氷室冴子のレビュー一覧
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大学生の脆さと強さを強く感じる作品だった。
前作の海がきこえるの続編である本作では、大学生として東京の地で慣れない生活を送る拓と彼を取り巻く多くの人々との関わり合いによる物語だった。
自分を守るために虚勢を張る2人の女性を中心に、それに振り回される2人の男子大学生という構図が目立っていたと思った。大学の先輩である田坂さんという境遇は違えど、女性に振り回される同士としてのキャラクターがいることで、拓を中心に巻き起こる事件にひとつ温かみを持ちながら読み進めることができた。
大学時代に経験する虚無感と情熱がよく表現されていて、ワクワクする作品だった! -
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余命わずかな母・御影に安らかな死を迎えさせようと、真秀は真澄と共に母を連れて、ついに佐保を訪れる。それは次期首長である佐保彦が認めたことではあったが、予言された「滅びの子」が現われたことに、佐保の人々は畏れおののいて……?
そんななか、佐保彦の妹・佐保姫だけは、真秀たち母子にいたわりの心を寄せ、真秀たちが滞在する春日の狩屋を望む地へ、兄に願い幾たびも訪れていた。
瓜二つの容姿を持つ、佐保姫と真秀。
真秀は、佐保彦が己を助けてくれたのは、自分を助けたかったのではなく、妹に似ていたからだろうと、あえて佐保彦を怒らせる激しい言葉を放ってしまう。こみあげてくる思いがなんなのか、真秀自身にもわからないままに。
そんな時、伊久米の大王が、妻問い先の山背・荏名津で中毒(どくあたり)するという事件が起こり、佐保彦は、若首長として難しい決断を迫られることになってしまうのだが……!?
さらには混乱のなか佐保姫が何者かに攫われ、佐保から忽然と姿を消した。
次々と襲う禍事は、佐保を陥れようとする何者かの企みなのか?
佐保の命運は、若首長となる佐保彦に託されて……。
オレンジ文庫の長すぎると思う紹介文ですが、このくらいの紹介では全く何の紹介にもならないくらい混線してきました。
毎巻最初のページに登場人物が6名ほど紹介されていて、少しづつ変わったりしているんですけれど、この巻は佐保へ各一族の長が集まったり
真秀と 佐保姫がそっくりなので間違われたりと、最終章に入り コバルト文庫とは思えない展開がますますと続きます。
これは 最後まで読まないと この大和の社会の落とし所が予測できません。
作者後書でも 作者といえども 関係性がわからなくなる時があると。
ここまでで 掲載3年のようです。ご自身の予定よりも かなりのスローペースの展開と人間関係の入り込み。
今、書かれているわけではないのに 頑張ってと応援したくなります。
新装版の後書は 三宅香帆さん。
三宅さんも 氷室作品の強くあろうとする少女達の魅力の強力な語り部なのです。 -
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真澄に続き、真秀までもが強大な霊力に目覚めてしまった…!
それを知った美知主は、真秀たちを淡海から出すまいと配下に命令するとともに、佐保の一族を息長の手中に取り込むべく、佐保彦にある「交渉」を持ち掛ける。
脅しにも似たその言葉に佐保彦は何と答えるべきが逡巡し…
そして真秀は、真澄、御影を連れて、淡海を旅立つ覚悟を決めて…!
一方、大和国中では、伊久米の大王に嫁いだ美知主の大姫・氷葉洲姫が、大王の子を身籠もりつつ、悶々とした日々を過ごしていた。その煩悶の訳は、美しい異母妹・歌凝姫。淡海から突然やってきた妹が、あるいは他の美しい女たちが、夫である大王の心をとらえるのではないかと危惧した氷葉州姫は、あることを企む。己の言葉が、大和国内に嵐を呼ぶことを知らぬままに――。
オレンジ文庫紹介文
この巻は 主人公真秀の母親の親の代からの占い、その因縁、関係する王等、
なかなか核心に触れてきて、これまでに展開にまとまりが見えてきました。
今巻の氷室さんのあとがきで ようやく納得したことが何点かあり、この大作にかなりの労力と熱意をかけていたことがわかります。
時代設定は 謎の4世紀、300年代。
この作品を書かれる10年ほど前から資料を収集し、仮説を立て人物を創作し和爾氏の日子坐の系図まで作っていたらしい。
1994年ですから30年ほど前 ほとんど手作業でしたでしょう。その中で 執筆中にも新しい史実の発見に右往左往する様子。
そして 私が不思議に思っていた 古代転生ファンタジーという副題。最初の構想から外れたんですね。
解説は前田珠子さん。かなりの氷室ファンのようでした。
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滅びの子である真秀を憎んでいたはずの佐保彦。
だが彼は、真秀の命を救うため、淡海を後にしようと決断していた。同じ頃、美知主の捜索により、真秀をさらわせた人物が判明。真秀は無事に救出され、美しい歌凝姫への妄執から、真秀の誘拐を企てた穴太の邑長・忍人は惨殺された。
