柴田元幸の作品一覧
「柴田元幸」の「芥川龍之介選 英米怪異・幻想譚」「インヴィジブル」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
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Posted by ブクログ
誰かの人生に、どこかの社会に、ふと立ち現れる蠱惑的で異質なもの。それは時に熱狂を、時に不安をまきおこしながら、人々の心を侵食していく。
というふうに読んだが、まずこの短編集そのものがとびきり異質である。なんというか、物語世界に入るというより、このような虚構の世界を作り出した情熱と技の方に驚嘆してしまうのだ。もちろんどんな物語も多かれ少なかれ虚構の世界であるわけだが、それでもそこには「本当のこととして読む」という約束事があるように思う。ここにはそんな約束事は存在しない。それどころか「書かれていることはすべて絵空事であり、そのことは書き手も読み手も百も承知」という風情が色濃く漂っている。
この感じは「架空の街の詳細な地図」や「存在しない植物の図鑑」によく似ている。つまりこれらの作品は本当は「物語」でも「小説」でもないのではないか。「架空の歴史」「架空の年代記」とでもいうべきものではないか。そう思うと実にしっくり来る。
が、ではそれは結局物語とは違うのか、と言われると今のところ答えが出ない。なんだか、大変な作品に出会ってしまった。
Posted by ブクログ
映画「ライ麦畑の反逆児」がおもしろく、サリンジャー関連でそういえばこの本持ってたと思い出して再読。(初読のとき感想書いたかな?と思って本棚内検索したら、わたしは2007年から感想書きはじめていたようで、2003年出版のこの本は出てこなかった)。
最初に村上春樹氏による「キャッチャー・イン・ザ・ライ」訳者解説を読んだら、「ライ麦畑の反逆者」のストーリーがよりよくわかって、さらに細部が補完される感じですごくよかった。村上氏は、サリンジャーは戦争体験がショッキングすぎて小説にすることができず、「キャッチャー~」は書かれることのなかった彼の個人的な「戦争小説」かもしれない、ということを書いていた。
で、結局全部再読してしまい、村上氏と翻訳家の柴田元幸氏の対談も隅から隅までおもしろかったんだけど、特に印象に残ったのは、「キャッチャー~」が読み継がれているのは、イノセンスを礼賛しているからではなくて、『人々が巨大なシステムを前にしたときの恐怖や、苛立ちや、絶望感や、無力感や、焦りのようなものを自然に呑み込み、ユーモアをもって優しく受け入れてくれるから』というところとか。あと、『イノセンスに代わるものは必ずあります。たとえばそれは愛情です。広義な意味での愛情。』というところとか。
あと、柴田先生が「キャッチャー~」をアメリカ文学史のなかに位置づけるために書いた「Call me Holden」もすごくおもしろくてためになり、「アメリカの息子」とか「ハックルベリーフィンの冒険」はやっぱり読まないといけないかも、と今さらながら思った。