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東京見聞録
新しい発見が、街の中に眠っている! あなたの知らない東京を探る爆笑ルポ。渋谷・新宿・池袋・銀座……清潔だけれど、猥雑な東京を愛するすべての人々に! ーー東京というのはよく分からない街である。だから、東京との正しい接し方というのは、きっと「よく分からない」状態自体を楽しむことなのである。ぼくが1年間かけて突撃し、玉砕した結果がこの本である。「そうかそうか。玉砕したか。馬鹿め。うわははは!」と笑っていただければ幸いである。(「あとがき」より) -
寂聴の仏教入門
日常の仏事から日本人の宗教観まで。心の恐れをとり除き、苦しみから救う「仏教」を、易しく、面白く語り伝える! ーー智の力ではとらえがたい「何か」が存在し、人間はそれによって生かされている。心がまき起こす不安・恐れ・怯えはいつもあるが、施無畏(せむい)の教えはそれをとり除き、苦しみから人々を救い出す。心の問題を抱える現代人に、瀬戸内寂聴と仏教研究者・久保田展弘が、対談の形でやさしく仏教を伝える、好個の入門書。 -
死に絶えた風景 ルポルタージュ・新日鉄
北九州の製鉄の町を訪ねたルポルタ-ジュ。近代日本の100年を旧八幡製鉄の繁栄と衰退と共にした人々の歴史、製鉄労働者たちの生活、公害で汚染する洞海湾などを詳しく記録した著者初期の代表的な作品ーーかつて、明治以来の日本の経済を大きく支えてきた新日本製鉄が、鉄の町・北九州市一帯で君臨し栄えていた頃、そこに働く労働者たちは、どんな厳しい生活をしていたか。町の人たちはどう暮らしてきたか。みずから東田高炉工場で働いた著者が、その体験をもとに記録した、鉄の町・八幡と新日鉄80年の歴史の光と影。 -
弘前大学教授夫人殺人事件
無実の罪に陥れた当局の論理とは? 冤罪事件の全貌を解明し〈つくられた犯人〉の不条理な運命の重さを問う衝撃的ルポ! ーーある日、突然、ひとりの青年が、殺人犯として逮捕された。彼がいかに彼の真実を叫び続けても、「血痕」鑑定を理由に、裁判所は極刑を宣告した。以来、真実は闇に葬られ、真犯人が名乗りでるまで、〈つくられた犯人〉の不条理な運命は、どのような軌跡を描いたのか。冤罪事件の全貌を解明する衝撃的ルポルタージュ。 -
君もヒーローになりたくないか
トラキチ必読! タイガ-ス監督の熱血人生。長嶋茂雄と闘い、王貞治と闘った14年間の現役時代と実業界で活躍した14年間を振返り、プロとは何か、リ-ダ-はどうあるべきかなどを、イキイキと語る注目の1冊ーー長島茂雄、王貞治らとしのぎを削り、最高殊勲選手、沢村賞など数々の栄誉に輝いた11年間の選手生活と、3年間の監督兼投手の生活、退団して4年間のサラリーマン生活、そして12年間の社長業……その多彩な歩みの中で、求め続けてきたものはなにか? 強いタイガース復活にかける、阪神・村山監督の熱血人生! -
スローセックスのすすめ
男性本位から男女対等のセックスへ! スローセックスの原点を説く、アダム流セックスの入門書。お湯のように温められ沸点を迎える幸せなエクスタシー、射精しない、イカない、もう演技しないーー正しいセックスとはなにか。受け身の大和撫子は、日本男子の誤解に満ちた男性本位の未熟なセックスを長く甘受してきました。不幸なセックスから解放され男女ともに、最高のエクスタシーを得る方法があります。セックス・セラピストの権威が「スローセックス」を優しく易しく説き明かす、アダム流セックスの入門書。 ◎性感ヴァージンから解放されよう/不感症女性の95パーセントは正常/逃げ場がない生真面目な女性たち/女性は水の性、男性は火の性/膣でイカなくっても気にしない/DNAが覚えている淫靡なカラダの動かし方/100万人が実践したアダム流セックス入門 -
