永井紗耶子のレビュー一覧
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映画を先に観てから読みました。普段は、原作→映画のパターンですが今回は結末を知りつつ、登場人物は映画のキャストをあてて読む…という感じでしたが、最初のあだ討ちのシーンは映像のおかげかよりイメージが深まりました。
設定は若干異なるものの、最近の江戸時代マイブーム(蔦重)もあり芝居小屋や悪所と呼ばれる場所の背景が理解できた上で読めたのは良かったな。
武士としての矜持、木挽町の人々の人情、芝居小屋のこと、舞台に立つものと支えるものの絆みたいな。
でも結局は、どんな場所で育っても、地位が違っても、人と人なんだなと思わせてくれる、真剣に付き合って向き合えばわかりあえると信じられる物語でした。
あだ討 -
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奈良は法隆寺夢殿、その厨子に安置された秘仏は千年以上ほとんど誰の目にも触れることなく長い時を過ごしてきた。時は明治、開けば災いもあると言い伝えられるその扉は開かれることになった。日本美術の評価に尽力するフェノロサと岡倉天心を中心にして。ついに姿を現す夢殿の救世観音像を前にして、彼らは何を思うのか――。
ということで本書は明治期の日本を舞台にして、秘仏の開扉をめぐる人々のドラマを描いた連作集です。写真家や僧侶など様々な立場の人物が配されて、時系列を行ったり来たりさせて、それぞれの短編がゆるやかに繋がり、物語の奥行きが増していくのがとても心地の良い作品でした。ラストである人物が、「黎明の時代 -
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時は江戸。歌劇座がひしめく一角で、朗々とした口上とともにあだ討が成された。
仇は悪名で鳴らした博徒で、それを打ち取ったるは色白の美少年である若殿。
父の仇である博徒を打ち取った若殿は仇の首を持ち上げて、ここにあだ討は為されたことを宣言すると夜の闇に消えていった。
そんな事件から2年が経ったころ、あだ討が成された通りにある歌劇座に一人の武士が訪れる。
なんでもその時のあだ討の様子だけでなく、話し手の来し方も聞きたいという珍妙な客であった。
と、この珍妙な客に応対する様々な人の答弁という形で話が進んでいく。
話の進み方。ミステリー要素。そして何より喜悲こもごも綯交ぜにした人情劇。
見事という -
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ネタバレ木戸役者の口上に耳を貸したら、気づけば枡席で極上の芝居を見入っていた。
とてもいい小説だった。粋でありながら、軽やかだ。古いけど新しい。昔ながらの歴史小説家には怒られるかもしれないが、歴史小説初心者の僕にとっては非常に読みやすかった。
まず文章がいい。本当に小気味よく頭に入ってくる。語り部によってその読み口が異なるのだけど、どれも味わい深い。特に『枡席の場』は格別だった。
森田座の人たちの来し方もいい。時代背景は違うはずなのに、不思議と胸を打つエピソードがいくつかあった。人が何かに悩み、それを乗り越えることはいつの時代だって同じなのだと勇気づけられた。
そしてなんといってもあだ討ちに秘 -
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ネタバレ海保青陵という人を、この小説で初めて知った。
江戸時代の封建制に似合わない、自由で柔軟な考え方を持つ。藩の縛りを解いて、経済を活発にする手立てを考える、経営コンサルタントのような人だ。
こういう人に、武士の勤めができるはずがないし、商家の主人にも向いてはいない。その人生は、彼が亡くなった後に明らかになる・・・。
最後の弟子となった弥兵衛は、16歳。弓を商う家の跡取りだが、弓職人も、商売も苦手で、海保青陵に惹かれていき、弟子となる。海保の死後、兄弟子の暁鐘成とともに、師が世話になった知人を訪ね歩く。その様子はちょっとした、弥次喜多道中のようだ。弟子たちは、海保青陵を知るにつれ、一つの謎に突き当 -
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昨年奈良旅行に行き
法隆寺愛に溢れたガイドさんから
2時間濃いぃ案内を受け、
飛鳥の風を感じて本当感動しました。
本著に登場する秘仏、救世観音は残念ながら公開時期ではなかったので拝見できませんでしたが
宝物館で百済観音にはお会いできました。
百済観音も目の前にすると畏怖というか、ほんとなんとも言えない気持ちになり、しばらく動けなくなりました(語彙が、、)
そんな法隆寺にこんな苦境の時代があったなんて、、
日本史で「廃仏毀釈」という言葉を教わった記憶はありますが
1300年?の歴史ある法隆寺のようなお寺にまでその塁が及んでいたとは全く知りませんでした。
秘仏開帳に関わった六人の男たちの話がオ -
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江戸後期の経世家、儒学者の海保青陵。「経世在民」を唱え、自由自在を旨とし、江戸の世に自由な生き方を説いた青陵が亡くなるところから話が始まる。
彼の最後の弟子である堺屋弥兵衛が、師の遺言である「遺灰は空に撒け」の言葉を胸に青陵ゆかりの人々を訪ね歩くいわばロードストーリー。
「変人」と評される青陵の人となりがなんとも魅力的。弥兵衛が訪ねる先々で出会う青陵縁の人々が語る彼の逸話がいちいち面白い。
膠着した武家のしきたりに異を唱え、自由な意見の交換を何より楽しむ姿。前例踏襲の悪弊を説き、変化を求めることの難しさも知りながら、「自由自在」を若い者たちに伝えていく過程。
そんな師の姿を見聞きし、改めて