小田嶋隆のレビュー一覧
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目もくらむようなスーパー秀才エリートだった人たちが、声をそろえてもはや反対することができない空気があったと言っている。ドイツ語で日記を書けるような、言葉を自由自在にあやつることができるエリートたちが、一億人の運命を左右するような決めごとを、最後には言葉でなく空気を読んで身を委ねたと語っている。
福島の原発事故直後の危機を回避するための政府首脳の重大会議、40年以上も続いた政府の憲法解釈を内閣の形式的合議だけで大きく変えてしまった経緯、いずれも議事録が残っていない。それが僕たちの国の致命的な欠陥だ。これはもう病気と呼んでもさしつかえないと思う。かつて有名な政治学者はこれを壮大なる無責任体制と呼 -
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インターネットがなかった時代、思ったことをそのまましゃべってしまう口の軽い人間がいても、彼の軽佻な声は周囲数人の耳に届くだけで、その場で揮発していた。個人の発言が炎上する危険はほぼ皆無であった。ところが21世紀に入り、スマホに向かってつぶやいた些細な言葉が記録に残り永遠に蒸し返されることとなる。ネット上にはゲシュタポさながらの言語サークルができあがりる。マスメディアも失言をネタとした謝罪と制裁をワンセットにしたシリーズ物のレギュラープログラムに仕立て上げる流れを定着させてしまった。テレビは制裁機関へと変貌を遂げる。他人の恥辱は群衆にとって最もポピュラーなスポーツ。些細な失言で大臣が相次いで失職
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「体罰、是か非か」誰しも一度は議論したことがあるテーマ。氏曰く巷間交わされている議論はどれもこれも空疎、あるいは既視感漂うものばかり。論敵の反駁が凡庸だし、自分の意見も誰かの焼き直し。何より虚しさを際立たせているのが現職の教諭が議論に加わっていない。そもそも体罰は法律で禁じられている。言ってしまえばそれまでなのだが、議論はやまない。いろんな生徒がおり先生がおり、典型だけで全体を語ることができない難しさがあるからだ。法律と現実との間には大きな乖離がある。体罰は単なる物理的暴力ではない。本質的には威圧と罰則で人間をコントロールしようとする思想の顕現。学問とコミュニケーションの場である学校を支配と服
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小田嶋隆の日経ビジネスオンラインに連載する時事エッセイ「ア・ピース・オブ・警句」は11月の頭に「地雷を踏む勇気」として技術評論社から出版された(尚、奥付けの日付は12月1日となっている)ばかりなのに、何故か今度は本丸である日経BP社から同じエッセイが「その正義」があぶない。」として出版された。こうやって同時期に同じものが違う本として出るとやはり買わずには居られないが気にもなる。
何故にして一つの連載エッセイが同時期に違う出版社から続けて出版されるのか良く判らないのだが、想像するに、この連載エッセイを見た技術評論社の編集者が「是非出版したい」と言い出し、日経BPは「どうせ書籍化する予定は無いし