関川夏央のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
漱石の晩年を幻想と共に描写
明治四十三年八月の大病で生死を彷徨う漱石と、明治に活躍する人々を引き合わせ、「坊ちゃん」の時代を総括する。
啄木が、「つね日頃好みて言いし革命の語をつつしみて秋に入れりけり」と詠んだとおり、大逆事件以後、官僚組織は軍部、これも官僚組織だが、と一緒に、御簾の向こう側に隠れて、あんなこともこんなこともやってしまい、日本を秋どころか冬に向かわせてしまう。
この巻では、漱石が「日本は滅びる」と言い、啄木が「日本は駄目だ」と言う。滅びるのも駄目なのも軽躁な国民の所為ではなく、特定の人々では、と思いたいが、今や特定は遍在するかのような気配だ。
いやいや、そうで -
Posted by ブクログ
彗星と共に明治の佳き日々が去る
大逆事件は日本の法曹界、最大の汚点だと思うが、戦時中にあれやこれやと同様、一億総懺悔のおかげか、あまり知る機会がない。
明治が日本近代の青春時代というなら、若気の至りとして目を瞑りたくなるが、奇兵隊の中隊長のやるこたぁ、凄惨極まりない。信州で見つかった手製爆弾から、その存在を知らない者までも含め、24人もの社会主義者などに死刑を下した事件だ。その事件と中心人物、爆弾のでなく大逆罪の、幸徳秋水が主人公だ。
作者も言っているいるとおり、この作品は、「ユーモアという重要な要素が欠けた憾み」が残る。にも関わらず、読後、いくらか爽やかであるのは、主義者達が -
Posted by ブクログ
谷口ジロースキーなのですが、このシリーズは中国で遊び人をしていた時分、お友達が幸徳秋水編を読ませてくれて知りました。帰国して一番最初に買った漫画だったのを今も覚えてます。
何度も読み返してもうボロボロなので、いい加減新しいのを買うべきなのだと思いつつ、まだ買ってません。この判型が谷口センセーの絵を活かせると思うんですがねェ……。文庫はどうも味気ない。
いずれにせよ、原作の関川先生と谷口先生の世界観が激突し、混ざり合い、熟成された、オトナによるオトナの為の漫画という表現だと思います。下手な歴史小説読むよりよっぽど為になり、面白いです。ホントに。