「東大経済卒」の十八年
彼らは何を考え行動してきたか? 〈団塊の世代〉のトップランナーたちの苦闘と選択ーー〈団塊の世代〉のトップランナーたちは、どうしてきたのか。昭和45年、東大経済学部卒330余人のうち、多くは大企業や官庁で課長クラスに就き、産業構造の大転換のなか、激烈な経済戦争に立ちむかってきた。なかには有為転変し、新しい人生に踏みだした者もいた。その苦闘と選択の軌跡を克明に追う。 -
第一生命広報部長からの手紙
仕事と趣味の日々を語り合う、出色の往復書簡集。美術館、コンサートホールをまわり、読書を楽しみ、手紙を書き続け、しかも、会社の仕事はきちんとこなす広報部長。いつもどこか旅にいる永六輔さんと交わした手紙には、豊かな男のロマンがいっぱい。ビジネスマンはかくありたい。一つの処世、一つの人生に乾杯! -
第一生命教育部長からの手紙
<ビジネスマンかくあるべし>という気持ちを込めて綴る、往復書簡集。仕事に呑まれず自分の人生を楽しく豊かにする知恵が、キラキラ輝いています。遊びのコツや日常身近への洞察など、心地よい刺激があなたをリフレッシュするはずです。生き方の名人とエリート部長の真情あふれる交流を汲みあげて下さい。 -
上海醉眼
「ワンダー・シティ上海」の魅力のすべて描く! ダンスホ-ル、ジャズバンド、サ-カス、浴場、料理屋、上海ガニ……ーー体験した記憶もない者に、ノスタルジアという世界を与える。上海は、日本人の躯の奥から、何か妖しい夢を誘い出さずにはおかない街のようだ。この街に溶け込むには、酔眼をこらし、躯のゆれに身をまかせるしか方法はない……。作家の眼と写真家の眼が絶妙に交差して織りなす、上海Shanghaiのイメージ。港町・上海に吹く妖しい風を見事に把えた傑作。 -
狩りの時刻
悪夢か? 現実か? 「侍従」と称する中年男に、毎夜、誘(いざな)われて、平凡なOL・小金井依理子がさまよいこんだ、不可思議な性の世界……。そこで、謎の美女・徳乃本夫人に、女同志の愛を教えられた依理子は、突然姿を消してしまった夫人のあとを追って、徳乃本もと侯爵の宏大な邸に忍びこんだ。逞しい青年を愛撫する侯爵、犬を相手に孤独なセックスを楽しむ料理女、奇怪な蝋人形館に閉じこめられた少年……。悪魔の館に棲む人々を垣間みた依理子を最後に待ちうけていたものは、残酷な初夜の儀式だった……。女性の欲望を利用して巧妙に仕組まれた犯罪の罠を描く長編小説。 -
ルポ戦後日本 50年の現場
日本の戦後史に埋もれた「挫折と抵抗」の庶民像を追う。はたして戦後日本は、幸福だったのか? 高度成長の背後で、何が起きていたのか? 沖縄・集団自決の悪夢やサハリンに棄てられた日本人、帰ってきた中国残留女性の苦闘など、表面からは窺いしれぬ、戦後50年の現場を訪ね、あらためて日本の歩みを問うルポ。 -
イヴたちへの私信
あるがままの自分に/帆を上げよう/…今が船出の時/…みずからを縛る鎖をひきちぎろう/…誰のためでもなく/自分にとって「いい女」へと/自立やキャリアを/…終生のテーマとして考えられるオンナへと/なによりも「自分を生きる」ことのできるオンナへと/情緒過多でも 理智一辺倒でもない/しなやかで 強く優しい 颯爽としたオンナへとーーステレオタイプの女よ! 男よ! さようなら! 私たちは、いまだ第二の性を生きてはいないだろうか? 女らしさの神話に与みせず、誰のためにでなく自分のために、自由に颯爽と生きよう! 自らの体験をもとに提唱する。 -
痺れる女
