永井紗耶子のレビュー一覧

  • 青青といく

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    出会って僅か4か月。儒学者で経世家の海保青陵の死は、
    16歳の末弟子・堺屋弥兵衛に、大いなる悲しみを与えた。
    そして師の訃を伝えるために兄弟子の暁鐘成と共に
    師の足跡を辿る旅に出る。
    ・序
    第一章 賢弟 第二章 うそ八
    第三章 大地球頭第一花 
    第四章 鰻の蒲焼 第五章 末弟子
    ・終
    主要参考文献、論文一覧有り。

    「死んだら火葬し骨を粉にして空に撒いて欲しい」
    師の訃と望みを伝える相手には、青陵への想いが胸に在る。
    江戸で会うのは、尾張徳川家に仕える青陵の弟・瑞陽。
    彼が抱えるのは、共に過ごした兄への羨望と憤り、そして思慕。
    絵師・司馬江漢。難儀な人「うそ八」の、
    「辞世ノ語」に至る、青陵と

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    2026年03月08日
  • きらん風月

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    久しぶりに、読み終わりたくない本に出会った。勇者ではなく、等身大の私たちが何かを成すとしたら、鍵は蜘蛛の糸にあるのかもしれない。

    父の言葉。
    耐え忍んだかて禄は増えん。とは言え、ただ怠けるのも、それはそれでしんどい。楽しいことをせい。それはいずれ、お前を助けてくれる。

    暇を潰すだけで生きるには、人生は長い。
    心の躍る方へ。

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    2026年03月07日
  • 青青といく

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    日本のコンサルタントの始祖ともいえる海保青陵の生き方を、その死後に関係者から聴取することで人生の指針を見つける青年の物語。生まれるのが50年後だったらと思わせる海保青陵の魅力を十分引き出しているところが最大の魅力。

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    2026年03月04日
  • 木挽町のあだ討ち(新潮文庫)

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    ネタバレ

    ※未読の方へ。ネタバレは見ないほうがいいぞ!!

    面白かった!!!!!読後最初の一言はこれに尽きる。あまり時代ものに興味を持たない自分だけど、ちょうど来週から実写映画が上映されるし評判良さそうだし、と読んでみたら読む手が止まらない。あっという間に読み終えてしまった。

    ミステリ仕立てというのは実写映画に出演している役者が番宣で話していたので知っていたし、正直お与根さんの章あたりでこれはもしかして?と感じていたけれど、最後に全ての真実が明るみになってもその面白さは損なわれなかった。
    何より、タイトル回収が気持ち良すぎる!!座って読んでたら本当に膝叩いてたと思うわ。

    役者小屋の面々の一人ひとり森

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    2026年03月16日
  • 絡繰り心中<新装版>

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    永井さんの作品を手に取るのは『木挽町のあだ討ち』以来でした。おもな登場人物は若き日の遠山金四郎、狂歌師の太田南畝、浮世絵師の歌川国貞。この3人が絶妙のチームワークで花魁殺しの真相に迫っていくというストーリー。

    金四郎が笛方見習いとして、木挽町の芝居小屋森田座に出入りしていることといい、彼が事件にかかわる人々に次々と話を聞いていくという話のプロットといい、いずれも『木挽町…』に似ていて、もしかしたらこのデビュー作が下敷きになっているのかもと思いました。

    本作は、時代劇にありがちな「勧善懲悪」の枠には収まらない、江戸の世の身分制度やしきたりに絡めとられた人々の、悲哀がずしんと腹に残るような読後

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    2026年02月20日
  • きらん風月

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    松平定信は息子の定永に藩主の座を譲って隠居の身になっていたが、隠居になってからもあれこれと息子の判断に口を挟みすぎるために、家臣からマジで隠居として部をわきまえて欲しいと要望されていた。拗ねて権現様を巡る旅に出てきたが、そろそろ飽きたので江戸に帰ろうとする途中、栗杖堂鬼卵という絵師および戯作者のもとを通りがかる。

    何ものも混じりそうにない2人の人生と、人生の徒然話。

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    2026年02月06日
  • 旅立ち寿ぎ申し候<新装版>

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    ネタバレ

    2026/1/8
    よかった。
    推し作家増えて嬉しい。
    危ういがけっぷちを歩いている緊張感。
    安全な方へ手を引っ張ってくれる人とのやり取り。
    信念を持つ人はかっこいいね。とか。
    早くその人に嫁に来てもらうんだ!!とか。
    読みながらいろんなことを感じる本ありがたい。

