関川夏央のレビュー一覧
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2001年刊。もとは「小説現代」2000年1月号~2001年6月号連載、18回分。各回の扉は、いしいひさいちの4コマ漫画、四角顔のセキカワ教授の日常。ただし本文の内容とは関係がない。
昭和の匂いのするフィクショナルな短篇が並ぶ。長らく関川のルポとエッセイを読んできた者にとっては、小説として読むのが難しい。
終わりのほうの回には、純粋なエッセイもある。久しぶりに山田風太郎先生のお宅を訪ねる回。先生は79歳、パーキンソン病が進行して、たばこもひとりで吸えなくなっていた。でも飄々としていた。別の回では、その2カ月後、山田先生ご自身が日本ミステリー文学大賞の授賞式に出席すると聞いて、心配で駆けつける。 -
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ネタバレ昭和史。番号1なので,まだ戦争があっだ昭和から始まり、田中角栄,オイルショックまで。いろいろ読んで知ってるつもりだったが、実は全然知らない時代だった。著者は、その時代に売れた本や映画、事件、世相と,それをなぞるようにしてその時代特有の雰囲気の物語を交互に書いて,その構成が面白い。冒頭のクリスマスイブの客、かつて軍隊が一緒だったという男が不在の父をたずねてきて寒い冬の夜母と子が駅までその男を送る物語がものがなしくていかにも戦争があっだ昭和。
評論部分で取り上げられている作品は、
山びこ学校,石坂洋次郎の青春小説、にあんちゃん、小田実なんでもみてやろう、二十歳の原点、田中角栄私の履歴書。
テレビ -
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ネタバレ司馬遼太郎の小説、評論、随筆、紀行文、対談、書簡等々全てを網羅して、司馬本人の思考、思想を論じた最高の一冊だと思う。(系統的に書かれたものではないが、すべてを合わせると結果的に優れた司馬遼太郎論になっていると思う)
著者は、これまでも司馬の講演集や対談等の解説等を手掛けてきたので、全作品に目を通すことに驚きはないが、この本の出版社が、司馬と関係が深かった文藝春秋や中央公論でなく、岩波書店ということに、若干の驚きを感じた。
司馬は1960年(36歳)に「梟の城」で直木賞を受賞した。当時産経新聞大阪本社文化部長になったばかりであったが、受賞後にわかに忙しくなり、1年後に退社し、専業作家となる。 -
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本書「砂のように眠る」のオリジナルは、1997年に新潮文庫から発行されている。最後に筆者・関川夏央の「自著解説」が付け加わってはいるが、基本的には1997年のものと内容は全く同じである。内容が同じものを、今回は中公文庫として発行した、中央公論社の意図は分からないけれども、私自身、以前の新潮文庫版も読んでいて、それでも、今回、再度購入し読んでいるので、私のような読者、要するに関川夏央ファンをあて込んで発行したのかもしれない。
再読してみての印象は、やっぱり関川夏央は文章がうまいということ。格好つけているような、一種拗ねているような、そのような独特のタッチの文章であるが、関川夏央の他の作品を読んだ -
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関川夏央『砂のように眠る 私説昭和史 1』中公文庫。
関川夏央による『私説昭和史』の三部作の第一作。昭和を舞台にした短編小説と昭和のベストセラー評論とが六章ずつ交互に並ぶ十二章で構成されるという面白い造りになっている。
著者の関川夏央の名前を初めて認識したのは谷口ジローと共著の『事件屋稼業』である。関川夏央は、自分よりも一回りほど上の年代で所謂、団塊の世代であり、昭和という極めて特異な時代を良く知る作家の1人であろうと思う。
昭和という時代は戦争と敗戦、貧困、焦土からの復興、高度経済成長期、1億総中流時代、バブル期、バブル崩壊、学歴社会と格差社会の到来という浮き沈みの激しい時代だったとい -
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「人間晩年図巻」の5冊目である。2011年3月11日までとなっているが、その日は東北大震災の日だ。本書に関川夏央は「あとがき」を書いているが、「人間晩年図巻」は、この5冊目で終わりであり、これ以上、書きつなぐつもりはないようである。
本書の意図を、関川夏央は下記のように説明している。
【引用】
現代史を、直接にではなく表現する手立てはないかと思案し、時代の刻印を受け、また時代そのものをつくった有名人・無名人、その全盛期と晩年の記述で実践してみた。
【引用終わり】
「人間晩年図巻」は、その年に亡くなった方たちの晩年、あるいは、人生全体を関川夏央が語るという形式をとっている。私は、5冊のシリー -