秋山が、芸者・菊丸と逢引きしたり、ヒモつきの女の体のすばらしさに、うつつをぬかしている頃、大町は、レズビアンの女・美智子を、自分の情事の相手・りえに引き合わせていた。秋山は、大町が主宰しているコンボのドラマーだ。二人の男の情事の進行には、音楽喫茶モンクールでの、気の合った演奏のような、あやしい雰囲気のハーモニイがあった。秋山は、ヒモの男にあるアパートへ拉致された。大町は、二人の女を同伴旅館へ連れ込むことに成功し、彼女らの愛し合う様子をつぶさに観察する段取りをつけた……。円熟したセックス描写が冴えてきた快作「新・肌色あつめ」の第2巻。 -
旅の手紙<見えないものが見えてくる>
神戸や京都、北海道、萩、スイス……。旅先でひとり綴った心の手紙を投函します。受取人はあなた。ーー旅に出たい、そう思った時から旅はすでに始まっている。旅に出ると、ふだん見えないものが、見たくなかったものが、そして見ていなかった自分が、見えてくる。神戸や京都、北海道、萩、スイスなど、内外の各地に民俗と詩情を訪ねながら、さわやかな批評眼で現代をみつめ直して綴った、あなたへの、心の手紙。 -
誘惑の午後
挿絵画家の井野は、ニコチン中毒者が、細くて白い煙草へ、つい手を伸ばしてしまうように、女に手をのばすのだった。まず、女に近づくためのさまざまな作戦があり、そして、それが成功したあとは、女体を征服し味わい尽すためのさまざまな試みがあった。井野は、しかし、女の体の上に重なりながら、たまらなく虚しくなることがあった。その虚しさに耐えきれなくなると、また街へ出て、他の女をさがし求めるのであった……。現代のもっとも異色的な作家として、あくことなく「性」を追求しつづける作者が、人間の原質を追求した、本格的長篇小説である。 -
夜の果実
「私」は、深い眠りにおちている裸身の絵津子に、カメラを向けた。長い時間をかけ、すこしずつ変わるポーズを、可能なあらゆる角度から狙っては、シャッターを押しつづけた。そして、「私」の行為に気づかない彼女に向かって、一人きりの愉悦に浸った。絵津子は、かつての「私」の教え子であり、忘れられない女であったが、彼女が結婚したあと再会したとき、「私」は、自分の中に何かが失われていることを知った。「私」はその何かを取り戻そうと必死になっているのだった……。肉体のふしぎなからくりと、心の中の荒涼たる風景を、細密画の手法で、執拗に追求した、ユニークな長編。他に、短編「残存者」を収録。 -
多角関係
みかけによらず浮気な女の、鳥飼の細君・冴子は、夫に秘密で、他の男の子供を生んだ。しかし鳥飼は、冴子に疑いを抱いていない。子供も自分の子だとばかり信じこんでいる。そのことを、冴子は楽しむように小坂に話した。小坂は、鳥飼たちが結婚する前、冴子と交渉があった。しかも、鳥飼に冴子を紹介したのは、小坂である。ようやく、鳥飼が、冴子に不審を持つようになった。そして、小坂を呼び出し、小坂と冴子の以前の関係に、さぐりを入れてくるようになった。――官能と肉体の神秘を求め、文学の性的世界にユーモアを導入して、新機軸を築く、川上宗薫の傑作短編集。 -
聖女
デウス天理教団の海外伝道尼僧・風間登代が、サンフランシスコS街の路上で、黒人に襲われた。登代は薄れゆく意識の中で、黒い腕にかわって白く輝く球体のようなものを認めた。〈ああ……聖なるお方が、わたしの前にあらわれている……〉登代はこの事件で妊娠してしまった。「私は大司教の御子を身籠った」と口走り、今夜も私のもとにいらっしゃると言う。登代を訪れる謎の男とは何者なのか? ……という女の業を描く表題作の他に、「黄色い吸血鬼」「蟻の声」「V定期便」「赤い的」「猫パーティ」「最後の一切れ」「蜘蛛の糸」の7編を収録。 -
笑ってる猫
