あらすじ
今の日本に、こんなリーダーがほしかった!
昭和13年、青年実業家の瀬田修司は横濱に降り立った。関東大震災から復興した横濱は、ジャズが流れモガ・モボが闊歩する華やかな文化あふれる国際都市。折しも日中戦争が始まり、軍需景気にあやかりたい瀬田は、横濱一の大富豪である原三渓からの出資を得ようと、三渓について調べ始める。
実業家としての三渓は、富岡製糸場のオーナーであり「生糸王」の異名を持っていた。関東大震災では、復興の先頭に立ち私財をなげうって被災者の救済にあたった。また、稀代の数寄者として名を馳せ、茶の湯に通じ、「西の桂離宮、東の三渓園」と言われる名園を築いた文化人。前田青邨や小林古径など、日本画家の育成を支援……と、いくら調べても交渉材料となるような醜聞は見つからず、瀬田は苛立つ。
やがて「電力王」として知られる実業家、松永安左ヱ門に会った瀬田は、松永の仲介で三渓に会うことが叶う。
三渓園の茶室を訪れた瀬田は、そこで原三渓と話を交わしたことで、少しずつ考えを変えていく。
実は少年時代、瀬田には三渓にまつわる忘れ得ぬ記憶があった……。
※この作品は過去に単行本版として配信されていた『横濱王』の文庫版となります。
感情タグBEST3
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歴史・時代小説として原三溪の人となりを描いた本。といっても原三溪が主人公ではなく胡乱な若手実業家が原三溪を知る商売敵、元芸者、元女中、そして前田青邨や松永安左ヱ門という実在の人物との対話を通して原三溪の姿をあぶり出していく展開が秀逸。
昭和初期の華やかな横浜の風景をキングの塔、ニューグランド、聘珍樓など実存する場所を織り交ぜ浮かび上がるような描写が読んでいて楽しい。関東大震災や第二次大戦の空襲といった横浜の苦難の時代もカバーしていて横浜生まれの作者の思いを感じさせる。
ユニークな切り口とライブ感あふれるタッチでありし日の横浜を描いた秀作。
Posted by ブクログ
今迄三渓園を作った人、という認識しかなかった原三渓。その人となりを幾らか知る事が出来た。前田青邨や松永安左エ門との交遊も。
ただ、いささか三渓を無私の人としてのみ描き過ぎの気があるのではないか。実際私利私欲とは無縁の人物だったのかも知れないが、篤志家にも懊悩の一つや二つはあるだろうに。
そこまで行っていれば★5つだったな。
高久書店にて購入。
Posted by ブクログ
幸せになるには覚悟がいる。噛み締めなければいけない言葉だと思った。
お蝶さんのラストは悲しいけど、お蝶さんらしいとも思った。ちゃんとすれば貴婦人ぽくも出来るのに、好きに飾った自分の店で好きなように生きて、好きなように逝く。でも瀬田は、生きてて欲しかったんだね。
Love me or leave meを聴いてみたいと思う。
どん底でも、そこを這い抜けて生きていく。
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横浜で荷物運びをしながら幼い妹と暮らすシュウ。
9月1日の関東大震災で妹を失ったシュウは大人になり青年実業家として海外を周っていたが、原田三溪に出資をしてもらう為、周辺を調べ始めついに本人に会うことになる。己の王になりなさい。その言葉で自分の心と向き合い始める瀬田。今の横浜の街と比べながら読むとぐっと惹き込まれる。
Posted by ブクログ
青年実業家が出資を得る為に大富豪のスキャンダルを探して実在の人物らを訪ねて周り身辺を探る、と言う前半。主人公の幼少期からと戦後まで、富豪と関わる事での心の変化を描いた後半。横浜の三溪園を作った原三溪の物語。面白かった。
Posted by ブクログ
歴史的であり、ちょっとヤクザっぽくもある、実話とフィクションを混ぜた小説。
横浜育ちの方からプレゼントして頂き積読になっていた本。
なんとなく読む気になってあっという間に読んでしまった。
原三溪という人にも、お蝶さんにも、瀬田にも、人間味を感じるものだった。
Posted by ブクログ
原三渓と言う人物も、有名な庭園のことも全く知りませんでした。今はこれだけの資産家はなかなか現れないと思うし、ただの資産家だけではない、彼の人性がとても面白かった。