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この「2004−07年」だけ貸出中で返却を待つ。読む順序が狂ってしまった。
何と岡田史子が扱われている。真っ先に読む。「週刊誌にヌードを撮らせたのは」とある。ホント? 検索で画像を拝む。恐ろしい目ヂカラだ。
他に杉浦日向子など、山田風太郎『人間臨終図巻』なら選に漏れたかもしれない。山田版は物故小説家の比重が大きいように思う。
「26人を収録」と謳いつつ、本田靖春なら金嬉老、青島幸男なら大橋巨泉といった具合に関連人物に触れてくれるので、実際の読み心地は50人以上だ。
『人間晩年図巻』の名に恥じず、晩節を汚した著名人にも容赦ない。この巻では小田実への舌鋒が鋭い。 -
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1990年から94年に亡くなった有名無名の人々へのレクイエム。その晩年を、時に追慕の念を込めて、時に辛辣に描く。取り上げられているのは、栃錦、成田三樹夫、幸田文、相田みつを、中村曜子、小池重明、大山康晴、長谷川町子、中上健次と永山則夫、寺田ヒロオ、オードリー・ヘップバーン、金日成、吉行淳之介、音羽信子など。また、その人の死にかこつけて、別の人物の数奇な運命を語るパターンもある。グレタ・ガルボと長谷川泰子、江青と毛沢東、安井かずみと加藤和彦、神永昭夫とヘーシンクそして猪熊功、ハナ肇とクレージーキャッツなど。これだけ調べるのは大変だったろうが、著者が楽しんで書いたのが分かる。同時代を生きた人が多く
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「人間晩年図巻」の3冊目。
本書は2021年10月の発行で、2000年-2003年の間に亡くなられた方々が紹介されている。紹介されている主な方々で、興味深く読んだのは、青江美奈、大貫久男、山田風太郎、ナンシー関、ネルソン吉村大志郎、といった方々。
2000年はバブルがはじけて10年、「失われた10年」という言葉を実際に使っていたかどうか。シドニーオリンピックが開催された年。
2001年はアメリカでの同時多発テロが発生した年。貿易センタービルに飛行機が突っ込む映像を今でも覚えている。その実行犯の1人が本書で取り上げられている。
2002年は日韓ワールドカップの年。日本でのチケットが入手出来ず、 -
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関川夏央、「人間晩年図巻」の2冊目。本巻は2016年6月の発行で、1995年から1999年に亡くなられた方についての紹介。
1995年は阪神淡路大震災と地下鉄サリン事件が起きた年だ。1990年代初頭にバブルが弾けて、日本では低成長が続いていた。当時はそれでも、それは景気循環の下降局面であり、いつかは景気は回復するであろうと見られていたが、そこから約30年間近く、日本の経済は低迷を続けている。
個人的には、私の30代。1995年には、子供2人は小学生。任される仕事の範囲も広がりつつあり、生活は充実していたと言える。
本書で紹介されているのは、35人。
例えば、テレサテン、横山やすし、司馬遼太郎 -
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1990年から1994年の間に亡くなられた36人の方についての紹介である。新聞に死亡記事、あるいは、おくやみ欄があるが、それを更に詳しく長くしたものと理解していただければ良い。人間「晩年」図巻という書名であるが、亡くなられた方の「晩年」ばかりではなく、その人がどういう人であったのか、何をなした人なのかという人物紹介となっている。
また、対象は1990年から1994年の間に亡くなられた方であるが、本書の発行は2016年。直近に亡くなられた方の紹介ではない。例えば「1994年に死んだ人々」として紹介されているのは、安井かずみ、アイルトン・セナ、金日成、吉行淳之介、乙羽信子である。人選には関川夏央の -
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毎月2冊ずつ刊行される谷口ジローコレクションは、小学館と双葉社から1冊ずつ刊行される仕組みになっている(異なる出版社同士が手を取って刊行する、というのも非常に珍しい)が、双葉社サイドからは谷口ジローの代表作の1つ、「『坊ちゃん』の時代」シリーズが選ばれており、本書はその第1巻にあたる。
最も谷口ジローの有名な作品である『孤独のグルメ』が、原作の久住昌之との共作であるように、彼は多くの原作者と仕事をしている。その中で最も長く関係性が深かったのが、本作の原作者であり小説家・ノンフィクション作家である関川夏央である。
この2人のタッグにより生まれた傑作の1つがこの「『坊ちゃん』の時代」シリーズで