笑いの天才の頭の中をのぞいてみませんか? ーー自分の心の中を見られているようで、ちょっと恥ずかしい、と吐露する著者が選んだ、とっておきの本たち。この中には、マルチな才能を発揮するわかぎゑふの、発想の源泉が集約されている。ドキリとさせられる写真や、優しい気持ちになれるイラストなどを含んだ本を、軽妙に語ったエッセイ。(『太りすぎの雲』改題作品) -
気が遠くなる
癒ることのない肝臓ガンに冒され、顔色もすっかり黒ずんでしまったという中年男・沼崎から、死ぬ前にやっておきたいことが一つだけある、と口説かれた銀座ホステス・敏子は、その願いを叶えさせてあげることにした。これまで男性不信の月日を過してきた敏子は、沼崎によって真の女の悦びを知らされたが、その悦びよりも、悦びを与えてくれた男がもうすぐ死ぬという事実の暗い悲しみの方に、押しひしがれていた。しかし、やがて敏子は、ゴルフ場でこの男の意外な素顔をかいま見てしまった……。という表題作のほかに、「裏切る」「秋のロマンス」など4篇を収録する、著者会心の官能小説集。 -
ひっぴい先生遊蕩日誌
美しく魅力的な教え子と結婚したいという、ごく簡単な動機から、安永は、都心から1時間ほどの所にある公立高校の英語教師となった。女の子の数は、たしかに多い。しかし、どこか生ぐささの感じられる女子高校生たちは、安永の趣味には合わなかった。そこで、「ひっぴい先生」と異名をとる彼が、みずからの好みに忠実に繰りひろげる遊蕩日誌に登場する美女たちは、教え子の姉でデパートガールの田原泰子、他校の英語教師・徳山紀子、ボクシング部の猛者のうら若い義母・末松広子、喫茶店のウェイトレス・西田葉子など……。健康で豊艶なエロスあふれる、現代風ユーモア連作小説。 -
それはないよ
かなり大きな出版社の出版部門の部長である茂木は、通勤の地下鉄電車の中で、ユキ子に声をかけた。小柄で、やわらかそうな肉付で、構造も当然小さめ……と茂木は確信していたのだが、いざラブホテルで二人っきりになってみると、意外に楽々と彼は迎え入れられていた。こうしたゆるめの構造に、彼は弱いのだ。〈それはないよ〉という気持で、茂木はユキ子と別れたが、半月ほどたって、二人がばったり再会したのは、会社の廊下でだった。彼女こそ、会社の噂の女であったのだ……。という表題作のほか、「男の初夜」「手切れ金」「バラの日々」「色細工」「すぐ眼の前に」の5篇を収録する官能小説集。 -
おブスの言い訳
「だって忙しくて」「でもゆとりがないの」……。なに言ってるの? 言い訳の数だけブスになる! それなのに、身にも心にもダレが生まれ、見た目の個人差が激しくなるのが「おブス期」。ここが、大人の女性が迷い込む、人生の分かれ道! メディアで活躍中のファッション・エキスパートが贈る、「オバ」にならないための愛のムチ。美と幸せを呼び込む意識のツボ、教えます! あなたの未来は「姫」?「おば」? -
舞台
29歳の葉太はある目的のためにニューヨークを訪れる。初めての一人旅、初めての海外に、ガイドブックを暗記して臨んだ葉太だったが、滞在初日で盗難に遭い、無一文に。虚栄心と羞恥心に縛られた葉太は、助けを求めることすらできないまま、マンハッタンを彷徨う羽目に……。決死の街歩きを経て、葉太が目にした衝撃的な光景とは――。 太宰治『人間失格』を愛する29歳の葉太。初めての海外、ガイドブックを丸暗記してニューヨーク旅行に臨むが、初日の盗難で無一文になる。間抜けと哀れまれることに耐えられずあくまでも平然と振る舞おうとしたことで、旅は一日4ドルの極限生活に--。命がけで「自分」を獲得してゆく青年の格闘が胸を打つ傑作長編! -
恍惚の刻
