永井紗耶子のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
永井さんは『木挽町のあだ討ち』の映画化も手伝って若い読者にも支持層を増やして来たようだ。私は本作で5作目となり、今回もまた永井さんワールドに分け入った。前作の『きらん風月』に似ている雰囲気を思い返しながら読み進む。
主人公・海保青陵は早々に他界してしまい、青陵の弟子・弥兵衛と兄弟子・鐘成のふたりが青陵の足跡を辿る旅に出る構成になっている。弟子・弥兵衛の出自が結末に明かされる前に、たぶん読者には真実が推測できるだろう。
青陵の遺言である「遺灰は空に撒け」の発想はなかなか。今でこそ散骨はデビューしているが、家を大事にする武士社会の江戸時代に墓を作らず空に撒くとは思いきったものだ。生前青陵と交流の -
Posted by ブクログ
源頼朝と北条政子との娘・大姫の入内という「鎌倉幕府最大の失策」といわれる出来事を、京の九条殿につかえる周子(衛門)を主人公にして描いた歴史小説。
周子は、大姫を入内させるべく、また自らの女官としての出世につなげるため、鎌倉へ下る。
しかし、大姫は気鬱の病で、周子に会おうともしない。何とか大姫の心を開かせた周子だったが、その周子の前に立ちはだかるのは、過ちを認めず、誰かの責にする政子だった。
のちに尼将軍と呼ばれた政子も、その当時は、入内について「大姫自らが望むか、望まぬかなど、どうでもよい」と強弁する、娘をただ盲愛する一人の母親であった。
やがて、周子の熱意により、心を開いた大姫であったが、「 -
Posted by ブクログ
あまりにも完璧な仇討ちのシーンから始まり、この裏に何かあるのだろうなと匂わせ、冒頭から興味を惹かれた。
ただ、そのため、3人目の目撃者談辺りでなんとなく展開が読めてしまうのは少し残念。
個人的には仇討ちの本筋よりも目撃者たちの語る "来し方" が印象に残っている。 気風がよく人情味に溢れ、芝居(歌舞伎)小屋という悪所で生きる人たち。皆それぞれ背負っているものは表からは見えない。特にほたるさん、久蔵さん夫妻のくだりは胸に来るものがあった。
この「あだ討ち」は人間同士が出会うタイミングや背景、感情の歯車がうまく噛み合って成せた結果であり、皆が流れ着いた芝居小屋は悪所などではなく -
Posted by ブクログ
ネタバレ人との関わりや出会いを大切にしたくなる。
映画のポスタービジュアル(一面の雪の中に、菊之助と作兵衛がいて、菊之助が赤い着物を纏っている)が目に焼き付いて気になって、まず本を読んでみることにした!
芝居に出会って人生が変わった人たち、その人たちに出会って人生が変わった菊之助の話。
菊之助に関わった人たちの口から、“木挽町のあだ討ち”の話と、その人の生い立ちが語られていくことで、話が進む。
最初は、語り口調だと深い心情描写がないから少しさみしいなと思ったけど、話者の、外に現れるひととなりがわかりやすく、キャラクターを掴みやすくて、どんどん惹き込まれていった。読みやすいのもいい!
でもこの形式は -
Posted by ブクログ
爽やかな物語です。
テーマは海保青陵。江戸後期の儒者ですが、旧態依然とした儒学を否定し、全国を歩いて経営コンサルタント的な活動をした異色の人物。。その海保青陵の没後、最後の弟子になった京弓師の跡取りの弥兵衛と兄弟子の鐘成が、江戸、川越、秩父、金沢に住む青陵ゆかりの人々を尋ね歩く物語です。
その形式は『木挽町のあだ討ち』に似ています。『木挽町・・』は次第に裏事情が明らかになって最初の話が変わって行く流れでしたが、この物語では海保青陵の人物像が深くはなっていきますが大きく変貌することは無く。ただ、新たな謎が出て、それが最後に・・・と言うミステリーっぽい仕掛けは有ります。
自由自在に生き、そして亡く -
Posted by ブクログ
秘仏と言われた奈良の法隆寺の夢殿救世観音像の厨子が開かれたのは、明治時代。その場に立ち会ったのは、写真家の小川一眞、宮内庁図書頭(ずしょのかみ)であり、臨時全国宝物取調局委員長の九鬼隆一、法隆寺の住職の千早定朝、取調局委員のアーネスト・フェノロサと友人の外国人資産家ビゲロー、宝物調査の責任者の一人の岡倉覚三(天心)の6人。それぞれの立場から、秘仏の扉を開扉するまでのできごとや、開扉してからの思いなどが書かれていました。彼らがただの立派な人ではないことに人間味を感じました。
明治時代の廃仏毀釈で寺を守るために、秘仏の扉を開いたことは、「守るために開く」という住職の強い決意のもとにあったことを知 -
Posted by ブクログ
ネタバレ世の中の 人と多葉粉(たばこ)の よしあしは
けむりとなりて 後にこそしれ(栗杖亭鬼卵)
松平定信がこの歌に眼をとめ褒美をくだされた
この伝説を元に定信へ昔語りをする構成が上手い
栗杖亭鬼卵は大阪の下級武士で、絵画、狂歌、連
歌、俳諧、戯作者として東海を遍歴する
伊豆韮山代官江川家手代というもの興味深い
静岡の日坂で煙草屋を営み松平定信と出会う設定
作中で後進を育てる時に一流の人物に結びつける
楽しさに気が付きネットワークつくりに東海道人
物志(宿駅に住む学者、文人、諸芸に秀でた人々)
を纏める・・・18世紀の時代の文化人の有り様
が興味深い -
Posted by ブクログ
文庫本の帯にこう書いてある。
「これは最も激しい女たちの戦い」
「国の実権を争う鎌倉と京」
「分かり会えない母と娘」
私はここにこう付け加えたい
「力を持つ女と持たない女の生きる道」
主人公は、京の丹後局の使者として鎌倉へ下る「周子」。
周子は大姫の入内へ向けて、準備を進めたいが大姫本人には気鬱の病があり、母政子の凄まじいまでの寵愛もあり、遅々として進まない。
そんな中、ある事件を境にして距離を縮める糸口を掴む。
少しずつ心の内を語ってくれるようになった大姫の本音を聞いた周子。
この入内を成功させれば出世の道も開けるはずだと息巻いていた周子だったが大姫を守るため動いていこうとする。