その頃、佐保から野洲へ、早馬が訪れていた。
現われたのは、佐保の長老・穂波。霊力を失っていたはずの大闇見戸売が未来を予言し、その事実を確かめるために淡海へ来たという。さらに、佐保彦の未来について、本人にも伏せられていたある「占」があったという事実を穂波から告げられ、兄夏や速穂児らは色めき立つが……。
オレンジ文庫紹介文
この巻は、現実と霊力の表現が半分づつ。
登場人物たちが 血縁を含め混線しているので
当時どのくらい 説明があったかわからないけど
すっきり把握するには しっかり読まないといけないですね。
最後の方に 当時のファンによる佐保(の地の)メンズ春夏コレクションのページがあって、当然ながら豪族メンズは皆イケメンだったのです。
なかなか 政略結婚に恋愛が絡むと昔も今も大変の様子です。
解説は 平戸萌さんでした。 -
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佐保彦の腹心・燿目が、真澄の霊力をその身に受け、無惨に焼け死んだ。
真秀は燿目を死なせたのは自分だと我が身を責めて苦しんでいた。
そんな彼女に近づいてきたのは、新たな佐保彦の伴人・月眉児。
彼女のたおやかな容姿と優しい言葉に真秀は慰められ、その幻影を生む力が燿目と再会させてくれたことで、月眉児に心を許そうとする。だが、それは月眉児の企みだった。
策謀を見破った波美王の手で、真秀はその場から助け出される。だが、波美王は突然真秀を息長から連れ去ってしまう……何者かが、波美の一族に真秀の誘拐を依頼していたのだ。
真秀が誘拐されたことを知った美知主らは、水面下で新たな駆け引きを始める。
一方、淡海に留まる佐保彦のもとには、真秀を誘拐した犯人から、真秀の命をかけたある伝言が届けられて――!?
オレンジ文庫小説紹介文
5巻に入り 7章となりますが真秀の章が続きます。この巻のあとがきで 「古事記 中巻 佐保彦の叛乱」が元ネタとようやく記載があります。
少女向け雑誌「コバルト」に連載されていた作品ですが、登場人物は魅力的な若者たちが並ぶ一方で、物語の内実は決して軽くはありません。呪的な力による殺傷、不同意の関係、さらには豪族間の複雑な思惑が錯綜します。当時の読者層の少女たちの受容力には驚かされます。
現在なら 異世界転生でもっといろんな世界に行っちゃうのだから おんなじですね。
新装版のあとがきは青山美智子さん。コバルト文庫からオレンジ文庫へ―夜明けの群青から陽光の橙へーと再生のイメージが語られ、氷室冴子作品に影響を受けて小説家を志した世代としての、リスペクトと愛着が感じられます。 -
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大王の使者として息長を訪れた佐保彦から「滅びの子」と詰られ昏倒した真秀は、若き日の日子坐がなした恐るべき陰謀、そして日子坐と母・御影の出会いを神夢にみる。目覚めた真秀の前に現れたのは、佐保彦の伴人・速穂児だった。速穂児によって佐保の人々が自分のことも御影のことも、兄・真澄のことも疎んじていると思い知らされた真秀は、衝動的に佐保彦のもとへ走るが、かえって激しい憎悪を浴びせられる。打ちひしがれ、我を失った真秀を抱き上げたのは、美知主の弟であり、息長の首長である真若王だった。だがそれは、真秀を救うためではなく…!?
果てしない憎しみの連鎖に囚われ、互いを憎まざるを得ない真秀と佐保彦。
なのにどうして、あたしは彼を憎みきれない!?
真秀の心は千々に乱れて――?
オレンジ文庫小説紹介文
この物語の発端は ヒコイマス という事になるのかもしれない。
『日本書紀』では「彦坐王」、『古事記』では「日子坐王」と記され、他文献では「彦今簀命」とも表記されるこの人物は、伝承の範疇なのかという疑問を抱えながらも、確かにどこかに実在の気配がある王なのです。
本作は、そうした古代の曖昧さをベースに持ちつつ 時代設定としては、朝鮮半島の諸国や氏族のあり方まで踏まえる。史実そのものをなぞるのではなく、断片的な記録を想像力で ひとつの“あり得たかもしれない歴史”に挑戦ですね。
この巻では あとがきで著者自身が用語解説までされています。読者に理解の手がかりをとしながら 最終的には「自分でも古語を調べてほしい」と委ねる姿勢には、古典への誘いを感じます。
また、本巻の解説を担当する町田そのこさん、単なる紹介にとどまらない、長年の読者としての親密さが感じられます。作品への敬意と愛着を感じました。 -
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初潮を迎えた真秀は「月の忌屋」に籠められた。十日後、ようやく外界へ戻った真秀は、真若王や息長の男たちの邪な視線に晒されることになる。絶体絶命の真秀の危機を救おうとする真澄に、おそるべき霊力が目覚めーー。必死に逃れようとする真秀の前に現れたのは、ずっと焦がれていた同族「佐保」の若き王子・佐保彦だった。しかし佐保彦は真秀が御影の子と知るや「滅びの子」と罵り鞭打って…次々と襲う、苛酷すぎる運命に真秀はどう立ち向かうのかーー?