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    2026年01月12日
  • 秘仏の扉

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    廃仏毀釈に揺れる明治日本と、東洋美術を評価する欧米。法隆寺の秘仏開帳に関わった男たちを、多視点で描く構成が印象的だった。岡倉天心やフェノロサといった偉人たちは、理想化されず、人間的な弱さや身勝手さも含めて描かれるけれど、彼らがいなければ、今、日本が海外へのアピールに必死な日本美術の美しさや仏教は失われていたかもしれない。
    これまで、アルカイックスマイルは慈悲の象徴だと思っていたけれど、「人間って本当にしょうもないな」と半ば呆れて見守る表情のようにも思えてきた。

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    2026年01月03日
  • 秘仏の扉

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    法隆寺夢殿の秘仏、救世観音像の扉を開けた者たちの物語。

    小川一真 写真家。アメリカで写真を学び写真館を営むがやがて日本を代表する写真家となる。

    九鬼隆一 九鬼家当主。福沢諭吉に師事し、文部省官僚となる。宝物調査の責任者。

    千早定朝 法隆寺の住持。没落していく法隆寺を支える。救世観音を開けた男。

    アーネスト・フェノロサ 東京大学のお雇い外国人教師。三井寺の僧侶に戒を受ける。

    岡倉覚三 文部省御用係。九鬼の妻との醜聞で全てを失う。

    町田久成 薩摩出身。イギリス留学経験者。日本の博物館設置に奔走。

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    2025年12月09日
  • きらん風月

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    ネタバレ

    栗杖亭鬼卵という人のことは、全く知らず、まず、実在の人物と知って驚きました。

    「自由と反骨で幕政の束縛に抗った文化人」とあったので、荒々しい破天荒な人物を想像していました。読んでみると、穏やかで人柄良く、初めて書いた本が御法度本であることに恐れを感じる、良い意味で共感しやすい人でした。

    鬼卵だけでなく、彼が出会う人々も気持ちの良い心根の人で、彼らとの会話が小気味よく楽しめました。また、出番は少なかったものの、志乃・夜燕・須美と、3人の女性陣も芯が強くて素敵でした。

    心に残る名言もたくさんありました。
    「死ぬまでの暇つぶしみたいな生き方はしなさんな」

    私も人生の後半戦に突入しています。

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    2025年09月21日
  • 商う狼―江戸商人 杉本茂十郎―(新潮文庫)

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    ネタバレ

    4作目の永井紗耶子さんの本。

    江戸商人・経済をテーマにしたもので、私にとっては苦手な分野です。

    実際、今までに読んだ永井さんの本と比べると、あまり私には刺さらないかなーと思いつつ、とりあえず読破を目指して読み進めていました。

    中盤、江戸の金の流れを握った茂十郎と、周囲との軋轢が目立ち始めた辺りから、引き込まれました。

    「金は刀より強い」と、清濁併せ呑んで、江戸の経済の在り方にメスをいれ改革を進める茂十郎。その原動力が、天明の大飢饉や、妻子を失った永代橋の崩落事故というのが、人情を感じます。

    強い信念のもと突き進む茂十郎の姿は爽快で、心に残りました。

    その彼の出した結論が「葵の御紋は

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    2025年09月11日
  • 秘仏の扉

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    ネタバレ

    法隆寺 夢殿に歴史と共に救世観音像が祀られてある。それを明治21年に厨子を調査として開けたフェノロサ、岡倉らの人生はその時変わっていった。伝説通りに雷に打たれた、というのではないが明治という新しい時代が、彼らをどう揺さぶっていったか。
    史実に基づいて連作小説と形をとった一冊となったが世界と日本を結ぶ美術に関して、当時、日本を訪れた西洋人の目で見た日本人ん姿なども興味深い。
    救世観音の表情をアルカイックスマイルと評しているが、はるか歴史の彼方からその表情は聖徳太子の姿とも伝えられ、ロマンを掻き立てられる。歴史好き美術好きを恥ずかしながら自認してるとは言えこういう本に出会えて幸いである。そんな自分

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    2025年08月16日
  • 秘仏の扉

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    法隆寺夢殿の秘仏・救世観音像。
    千年以上前に作られ、長らく人目に晒されることが
    無かった秘仏の扉が開かれる。時は明治時代。
    それに関わった者たちの人生を描く群像劇の短編連作。
    光の在処・・・小川一眞 矜持の行方・・・九鬼隆一
    空の祈り・・・千早定朝
    楽土への道・・・アーネスト・フェノロサ
    混沌の逃避・・・岡倉覚三 千年を繋ぐ・・・町田久成

