あらすじ
絶体絶命の紙問屋、大逆転の妙手は!?
時は、大老井伊直弼が惨殺され、動乱の気配が漂う幕末。
紙問屋永岡屋で誠意一筋、長年精勤してきた勘七は、主人善五郎の強い望みで跡を継ぎ、若旦那となった。
その勘七に小諸藩の上屋敷奉行高崎から大きな初仕事が舞い込む。藩札作りだ。
小諸藩は明君の呼び声高い藩主がおり、政は安定、財も潤沢らしい。藩札作りには二千両も支度してあるという。
幸先のよい出だしを切った、勘七がそう思ったのも束の間、商売仲間である醤油問屋広屋の浜口儀兵衛から、藩主が亡くなったと耳にする。
胸に不安が膨らむ中、ある夜、永岡屋が盗賊に襲われてしまう。盗賊はなんと高崎の配下だった。
配下は藩札と版木を入れた行李を盗んで姿を消したのだ。
襲われた際の傷がもとで、命を落とした善五郎を悲しむ暇もなく、主人として小諸藩に赴き、商いを質す勘七。
だが、新任の上屋敷奉行は「賂を受けていた前任の空の商い」として、二千両を踏み倒しにきた。
絶体絶命の危機に瀕した勘七に大逆転はあるのか?
幕末の三舟こと勝麟太郎や豪商高島屋嘉右衛門らの協力を得ながら、命を懸けて再建を図る勘七の懊悩と奮闘を、直木賞作家が瑞々しく描く。
商人道小説の傑作!
※この作品は過去に単行本として配信されていた『福を届けよ 日本橋紙問屋商い心得』 の文庫版となります。
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Posted by ブクログ
面白い時代小説を、というなら、私は迷わず永井紗耶子さんをお薦めする!
今回の本は、舞台は幕末の江戸。主人公の紙問屋の若旦那である勘七は、実直な青年ながら、時代の物価高騰や武士社会の変遷の波に飲み込まれていく。
私は若い頃は武士が主役の幕末小説や戦国時代ものを好んで読んでいたけど、今はその陰で懸命に生きてきた商人や町人らの話が読みたいのよ。
勘七も、粋な人生を生きる紀之介も、男顔負けの商才があるお京も、みんな感じがよくて好き。
Posted by ブクログ
時は幕末。日本橋紙問屋永岡屋の若旦那勘七の、理不尽な借金を負い、幕末の動乱に巻き込まれながらも成長していく商人の物語だ。
幕末から明治にかけての急激な変化に当時の人々は大変混乱したことだろう…。
勘七の、迷いながらも、様々な人々に支えられ成長していく様は読んでいて清々しい。
Posted by ブクログ
202504/こういう商い時代ものが好みというのもあるが、キャラも物語もとても良かった!旧題(福を届けよ)より今回のタイトル(旅立ち寿ぎ申し候)が良い。
Posted by ブクログ
冒頭 勘七は幼なじみの1人直次郎を桜田門外の変で喪う。
三年後 奉公先の主人 善五郎に強く望まれ跡を継ぎ若旦那となった勘七。
料亭の倅でありながら自らの信念に従い芸者の箱持ちとなった紀之介。
武士の家に生まれながら武士として生きられなかった新三郎。
商家に生まれながら武士となり武士として死んでいった直次郎。
四人の幼なじみの若者達。折しも時は幕末。時代が大きく揺れ動いていた。
主人公 勘七が時代に翻弄されながらも先代の「商人は人に福を届けることが務めだ」という志しを見失わずにいることができたのはやはり周囲の人々の支えがあったからだろう。
それに比べて新三郎の生き様は読んでいて苦しい。
四人それぞれが選んだ生き方がそこにあった。
激動の中の不穏な江戸市中の様子がよく伝わってきた作品だった。
Posted by ブクログ
読み始めて幼なじみは死ぬし、2千両の借金を負うし、どうなることやらと思ったけれど爽やかな内容だった。義理の父や勝先生、浜口さんや人生の先輩たちの言葉が沁みる。時代は変わったけれど、彼らの言葉(福を届ける、三方よし)や思いは今も通用すると思う。