【感想・ネタバレ】秘仏の扉のレビュー

あらすじ

直木賞作家が描く、明治開国の仏を巡る群像

200年の間、固く閉ざされていた扉。
それはフェノロサと岡倉天心の手によって開かれた――

飛鳥時代に聖徳太子の姿を模して造られたと言われる、
法隆寺夢殿・救世観音像。
その厨子は鎌倉時代以降、固く閉ざされ、
扉を開けば直ちに仏罰が下ると信じられていた。

「金のために秘仏を見せるというのか」
「支援がなければ、法隆寺はもう保てません」

国内では廃仏毀釈の嵐が吹き荒れ、
しかし、欧米では東洋美術が評価され始めている。
近代化と伝統の狭間で揺れる明治時代に、
秘仏開帳に関わったものたち、それぞれの思いとは。
直木賞作家が描き出す歴史群像劇の傑作。

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ネタバレ

法隆寺 夢殿に歴史と共に救世観音像が祀られてある。それを明治21年に厨子を調査として開けたフェノロサ、岡倉らの人生はその時変わっていった。伝説通りに雷に打たれた、というのではないが明治という新しい時代が、彼らをどう揺さぶっていったか。
史実に基づいて連作小説と形をとった一冊となったが世界と日本を結ぶ美術に関して、当時、日本を訪れた西洋人の目で見た日本人ん姿なども興味深い。
救世観音の表情をアルカイックスマイルと評しているが、はるか歴史の彼方からその表情は聖徳太子の姿とも伝えられ、ロマンを掻き立てられる。歴史好き美術好きを恥ずかしながら自認してるとは言えこういう本に出会えて幸いである。そんな自分がなぜか罰当たり者に思える。畏れという感情、常々持っていたい。

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2025年08月16日

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法隆寺夢殿の秘仏・救世観音像。
千年以上前に作られ、長らく人目に晒されることが
無かった秘仏の扉が開かれる。時は明治時代。
それに関わった者たちの人生を描く群像劇の短編連作。
光の在処・・・小川一眞 矜持の行方・・・九鬼隆一
空の祈り・・・千早定朝
楽土への道・・・アーネスト・フェノロサ
混沌の逃避・・・岡倉覚三 千年を繋ぐ・・・町田久成

時は明治時代。
江戸時代からの変化、文明開化に神仏分離と廃仏毀釈、
伝統と近代化の狭間、政治の混乱と混沌の中で、
人々も藻掻き、歩んでいた。
その最中での、法隆寺夢殿の秘仏・救世観音像の開帳。
「怖いですな・・・畏怖とでもいうのでしょうか」
「これは恐ろしいものだ。開かぬ方がよかった」
下りたのは「開いて、守れ」の言葉。
初めて見た時とは違う・・・そこには「赦し」がある。
今はただ、混沌から逃げよう。早く扉を閉め、夢殿を出たい。
己は何を開いたのか。
その姿を、顔を、目を見た6人。
自分の過去を、自分の内面を、心情を、混沌を
改めて思い起こす。そして後半生への歩み。
人間臭さが漂う、それぞれの個の物語ではあれど、
心の奥底には救世観音像の姿が焼き付いている。
果たして、あの厨子を開けたことは正しかったのか。
日本文化を守り愛する者たちの葛藤に、心揺るがされました。

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2025年07月04日

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「木挽町のあだ討ち」でびっくりしてしまってファンになった作家。数冊読んだがこれはまた面白い。
奈良の法隆寺夢殿の救世観音像の開帳をめぐる群像劇。読み進めながら主人公は誰か? という思いを何度ももった。フェノロサ、岡倉天心、その他の人たち、そうか固く閉ざされた扉の内にいる観音さまか。
とにかく群像劇というものは誰に注視するのか難しい。

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2025年05月07日

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久しぶりに小説を読んだ。
法隆寺夢殿の秘仏である救世観音像に関わった人たちの連作短編集。

