永井紗耶子のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
作家さん達が全国18か所の灯台を巡り、紹介する紀行文。島国である日本人は古くから海と共生してきたが、現在のような西洋式灯台が建設されたのは明治維新以降になってからだという。風の吹きすさぶ岬の突端でポツンと立ちながら必死に灯を届ける様子は、孤高であり浪漫を掻きたてられる。
近代日本の文化遺産として、灯台が見直されつつあり、各地域では新たな観光資源となっている。各地に旅行に行く際に、灯台へふらりと寄ってみるのも楽しそうだ。私の地元の灯台も紹介されていたので、まずはそこから訪問したい。
また、どの作家さんも『喜びも悲しみも幾年月』という映画について言及されていた。近代日本を支えた誇りある灯台守という -
Posted by ブクログ
11代将軍家斉といえば、側室数十人、子供も五十数人。庶民の生活苦をものともせず、遊蕩に耽っていたことで有名だが、その頃の大奥の物語。
将軍お手つきの者を「汚れた方」というのだが、そうではない「お清」たちのお仕事小説集。
さすが時代小説に造詣の深い著者の作品なので、当時の大奥のしきたりなどを読んでも説得力もあり、それを知る楽しみもあった。
大奥に入るいきさつなど、当時も生きづらかった女性たちが、大奥に入ることで、自分の生きる道を見つけていく前向きな話が多く、読後感もよかった。
高貴な方たちが飼う猫が、大奥の中を歩き回る「ねこめでる女」が一番好きだった。
-
-
Posted by ブクログ
「白河の清きに魚も棲みかねて もとの濁りの田沼恋しき」で有名な松平定信は隠居し、今はお忍びの旅の途中。家臣に案内されて、日坂宿で煙草屋営む浮世絵師であり戯作者でもある栗杖亭鬼卵(りつじょうていきらん)を身分を隠したまま訪れる。規律正しい社会を目指した定信の問いに、鬼卵は自由人として生きて来た来し方を語ります。
面白い設定です。堅いながら苦言に耳を傾けることができる定信。それを支える家臣。それに対し、木村蒹葭堂をはじめ丸山応挙、上田秋成、海保青陵といった多くの文人賢者に支えられ、自由人として生きて来た鬼卵は、定信の政策に苦言を呈しながら自分の半生を語ります。
人物も良いですね、みんな綺麗に個性が -
Posted by ブクログ
江戸中期の実在の文化人栗杖亭鬼卵と天下人の松平定信との出会いの物語。
旧東海道を歩いた時の記憶が甦り、日坂の宿、小夜の中山、掛川城、三河吉田と馴染み深い土地の名前に更に興味深く読みました。
現代は新幹線で東京〜京都を2時間半で行き交い、メールでやり取りする世の中。
反して主君が悪くても物申すことも出来ない昔の世(今は物申しても届かない?)
でも、昔も今も文化を楽しむ庶民は大勢おり、世の中も文化のおかげで成り立っている様なところもあるのではないかと、読書好きの自分は面白おかしく読みました。
時代小説は苦手ですが、直木賞受賞作も読んでみたいです。