【感想・ネタバレ】新装版 ソウルの練習問題のレビュー

あらすじ

一九八〇年代はじめ、一人の青年が、「近くて遠い」と言われた国を旅した。彼はその国の言葉を学び、街を歩き、そして恋をした――。「先進国化」以前のソウルの街区とそこに暮らす素顔の韓国人を活写し、それまでの紋切り型の報道や、卑屈と尊大を往復するだけだった日本人の韓国観を劇的に変えた紀行文学の歴史的傑作。異文化へのみずみずしく確かな視座は、今なお色褪せない。

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Posted by ブクログ

韓流ブームより前、ソウルオリンピック直前の韓国訪問と異文化体験。

お隣の国、一見同じ外見の国。だが看板を埋めつくすハングルの文字に圧倒されるハングル酔い。

スンジャという魅力的な女性との交際を通じた異文化体験。日韓の壁は乗り越えることはできない。

四半世紀前の作品ではあるが決して色褪せていない。日韓関係は当時と異なる方向に向かってしまったように見えるが、実際の両国の関係は実は変わっていないように思える。

今の日韓関係を語る際にあまり出てこないが、在日コリアンの微妙な位置も当時と変わっていないことだろう。

嫌韓本が溢れる今こそ、摩擦の起こる前(当時も違ったカタチであっただろうが)の日韓について学ぶのに学ぶのにちょうど良い作品かと思います。

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2019年10月27日

Posted by ブクログ

随分以前に新潮文庫版で読んだ本だけれども、7月の初旬に帰国した際に、集英社文庫の新装版が発行されているのを見つけて購入。
この本が単行本として最初に発行されたのは、1984年のことなので、今からだいたい4半世紀前のことである。2004年から2006年くらいにかけて、仕事で、あるいは、まれにプライベートでソウルによく出かけていた。平均すると月に1回くらいは行っていたような気がするし、それ以前とそれ以後も合わせると、ソウルには50回くらいは行ったことがあると思う。
この本を改めて読んで驚いたのは、その4半世紀弱の間のソウルの変わりようである。この間に、韓国はオリンピックを開催し、万国博覧会を開催し、2002年には日本と共催の形でW杯サッカーのホスト国となった。1路線しかなかった地下鉄は、今ではソウル中を縦横無尽に走っているし、作品中に出てくる、韓国製のオートバイの性能がとんでもなく悪いというエピソードも、笑い話のようにしか思えない。韓国という国、ソウルという街は、経済的に当時よりもはるかに発展し、あるいは、都市機能が充実した。
関川夏央が、エピローグで解説しているところによると、この本の発行当時の韓国についての本は、
・韓国で日本人がいかに過度に謙虚になれるかという方向
・逆にいかに尊大になれるかという方向
・韓国の政治経済的内幕を知り、眉間のしわと片側の頬の皮肉な笑いを同時に浮かべたい方向
の3種類しかなかったということである。
第二次大戦前、あるいは、大戦中の日本と韓国の関係が、現在の日本と韓国の関係に未だに影を落としていることは確かだと思うが、1984年当時に、関川夏央がやや緊張しながら歩かなければならなかったソウルという街に対する、あるいは、韓国という国に対する現在の日本人のイメージはかなり変化していると思う。経済的な側面、端的に言えば豊かさ、また、その国に対する日本人の一般的なイメージが、4半世紀の間にこれほど劇的に変化している国は他にはないように思う。
都会が好きな私にとって、ソウルは快適な街だ。そんなに頻繁に使ったわけではないけれども、発達した地下鉄網を使えば、街歩きも問題ない。過ごしていて、あまり違和感や東京と大きな相違点を感じる街ではない。50回も行けば、プライベートで飲みに行ったりするくらいの友人は何人か出来る。彼ら、彼女らと話をしていると、でも、やっぱり異国は異国だな、と感じる機会も多かった。そういう風に感じるのは、具体的に何に対してなのかを、深く、鋭く掘り下げて考えてみると、この本のような優れたルポになるのだろう。

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2011年07月25日

Posted by ブクログ

80年代の韓国が書かれている。エッセイというより、ひとつの冒険本かな。韓国への興味を一段と大きいものにした本です

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2009年10月04日

Posted by ブクログ

80年代のソウルをチラッと訪れたことがあるので、懐かしく読んだ。昨今の韓流ブームなど、だれが予見できただろう。若者にもぜひ読んでほしいと思う。

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2012年07月30日

Posted by ブクログ

新装版初読。語学書と紀行・思索が混然一体となった一風変わった構成。日韓関係を扱った作品群の中では記念碑的存在。私が初めて韓国を訪れたのは04年夏のこと。その時、頭にあったのが本書旧版や、韓国プロ野球創成に参加した在日選手達の見た祖国『海峡を越えたホームラン』に描かれた80年初頭の韓国の姿。実際の韓国は88オリンピック、02ワールドカップを経て変貌を遂げていたにも関わらず、昔日のソウルの面影を求め、何故か釜山の路地裏を彷徨歩いた。80年代を背景にした韓国映画に、今も郷愁を感じるのも本書の影響大。偏愛的懐書。


追記:上記『海峡を越えたホームラン』と同時期同傾向の作品としては、鄭仁和『いつの日か海峡を越えて』がある。又、10年ほど時代を溯るが、司馬遼太郎『韓のくに紀行』、長璋吉『私の朝鮮語小辞典―ソウル遊学記』も定番のお勧め品。

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2012年05月14日

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