あらすじ
直木賞受賞作『木挽町のあだ討ち』が実写映画化!
「自由」に生きることの真実を描く歴史長編。
弥兵衛が弟子入りをして間もなく、師の海保青陵は亡くなった。当代きっての儒学者で、経済にも精通し、江戸の世に「自由ナル」生き方を説いた青陵。京弓師の跡取りでありながら職人としては未熟で、算盤勘定や商いにばかり惹かれる16歳の弥兵衛に、その「商い」こそが世を変えると教え、「自由自在」に生きる道を示してくれた先生だった。最後の弟子となった弥兵衛は「遺灰は空に撒け」という師の遺言を胸に、兄弟子と連れ立って青陵ゆかりの人々を訪ね歩く。江戸の実弟、変わり者の絵師、川越の商人、秩父の家老、金沢の隠居、そして京――。青陵に人生を変えられた者たちが語り出す、亡き師の思いがけない過去、人知れぬ後悔とは。
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Posted by ブクログ
江戸後期の経世家、儒学者の海保青陵。「経世在民」を唱え、自由自在を旨とし、江戸の世に自由な生き方を説いた青陵が亡くなるところから話が始まる。
彼の最後の弟子である堺屋弥兵衛が、師の遺言である「遺灰は空に撒け」の言葉を胸に青陵ゆかりの人々を訪ね歩くいわばロードストーリー。
「変人」と評される青陵の人となりがなんとも魅力的。弥兵衛が訪ねる先々で出会う青陵縁の人々が語る彼の逸話がいちいち面白い。
膠着した武家のしきたりに異を唱え、自由な意見の交換を何より楽しむ姿。前例踏襲の悪弊を説き、変化を求めることの難しさも知りながら、「自由自在」を若い者たちに伝えていく過程。
そんな師の姿を見聞きし、改めて青陵と出会い直していく弥兵衛。家業を継ぐことに迷いを抱いていた弥兵衛が、旅を経て成長していく姿がなんとも頼もしい。この弥兵衛を主人公に据えて、青陵という人間を描いていくという手法が効いている。そして最後に明らかになる驚きの事実…。
最後には福沢諭吉まで登場して、世の中が変化し、時代がやっと少しだけ青陵の考えに追いついてきた未来が描かれるのがいい。
変化を嫌う頭の固い人たちが、「前例がない」と柔軟な考えを否定し、潰していく姿はまったく今に通じるものがあって、大事なのは「理(ことわり)」なのだ!という青陵の声が聞こえるようだ。
最後まで爽やかで、清々しい気持ちになる良作でした。
Posted by ブクログ
出会って僅か4か月。儒学者で経世家の海保青陵の死は、
16歳の末弟子・堺屋弥兵衛に、大いなる悲しみを与えた。
そして師の訃を伝えるために兄弟子の暁鐘成と共に
師の足跡を辿る旅に出る。
・序
第一章 賢弟 第二章 うそ八
第三章 大地球頭第一花
第四章 鰻の蒲焼 第五章 末弟子
・終
主要参考文献、論文一覧有り。
「死んだら火葬し骨を粉にして空に撒いて欲しい」
師の訃と望みを伝える相手には、青陵への想いが胸に在る。
江戸で会うのは、尾張徳川家に仕える青陵の弟・瑞陽。
彼が抱えるのは、共に過ごした兄への羨望と憤り、そして思慕。
絵師・司馬江漢。難儀な人「うそ八」の、
「辞世ノ語」に至る、青陵との縁と心躍る交流。
忍藩の元家老・加藤市之丞は、青陵の話と提案に
戸惑いながらも学んだことが今も心に残る。
金沢藩の元出銀奉行・冨田景周は、青陵の自由気ままの中に
情の厚さを感じる。だからこその記憶は、苦く辛いものに。
半年の旅を終え京に帰った二人。
改めて師の人柄と考え、そして人との繋がりを知った。
京で待っていたのは、ある真実。
弥兵衛は更に青陵の足跡と想いを知ることになる。そして・・・。
実在した儒学者で経世家の海保青陵の足跡を、
人物伝のように描いた歴史小説です。ミステリーも有り。
江戸時代中期に生きた彼の、人生は過酷ではあったが、
学びと人との出会い、そして縁が「自由自在」な生き方に
形成されてゆく歩みが描かれています。
最初はしかめっ面だった話者が、語り終える頃には
柔らかな表情を垣間見せるようになる変化が、実に良い。
困惑や戸惑いはあれど、青陵の人柄にある心の熱さや
人を思う気持ちの厚さに触れたことは、
今でも思慕となって残っているんだなぁと感じてしまう。
当時の著名な文人たちや架空の人物たちの姿も
生き生きと描かれ、更に実在のマルチな戯作者・暁鐘成を
絡めたのも、面白かったです。