救世観音像の写真を撮り、よく目にする漱石の写真も撮った小川一眞は、尊き何かの持つ残酷さと畏れを救世観音像をみて感じる。
福沢諭吉と袂をわかった九鬼隆一は、己の矜持を貫くためにもがく。
近代法隆寺の祖、千早定朝は「開いて守る」大きな決断をする。
教科書で秘仏と言えばフェノロサ。日本の美術に魅せられ、守り、その事は自身の存在にもかかわる。
茶の本を書いた岡倉覚三は、欧米諸国からの侮蔑に立ち向かうには日本らしさを守る事ということを貫きつつも、自身の混沌からは逃避をし続ける
本当に初めて夢殿を開いたのは町田久成で、帝国博物館の初代館長。

それぞれの人が、開けば雷や地震の災いに会うと伝えられてきた救世観音像に出会う。
その笑みと眼差しを見たからといって、もちろん現実の天変地異は起こらない。しかし、自身の中で雷にうたれ、揺り動かされる。己の中を覗くということを救世観音像の瞳を通じて自身がしてしまい、それは大いなる畏れにつながる。
どんな偉業を成し遂げた人も、美しく、清廉潔白で、誠実なだけの内面など持っていようはずがない。もちろん強く否定されることもあるのだろうけど、描かれている多くの事柄は人の人らしさでもある。そして、人は奥底にある暗闇を突きつけられる事に耐えることはやはり難しい。乗り越えることはなおのこと困難。真っ直ぐに向き合える事が悟りなのかもしれない。
物語の中で定朝は思う。
「雷に打たれる……とは、このことかと思った。己を身から引き剝がされ、無私となること。そこに下りて来た答えは「開いて、守れ」という言葉であった。」
秘仏を開くという事を要に、人というものが描かれた素晴らしい作品だった。

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2025年04月21日

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明治初期。文明開化で欧米化が進み、それまでの日本の伝統などが古臭いと一蹴された時代。折しも国策の勢いで廃仏毀釈が進み、仏像や仏教絵画だけでなく、寺院そのものまで乱雑な扱いを受ける。そんな中、様々な思惑の中で、鎌倉時代以来秘仏とされてきた法隆寺の救世観音像の開陳と撮影が進められる。御雇外国人であるフェノロサ、文部省の九鬼、日本美術の研究者である岡倉、写真家である小川、法隆寺住職である定朝などが秘仏を目にする。あるものは畏れ、あるものは感動し、あるものは後悔する。そしてその後の人生の転機に、秘仏の微笑みが静かに影響を及ぼす。当時の国の状況に翻弄される登場人物一人一人の心の微細な動きがよく伝わる。こういうことってあるんだなあ。

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2025年04月19日

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あまりに面白くて一気読み。
各主人公の矜持が心に響きました。

一番読後感が明るく爽やかだったのは、「光の在処」で、一番印象に残ったのは「楽土への道」です。

廃仏毀釈により、困窮を極めた法隆寺が今では世界遺産。まだ行ったことがないので、ぜひ訪れてみたい場所です。

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2025年03月14日

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法隆寺夢殿・救世観音像の開帳に携わった人物たちの生い立ちとその後の人生に与えた影響を人物にスポットをあてて描く。救世観音像のアルカイックスマイルの裏側に隠された深淵を解釈していくストーリは、人生を振り返ることに繋がっていく。
著者は直木賞受賞後に、また一皮向けた印象で、ストーリテリングの上手さが際立っている。フェノロサや岡倉天心は功績こそ知っていたものの、どのような人物だったのかは知らなかったので勉強になった。

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2025年02月03日

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奈良の法隆寺の夢殿に安置されている秘仏で千年も非公開の救世観音菩薩に関わる数多の人物に関する物語りはダイナミックであり多くの感動を与えてくれた。鎖国から開国した日本からは多くの美術品や仏像が海外に、それをどうするか?救世観音像に関わった人々の人生の物語り一気読みだった!著者の素晴らしい文章力に感謝です!

