永井紗耶子のレビュー一覧

  • 秘仏の扉

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    廃仏毀釈の波を受ける明治の日本
    法隆寺夢殿の扉を開け救世観音と対面した6人の男たちの物語。
    救世観音を写真に納めた小川一眞
    宮内省役人の九鬼隆一
    法隆寺大僧正の千早定朝
    帝国大学教授のアーネスト・フェロノサ
    美術学校長の岡倉覚三
    帝国博物館初代館長・町田久成

    面白かった!!!
    法隆寺が明治の日本で重要視されておらず、廃寺の危機に陥っていたとは驚きでした。

    これは永井さんにとって褒め言葉ではないのかもしれないけれど、原田マハさんのアート小説を読んでいる錯覚に何度も襲われました。

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    2026年05月23日
  • 青青といく

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    永井さんは『木挽町のあだ討ち』の映画化も手伝って若い読者にも支持層を増やして来たようだ。私は本作で5作目となり、今回もまた永井さんワールドに分け入った。前作の『きらん風月』に似ている雰囲気を思い返しながら読み進む。
    主人公・海保青陵は早々に他界してしまい、青陵の弟子・弥兵衛と兄弟子・鐘成のふたりが青陵の足跡を辿る旅に出る構成になっている。弟子・弥兵衛の出自が結末に明かされる前に、たぶん読者には真実が推測できるだろう。
    青陵の遺言である「遺灰は空に撒け」の発想はなかなか。今でこそ散骨はデビューしているが、家を大事にする武士社会の江戸時代に墓を作らず空に撒くとは思いきったものだ。生前青陵と交流の

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    2026年05月23日
  • 青青といく

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    江戸後期の儒学者、海保青陵の死後、2人の弟子がゆかりの人を訪ね、青陵の人となりや教えを辿るお話。
    本のタイトルと装丁の影響もあると思うが、読後、清々しい風が通り過ぎたような感じした。最後の方の弥兵衛の両親の関係性にじんわり。

    海保青陵、初めて聞く名前でした。
    この本がきっかけで興味がわき、知識が広がります。これも読書の醍醐味。

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    2026年05月15日
  • 青青といく

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    京弓師の跡取りなのに、弓作りが苦手な弥兵衛。そろばん勘定のほうが得意なことに、後ろめたい気持ちを抱える日々、儒学者海保青陵と出会う。

    兄弟子の鐘成とともに、青陵の訃報回りの旅に出ることになった弥兵衛の成長物語かな?と思って読み始めたが、縁ある人たちが語る海保青陵を知るほどに、自由自在の生き方の素晴らしさと難しさを感じ、彼の人生にわくわくする物語だった。

    自分を大切に心を養って、視野を広くしてふわりと構えて、この物語で青陵先生が植えてくれた種を自分のペースで育てていけたら素敵だと思う。

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    2026年05月06日
  • 女人入眼

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    源頼朝と北条政子との娘・大姫の入内という「鎌倉幕府最大の失策」といわれる出来事を、京の九条殿につかえる周子(衛門)を主人公にして描いた歴史小説。
    周子は、大姫を入内させるべく、また自らの女官としての出世につなげるため、鎌倉へ下る。
    しかし、大姫は気鬱の病で、周子に会おうともしない。何とか大姫の心を開かせた周子だったが、その周子の前に立ちはだかるのは、過ちを認めず、誰かの責にする政子だった。
    のちに尼将軍と呼ばれた政子も、その当時は、入内について「大姫自らが望むか、望まぬかなど、どうでもよい」と強弁する、娘をただ盲愛する一人の母親であった。
    やがて、周子の熱意により、心を開いた大姫であったが、「

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    2026年05月01日
  • 青青といく

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    2026.4.15
    青青陵上柏:青青たり陵上の柏

    「青青たり陵上の柏.....これは、短い人生、大いに楽しもう。旅に出て、共に唄い、飲み暮らせば、邸宅なんぞなくとも、王の如く楽しいと、人生を謳歌する詩でございますな」
    詩の中の風景が、弥兵衛の脳裏に広がるようである。
    丘の上に青青と枝葉を伸ばす柏の木、谷川に思うままに転がっている石、、、
    そして、友と酒を酌み交わし、町から町へ訪ね歩く。


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    2026年04月16日
  • 木挽町のあだ討ち(新潮文庫)

