関川夏央のレビュー一覧
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「人間晩年図巻」の第五巻そして今のところ最終巻。2008年から2011年までの28人の晩年を記す。シベリア帰りの高杉一郎、本に憑かれた草森伸一、「月光仮面」の川内康範、漫画家の広井てつお、世界を驚かせた「ジュンコ」こと田部井淳子、俳優の峰岸徹、ニュースキャスター筑紫哲也、バブルの娘・飯島愛、「プカプカ」の彼女・安田南、体操の遠藤幸雄が養護施設育ちなのに驚いた、ロック歌手の忌野清志郎、迷惑千万の藤沢秀行、投身自殺した蘆武玄、プロレスラー三沢光晴、孤独死した大原麗子、嫌われた山城新伍、私が愛聴する浅川マキ、サリンジャー、反骨の北林谷栄、妄想と計画の梅棹忠夫、娘に祖国を語ったつかこうへい、石井好子、
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「人間晩年図巻」は、その年に亡くなった人たちを回想するシリーズである。本巻であれば、2004年から2007年の間に亡くなった方を対象としている。もちろん、山田風太郎の「人間臨終図巻」に倣ったものである。「人間臨終図巻」が、「死亡時の年齢」で分類しているのに対して、本書は「死亡時の西暦」で分類しているところが異なる。「何が面白いの?」と問われると少し困る。その人がその年に亡くなった事実自体に意味はなく、その人の人生を回顧している、その内容に味があるところが面白いのだろう。
本巻では、貴ノ花(初代)、仰木彬、吉村昭、青島幸男、小田実、真部一男、等が比較的知っている人たちで興味深く読んだ人たちだ。
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網野義彦、ロナルド・レーガン、マーロン・ブランド、フランソワーズ・サガン、本田靖春、星ルイス、阪田寛夫、岡田史子、ロック岩崎、貴ノ花、杉浦日向子、仰木彬、茨木のり子、宮川泰、今村昌平、吉村昭、ジョゼフ・オツオリ、青島幸男、宮本邦彦、石立鉄男、向坂ゆい、ミケランジェロ・アントニオーニ、イングマール・ベルイマン、小田実、谷口千吉、真部一男の晩年が語られる。有名、無名の人物の時に意外な、時に凄惨な生き様。愛読した岡田史子の死は、特に痛ましい。阪田寛夫の詩が心に残る。「熊にまたがり屁をこけば/りんどうの花散りゆけり 熊にまたがり空見れば/おれはアホかと思わるる」
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仙波龍英、梶山静六、青江三奈、吉田清治、大貫久男、並木路子、田山幸憲、山田風太郎、モハメド・アタ、古今亭志ん朝、張学良、左幸子、ビリー・ワイルダー、トール・ヘイエルダール、柳家小さん、矢川澄子、ナンシー関、岡田正泰、伊学準、安原顕、天本英世、加藤大治郎/阿部典史、チャールズ・ブロンソン/西村彦次、ネルソン吉村大志郎の晩年を収める。仙波龍英から始めるなど独自の人選の姿勢は変わらない。従軍慰安婦の嘘を騙り続けた吉田清治、パチプロの田山幸憲、テロリストのモハメド・アタ、オートバイレーサーの加藤大治郎/阿部典史、サッカー選手のネルソン吉村大志郎など、この本でその人生を知った人も多い。合掌。
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ネタバレ『なんで歳を重ねると時代小説を読むんだろうね?』という、友人とのふとした会話の流れから読むことにした1冊。
未来は過去の繰り返しで、時代小説も言わば“現代小説”であること。進歩しない人間の苦さは今も過去も変わらず、それを描くことで共感性が高まる。藤沢周平なんかはサラリーマンとの親和性が確かに高そう。苦手意識がある分野だけど、ちゃんと読んでみたくなった。これも年齢・経験を重ねてきた証拠なのかも。
また、内容的には文学的な側面からものだったが、科学的な側面からみるとどうなのかなあとは疑問に思った─ 例えば共感性が高まるであろう中高校生にこの魅力を伝えるにはどうしたらいいんだろう?仁義であったり -
