あらすじ
「なぜ私は本を読むのがやめられないのか……」一九六〇年代から七〇年代にかけて、明日というものがまだ信じられていた高度成長期のこの国で読まれ、観られた様々な「物語」たち。それらをめぐる青春の記憶を、著者は時に苦く、時に切なく鮮やかに描き出す。どんな本やどんな物語が自分をつくったのか。昭和という時代と団塊の世代のひとつの個人史を見事に重ね合わせた傑作エッセイ。
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Posted by ブクログ
2002年刊。月刊誌「本の旅人」、1997年10月号~99年4月号連載のエッセイ、8篇。
「なぜ私は本を読むのがやめられないのか」「紙とインクのにおい」は、少年期の読書とそれにまつわる思い出。ほかに青年期に見た映画についてのエッセイなど。
「須賀敦子の風景」は追悼エッセイ。須賀敦子とは親しく付き合った。亡くなる2年前には、小樽への旅に誘った。彼女は最初逡巡したが、行きましょうよと押しまくった。そして何人かの仲間と小樽へ旅行。彼女の死後、関川はなぜ彼女が小樽行きを決めたかを知る。ヒントは、没後に出た『遠い朝の本たち』に書かれていた。
須賀敦子は関川を「セキカワ!」と呼び捨てにしていた。書くものだけからは知りえない須賀敦子の素顔。このエッセイだけでも読む価値はある。