永井紗耶子のレビュー一覧
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明治21年6月、法隆寺夢殿。今まさに秘仏、救世観音像の厨子が開けられようとしている。
そこには、宮内庁図書頭かつ全国宝物取調局委員長・九鬼隆一、東京美術学校幹事・岡倉覚三(後に天心)、取調局委員・アーネストフェノロサ、外国人資産家・ビゲロー、写真家・小川一眞、その他役人記者たち。そして法隆寺大僧正・千早定朝。
国内では廃仏毀釈の嵐が吹き荒れ、各仏閣、寺院は廃れ、日本国の伝統文化と芸術が壊されている。一方、欧米では東洋美術が評価され始めている。
近代化と伝統の狭間で揺れる明治時代に、秘仏開帳に関わったものたち、それぞれの生きざまが群像劇として描かれている。
「これから先の千年、遺すために何を為すべきか」
近代化と伝統の狭間で揺れる人々の葛藤と矜持が描かれているはずなのだが・・・
女にだらしない男、権力志向が強すぎるがゆえに失敗し官界から去り行くもの、妻を寝取られながらもその男を許さざるを得ない夫たる男等々、あまりにも無様な男どもの生きざまが楽しい。
(内容紹介)
千年の畏れを超え、フェノロサと岡倉天心によって開かれた、法隆寺・夢殿の扉。秘仏・救世観音像の微笑みに、彼らが見たものとは。
飛鳥時代に聖徳太子の姿を模して造られたと言われる、法隆寺夢殿・救世観音像。
その厨子は鎌倉時代以降、固く閉ざされ、扉を開けば直ちに仏罰が下ると信じられていた。
「金のために秘仏を見せるというのか」
「支援がなければ、法隆寺はもう保てません」
「開いて、守れ」
国内では廃仏毀釈の嵐が吹き荒れ、
しかし、欧米では東洋美術が評価され始めている。
近代化と伝統の狭間で揺れる明治時代に、秘仏開帳に関わったものたち、それぞれの思いとは。
「これから先の千年、遺すために何を為すべきか。」
近代化と伝統の狭間で揺れる人々の葛藤と矜持を描く傑作歴史小説。 -
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作家さん達が全国18か所の灯台を巡り、紹介する紀行文。島国である日本人は古くから海と共生してきたが、現在のような西洋式灯台が建設されたのは明治維新以降になってからだという。風の吹きすさぶ岬の突端でポツンと立ちながら必死に灯を届ける様子は、孤高であり浪漫を掻きたてられる。
近代日本の文化遺産として、灯台が見直されつつあり、各地域では新たな観光資源となっている。各地に旅行に行く際に、灯台へふらりと寄ってみるのも楽しそうだ。私の地元の灯台も紹介されていたので、まずはそこから訪問したい。
また、どの作家さんも『喜びも悲しみも幾年月』という映画について言及されていた。近代日本を支えた誇りある灯台守という職業とその過酷な暮らしについて興味が湧いた。 -
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11代将軍家斉といえば、側室数十人、子供も五十数人。庶民の生活苦をものともせず、遊蕩に耽っていたことで有名だが、その頃の大奥の物語。
将軍お手つきの者を「汚れた方」というのだが、そうではない「お清」たちのお仕事小説集。
さすが時代小説に造詣の深い著者の作品なので、当時の大奥のしきたりなどを読んでも説得力もあり、それを知る楽しみもあった。
大奥に入るいきさつなど、当時も生きづらかった女性たちが、大奥に入ることで、自分の生きる道を見つけていく前向きな話が多く、読後感もよかった。
高貴な方たちが飼う猫が、大奥の中を歩き回る「ねこめでる女」が一番好きだった。
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著者の小説は”木挽町のあだ討ち”からの2冊目。
今回も芝居小屋の”森田屋”は出でくるけど話し登場人物はまったく違う。
金四郎(武士だけど、実家をを出て町人として”芝居小屋の笛吹の見習い”)が正面向いて刺されて死んでいた遊女の雛菊の死の真相をたどっていくというもの。
この時代の女性っていくら武士の地位にあっても両親が亡くなって家が没落してしまえば遊郭に売られていってしまって
死んだあとも遊女ってことで簡単に葬られてしまうなんてね。
その心中しそこねた男(雛菊のただの客のひとり)死にたい男と刀で人を刺殺したい男の間をこの金四郎の活躍でどうにか収めるという話し。
絵描きの国貞や金四郎を預かる南畝先生など魅力的な登場人物たちもいい。
旗本って武士の中でも上の方なんだね。
この本を読むまでそれも知らなかったわ。 -
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江戸の商業に革命を起こし途上で消えた男、杉本茂十郎。想像以上に面白く、あっという間に読み終えてしまった。私自身、ものを作らない業界で働いている関係で、商業・金融の果たす「繋ぎ」の価値について考えさせられた。
栄光と没落、後半は陰ってばかりなのにどこか爽やかなのが印象的。茂十郎が残した遺産は多々あれど、その後の商業界は狐狸が跋扈し混沌としていくという点が幕府への皮肉としてそう思わせるのかもしれない。初めて作者だったが、人となりや心情を描くのが非常に上手だと感じた。一方で彼女らしさを感じられなかったので、他の作品で見つけられることを期待したい。