関川夏央のレビュー一覧
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2002年刊。月刊誌「本の旅人」、1997年10月号~99年4月号連載のエッセイ、8篇。
「なぜ私は本を読むのがやめられないのか」「紙とインクのにおい」は、少年期の読書とそれにまつわる思い出。ほかに青年期に見た映画についてのエッセイなど。
「須賀敦子の風景」は追悼エッセイ。須賀敦子とは親しく付き合った。亡くなる2年前には、小樽への旅に誘った。彼女は最初逡巡したが、行きましょうよと押しまくった。そして何人かの仲間と小樽へ旅行。彼女の死後、関川はなぜ彼女が小樽行きを決めたかを知る。ヒントは、没後に出た『遠い朝の本たち』に書かれていた。
須賀敦子は関川を「セキカワ!」と呼び捨てにしていた。書くものだ -
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最近、関川夏央の本が新たに発行されることが多い。岩波からは、2025年になって、2月に本書、そして3月に「文庫からはじまる」が出版されている。昨年から今年にかけては、中公文庫から「私説昭和史」と副題のつけられた3冊がシリーズで発行されている。
関川夏央は、まだ書いているが、1949年の生まれ、今年は76歳になる年であり、若い頃ほど、多くを書いていないはずである。ことしから昨年にかけて新たに発行されたものは、本書を含めて、これまでに発表されているものを編集し直したものである。
本書は司馬遼太郎についてのものである。本書を読めば、司馬遼太郎がとんでもない知識人であったことが理解できるし、同時に、関 -
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関川夏央は文庫本の「解説」を数多く書いており、その数200に及ばんとする、と本書に書かれている。本書は、その中から21編が選ばれ掲載され、一冊の本として編集されている。
紹介されているいくつかの作品は、関川夏央が解説を書いたかどうかとは関係なく読み、そして、読後に関川夏央の解説を読んでいる。そして、その解説は、本文を更に面白く輝かせていたように感じる。
須賀敦子の「ヴェネツィアの宿」の解説を、関川夏央は「彼女の、意志的なあの靴音」という題名で書いている。関川夏央は、実は朝日新聞の書評委員会で須賀敦子と同席していたこともあり、旧知の間柄であったのだ。須賀敦子が亡くなったのが、1998年の3月、そ -
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中公文庫で昨年十一月から毎月刊行されてきた<私説昭和史 三部作>の最終巻。I章からⅢ章までは、自身の青春時代を、執筆当時四十代後半だった著者が振り返るようなエッセイが並ぶ。筆致は、先の二冊に比べると、だいぶ軽い。Ⅳ章は、第一巻、第二巻で展開されてきた、過去や同時代の作家が描いた昭和について言及するエッセイがまとめられており、最後は、著者がかつて通った上智大学の近くにある陸上自衛隊市ヶ谷駐屯地に赴き、二十世紀の終わりに開館した市ヶ谷記念館を訪れ、三島由紀夫と森田必勝の切腹に思いを馳せるところで終わる。田畑あきら子の絵と文章、私も読んでみたい。
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関川夏央『昭和時代回想 私説昭和史 3』中公文庫。
関川夏央による『私説昭和史』の三部作の第三作。第三作は、関川夏央自身の昭和の思い出と昭和を代表する作家への思い、昭和時代の日本の姿を描いたエッセイ集である。巻末には書き下ろしエッセイを増補。
関川夏央は自分のひと回り上の年代である。関川夏央ほどではないだろうが、自分自身も十分に昭和時代を経験した年代であり、取り分け昭和という時代に対する思い入れも強い。
本作で関川夏央が描いているように、昭和の時代には家族で海水浴に行くのは一大イベントであり、電車などとは言わず、汽車と呼んでいた。また、昭和時代の父親というのは尊敬の対象であった。昭和の父 -
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「私説昭和史」と題され、中公文庫から昨年末以降発行されていた3部作の3作目。
1作目は、「戦後」を、小説および当時のベストセラーへの書評を交互に繰り返すという手法で描いたもので、文句なしに面白かった。
2作目は、吉野源三郎と幸田文を中心とした「戦前」の作家・文芸作品、および、戦後の「金曜日の妻たち」「男女七人シリーズ」というテレビドラマへの評論を綴ったもので、扱われている題材そのものに興味を持てず、自分的には今一つ、楽しめるものではなかった。
3作目の本書は、筆者が色々な雑誌や新聞に書いたエッセイを、テーマに沿って編み直してみたものであり、面白いと感じるエッセイもあれば、やはり興味を持てないも -
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関川夏央『家族の昭和 私説昭和史 2』中公文庫。
関川夏央による『私説昭和史』の三部作の第二作。第二作では、向田邦子、吉野源三郎、幸田文、鎌田敏夫といった時代を描く作家の作品に登場する様々な『家族』の変遷から、『昭和』の実像を捕える。巻末に新たに書き下ろした『自著解説』を増補。
昭和を舞台にした短編小説と昭和のベストセラー評論とが六章ずつ交互に並ぶ十二章で構成されるという面白い造りになっていた第一作の方が面白かった。今月末に刊行予定の第三作はどんな内容になるのだろうか。
昭和、平成、令和と自分が通過した時代の中で、戦争と高度経済成長の天国と地獄を経験している昭和は質実剛健のイメージがある -
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団塊の世代の著者が一九九三年夏、四十三歳のときに出した、「昭和戦後」を振り返る本。自身をモデルとした「平凡なコドモが、変化のはげしい時代相のなかで、どんな知見態度を身につけながら長じたのか」(p340)を短編小説として書きつつ、その合間に昭和をいろどったベストセラーについてのエッセイを挟み込んだ構成になっている。取り上げられた本は無着成恭『山びこ学校』、石坂洋次郎の『青い山脈』その他の著作、安本末子『にあんちゃん』、小田実『何でも見てやろう』、高野悦子『二十歳の原点』、田中角栄『私の履歴書』。上智中退の関川のこの本が新潮文庫に収められた一九九七年時点での文庫解説もこの中公文庫版に収められてい