オレンジ文庫紹介文
氷室さんは、大和言葉を思わせる語りを織り込みながら、『古事記』の神話的で断片的な世界に、確かに人が息づいていたのだと思わせる。
若い少女と青年は惹かれ合いながらも、すでにその関係は個人のものではなく、部族や血族に強く縛られている。政略としての婚姻が前提となる時代の中で、その想いは決して自由ではない。
だからこそ、この物語に描かれる感情は、やわらかな恋情であると同時に、どうにもならない現実に押し流されていく切実さがあります。
巻末解説は夢枕獏さん。
あとがきで夢枕獏氏と氷室さんの
交友関係を読んで、良いお仲間だったのだと知りました。そして 夢枕獏さんがコバルトに書いていた事を知ってびっくりです。
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夢のなかで、真秀は船にのっていた。これは夢だと、夢のなかでわかっている。
舞台は古代日本――湖の国・淡海。14歳の少女・真秀(まほ)は、複雑な生い立ちのため人々から疎外されながらも、病で寝たきりの母・御影(みかげ)と、目も耳も不自由だが不思議な霊力をもつ兄・真澄(ますみ)とともに気丈に生きていた。ある日、真秀は母の病にきく薬をもらうため丹波行きの船に乗るのだが。「古事記」を愛した氷室冴子が手加減なしで書いた、超弩級のエンターテインメント小説!
-オレンジ文庫紹介文ー
解説は書評家の嵯峨景子さん
古事記中巻、垂仁天皇の段、沙本毘古の叛乱をベースとした長編小説。
雑誌『Cobalt』に1991年から1995年まで連載され、昨年オレンジ文庫で新装復刻。全巻が出揃ったので読ませていただく。
今回は 復刻版なので このあたりの情報は
えていたのですが、当時連載当初は、なかったのではと推測。
当時の『Cobalt』は中学生前後が主な読者層だったのではないかと思うので菅、思いのほか導入に時代設定などの説明はなく、そのまま『古事記』の世界に入っていく構成に驚きます。解説を読まなければ、沙本毘古の叛乱が下敷きになっているとは気づきにくい。しかも 知ってもわからない。
古代転生ファンタジーと称されているが、その意味さえまだおぼろげなのです。
氷室冴子は北海道岩見沢市の出身で、2018年には地元で氷室冴子青春文学賞が創設された。さらに2024年には北海道立文学館で企画展が開催され、その副題は「ふくれっつらのヒロインたち」
確かに そんな感じもしますね。
そしてこの『銀の海 金の大地』のヒロイン真秀もまた、ほとんど“ふくれっつら”で登場。
彼女の立場は奴婢。「神の愛児」とされながらも自立の難しい母は病に伏し、美しくも目も耳も口も使わぬ兄を支えて生き抜こうとする少女は、強くなくてはならない。
本作は、四世紀頃の生活と感覚を背景に、そうした少女の生を描いていくのでしょう。
まずは 1巻 -
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はあはあ…怖い
不穏オブ不穏。まだまだ続きそうなこのムード。
カガメの言ってたことが怖いし、まだ何かなんだか壮大な背景は見えてこないし、ミチノウシはやっぱり良いと思いました。怖いけど。解説の町田さんもミチノウシは夫にしたいと話してた。同意オブ同意であります。
こんなに母系の力の強い時代でも、ヒコイマスやらを始めとした男たちの力づくのヤリモク、ヤリ捨てが溢れてて吐きそう。
未遂シーンは毎回死ぬほど嫌なものとして描かれていて、読者のこちらも怖くなる。そこに筆力が割かれてるの、女性作家への信頼と言う他ないですね。
感想は、がんばれ、真秀、です…。
まだヒーロー役の少年の良いところがほぼ出てこないんだけど、あの人がヒーローで合ってる?よね? -
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なるほど、このための1巻だったのかー、という感想。
ここで話がかなり動き出した。
登場人物もそろいつつある。
苛烈なキャラクターが多くて、読むとクラクラしてしまう。
夢中になると、こちらは息を止めてしまいそう。
生理用品のない、長い長い時代に、女性たちはこんなふうに休めていた(⁇)のはある意味羨ましいなと思った。
それが当たり前だった+女系の支配力も強い時代だった。
今みたいに、生理なんて存在しないような顔して生きていないといけないのもなかなか難しい。
(あ、古代ローマ時代には生理ナプキンもタンポンもあったらしいけど)
作者のあとがきを読んで納得したし笑った。
挿絵の飯田晴子さん、ここまで作者に惚れ込まれての登板だったのか。
イラストレーターとしてこんなに誇らしいことはないかも。