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2025年01月30日

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法隆寺が好きなので手に取った。
フェノロサや岡倉天心、維新による美術品の流出に興味もあったので、それぞれの視点で描かれた内容がとても興味深かった。歴史上の人物も、時代を生きたい生身の人間なんだと感じた。
古都奈良の古寺、仏像をいま私たちが訪れて見ることができることに感謝。
それとは逆に、定朝のようなお坊さんはいまの時代にもいるんだろうか??

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2025年01月26日

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昨秋、救世観音の特別公開を観た。
表紙裏に記載の文言がすべてを現してるように思えた。
「まさに国の宝・・・東洋の、世界の宝です」
「・・・もっと、違うものを想像していた」
「これは、・・・・恐ろしいものだ。開かぬ方が良かった」
「早く扉を閉め、夢殿を出たい」
それにつけても、才能ある方はとんでもないプライベートを持ってるもんだ、、、
2925-005

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2025年01月26日

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ネタバレ

明治になり、新政府の方針で廃仏毀釈が行われ、仏教寺院は受難の時を迎えていた。すでに多くの寺院が廃され、仏像は打ち捨てられたり、美術品として外国に持ち出された。

法隆寺の救世観音像は、秘仏であるがゆえ、これまで200年の間、逗子の扉が開けられたことはない。開けたものには仏罰が降りると言われていた。しかし、その価値をあらためるため、政府によって扉が開かれようとしていた。そこに立ち会うのは、政府の役人、写真家、外国人、そして法隆寺の住職。
不思議な微笑みを称えた仏を通じて、彼らの姿を映し出す。

『木挽町のあだ討ち』で直木賞を受賞した作家の最新作。
構成は似ているかもしれないが、ここでは歴史と実在の人物、テーマの重さから、意外性や奇抜なドラマを期待するとやや物足りないだろうが、それ以上にリアリティのある物語を紡ぎ出した。
岡倉天心、アーネスト・フェノロサなど、明治の美術界の主要人物が描かれているが、私は法隆寺の定朝の人物像と、浮浪者の太助の物語に惹かれた。やはり想像力で描かれた人物は、魅力的だった。

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2025年01月23日

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秘仏と言われた奈良の法隆寺の夢殿救世観音像の厨子が開かれたのは、明治時代。その場に立ち会ったのは、写真家の小川一眞、宮内庁図書頭(ずしょのかみ)であり、臨時全国宝物取調局委員長の九鬼隆一、法隆寺の住職の千早定朝、取調局委員のアーネスト・フェノロサと友人の外国人資産家ビゲロー、宝物調査の責任者の一人の岡倉覚三(天心)の6人。それぞれの立場から、秘仏の扉を開扉するまでのできごとや、開扉してからの思いなどが書かれていました。彼らがただの立派な人ではないことに人間味を感じました。

明治時代の廃仏毀釈で寺を守るために、秘仏の扉を開いたことは、「守るために開く」という住職の強い決意のもとにあったことを知りました。昔は日本の文化財の価値が日本人にあまり理解されずに、外国人の方が気づいていたことに驚きました。

夢殿救世観音像の不思議な笑みは、人によって受け取りかたが違うことに意味があるのでは?そんなことを思いました。


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2025年09月26日

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ネタバレ

明治に法隆寺の国宝・救世観音像を開陳させた男たちの連作集。

「光の在処」写真師・小川一真
「矜持の行方」宮内省図書頭・九鬼隆一
「空の祈り」法隆寺の総代・千早定朝
「楽土への道」フェノロサ
「混沌の逃避」岡倉覚三(天心)
「千年を繋ぐ」文部大丞・町田久成、
の6編からなる。
これを読むと年に2回特別開陳されている観音像が見たくなります。
女性関係については時代とはいえさすがに大きな醜聞だったと思いますが、昔の芸術気風の人にありがちな感じもします。
一番感動したのは「空の祈り」です。

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2025年06月29日

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原田マハさんともまた随分と異なる趣
久しぶりに美術に深く関連する小説を読んで、自分が絡めとられるような感覚(うまく表現できない)

