あらすじ
洪水のように押し寄せる新刊の荒波を乗り越えて,残された時間で,なにを読むべきか? 迷ったときには文庫に帰れ! 二百冊に垂んとする文庫解説を物してきた「解説の達人」が厳選して贈る,恰好の読書案内.未読であれ再読あれ,損はなし.読むぞ愉しき.決して古びることのない読書の世界が,いま文庫からはじまる.
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Posted by ブクログ
関川夏央は文庫本の「解説」を数多く書いており、その数200に及ばんとする、と本書に書かれている。本書は、その中から21編が選ばれ掲載され、一冊の本として編集されている。
紹介されているいくつかの作品は、関川夏央が解説を書いたかどうかとは関係なく読み、そして、読後に関川夏央の解説を読んでいる。そして、その解説は、本文を更に面白く輝かせていたように感じる。
須賀敦子の「ヴェネツィアの宿」の解説を、関川夏央は「彼女の、意志的なあの靴音」という題名で書いている。関川夏央は、実は朝日新聞の書評委員会で須賀敦子と同席していたこともあり、旧知の間柄であったのだ。須賀敦子が亡くなったのが、1998年の3月、そして、「ヴェネツィアの宿」の解説を関川夏央が書いたのが、1998年8月であり、その解説は、同時に関川夏央から須賀敦子への「弔文」のような内容ともなっている。作品についての解説ばかりではなく、彼女の人生、彼女の業績、そして、「意志的なあの靴音」を持った彼女の個性を表す、見事な文章だと感じる。