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『坂の上の雲』を題材とした評論
12年くらい前に読んだきりで
児玉源太郎くらいしか(名前的に)覚えておらず
むしろ江川達也『日露戦争物語』が絵的印象
まず「政治と文学の分かれ」の項が面白かった
「政治」からの軽視も確かにそうだし
「文学」でも政治をばかにしているというのは当たっていると思う
日本以外ではどうなのか知らないが
それが「大衆」に向けた「文学」という現在の本流だ
次に末尾の「冷戦構造下的あなた頼みのセンスで生きている」という疑いもその通り
けれどそれが「大衆」だ
日比谷焼打ちもブログの炎上も起こる場所が違うだけで
そこに参加する人々の在り方は同じ
現代ならぬ現在の大衆が政治参加も
や -
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オーソドックスなハードボイルドだが4篇ともよかった。探偵は腹が出ようが仕事がなかろうがヤクザににらまれようがダンディズムを持ち続けようとする。そのダンディズムはチャンドラーのそれとは異なり、少し疲れた中年が入っていて美女には弱い。それでも名探偵にはダンディズムが必要なのだ。たとえ名前は必要なくとも。
文章のレトリックも心地よいし、2話目のリスボンという舞台設定にもやられた。仕事を依頼する老人はなんといっても藤村俊二だな。1、4話の事件が解決するようなしないような、放り投げるような結末もいい。またヤクザの黒崎、そして3話の大坪のふたりと探偵との独特の距離感を保った絡み方がなんともいえず心地よく -
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読破したのが、かれこれもう三日前ですから具体的な感想は書けないんですけれども(!)うーん…そうですねぇ…まあ、等身大の中年独身生活が描かれている感じですかねぇ…。
ヽ(・ω・)/ズコー
幸せでも不幸でもなく…淡々と続く生活、という感じですかね!
ヽ(・ω・)/ズコー
家庭がある人と比べて独身者は…そうですねぇ、確かに「アルバム」みたいなのは無いですよね! お子さんがいる方はアルバムを見開いて「あの頃は…」みたいな感じで回想できるんでしょうけれども、ずっと独り者を貫いてきた…というか、結果的にそうなっちゃった人は振り返るものとかあまり…無いように感じます。。゚(゚´Д`゚)゚。
阿 -
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鉄道旅行記が、結果として昔を訪ねる内容につながる本だろうと思ったら、雑誌の企画として「昭和」を訪ねる連載が巻頭だった。
基本的に乗りテツ記事なのだが、関川さんはオジサンであること、テツであることに恥らいがある。僕はテツではないが、関川さんの文章のファン。巧まざるユーモアに何度もニヤニヤ笑ってしまった。
思ったより文学関連の内容は少なかった。
それでも、幸田文の特急乗車記について、国鉄が幸田文に親切であったのは内田百閒が前年春の飼い猫失踪以来耄碌して頼み甲斐がなくなった、とある。
宮沢賢治の樺太旅行記については以前にも読んだが、亡くなった妹とし子は鉄道線路のはるか北の空に行ったのだと信じた、 -
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ローカル線に乗り、この国の近代と文学を語るエッセイ。
厳しい坂を上る路線の設定の難しさを語る箇所で、限界勾配などキッチリと書かれている。ルポとしての文章だなと思ったが、若しかしたら関川さん、こういう話好きなのかもしれない。
鉄道の技術トリビアも作家の一人一人の陰を追う旅の文章もたっぷり楽しめた。しかし、トンネルマニアで赤錆びた車止めが好きなんだ、という告白に一寸驚く。関川さんにそんな嗜好が…。
「自分のことは棚に上げていうのだが、鉄道マニアにはどこか気持ちが悪いところがある」この一文には、声には出さないが、笑ってしまった。
林芙美子の母娘二代に渡る放浪については、これは読まなきゃなという気に