オール讀物での連載

アーネスト•フェノロサ
日本文化を、仏教精神、美術を
深く理解し高く評価してくれた米国人
親友、妻子との別れ、絶望、新たな人生
岡倉天心との縁

岡倉天心(改号前…覚三)
英語が堪能で通訳として徴用され、日本の芸術振興、守護に貢献。渡米
東京美術学校を創設、初代校長に。名だたる芸術家が教師、生徒に名を連ねる
不倫しすぎで(昔の男性的価値観は理解し難い)スキャンダルや権力闘争に負け、失職するも、また新しい団体を立ち上げて妻とも再構築
インドへ 石窟遺跡アジャンタの仏陀の壁画、菩薩像に、法隆寺で見た深淵、混沌を再度感ずる

輪廻、人間存在の卑小さ、美の普遍性

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2025年05月06日

Posted by ブクログ

やっぱり永井さんの歴史小説は面白い!
法隆寺夢殿にある厨子の中には救世観音像があるが、秘仏とされてきた。だが明治期に開扉される。それに立ち会った岡倉覚三やフェロノサ、写真家の小川一眞らが、救世観音像と対峙することにより、自分の内面と向き合うことになる。
それぞれが主人公の連作短編集で、各々の葛藤が読んでいて興味深かった。特に法隆寺住職の定朝が、救世観音像の開扉を「開いて、守る」という境地に至ったところで、開国にふみきった日本に照らし合わせたところはすごく納得できた。
今ちょうど法隆寺夢殿の救世観音像が見られる期間らしいので、行ってみよう。

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2025年04月12日

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法隆寺の秘仏『救世観音像』の開扉に立ち会った男6人の視点で物語は進行。伝統ある仏像が海外に流出せぬよう尽力した彼らの熱意が伝わる。歴史の隙間に覗く人間模様。楽しく読み易い。

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2025年04月12日

Posted by ブクログ

 明治21年6月、法隆寺夢殿。今まさに秘仏、救世観音像の厨子が開けられようとしている。
 そこには、宮内庁図書頭かつ全国宝物取調局委員長・九鬼隆一、東京美術学校幹事・岡倉覚三(後に天心)、取調局委員・アーネストフェノロサ、外国人資産家・ビゲロー、写真家・小川一眞、その他役人記者たち。そして法隆寺大僧正・千早定朝。
 国内では廃仏毀釈の嵐が吹き荒れ、各仏閣、寺院は廃れ、日本国の伝統文化と芸術が壊されている。一方、欧米では東洋美術が評価され始めている。
 近代化と伝統の狭間で揺れる明治時代に、秘仏開帳に関わったものたち、それぞれの生きざまが群像劇として描かれている。

「これから先の千年、遺すために何を為すべきか」
 近代化と伝統の狭間で揺れる人々の葛藤と矜持が描かれているはずなのだが・・・
 女にだらしない男、権力志向が強すぎるがゆえに失敗し官界から去り行くもの、妻を寝取られながらもその男を許さざるを得ない夫たる男等々、あまりにも無様な男どもの生きざまが楽しい。

(内容紹介) 
 千年の畏れを超え、フェノロサと岡倉天心によって開かれた、法隆寺・夢殿の扉。秘仏・救世観音像の微笑みに、彼らが見たものとは。

 飛鳥時代に聖徳太子の姿を模して造られたと言われる、法隆寺夢殿・救世観音像。
 その厨子は鎌倉時代以降、固く閉ざされ、扉を開けば直ちに仏罰が下ると信じられていた。

「金のために秘仏を見せるというのか」
「支援がなければ、法隆寺はもう保てません」

「開いて、守れ」

 国内では廃仏毀釈の嵐が吹き荒れ、
 しかし、欧米では東洋美術が評価され始めている。
 近代化と伝統の狭間で揺れる明治時代に、秘仏開帳に関わったものたち、それぞれの思いとは。

