永井紗耶子のレビュー一覧
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出会って僅か4か月。儒学者で経世家の海保青陵の死は、
16歳の末弟子・堺屋弥兵衛に、大いなる悲しみを与えた。
そして師の訃を伝えるために兄弟子の暁鐘成と共に
師の足跡を辿る旅に出る。
・序
第一章 賢弟 第二章 うそ八
第三章 大地球頭第一花
第四章 鰻の蒲焼 第五章 末弟子
・終
主要参考文献、論文一覧有り。
「死んだら火葬し骨を粉にして空に撒いて欲しい」
師の訃と望みを伝える相手には、青陵への想いが胸に在る。
江戸で会うのは、尾張徳川家に仕える青陵の弟・瑞陽。
彼が抱えるのは、共に過ごした兄への羨望と憤り、そして思慕。
絵師・司馬江漢。難儀な人「うそ八」の、
「辞世ノ語」に至る、青陵と -
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ネタバレ※未読の方へ。ネタバレは見ないほうがいいぞ!!
面白かった!!!!!読後最初の一言はこれに尽きる。あまり時代ものに興味を持たない自分だけど、ちょうど来週から実写映画が上映されるし評判良さそうだし、と読んでみたら読む手が止まらない。あっという間に読み終えてしまった。
ミステリ仕立てというのは実写映画に出演している役者が番宣で話していたので知っていたし、正直お与根さんの章あたりでこれはもしかして?と感じていたけれど、最後に全ての真実が明るみになってもその面白さは損なわれなかった。
何より、タイトル回収が気持ち良すぎる!!座って読んでたら本当に膝叩いてたと思うわ。
役者小屋の面々の一人ひとり森 -
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永井さんの作品を手に取るのは『木挽町のあだ討ち』以来でした。おもな登場人物は若き日の遠山金四郎、狂歌師の太田南畝、浮世絵師の歌川国貞。この3人が絶妙のチームワークで花魁殺しの真相に迫っていくというストーリー。
金四郎が笛方見習いとして、木挽町の芝居小屋森田座に出入りしていることといい、彼が事件にかかわる人々に次々と話を聞いていくという話のプロットといい、いずれも『木挽町…』に似ていて、もしかしたらこのデビュー作が下敷きになっているのかもと思いました。
本作は、時代劇にありがちな「勧善懲悪」の枠には収まらない、江戸の世の身分制度やしきたりに絡めとられた人々の、悲哀がずしんと腹に残るような読後 -
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ネタバレ栗杖亭鬼卵という人のことは、全く知らず、まず、実在の人物と知って驚きました。
「自由と反骨で幕政の束縛に抗った文化人」とあったので、荒々しい破天荒な人物を想像していました。読んでみると、穏やかで人柄良く、初めて書いた本が御法度本であることに恐れを感じる、良い意味で共感しやすい人でした。
鬼卵だけでなく、彼が出会う人々も気持ちの良い心根の人で、彼らとの会話が小気味よく楽しめました。また、出番は少なかったものの、志乃・夜燕・須美と、3人の女性陣も芯が強くて素敵でした。
心に残る名言もたくさんありました。
「死ぬまでの暇つぶしみたいな生き方はしなさんな」
私も人生の後半戦に突入しています。
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ネタバレ4作目の永井紗耶子さんの本。
江戸商人・経済をテーマにしたもので、私にとっては苦手な分野です。
実際、今までに読んだ永井さんの本と比べると、あまり私には刺さらないかなーと思いつつ、とりあえず読破を目指して読み進めていました。
中盤、江戸の金の流れを握った茂十郎と、周囲との軋轢が目立ち始めた辺りから、引き込まれました。
「金は刀より強い」と、清濁併せ呑んで、江戸の経済の在り方にメスをいれ改革を進める茂十郎。その原動力が、天明の大飢饉や、妻子を失った永代橋の崩落事故というのが、人情を感じます。
強い信念のもと突き進む茂十郎の姿は爽快で、心に残りました。
その彼の出した結論が「葵の御紋は -
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ネタバレ法隆寺 夢殿に歴史と共に救世観音像が祀られてある。それを明治21年に厨子を調査として開けたフェノロサ、岡倉らの人生はその時変わっていった。伝説通りに雷に打たれた、というのではないが明治という新しい時代が、彼らをどう揺さぶっていったか。
史実に基づいて連作小説と形をとった一冊となったが世界と日本を結ぶ美術に関して、当時、日本を訪れた西洋人の目で見た日本人ん姿なども興味深い。
救世観音の表情をアルカイックスマイルと評しているが、はるか歴史の彼方からその表情は聖徳太子の姿とも伝えられ、ロマンを掻き立てられる。歴史好き美術好きを恥ずかしながら自認してるとは言えこういう本に出会えて幸いである。そんな自分 -
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法隆寺夢殿の秘仏・救世観音像。
千年以上前に作られ、長らく人目に晒されることが
無かった秘仏の扉が開かれる。時は明治時代。
それに関わった者たちの人生を描く群像劇の短編連作。
光の在処・・・小川一眞 矜持の行方・・・九鬼隆一
空の祈り・・・千早定朝
楽土への道・・・アーネスト・フェノロサ
混沌の逃避・・・岡倉覚三 千年を繋ぐ・・・町田久成
時は明治時代。
江戸時代からの変化、文明開化に神仏分離と廃仏毀釈、
伝統と近代化の狭間、政治の混乱と混沌の中で、
人々も藻掻き、歩んでいた。
その最中での、法隆寺夢殿の秘仏・救世観音像の開帳。
「怖いですな・・・畏怖とでもいうのでしょうか」
「これは恐ろし -
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久しぶりに小説を読んだ。
法隆寺夢殿の秘仏である救世観音像に関わった人たちの連作短編集。
救世観音像の写真を撮り、よく目にする漱石の写真も撮った小川一眞は、尊き何かの持つ残酷さと畏れを救世観音像をみて感じる。
福沢諭吉と袂をわかった九鬼隆一は、己の矜持を貫くためにもがく。
近代法隆寺の祖、千早定朝は「開いて守る」大きな決断をする。
教科書で秘仏と言えばフェノロサ。日本の美術に魅せられ、守り、その事は自身の存在にもかかわる。
茶の本を書いた岡倉覚三は、欧米諸国からの侮蔑に立ち向かうには日本らしさを守る事ということを貫きつつも、自身の混沌からは逃避をし続ける
本当に初めて夢殿を開いたのは町田久成 -
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明治初期。文明開化で欧米化が進み、それまでの日本の伝統などが古臭いと一蹴された時代。折しも国策の勢いで廃仏毀釈が進み、仏像や仏教絵画だけでなく、寺院そのものまで乱雑な扱いを受ける。そんな中、様々な思惑の中で、鎌倉時代以来秘仏とされてきた法隆寺の救世観音像の開陳と撮影が進められる。御雇外国人であるフェノロサ、文部省の九鬼、日本美術の研究者である岡倉、写真家である小川、法隆寺住職である定朝などが秘仏を目にする。あるものは畏れ、あるものは感動し、あるものは後悔する。そしてその後の人生の転機に、秘仏の微笑みが静かに影響を及ぼす。当時の国の状況に翻弄される登場人物一人一人の心の微細な動きがよく伝わる。こ