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Posted by ブクログ
状況説明の少なさ、心理描写の過剰さ等、オースター作品の、個人の鬱屈した思考の渦に深く沈み込んでいく感じが、どうにも肌に合って仕方がない。
なんで小説なんて読むのかって、こん時くらい思考の海溝に沈み込んで、1人静かに暮らしたいからじゃないですか。(ミスチルの「深海」のジャケットみたいなイメージ。)
オースターの小説では、メインのストーリーと無関係に思える、サブの人物の思考や過去のエピソード、たまたま見た映画の話などが急に執拗に深く長々と描かれて、また急に場面が戻ったりする。
後であの伏線が回収された!となる事もあるし、あまりならない事もある。
それは人生のように「そんなものだ」とも思うし、
せっかく小説なのだから日常を引っぺがしてくれ、ハッキリとした状況説明、論理的に行動する人物、明快なストーリーなんて要らんのですよ。とも思う。
ただ本作、オースターにしては随分あったかくて人間らしい、と思ったらだいぶ後年の作ですのね。こんなオースターもとても良いですよ。
こんなに暖かいオースターを読んだことがなく、終盤に結末が気になったのは初めてだった。今まで読んだオースターはもっと突飛で脈絡なく、ぶっ飛んだ事が当たり前のように起き、何も解決せずに終わるけど、今回はあまりに物語が生活臭くて人間臭いので。
世界観がリアルで地味な事で感情移入が捗り、ぶっ飛んだ展開よりも逆にドキドキしてしまう事を学んだ。
最後にオースター氏に、レストインピース。
こんなに全ての作品で没頭に導いてくれた作家は他にいない。あなたの新しい作品に出会う喜びの回数が今後増えないことはとても寂しい。書き続けてくれて本当にありがとう。
Posted by ブクログ
はじめに『ブルックリン・フォリーズ』を読んでポール・オースターにはまり、初期のニューヨーク三部作、『ムーン・パレス』、『偶然の音楽』と読んだ。
初期の作品から間を飛ばして後期の本作を読んだので作風の違いに驚きもあったが、歳を重ねたオースターの厚みを感じられる、心にずっしりとくる素晴らしい小説だった。
物語の前半は他の作品と比べて何だか入り込めなかった。今までの作品には魅力的なストーリーと絶妙なユーモアが入っていたのだが、本作は様々な人が抱えている人生の重たい荷物が淡々と描写されていく。
読んでいて辛いわけではないが、今までの遠くへ連れて行っていってくれるオースターではない。今まで読んだ作品のような破滅に突き進む主人公は居らず、過去を背負ながら「今、ここ」で生きていく人々が確かな存在感を伴って描かれている。
オースターの前期の作品から急に後期に飛んだので、ちょっとついて行けてなかったのかもしれない。それでも作家としてのテーマの繋がりはひしひしと感じるのが嬉しかったり、ニューヨークのブルックリンという都会が持っている孤独感にちょっと居心地良い気がしていたりする。
静かな小説ではあるが、地下に熱いものが流れているのは感じた。
そんな感じで前半はずっと淡々とそれぞれの人物の背景を描いてきたが、後半はそれぞれの人生が絡まり合いながら一つの物語に集約していく。初期のオースターは一人の男の人生を掘り下げてきたが、晩年は家族や友人といった人生の交差をより複雑に描いているのではないか。そういえば『ブルックリン・フォリーズ』もそうだった。それぞれの立場や目線が積み重ねていくことで、人が生きることをこれほど深く表現できるのかと驚く。
現代を生きる人々のドラマを、演出は極力抑えながら写実的なスケッチを何枚も重ねていく。ストーリーとしては地味ではあるが、個性的な登場人物の内面が驚くほど丁寧に書き分けられている。文体まで変わっているので別の人が書いたかのようだ。単純に文体を変えるのではなく、それぞれに真に迫る気持ちが込められている。
表には出さないが、誰しもが答えのない葛藤を抱えていて、それが切なくもあるが温かい気持ちになる。
決してワクワクするような物語ではないが、深い余韻が残る。ストーリーも重いテーマだが存在感としての重量を感じた。その重たさが本作の一番の魅力になっている。
アメリカで2010年に発行された本作は、多くの作品と同じように、経済危機によって国が崩壊していくように感じられた当時の空気感に対して書かれた物語なのだと思う。群像劇ではあるが舞台は狭いコミュニティにまとまっているし、それぞれの考え方の違いはもちろん、共通の時代性が見えてくる。
そんな閉塞感のある現代をよく表していて、国は違えどとても身近に感じた。今を生きる人なら登場人物の誰かに共感できるはず。読む人によって感想が全く変わる面白い小説でもあると思う。
明るい未来は期待できない時代に、手に触れられる物や肉体的な物事に向かっていくのは自然な流れなのかもしれない。
誰のものでもない家に、いつ無くなるのかわからない恐怖を心の隅に追いやりながら暮らす。この生活が永遠に続くとは誰も信じていない。しかし、その中で自分と向き合いながら何者かになろうとすることは、ニュースが報じる悲惨で可哀想な(プアな)印象とはまるで違って、とても人間らしくて温かいものがある。
ポール・オースターはそんな人々にいつも寄り添ってくれる。今読めて良かった!
Posted by ブクログ
それぞれの事情を持った4人がサンセット・パークで過ごす数ヶ月間の物語。
学生の頃から、ポール・オースターが好きで、久しぶりに読みたくなり購読。
“青春群像劇”とは銘を打っているが、いままで読んできた青春小説とはだいぶ趣がことなる。それもそのはず、この小説の名は『サンセット・パーク』、つまり日が沈みゆくような仄暗い背景を舞台にした物語なのだ。
この本が書かれた当時、世界金融危機が起きた直後だった。先行きが不透明な社会情勢と、自分が何者になれるのか、あるいはなれないのかという将来への不安と希望を抱く若者達の心の葛藤が、同じような色調で物語に彩りを与えている。
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