永井紗耶子のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ええか、世の中の大半の揉め事はな、振り上げた拳の下ろしどころを見失うことで起きる。せやけどお前の言う通り、黙っていればええというわけやない。言わなあかんこともある。
窮屈な世の中で物を言うには、身を守ることを忘れたらあかん。言って、殺されたんでは元も子もないからな。その為には、相手に拳を振り上げさせず、上げたとしてもすぐに下させるように間を空けとくことが大事や。その間が狂歌に欠かせぬ滑稽であり、風刺、諧謔や。面白おかしゅう書けばええ。生真面目にいうたら喧嘩になる。せやけど下らない言葉に乗せてしまえば、真に受けて怒った方が恥をかく。力を抜いて、笑いながら書け
筆は卵や。ここからは武者も美女も神仏 -
Posted by ブクログ
江戸城・大奥のお仕事小説短編集。
ひのえうまの女・・・奥女中の要・御年寄に仕えたお利久。
家の事情も伴い、大奥で出世したい願望あれど、今の仕事は
心あらず。だが思わぬ出会いから自分を生かせる道を見出す。
いろなぐさの女・・・「私にご指南いただきたいのです」
呉服の間のお松の境遇からの悩み。呉服問屋の千沙と
女形の岩井粂三郎との出会いと語らいは、己と向き合い人と
向き合う大事さを知ることになる。それは二人も同様に。
くれなゐの女・・・御末の玉鬘は大柄な身体が悩み。だが夕顔との
出会いで変化が。夕顔の見事な処世術。心に残るのは、
白塗りの顔と皆を笑顔にさせる夕顔の心持の逞しさ。
つは -
Posted by ブクログ
ネタバレ歴史・時代小説として原三溪の人となりを描いた本。といっても原三溪が主人公ではなく胡乱な若手実業家が原三溪を知る商売敵、元芸者、元女中、そして前田青邨や松永安左ヱ門という実在の人物との対話を通して原三溪の姿をあぶり出していく展開が秀逸。
昭和初期の華やかな横浜の風景をキングの塔、ニューグランド、聘珍樓など実存する場所を織り交ぜ浮かび上がるような描写が読んでいて楽しい。関東大震災や第二次大戦の空襲といった横浜の苦難の時代もカバーしていて横浜生まれの作者の思いを感じさせる。
ユニークな切り口とライブ感あふれるタッチでありし日の横浜を描いた秀作。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ実写映画公開の直前のタイミングで読むことができました。
雪の降る夜、江戸・木挽町の芝居小屋の近くで菊之助なる若衆が成し遂げた仇討ち。
その見事な仇討ちが果たされた背景には、菊之助が芝居小屋「森田座」で出会った人たちの粋な計らいが隠されていたー。
今で言うと、お芝居に携わる人たちに対しては華やかな印象を持ちますが、武士が支配階級であった時代は芝居小屋は悪所とも呼ばれ、武家階級からは蔑まれていたんだそうです。
本作に語り手として登場する森田座の人々も、複雑な生い立ちや辛い過去を背負い、葛藤しながらも懸命に生きてきた様子が描かれています。
しかし、それぞれが心に傷を抱えているからこそ、菊之助の痛