呉座勇一のレビュー一覧

  • 応仁の乱 戦国時代を生んだ大乱

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    応仁の乱の全貌が結果的に乱の発生につながった紛争にまでさかのぼり、そこから丁寧に時系列に追って書かれている。応仁の乱の原因は単純な対立構造によるものではなく、対立の背景に加え偶発事象や意図の不一致などが重なったことが分かり、応仁の乱の全貌がある程度整理された。現実世界を単純化してとらえようとする風潮もあるが、この本はそうした風潮を否定し、複雑なままとらえる必要性を伝えるものであろう。

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    2020年11月23日
  • 教養としての歴史問題

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    歴史修正主義について単純に否定するのではなく、社会から求められる意味合い、拡大させた学者サイドの責任など冷静な議論がされている好著。娘さんにも読んで是非とも読んでいただきたい。

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    2020年08月23日
  • 戦乱と民衆

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    面白く興味深くバラエティ豊か! 民衆はつねにか弱いのだろうか? 戦乱の一方的な犠牲者だったのだろうか? 名だたる戦乱の遠景として扱われてきた、名も無き当事者としての「民衆」の別の姿を、時代ごとに語り明かしていく。応仁の乱の前後に頻発した土一揆が、乱の期間中にぱったりと無くなっていたのは何故なのか。明治時代に入った時点で、京都市街の六割は焼失した状態だった。この視点を持って、もう一度同時代のあれこれを読み直したい、と考えさせてくれる好著。

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    2019年10月29日
  • 陰謀の日本中世史

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    「応仁の乱」の著者による、中世史の大きな戦乱を、最新の学説を基に解説をした書。
    例えば「本能寺の変」は、昔から様々な黒幕が挙げられてきたが、現在では信長の粛清を恐れた光秀が、軍事的空白をついた単独説が有力なのだとか(動機は長曾我部元親の勢力伸長による四国政策の変更)
    文中で作者も書いているが、陰謀は関係者が多ければ多いほど情報漏洩の危険性が増す。勝負というものは双方が多くの過ちを犯し、より過ちが少ない方が勝利すのであるというのは、戦略論の基礎ともいえるのではないだろうか。
    最終章で、前章までを引いて「陰謀論」が人々に受けいられる理由を述べている。「陰謀論」「オカルト」のみでなく、「ヘイトクライ

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    2019年09月05日
  • 陰謀の日本中世史

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    歴史書を読む時、人は得てして偉人達の行動や決断に「意味」を持たせる。

    あらゆる時代の話に言えることだが、人間の取る行動に全て合理的な説明や解釈で成り立つならば、少なくとも我が国は戦ったら負けるはずのアメリカと戦争などやっていない。

    その戦争にしても、アメリカの陰謀だの、ソ連の陰謀だのと理由を付ける。

    無論、陰謀は確かに存在するが、全てがそうではなく、それに対してかならず理由をつけてしまう。

    独断と憶測と共に「人間は合理的な生き物」という判断も、歴史を学ぶ上ではやってはいけないことだと思うのだ。

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    2019年08月22日
  • 一揆の原理

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    【相手にふりかかった問題を自分の問題として考え、親身になって、その解決に努力する。実は、これこそが一揆という人間関係の本質である】(文中より引用)

    権力層への抵抗という意味も込めて使われることの多い「一揆」。時代ごとに異なるその言葉が意味するところを探るとともに、一揆が抱える現代的な意義についても考察した作品です。著者は、『応仁の乱 戦国時代を生んだ大乱』がベストセラーとなった呉座勇一。

    堅苦しい説明が続くわけではなく、時にユーモアや今日の出来事とも絡めながら筆が運ばれているため、中世のことを主に取り上げていながらまったく古さを感じさせない一冊。一揆に関する解説という魅力はもちろんですが、

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    2019年08月19日
  • 陰謀の日本中世史

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    何となく思っていた日本史に対する思い込みを丁寧に正してくれる本。驚きや発見があり、非常に面白く読めました。

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    2019年03月27日
  • 一揆の原理

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    漫画の「カムイ伝」やクロサワ映画「七人の侍」などの影響で、一揆とは農民が一致団結し、竹槍を手に悪代官らに生死をかけて立ち向かう強訴活動というのが世間一般のイメージ。が、古文書を調べていくと、一揆とは常に大掛かりなものではなく、竹槍を使った形跡もない。農民だって死は怖いし、標的にされた代官や大名も年貢を納めてくれる農民からのストライキは大ダメージだ。お互いに適当なところで手打ちにしたいというのが本音。

    社会保険や福利厚生、ブラック業務を訴える労働基準監督署などのない時代、農民や国人がアコギな取り立てを公にし、交渉のテーブルの役割として一揆は行われた、というのが著者の主張。世直しとか、革命、直接

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    2019年01月23日
  • 陰謀の日本中世史

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    ネタバレ

    日本史研究の最新の地検を紹介しつつ、様々な陰謀論を否定し、最後は現代社会における現在進行形の陰謀論についても触れている。

    確かに、「結果から逆算」して構築した陰謀論の方が「因果関係が単純明快」になるよなw
    現実がそのように「単純でわかりやすい」筈が無いって知ってるはずなのにさ。

    あと、「日野富子悪女論」を誰が何のために持ち出し、どうして定着“しちゃった”のかについての考察はとても興味深かった。このあたりは「蒙古襲来と神風 中世の対外戦争の真実」や「興亡の世界史 アレクサンドロスの征服と神話」「秀吉の虚像と実像」にも通じるモノがあった。

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    2018年10月14日
  • 応仁の乱 戦国時代を生んだ大乱