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    ミステリーと人情ドラマ、どっちも楽しめる作品だった。時代小説だからちょっと難しい言い回しもあるけど、そこまで気にならずに読める感じ。話は芝居小屋を中心に進んでいって、芝居に関する言葉もいろいろ出てくるから、その由来を知れるのも地味に面白い。ストーリーもしっかりしていて、読み進めるうちに少しずつ全体が見えてくるのが良かった。

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    2026年06月17日
  • 木挽町のあだ討ち(新潮文庫)

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    あまりにも完璧な仇討ちのシーンから始まり、この裏に何かあるのだろうなと匂わせ、冒頭から興味を惹かれた。
    ただ、そのため、3人目の目撃者談辺りでなんとなく展開が読めてしまうのは少し残念。
    個人的には仇討ちの本筋よりも目撃者たちの語る "来し方" が印象に残っている。 気風がよく人情味に溢れ、芝居(歌舞伎)小屋という悪所で生きる人たち。皆それぞれ背負っているものは表からは見えない。特にほたるさん、久蔵さん夫妻のくだりは胸に来るものがあった。
    この「あだ討ち」は人間同士が出会うタイミングや背景、感情の歯車がうまく噛み合って成せた結果であり、皆が流れ着いた芝居小屋は悪所などではなく

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    2026年06月09日
  • 秘仏の扉

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    仏の微笑みも、観る人の心持ちによって天使にも悪魔にも。夢殿の救世観音菩薩それほどの感動はなかった。それにしても「英雄色を好む」とは言え、揃いも揃って酷すぎないか?女中に姪に人妻に…。それで審美眼誇られても…。

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    2026年04月10日
  • 木挽町のあだ討ち(新潮文庫)

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    ネタバレ

    人との関わりや出会いを大切にしたくなる。

    映画のポスタービジュアル(一面の雪の中に、菊之助と作兵衛がいて、菊之助が赤い着物を纏っている)が目に焼き付いて気になって、まず本を読んでみることにした!

    芝居に出会って人生が変わった人たち、その人たちに出会って人生が変わった菊之助の話。
    菊之助に関わった人たちの口から、“木挽町のあだ討ち”の話と、その人の生い立ちが語られていくことで、話が進む。
    最初は、語り口調だと深い心情描写がないから少しさみしいなと思ったけど、話者の、外に現れるひととなりがわかりやすく、キャラクターを掴みやすくて、どんどん惹き込まれていった。読みやすいのもいい!
    でもこの形式は

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    2026年06月30日
  • 青青といく

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    爽やかな物語です。
    テーマは海保青陵。江戸後期の儒者ですが、旧態依然とした儒学を否定し、全国を歩いて経営コンサルタント的な活動をした異色の人物。。その海保青陵の没後、最後の弟子になった京弓師の跡取りの弥兵衛と兄弟子の鐘成が、江戸、川越、秩父、金沢に住む青陵ゆかりの人々を尋ね歩く物語です。
    その形式は『木挽町のあだ討ち』に似ています。『木挽町・・』は次第に裏事情が明らかになって最初の話が変わって行く流れでしたが、この物語では海保青陵の人物像が深くはなっていきますが大きく変貌することは無く。ただ、新たな謎が出て、それが最後に・・・と言うミステリーっぽい仕掛けは有ります。
    自由自在に生き、そして亡く

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    2026年03月25日
  • 商う狼―江戸商人 杉本茂十郎―(新潮文庫)

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    新しい秩序を作り上げるには清濁合わせ飲むことができる度量とバイタリティが必要。杉本茂十郎はそれができる人間だった。
    非難されることも覚悟で、己が信じる道を歩み、己の信念を実現する力強い生き様に感動した。
    そしてそういう生き方をする人は、得てして足を引っ張られ消えてゆくというのは、今の世でもよく見る光景である。儚さを感じる。

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    2026年03月02日
  • 横濱王

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    身近にあった三溪園。その背景にあるものに目が行き届かなかったが、母からの推薦で読むことに。小説になっているので読みやすかったが、人としての誠実さがあった人なのだなと。あとは『天命に沿って生きる』ところは、その通りだなと。

