永井紗耶子のレビュー一覧
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ネタバレ『あだ討ち』に至る物語の真相を主軸に、それを取り巻く芝居小屋の面々の来し方に心打たれた。
このところ、存在のすべてを〜熟柿と親子愛に涙する小説が続いていたが、今回も久蔵の段で胸が締め付けられた。まあ坊を想って打ち首を作り上げた久蔵の心情はいかばかりか。ただひとり、死にゆく幼な子を抱きしめるしか出来なかった母のお与根の悲しみは、いかばかりであったか。
そこかしこに不条理が存在する江戸の世。元大工の年寄りが無惨に斬り殺されても奉行所は動かない。殺した当人は士官先まで手に入れる。自身の来し方行く末に悩む与三郎に、お三津が働く飯屋「つるや」の親父が言う。『しかし、まずは御身を大切に。腹を満たして笑 -
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まず、すごく読みやすい。江戸時代の口調で語りが進んでいくが、時代小説にある読みづらさというのが全くない。江戸時代や芝居のことを全く知らなくても問題ない。
そして、続きが気になる。読むたびに真相は何か早く知りたいという気持ちが強くなる。真相は芝居小屋の人たちによって次々と明らかになっていき、最後に菊之助自身の語りが始まって完結する。菊之助自身の語りはもう一気読みしてしまった。
悪所と呼ばれる芝居小屋の人たちと武士がどのように関わっていくのか、タイトルが仇討ちではなく"あだ"討ちの理由が何なのか、すべてが明らかになった時の読後感が心地よい。 -
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ネタバレまず、仇討ちについて調べている武士は何者?という疑問を抱きながら読み進めていった。
次第に菊之助が父に殺されそうになったことが判明。なぜ?
良い人だった作兵衛はなぜ博徒になったのか?
目撃者も多く、完璧に行われたはずだった木挽き町の仇討ち。
しかし、何かおかしい…。
人情物でありミステリーである一冊。
謎が解けた時、ほっとしてああ良かったという気分になった。
(実は途中からだいたいトリックはわかっていたが)
武士が話を聞いて回った芝居小屋の人たちの人生は苦悩に満ちたものだった。
ひとり一人とても重たい内容。
でもそういうことを笑い飛ばし、力強く生きていく逞しさがあった。
このお話は勧 -
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今年一番の一冊。舞台は激動の幕末。町人を描く物語としては王道の設定でありながら、本作の魅力は、主人公・勘七を始めとする全ての人物の圧倒的な生命力であり、時代に流されず‘粋’を留める江戸商人を鮮やかに描く。
勘七の師となる勝海舟、浜口儀右衛門は、‘時の龍’を見失わないこと、三方よしの精神はどんな時代でもそれに合わせた生き方を導くことを説く。真っすぐで優しいが故に流されやすい勘七が、生来の頑固さを武器に商人として成長していく姿は実に眩しい。
勘七を取り巻く仲間たち3人の描き方もまた多様で秀逸。武士の矜持を貫き殉死した直次郎、ふらふらしながらも人を楽しませる本質を知り誰より仲間想いな紀之介、堅 -
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映画化もされた『木挽町のあだ討ち』に次いで、永井さん著の本作を手に取りました。物語の主人公が、キーになる人物にまつわる人々を尋ね聞いてまわって、その核心に迫っていく、という話の組み立ては『木挽町…』に似ているなと思いました。
本作を読み進めていくにつれて、そのキーになる人物“海保青陵”の「自由自在」を旨とする考え方と、江戸末期の世の中のしがらみとか古くからのしきたりといった「歪み」をどうにかして変えようとする人々とが、次第にリンクしていったことが明かされていきます。
往々にしてありがちなのは、急激な変革を目指すがあまり、「〇〇の変」とか「△△の乱」などといった急進的な動きへと発展し、中心人 -
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雪の降る夜、芝居小屋のそばで若衆・菊之助が父の仇を見事に討ち果たす——その鮮烈な一件から二年後、真相を知りたいと一人の侍が木挽町を訪れるところから物語は動き出す。
この作品の妙は、あだ討ちそのものではなく、それを語る人々の側にある。芝居茶屋、稽古場、衣装部屋、長屋、枡席——芝居小屋に生きる者たちが幕ごとに口を開き、あの夜の輪郭は少しずつ塗り替えられていく。彼らが語るのは事件の断片であると同時に、それぞれが背負った半生でもあり、その積み重ねが群像劇としての厚みを生む。
武士として筋を通すことの厳しさと、市井に生きる者たちのさりげない情の深さ。その対比が押しつけがましさなく描かれ、堅苦しいはず -
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江戸時代の儒学者、海保青陵が亡くなり、最後に弟子入りした堺屋弥兵衛と同じく若手弟子の暁鐘成は各所にいる先生ゆかりの方々に訃報回りをすることになった。その旅先などで会った人の語りなどから、天才であった青陵が尾張徳川家に勤めることの辛さや、家族との関係、その後の生き方、各所での影響力など読ませてくれる。日本史を学んでいれば既知の人物が多数出てくるが、日本史音痴の私でも物語としてスラスラと楽しめた。
政治の大局を見ながら自由に生きるという、当時ではあり得ない発想と、自由にみえて周りを気遣い愛し守りたい欲もあり、万人に共感を呼ぶ内容だと思った。あと、家庭を持たない主義だった青陵に妻子がいたのかも?とい -
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奈良は法隆寺夢殿、その厨子に安置された秘仏は千年以上ほとんど誰の目にも触れることなく長い時を過ごしてきた。時は明治、開けば災いもあると言い伝えられるその扉は開かれることになった。日本美術の評価に尽力するフェノロサと岡倉天心を中心にして。ついに姿を現す夢殿の救世観音像を前にして、彼らは何を思うのか――。
ということで本書は明治期の日本を舞台にして、秘仏の開扉をめぐる人々のドラマを描いた連作集です。写真家や僧侶など様々な立場の人物が配されて、時系列を行ったり来たりさせて、それぞれの短編がゆるやかに繋がり、物語の奥行きが増していくのがとても心地の良い作品でした。ラストである人物が、「黎明の時代