呉座勇一のレビュー一覧
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本能寺の変をはじめとする日本中世史における数々の陰謀・謀略(があったのではないかとされる事件)について、最新の研究成果も踏まえた先行研究を抑えつつ、歴史学の手法に則って客観的・実証的に分析し、陰謀論の誤りをただしている。
「足利尊氏は陰謀家か」「日野富子は悪女か」「本能寺の変に黒幕はいたか」といった陰謀論の検証を軸に、日本中世史(政治史)の様々な最新学説を瞥見でき、知的な面白さがあった。20年ばかり前になる高校時代の日本史の教科書の記述も、だいぶ古びてきているんだなということを感じた。
本書は、陰謀論に引っかからないための耐性を身につけるのに有意義な本であるといえる。当時の人々も未来が完全に見 -
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陰謀論とは、「世の中(又は自分)がこんなにダメなのは、どこかで誰かが邪魔をしていて、それを取り除けばすべてうまくいく」という考え方だと内田樹の本から学んだ。最近のマスク不足にしても、需要超過(供給不足)が原因なのに、誰かが買い占めて高値で売っているのが理由だから転売禁止にすればいい、という考え方も一つの陰謀論だと思う。
本書では、歴史の陰謀論について「誰かがあらかじめ仕組んだ筋書きどおりに歴史が進行した」という取りあえずの枠組みを提起し、保元の乱から関ヶ原の戦いまで、様々な大事件についての陰謀論について、それが世の中に受けていても、事実はそんな単純なものではないということが論証されている。その -
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日本史好きな私にとって
第一章~第七章の内容も非常に興味深い内容でしたが,
終章の『陰謀論はなぜ人気があるのか?』
が一番勉強になりました。
陰謀論の特徴を
①因果関係の単純明快すぎる説明
②論理の飛躍
③結果から逆行して結論を引き出す
という3つに分類した上で、
何故陰謀説が人々に受け入れられるのか
という問題に対して納得のいく回答が得られ,
満足しました。
「フェイクニュース」「ポスト・トゥルース」
といった言葉に代表されるように,
誤った情報が蔓延る現代において,
ここで記載された情報を
自らのリテラシーとして吸収したいと思いました。 -
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『応仁の乱』で有名な呉座勇一による一冊。
保元・平治の乱から関ヶ原の戦いまで、主に武家が台頭して以降の中世史について。
いわゆる陰謀論の大半を否定してるので面白みはない。
ただ、以下の2点は陰謀論に与しやすい自分にとっても勉強になった。
・加害者(攻撃側)と被害者(防御側)の立場が実は逆である可能性
・最終的な勝者が全てを予想して状況をコントロールしてると考えるのが陰謀論の特徴
つまり、陰謀論は結果から逆算してるから、後付けで何でも言えてしまう。
陰謀論は単純明快だし、何よりロマンがあって面白いのですが、安易に信じないように気をつけねばと思った。
P.S.疑似科学との類似性というのも -
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陰謀論で溢れかえる巷のトンデモ歴史観を、歴史学の視点からバッサバッサと痛快に斬って捨てる歴史マニア向けの心得本です。
以前より私も歴史のトンデモ話には眉をひそめていた一人ですが、何で歴史学からの批判が無いのかなあと思っていたら、やはりアホらしくてまともに取り合ってられないということでしたね。
ですがたとえアホらしくても、学界と一般大衆をつなぐ共有観念としてこのような取り組みは必要だと思っていたのですが、氏のようにある程度名が通った学者が徹底的に斬って捨ててくれたことで、とても良かったと思いました。
日本中世の話がメインテーマなのでいまひとつ一般の人にはわからないトンデモ歴史もあったと思います -
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応仁の乱で一躍有名になった著者の前著。
最後に「ハト派こそがリアリズムに徹するべきである。そのために歴史学が貢献できることは、まだまだあると思っている。」また、あとがきに「私は軍事学の専門家ではないし、ミリオタでもない。にもかかわらず中世の戦争を取り上げようと思ったのは、この分野の研究が一番遅れているからだ。」と記載のあるように、鎌倉中期から室町期を通じての戦争(合戦)に向かう武士の姿を丁寧に描き出しつつ、戦争の姿、平和の姿を見いだそうとしている。教科書では単に年表的に過ごされ、歴史小説では武勇伝的に描かれる武士の姿が、単にそれだけではない様子で丁寧に論じられるのが好ましい。また、時折顔を出す -
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平安時代末期の保元の乱から関ヶ原に至るまでの、
有名な乱や事件をたどりながら、陰謀論や諸説の誤りを論破する。
第一章 貴族の陰謀に武力が加わり中世が生まれた
第二章 陰謀を軸に『平家物語』を読みなおす
第三章 鎌倉幕府の歴史は陰謀の連続だった
第四章 足利尊氏は陰謀家か
第五章 日野富子は悪女か
第六章 本能寺の変に黒幕はいたか
第七章 徳川家康は石田三成を嵌めたのか
終章 陰謀論はなぜ人気があるのか?