深夜の長い坂道の上で、夏子は、車のエンジンをとめた。サイドブレーキを戻すと、車はそのまま走り出した。その中で、夏子は、大町に挑んできた。夏子と大町は、狭いシートの上に、重なって倒れた。運転者の姿の見えない車が、しだいに加速しながら、滑って行く。わずか3分間ほどの、恐怖を伴った異常な興奮は、すばらしかった。それは、セックスの園を長くさまよいつづけた大町にとっても、はじめての経験であった。……「肌色あつめ」「落ちる実」の連作として書かれ、底の知れないセックスの世界に、この作者ならではのメスをいれたユニークな長篇小説。 -
揺れる女
深夜、私の部屋の電話が鳴った。「あたし、由香利です。死のうと思ってるの」……電話の主は、青江由香利・18歳。女流作家の私を慕ってくる、六本木のフーテンのひとりであった。その翌朝、由香利は、私の8年来の情人である国井と、心中しているのを発見された。私は愕然とした。なぜ、あのふたりが? 苦悩と懐疑が私を駆り立てた。由香利には、国井を《死》に誘うほどの魅力があったのだろうか。そして、私はついに、由香利の肉体の秘密を知った……。傷ついた心と肉体をもち、荒涼たる現代の夜をさすらう少女を描く「揺れる女」など、全7編。 -
夜行性人間
はじめて会った女性と、その日のうちに肉体の交わりを持ち、名も知らぬままに別れた経験が、高原にはあった。彼は、それを「完璧の情事」と呼んだ。そんなことは一度だけだったが、魅力を感じた女性を、自分のものにするために、高原は、あらゆる努力と術策を、惜しまなかった。相手が、良家の夫人であろうと女子高校生であろうと、彼は、いつも成功するのだった。社会的に産業デザイナーとして通っている男が、夜行性の超人として、ラブ・ハントのあらゆるテクニックを展開する……。都会の小ぎれいな生活の中から、裸の人間をシニカルにえぐり出した、個性的な長編である。 -
不倫の巡回
早田は、友人の野村の家へ遊びに行って、そのまま泊りこむことが多かった。朝、早田は、野村を車で駅へ送る。そして、野村家に引返し、野村の妻の左知子と、熱い情事に耽るのだった。早田は、左知子との不倫を軸にしながら、さまざまな女と、ハプニングな交渉を持つことに、生き甲斐を感じていた。人妻、女子大生、舞踊家、女優などと、早田の愛欲の対象は、めまぐるしく変わった。早田は、そうすることによって、女たちに、何ものかを与えているのだと、信じていた。……これは、セックスを描くことで現代人の虚無感を追求しつづける作者の、野心的な長篇小説である。 -
色名帖
宇津は、同窓生の初枝と久しぶりに会い、そして彼女の部屋に泊ることになった。初枝が、マリリン・モンローと同じ方式で、眠りの仕度を始めたので、雰囲気がしだいにおかしくなってきた。ちょうどその頃、小見山は、会社勤めの郁子を誘い出すことに成功していた。カメラマンの小見山は、彼女を写真のモデルに使いたいと言ったのだが、ほんとうの目的は、他にあった。小見山は、公園で声をかけた未知の女性でも、その日のうちにモノにできる自信を持っていた。……この小説は、二人の男の行動を通じて、作者が、女性ハントの秘術を語り尽した、長編小説である。 -
十三夜
貝がもだえるような感覚につつまれ、小さなふるえに身をゆだねながら、男の体は次第にたかまってゆく。処女かどうかの自覚さえもない程度の性知識しかない女子大生の圭子……自分の娘のような年齢の彼女に、女関係の豊富な小沼は、新鮮な興奮をおぼえた。骨細でふっくらとした肉体の内部に秘められた微細な構造、その並々ならぬ素晴らしさが、小沼をとらえて離さない。連続十三夜にわたる、若い娘と初老の男の肉体のドラマを通して、次第に開花して行く女の性のかたちを鮮麗に描いた傑作「十三夜」のほか、「いつしか連夜」「白粉の気配」など、官能傑作小説全5篇を収録した異色の短篇小説集。 -
七色の女
