永井紗耶子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ冒頭からわけありな始まりなのですが、連作短編集でもあるので、いろんな人々が出てくる事件を利一と十和が解決していくのはとても面白くて、楽しく読むことが出来ました♪
私は第一話の『麻の葉の文様』と第三話の『更紗の文様』が好きです。
『麻の葉の文様』は子供ができない武家の跡取り娘・奈緒が、夫と他の女性の間に子をなしてもらうのですが、それがこじれてしまいという物語です。
当時の武家にとって、子供ができないというのは大問題でしたでしょうし、貧しい家に仕送りをするためにその役目を引き受けたお豊も貧しい家にいる兄弟たちのためにというのが切ないです……。
その中で安産を祈願した肌着を奈緒が下手でありながらも自分で縫い上げて、お豊に着せているというのが、切ない(つд⊂)エーン
そして、子供が無事に生まれたときにお豊が選ぶ選択がいい、と私は思ったのです。
『更紗の文様』は利一がよくいく若竹という料亭が不忍池の側で雀屋という茶店で働いている茶汲み娘の千枝を助けたことが縁となり、彼女から染をした織物を扱ってもらえないかと頼まれる。
だが、扱っている布が荒くて、店で扱うことはできない。そこでその染めをしている職人のところへ店の人間をつかわせることになるのだが……。
そこで明らかになる千枝が家出娘で、しかもその染をした職人は姉の知津が恋い慕っているということ。二人の姉妹の互いを思う気持ちがここでぶつかりあってしまい……。
この話もとってもいい話でした。血がつながっていても喧嘩できるくらいの距離がちょうどいいと思う私なので♪
こちらはシリーズものなので、続きを楽しみに待ちたいと思います。 -
購入済み
語り口がいい
江戸下町のキップの良い語り口が。江戸下町の風俗を臨場感あふれる様子で描きだしている。一見 単純な仇討の話が、いろいろな語り手によって徐々に真相が明らかになってゆくという、芥川龍之介の藪の中を思い起こさせるような、巧みな展開になっている。
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Posted by ブクログ
廃仏毀釈運動により、数々の寺が廃寺となり数多の仏像や仏画などの貴重な品々が破壊され二束三文で売り払われ海外へ流出してしまった明治の世に、残された宝物を守ろうと調査を始めた人々それぞれのドラマを描く。
鍵となるのは二百年以上封じられていた法隆寺・夢殿の秘仏、救世観音像。
大僧正・定朝も見たことがない、秘仏が『調査』の名の下に余所者の手で夢殿の扉を開かれ、包まれた布もはぎ取られていく。
個人的に一番印象に残ったのは、この定朝の物語。
法隆寺が一番辛く追い詰められた時代に住職となり、秘仏を見せる許可を下し、さらには法隆寺の数々の宝物も献納し、それでも法隆寺は困窮を極め、施設の修理どころか僧たちの日々の食事すらままならない。
更には大きな宗派に所属せよと命じられ、宗派すら変えられてしまう。
こんなに大変な時期があったのかと驚いた。
定朝を導いた声は秘仏のものなのか、何なのか。その声に導かれた決断の結果が現在に続いているとすれば、正しかったと言えるのだろうか。
他の人々、写真家の小川一眞(夏目漱石の肖像を撮った人というのを後で知った)、官僚の九鬼隆一と町田久成、東京美術学校を設立した岡倉天心、日本美術を世界に紹介したフェノロサもまた、『秘仏の扉』を開いたことで、人生が変わっていく。
『扉を開けたものに仏罰が下る』と言われる夢殿。仏罰とは言わないまでも、彼らの多くがその後に思わぬことで足を掬われる。九鬼隆一と岡倉天心、フェノロサについての醜聞は聞いたことがあったが、こういう風にドラマにしてくれると分かりやすい。
しかし岡倉天心も九鬼隆一も家族にはなりたくないタイプ。
文化を守ることはその国の人々の矜持を守ること。
だがその文化の価値は自分たちで決めるのではなく、結局は強者(この時代で言えば西洋列強)が決めている。
またその時代の政府の意向や社会風潮で簡単に風向きが変わるのも怖い。
物言わぬ秘仏は二百年以上そこにいるだけなのに、周囲の状況が目まぐるしく変わるのは、不思議な気がする。
読みながら救世観音像の画像を見ていたが、いわゆる日本的で中性的な仏像とは違っていて、確かにちょっと怖い感じもある。
永井さんの作品は何冊か読んでいるが、群像劇は初めて。最初は戸惑ったが、やはり読みやすい。