    時は明治時代。
    江戸時代からの変化、文明開化に神仏分離と廃仏毀釈、
    伝統と近代化の狭間、政治の混乱と混沌の中で、
    人々も藻掻き、歩んでいた。
    その最中での、法隆寺夢殿の秘仏・救世観音像の開帳。
    「怖いですな・・・畏怖とでもいうのでしょうか」
    「これは恐ろし

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    2025年07月04日
  • 秘仏の扉

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    「木挽町のあだ討ち」でびっくりしてしまってファンになった作家。数冊読んだがこれはまた面白い。
    奈良の法隆寺夢殿の救世観音像の開帳をめぐる群像劇。読み進めながら主人公は誰か? という思いを何度ももった。フェノロサ、岡倉天心、その他の人たち、そうか固く閉ざされた扉の内にいる観音さまか。
    とにかく群像劇というものは誰に注視するのか難しい。

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    2025年05月07日
  • 旅立ち寿ぎ申し候<新装版>

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    面白い時代小説を、というなら、私は迷わず永井紗耶子さんをお薦めする!
    今回の本は、舞台は幕末の江戸。主人公の紙問屋の若旦那である勘七は、実直な青年ながら、時代の物価高騰や武士社会の変遷の波に飲み込まれていく。
    私は若い頃は武士が主役の幕末小説や戦国時代ものを好んで読んでいたけど、今はその陰で懸命に生きてきた商人や町人らの話が読みたいのよ。
    勘七も、粋な人生を生きる紀之介も、男顔負けの商才があるお京も、みんな感じがよくて好き。

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    2025年04月26日
  • 秘仏の扉

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    久しぶりに小説を読んだ。
    法隆寺夢殿の秘仏である救世観音像に関わった人たちの連作短編集。

    救世観音像の写真を撮り、よく目にする漱石の写真も撮った小川一眞は、尊き何かの持つ残酷さと畏れを救世観音像をみて感じる。
    福沢諭吉と袂をわかった九鬼隆一は、己の矜持を貫くためにもがく。
    近代法隆寺の祖、千早定朝は「開いて守る」大きな決断をする。
    教科書で秘仏と言えばフェノロサ。日本の美術に魅せられ、守り、その事は自身の存在にもかかわる。
    茶の本を書いた岡倉覚三は、欧米諸国からの侮蔑に立ち向かうには日本らしさを守る事ということを貫きつつも、自身の混沌からは逃避をし続ける
    本当に初めて夢殿を開いたのは町田久成

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    2025年04月21日
  • 秘仏の扉

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    明治初期。文明開化で欧米化が進み、それまでの日本の伝統などが古臭いと一蹴された時代。折しも国策の勢いで廃仏毀釈が進み、仏像や仏教絵画だけでなく、寺院そのものまで乱雑な扱いを受ける。そんな中、様々な思惑の中で、鎌倉時代以来秘仏とされてきた法隆寺の救世観音像の開陳と撮影が進められる。御雇外国人であるフェノロサ、文部省の九鬼、日本美術の研究者である岡倉、写真家である小川、法隆寺住職である定朝などが秘仏を目にする。あるものは畏れ、あるものは感動し、あるものは後悔する。そしてその後の人生の転機に、秘仏の微笑みが静かに影響を及ぼす。当時の国の状況に翻弄される登場人物一人一人の心の微細な動きがよく伝わる。こ

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    2025年04月19日
  • 旅立ち寿ぎ申し候<新装版>

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    時は幕末。日本橋紙問屋永岡屋の若旦那勘七の、理不尽な借金を負い、幕末の動乱に巻き込まれながらも成長していく商人の物語だ。

    幕末から明治にかけての急激な変化に当時の人々は大変混乱したことだろう…。

    勘七の、迷いながらも、様々な人々に支えられ成長していく様は読んでいて清々しい。




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    2025年04月05日
  • 秘仏の扉

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    あまりに面白くて一気読み。
    各主人公の矜持が心に響きました。

    一番読後感が明るく爽やかだったのは、「光の在処」で、一番印象に残ったのは「楽土への道」です。

    廃仏毀釈により、困窮を極めた法隆寺が今では世界遺産。まだ行ったことがないので、ぜひ訪れてみたい場所です。

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    2025年03月14日
  • 秘仏の扉

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    法隆寺夢殿・救世観音像の開帳に携わった人物たちの生い立ちとその後の人生に与えた影響を人物にスポットをあてて描く。救世観音像のアルカイックスマイルの裏側に隠された深淵を解釈していくストーリは、人生を振り返ることに繋がっていく。
    著者は直木賞受賞後に、また一皮向けた印象で、ストーリテリングの上手さが際立っている。フェノロサや岡倉天心は功績こそ知っていたものの、どのような人物だったのかは知らなかったので勉強になった。

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    2025年02月03日