「これから先の千年、遺すために何を為すべきか。」
 近代化と伝統の狭間で揺れる人々の葛藤と矜持を描く傑作歴史小説。

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2025年04月05日

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少し前に廃仏毀釈を調べたり
最近六角堂にいったばかりなのですごく楽しく読めた

学生時代の歴史の勉強は嫌いだったけど
こういう知識の入れ方だと興味もてるんだなあと
本筋とはちがうけど

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2025年03月20日

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もう随分前に行って、
法隆寺の大垣(築地塀)や回廊の美しさに
心うたれて、
絶対また来よう!って思っていたのに。
この本を読んだ今年こそ、特別開扉時に行こう!
私には何が見えるだろうか?

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2025年03月15日

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未公開の法隆寺の救世観音像を開いた時にその場にいた写真家やフェノロサ、岡倉天心らはどんな人物なのか、

非常に面白かった。フェノロサたちの人生が興味深い。

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2025年02月23日

Posted by ブクログ

法隆寺夢殿の秘仏、救世観音像の開張を巡る関係者たちの、災いをもたらすと言われた開張後の物語。
秘仏の扉を開ける場面を、それぞれの章で取り上げた人物の視点から描くので、同じ場面が少し違った意味合いを持ち、話の展開を興味深くさせている。
救世観音像の廟を開いたフェノロサとしか認識していなかった読者としては、廃仏毀釈からの救世観音像開張などの背景を面白く読ませてもらった。

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2025年02月18日

Posted by ブクログ

法隆寺の厨子、秘仏 救世観音像をめぐる歴史小説。
章毎に主語が変わるが、とても読みやすく、歴史の知識が薄くても楽しめる。

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2025年02月15日

Posted by ブクログ

2025.11 自分も仏像見るのは好きで、仏像見るときには色々な思いに馳せるのでこの小説はすっと世界観に入り込むことができました。

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2025年11月16日

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秘仏=法隆寺夢殿救世観音像
この秘仏を開けた明治時代の数名の人物の話。
今は年に2回公開されるらしいので今度拝みに行きたいと思った。

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2025年06月16日

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連作短編集6篇
法隆寺の秘仏救世観音菩薩の開帳に関わった人々の物語。写真家小川一真、九鬼竜一、法隆寺の定朝、フェノロサ、岡倉天心、町田久成のそれぞれの救世観音菩薩の印象と人生。

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2025年06月01日

Posted by ブクログ

法隆寺に祀られている菩薩像は扉を開けた者に仏罰が下ると言い伝えられ鎌倉時代から秘仏とされてきた 明治時代になり「廃仏毀釈」により寺院や仏像が壊され打ち捨てらる危機に陥る 秘仏を開けざるを得なかった法隆寺の定朝始め、役人、写真家、日本を愛する人達、それぞれの視点で書かれている
明治の混沌とした時代に日本古来のものを守ろうとした人達がいた事を初めて知った

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2025年04月17日

Posted by ブクログ

明治初期、文明開化と共に西洋文化の導入に邁進していた日本。同時に廃仏毀釈運動のため法隆寺でさえ貧窮し、多くの文化財が海外に流出していた。それを憂う一部の文部省の人間が強引に推し進めた文化財調査で、法隆寺夢殿に200年以上も秘仏として封じられてきた救世観音菩薩像も開かれる。その場に立ち会った写真家・小川一眞、元文部省高官・九鬼隆一、法隆寺管主・千早定朝、東洋美術史家・フェノロサ、東京美術学校初代校長・岡倉覚三(天心)、後の帝国博物館初代館長・町田久成を各章の主人公に置き綴られる群像劇。
とは言えね、写真家と法隆寺管主を除けばどうも登場人物は頂けない。女癖が悪かったり、恩人を裏切ったり、強引だったり。そういう個々の情けない人物像をさらけ出しながら、一方で群像全体としては西洋化一辺倒の中で「日本文化」を守った姿が面白い。

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2025年02月06日

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