参考文献有り。重要なことは太字で強調。
世に様々な“陰謀論”が溢れていますが、それらの誤りを指摘し、
論破するという内容です。これがなかなか痛快(^^♪
が、それ以上に、そもそもの乱や事件の -
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鎌倉幕府末期から南北朝の争いを経て応仁の乱までの日本中世、戦乱は乱発し、武士たちにとって「死」は身近な時代だった。だから、その時代の日本人は今とは違って、喜び勇んで戦乱に身を投じていたと考えるかもしれない。
しかし、どの時代だって、人間は死を恐れるし、平和に暮らしたいはず。そう考えて日本中世史をながめてみれば、違う世界、人間が見える。
南北朝に分裂した天皇家と足利将軍が争い合う時代、武士たちは裏切りを繰り返し、複雑で混沌としていた。著者はこうした離合集散する武士たちのマインドについて、死を避け、富を得るために戦闘参加していたとシンプルに定義する。忠義、正義なんて言葉が登場する前の時代であれ -
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「応仁の乱」よりずっと読みやすく分かりやすい。ぼくのような素人が応仁の乱の上っ面だけを知りたいのなら、本書最終章の「山名宗全と戦後レジーム」以降だけで充分。とは言え、そこに至る過程を知っておく方が遙かに理解は深まる。
はじめに――「戦争の時代」としての日本中世
第一章 蒙古襲来と鎌倉武士
「戦争」を知らない鎌倉武士/蒙古襲来は避けられた戦争?/鎌倉幕府の“平和ボケ”/一騎打ちは本当にあったのか/鎌倉武士の装備/武士団の構成/日本軍の弱点/「モンゴル軍優勢」という虚構/「神風」は吹いたか/モンゴル軍撤退の真因/戦後日本の「平和主義」/遺言状を書いて出陣/幕府権力の変質/「戦時体制」と鎮西御家 -
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荘園制が終わりの始まりを迎えた平安後期から戦国大名が統合的な統治を実現する16世紀にかけて、天皇家・公家の統治は空洞化し、権力と経済力を蓄えてきた武家により解体されていく。このプロセスがあったからこそ日本版絶対王政というべき豊臣政権・徳川政権が実現したのだし、その前に「戦争の中世」があったのは欧州も日本も同じ。本書はその戦争の中世の中後期、13世紀末の蒙古襲来から15世紀の応仁の乱前までを考察し、武士や民衆の下剋上が線形に美しく進んでいく、という唯物史観に警鐘を鳴らす本。ただ、線形ではないが、トータルで見れば下剋上が進むことで新秩序の実現に近づいていくことは間違いないだろう。
室町幕府の失敗 -
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『陰謀』、そう、モワモワとして空気を包むような縮れ具合で、最近は男性でもツルツルに剃ると言われているそれではなく、ぶら下がった2個で1セットの袋の部分ではなく、『陰謀』です。
陰謀好きは多いですよね。私も好きです。なんか夢がありますよね。そうであったら面白いとか。弊社の売り上げいまいち上がらないのはユダヤの陰謀とか、まさにそれです。
そんな奴らに喝を入れたのがこの一冊。
結果から逆算した陰謀論。
最終的な勝者が全てを予測して状況をコントロールしていたと考える陰謀論者の特徴で、本能寺の変は豊臣秀吉の陰謀だとか、徳川家康が黒幕とか、まあ、勝者を基準にしたら何でも言えますわな、陰謀か黒幕がそうではな