永井紗耶子のレビュー一覧
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ネタバレ江戸中期の文化人の栗杖亭鬼卵を描く歴史小説。
題材が大阪の江戸中期の文化人ということで、江戸では蔦屋重三郎が活躍していたころで有名人が多いが、大阪の文化人はよく知らなかったので勉強になった。
登場人物の有名どころでは、松平定信、円山応挙、次いで雨月物語の上田秋成と江川英毅(英龍の父)くらくいで、後の文化人(栗柯亭木端、如棗亭栗洞、木村蒹葭堂、志村天目、夜燕、五束斎木朶など)は知らなかった。
鬼卵を知らなかった自分としてはよくわからなかったが、物語的には鬼卵と定信が直接出会ってやり取りするところが史実の隙間を縫っていて面白いのだろう。 -
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既に出来上がっている仕組みを変えることは容易ではない。永らくその仕組の中で生きていると、そもそも「変えられる」という発想にすら立てないからだ。起きていることの本質を見極める眼と、根本から崩して造り直すことに挑める胆力。強い信念を貫き突き進むことができる改革者は、結果的に多くの敵を一身に引き受けることとなり、短命で散る運命なのか。
物語が弥三郎の視点から語られることで、茂兵衛・茂十郎の凝縮した生を共に生ききる感覚が薄まってしまったのは残念。むしろ弥三郎が主人公なのだと思えば、気持ちが重なる部分も多く、自身の想いに真っ直ぐに「できること」をしていくことで、歴史の転換点を支え見届ける一つの力にもなり -
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一か月前に読み終わりレビューも書いたのだが、手違いで消してしまいそのままになっていた。好きな本だったので備忘録ぐらいにはまとめようと気を取り直す。
主人公の栗杖亭鬼卵は江戸時代の戯作者。河内(大阪府)出身の下級武士で、その後絵画、狂歌、連歌、俳諧をたしなみながら諸国を遍歴する。伊豆韮山代官江川家の手代として三島に住み、その後官を辞して駿府に移り、寛政末ごろからは遠江国(静岡県)日坂に住み煙草屋を営む。別名に平昌房、伊奈文吾、大須賀周蔵とも名乗っている。
定信は東海道日坂宿の煙草屋を営んでいる鬼卵と出会う。定信は寛政の改革を老中として推し進め、60を過ぎて地元・白河藩主の座からも引退。いまは「風 -
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ネタバレ明治時代の(成金)男爵の娘としては勝ち気でお転婆。
そんな彼女がある男爵の毒殺事件に巻き込まれて、それを華麗に解決!
という話ではないのがこれ。
確かに事件の謎は追っていくけれども、そこで突きつけられるのは勧善懲悪とはいかない現実の厳しさと難しさである。
この話、実行犯については終盤にならずとも分かってくるし、何だったら読者側にも早めに情報開示される。
つまり、実行犯が誰かについては重要視されていない。
寧ろ、何故男爵が殺されるに至り、そしてその結果どうなったかを考える方に重きが置かれているように思った。
だから犯人を見つけ出して指さして「犯人はお前だ」と指摘すれば終わるという単純明快な話で -
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華族の家族の物語。
文庫なので裏表紙に惹句が書いてあるけれどこれがひどい。本作の主題はねじ曲げているし、些末な出来事を物語の中心であるかの如くになっている。
なんとしてもミステリー棚に入れたいという営業的目論見によって書かれたのでなければ、本作を読んでいないか、あるいは読解力に難のある人物の筆によるものだろう。
これを真に受けたならおそらくは読まなかった。これほど内容を薄っぺらに感じさせる惹句はこれまで見たことが無い。著者はこれで良しとしたのかな?
殺人事件は経過の一部に過ぎず、探偵役の謎解きなどはなくても成立する。華族という社会階層に起きた事件は、その当時の男性中心の社会制度や、帝国主義