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    ネタバレ

    名前だけは知ってても、で、何がどうなったのか全くわからないまま放置してた応仁の乱。新書一冊なのでこれでわかりやす…
    ダメだ。ややこしいというのはよくわかったが、きちんとノートをとりながら読み直します。(特に、冒頭で興福寺云々から始まって面食らった。勿論、その先を読み続けてなぜ興福寺から始めなければならないのかわかりましたが)

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    2018年10月14日
  • 戦争の日本中世史―「下剋上」は本当にあったのか―

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    応仁の乱の本の中で紹介されてたので買ってみたけどこっちの方がおもしろい。

    読んでる途中にん?と思ったことがあとがきですべて弁明されていたのですごいなあと思った。現代政治への示唆も鼻につかない程度だったし、大変おもしろく読めました。

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    2017年06月15日
  • 一揆の原理

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    “一揆”というモノが「関わる人達が互いに対等で、一定程度の匿名性も在って、或る種のパフォーマンスも含めた誓約のセレモニーを経る場合も在る契約のような関係で集まり」であったという辺りに、筆者は色々な国々で政権交代を促した市民運動や、何かを訴えようと発生するデモとの共通項や相違点を視ている…
    中世から江戸時代位までの“一揆”と呼ばれていた営為に携わった人達の様子が、「より色鮮やかに、より活き活きと」という具合に詳細に解説されていると同時に、「先学の研究の積み重ね」を深く広く意識しながら“一揆”に纏わる新しい説や自説をとき、「そこから現代の人々が何を見出して、何を想うのか、そしてどうするか」と「現代

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    2017年04月09日
  • 一揆の原理

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    徳政一揆は、土倉・酒屋といった京都の金融業者(というより高利貸し)を襲撃している。借用証書を強引に奪いかえすという行為も散見される。このため「古い研究」では、「悪徳高利貸しに苦しめられた民衆の怒りが爆発し、徳政一揆を起こした」と考えられてきた。論文調で書くと、「貨幣経済の農村への浸透を契機とした都市高利貸資本の農村侵食」ということになる。なんのことやら意味がわからない読者も多いと思うが、このような分かったような分からないような説明でごまかしてきたのが、かつての戦後歴史学であった。p103
    この記述にガツンとやられた。受験勉強以来長らく「貨幣経済の農村への浸透を契機とした都市高利貸資本の農村侵食

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    2016年01月18日
  • 戦争の日本中世史―「下剋上」は本当にあったのか―

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    中世史と言うと教科書で(大学受験論述で)紋切り型のように「貨幣の流通」「農民の成長」「生産力の向上」「インフラの発達」といったワードで多くのことが説明され易い。無論それらも大事なのであるが、もっと時代に即した事情があるのではないか。そうした観点から書かれたのが本著である。
    といっても、新資料や奇想天外な新説でアッと言わせるというようなものではない。教科書の記述にもとになるような資料から、どのように推論できるか、その幅を教えてくれる。
    歴史家はどのように資料を読んで行くのか、どのように歴史の流れを組み立てていくのか、といった点にについて目から鱗となる良著。

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    2015年09月02日
  • 戦争の日本中世史―「下剋上」は本当にあったのか―

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    室町時代の争いを軸に、現代の戦争観、平和観へ繋げている。階級闘争史観的な見方を排除し、提示された本書は自分が「お勉強」で習ってきた歴史をひっくり返してくれました。読み進めるうちに不思議な既視感を覚えるのは、現在の世界情勢と似通った環境が読み取れるから?それが例え、意図されたものであったとしてもね。

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    2015年08月31日
  • 戦争の日本中世史―「下剋上」は本当にあったのか―

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    Lv【初心者】

    初心者にも歴史研究書読み込んでいる層にも面白い!
    日本史自体の研究史照らし合わせつつ、実態を探る。

    やはり自分でもこのカテゴライズは惜しいのだけど、「室町人の精神」「破産者たちの中世」「大飢饉、室町社会を襲う!」などこの時代の本と合わせて読むと面白味が倍増する。

    「そこにシビれる憧れるゥッ」だけじゃない面白さ

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    2014年03月05日
  • 日本史 敗者の条件

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    最新の研究で、これまで一般的に史実と言われていた事実と異なる説が主張されていることを知ることができ、興味深く読めました。
    同じ人物でも、様々に評価が分かれるところが、歴史の面白さの一つだと思います。

    山本五十六の章は、仮にどの戦略をとったとしても、国力の差からは、最終的には敗戦は免れなかったであろうと思われ、読んでいて辛いものがありました。
    ただ、敗戦だったとしても、より犠牲の少ない結果を選択できたかもしれないことを考えると、太平洋戦争の敗戦の分析は、目を背けずに知っておくべきと改めて思いました。

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    2025年11月10日
  • 戦国武将、虚像と実像

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    戦国武将について歴史学者の呉座勇一が書いた一冊。

    これまで定説とされていたものの、実は戦後数十年の小説で確立されたものが多いということがよくわかった。

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    2025年10月25日
  • 日本史 敗者の条件

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    カリスマリーダーの負の側面。

    源義経、西郷隆盛、山本五十六、明智光秀、石田三成、田沼意次、後鳥羽上皇、織田信長

    近年の日本史の解釈の違いには驚かされる。関ヶ原の戦いだって陸軍参謀本部や司馬遼太郎の世界とは全く違う真実がある。
    新しい解釈から日本史のヒーローを見ることでまた違ったセカイが見えてくる歴史の面白さよ。

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    2025年10月08日
  • 日本史 敗者の条件

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    この本の登場人物は全員歴史に名を馳せた勝者であり、また敗者でもある。共通して言えることは勝者に至るプロセスで得た経験からくる知見を絶対視しすぎたことといえる。勝者になるまでのプロセスとなってからのプロセスは別のものが要求される。
    立場が変わるたびにまた読んで自分に言い聞かせたい。

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    2025年09月24日