めようとするのだが…。
序盤から登場人物が殺害されたり死罪になったり、かなら殺伐とした話かと読み進めたが、中盤からは愚昧かと見えた重喜が才気を見せるのが爽快になる。
分かりやすく強い悪役もあり、四面楚歌な状況をどの様に解決するのか、等など。
面白く読まさせてもらいました。
Posted by ブクログ
歴史小説は苦手なのですが、こちらの小説は前のめりで読みました。
登場人物の描き方がストレートだからかもしれません。
正しい人間は最後まで正しく。
悪い人間は最後まで悪く。
人の立場があっちに行ったり、こっちに行ったり、と変わらないからかもしれません。
それにしても、旧体制を新体制に変えるのは、本当に難しいですね。
旧体制で得をしていた人間がそれなりの地位についている事が多いので、そう簡単には変わらないんですよね。
そんな旧体制に立ち向かうためには、カリスマ性のあるリーダーとその部下たちが一丸となる必要があります。
私は、この本を読んで、リーダーに必要な要素を学びました。
・人を信じる忍耐力
・人を巻き込む力
・人を動かすカリスマ性
それらに「運」がプラスされた時、「一丸」が生まれ、実力以上の力が出せる組織が生まれるのでは?と感じました。
この小説に出てくる重善ら新組織は、かなりいい線いってるんですけどね。
重善はいかんせん短期なもので。
自分が実行したいと思った施策をすぐに導入しようとするんだな。
合理的に正しいものでも、人の心とはそう単純なものではないのですよね。
人の心を動かしてこそ、導入した施策が活きる。
重善もそのことは学んだと思うのですが、最後の最後に我が出てしまいましたね。
ラストも非常に現実味のある感じで、面白く読ませていただきました。
歴史ものが苦手な方でも、サラリーマン小説のような感じで読めるストーリーとなっております。爽快感がある!
明日も頑張ろう!
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江戸中期の徳島を舞台に、巨額の借財を抱えた藩の財政改革に臨む藩主と取り巻き達をめぐる物語。
本人が望んだわけでもないのに半ば強引に藩主に据えられた男の、周囲に対しての空気の読まなさっぷりが面白く、破れかぶれじゃないんだろうけど、軋轢をも恐れぬやり方で改革を進めていく破天荒な姿が物語に勢いを与えていると思う。
徳島藩の状況は利害関係者にがんじがらめにされて何もできない現代の政治状況にも通じており、このあたりはこれまでの著者の作品の、良く言えば豪快で、悪く言えば荒っぽい作風とは一味違った印象を受けた。
もちろん著者の得意技である残酷な描写も、元盗賊である大坂の悪徳商人にまつわる陰謀部分で存分に描かれている。もっとも太平の世と言われた時代に、ここまであからさまな極悪人をあえて創作する必要があったのかというと、バランス的にちょっと微妙な気もするんだけど、きっとそこは著者のエンタメサービス精神が存分に発揮された結果なんだろうなと思う。
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第172回直木賞候補。
借財に悩む阿波の国で末期養子で藩主となった蜂須賀重喜と彼を支える若い(身分の低い)藩士たちの奮闘を描いた時代小説です。
藩政を憂う主人公たちは、既得権益を守ろうとする家老たちと対立し、新たな「名君」を求めて重喜を藩主として迎え入れます。
藩内の反発を受けながら、少しずつ改革を進めてゆく様子や、藩内外の反対勢力に一つずつ打ち勝ってゆく過程は見ごたえがありますし、韓国ドラマを見ているようなワクワク感もあります。
お互いに策をぶつけ合う頭脳戦や経済をめぐる対立は「半沢直樹」シリーズを彷彿とさせるでしょうか。
「誰の味方か」という旧来の武士らしい考え方から離れて、藩主と家臣の対立の間で自分の歩む道を迷う忠兵衛の姿と彼の決断は、何が正しいのかを自分なりに考え、時間をかけてもそれをやり遂げようと努力することの大切さを改めて感じさせてくれるものだと思います。
登場人物全員が歓喜するハッピーエンドとはなりませんでしたが、読後感の清々しい小説でした。
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直木賞候補作。
徳島藩の藩主と側近たちが藩政を立て直すため戦う熱い物語。
展開がはやいので読みやすい。
側近たちの熱量と行動にはいまいちピンと来ないところもあった。私が歴史小説をあまり読んでこなかったからかもしれない。また、登場人物が多い分、それぞれの背景についてあまり言及されていないのも影響していると思う。
ただ、藩主、蜂須賀重喜のキャラクターがとても魅力的だったことを加味して☆4。
痺れました。素敵。
徳島の藍染を体験しに行こうと思う。
読んで良かった。
Posted by ブクログ
史実に基づいた時代小説。30万両の借金を抱えた徳島藩。頑迷な5人の家老達と中堅若手4名の若手藩士が藩の運営で対立する。4名の固い約束が「秘色の契り」となり、これが他藩より養子に入った殿様にまで繋がる。この殿様が問題児で賢いのか馬鹿なのか、味方なのか敵なのかハッキリしない。やっと若手と動き始めたら、皆んなが反対する策を唐突に推し進める。
強引な計略で5人の家老を没落させて、若手を家老にする。ここまでは良いのだが、突然、謎の集団が現れてきたり、また反対された策を推し進めようとする。
最後は信頼で結ばれた4人にもヒビが入る。改革が実を結ぶのは100年後とか。途中からスッキリしない展開に気が重くなってくる。史実とは言え、もっと明るい結末は無かったのだろうか?
Posted by ブクログ
徳島藩の新藩主になった蜂須賀重喜を支え、特産品の藍を守り抜こうとする忠兵衛ら改革派vs旧態依然に甘んじる家老らとの対立。『改革に大切なのは、人の心よ』重喜が説く一言が重く響く。第172回直木賞候補作。