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    2026年01月26日
  • 秘仏の扉

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    秘仏と言われた奈良の法隆寺の夢殿救世観音像の厨子が開かれたのは、明治時代。その場に立ち会ったのは、写真家の小川一眞、宮内庁図書頭(ずしょのかみ)であり、臨時全国宝物取調局委員長の九鬼隆一、法隆寺の住職の千早定朝、取調局委員のアーネスト・フェノロサと友人の外国人資産家ビゲロー、宝物調査の責任者の一人の岡倉覚三(天心)の6人。それぞれの立場から、秘仏の扉を開扉するまでのできごとや、開扉してからの思いなどが書かれていました。彼らがただの立派な人ではないことに人間味を感じました。

    明治時代の廃仏毀釈で寺を守るために、秘仏の扉を開いたことは、「守るために開く」という住職の強い決意のもとにあったことを知

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    2025年09月26日
  • 横濱王

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    今迄三渓園を作った人、という認識しかなかった原三渓。その人となりを幾らか知る事が出来た。前田青邨や松永安左エ門との交遊も。

    ただ、いささか三渓を無私の人としてのみ描き過ぎの気があるのではないか。実際私利私欲とは無縁の人物だったのかも知れないが、篤志家にも懊悩の一つや二つはあるだろうに。

    そこまで行っていれば★5つだったな。

    高久書店にて購入。

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    2025年08月30日
  • きらん風月

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    ネタバレ

    世の中の 人と多葉粉(たばこ)の よしあしは
    けむりとなりて 後にこそしれ(栗杖亭鬼卵)
    松平定信がこの歌に眼をとめ褒美をくだされた
    この伝説を元に定信へ昔語りをする構成が上手い
    栗杖亭鬼卵は大阪の下級武士で、絵画、狂歌、連
    歌、俳諧、戯作者として東海を遍歴する
    伊豆韮山代官江川家手代というもの興味深い
    静岡の日坂で煙草屋を営み松平定信と出会う設定
    作中で後進を育てる時に一流の人物に結びつける
    楽しさに気が付きネットワークつくりに東海道人
    物志(宿駅に住む学者、文人、諸芸に秀でた人々)
    を纏める・・・18世紀の時代の文化人の有り様
    が興味深い

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    2025年08月19日
  • 商う狼―江戸商人 杉本茂十郎―(新潮文庫)

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    文化・文政年間に十組問屋頭取として八面六臂の活躍を魅せた実在の人物 杉本茂十郎に取材した、江戸商人活劇。士農工商の身分制度では最下に置かれ、蔑まれながらも経済の実権を握った商人達の、「天下に資する」という熱い想いと、徳川封建制度のなかで翻弄される姿を描いて秀逸。

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    2025年07月31日
  • 秘仏の扉

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    ネタバレ

    明治に法隆寺の国宝・救世観音像を開陳させた男たちの連作集。

    「光の在処」写真師・小川一真
    「矜持の行方」宮内省図書頭・九鬼隆一
    「空の祈り」法隆寺の総代・千早定朝
    「楽土への道」フェノロサ
    「混沌の逃避」岡倉覚三(天心)
    「千年を繋ぐ」文部大丞・町田久成、
    の6編からなる。
    これを読むと年に2回特別開陳されている観音像が見たくなります。
    女性関係については時代とはいえさすがに大きな醜聞だったと思いますが、昔の芸術気風の人にありがちな感じもします。
    一番感動したのは「空の祈り」です。

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    2025年06月29日
  • 女人入眼

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    文庫本の帯にこう書いてある。
    「これは最も激しい女たちの戦い」
    「国の実権を争う鎌倉と京」
    「分かり会えない母と娘」

    私はここにこう付け加えたい

    「力を持つ女と持たない女の生きる道」

    主人公は、京の丹後局の使者として鎌倉へ下る「周子」。
    周子は大姫の入内へ向けて、準備を進めたいが大姫本人には気鬱の病があり、母政子の凄まじいまでの寵愛もあり、遅々として進まない。
    そんな中、ある事件を境にして距離を縮める糸口を掴む。

    少しずつ心の内を語ってくれるようになった大姫の本音を聞いた周子。
    この入内を成功させれば出世の道も開けるはずだと息巻いていた周子だったが大姫を守るため動いていこうとする。

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    2025年06月15日
  • 旅立ち寿ぎ申し候<新装版>

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    202504/こういう商い時代ものが好みというのもあるが、キャラも物語もとても良かった!旧題(福を届けよ)より今回のタイトル(旅立ち寿ぎ申し候)が良い。

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    2025年05月16日