映画館で佳子と知り合った小原は、2度目の逢引の時、早くも彼女を籠絡することに成功した。佳子は、人妻だった。夫の須藤は、理髪店を経営しているという。ある時、彼は、須藤の店に散髪に行った。佳子から夫はこわい人だと聞かされていた彼は、須藤が自分と佳子の関係を知っているのではないか、と不安を抱いた。数日後、小原の所に、男の声で電話がかかった。その声は、小原と佳子が利用したホテル名を告げ、そこで小原に会いたいという。須藤か? 彼は怯えながらそのホテルに向かった……。という表題作、「マイガール」「ヌードモデル」「女狐」「春の夢」「疑惑の発生」など、全11篇を収録。 -
好色演戯
中年のテレビ俳優である足立家に、ひょんないきさつから、夫婦だと称する若い男女が、住み込みのお手伝いとして同居することになった。この若い網夫婦、仕事は朝から交代でよくするのだが、なにしろ一つ屋根の下に赤の他人の二つ夫婦が寝起きするのだから、なにやら妙な雰囲気だ。男盛りの好きものである足立には、若いカップルの夜が気にかかってしようがない。ある夜、足立は、網夫婦の寝室を秘かにうかがおうとした。ところが、敵もさるもの、網夫婦も足立夫婦の夜をぬすみ見ようとしていた……。意表をついて展開する好色コメディの表題作、ほかに傑作短編3作を収録。 -
危険な娘たち
郊外の分譲地で、ふとしたキッカケで知り合った男に、惹かれていく房子。夫婦のトラブルで苦しむ義兄によって、ふしぎな女心に目ざめる玲子。ペンフレンドへの手紙に、大胆にセックスの渇きを訴える紀子。中学時代の先生への淡い憧れが、ライバルの出現によって、燃える恋にかわるたまえ。ベッドにしのび込んできたいとこの、幼い愛撫に傷ついたゆき。5人の思春期の娘たちは、愛と性の危険な時間を、どう受け止めただろうか。……性の万華鏡を描くことによって、男の女の原質を捉えようと試みる作者が、若い季節の秘密に、新しい手法でメスをいれた、異色青春小説である。 -
めざめる女
音楽茶房「モンクール」にレギュラー出演している、クインテットのメンバーの大町と秋山は、それぞれの持ち味と方法とで、女体の探検をつづけていた。ある夜、大町から秋山に電話があった。店によく来る中村房子というグラマーの女性が、処女を捨ててしまいたいと言っているので、その相手役をつとめて欲しいという話であった。大町が房子に執心していることを知っている秋山は、その奇妙な申入れにたじろいだが、やがて、ぞくぞくとした快感に包まれるのだった。……無限の拡がりと変化をもった色の道を、円熟の筆で描破した長篇小説。「新・肌色あつめ」の第1巻としておくる。 -
FUZZYコンピュ-タの発想
※この商品はタブレットなど大きいディスプレイを備えた端末で読むことに適しています。また、文字だけを拡大することや、文字列のハイライト、検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません。 ファジィ〈あいまい〉という画期的な発想。人間らしいコンピュータが出現した! ーー日常生活は、「だいたい……」「多少……」と《あいまいさ=ファジィ》に満ちている。人間の頭脳は、あいまいに判断し、認識し、推論する。この人間本来の思考法をコンピュータに取り入れて、機械やシステムを制御し、より安全な飛行機や、より快適な生活をもたらそうというのが、画期的発想のファジィだ。 -
夜のパスポート
婚約者に裏切られ、国際見本市アフリカ隊の一行に加わってモロッコにやって来た、羽仁生節子。眠れぬ夜、睡眠薬を飲んで床に着こうとしていた節子を、隊員のひとり、一の瀬が訪れた。翌朝、同じベッドに横たわる男の醜悪な体を発見して、節子は絶望する。スキャンダルは広がった。砂漠の古都・フェズで節子に求愛した若い大使館員・北沢も、噂を知ると冷たくなった。傷ついた節子の行手に待つものは……。異国の空の下、孤独な男女に忍びよる危険と誘惑、行きずりの愛、歪んだセックスを描いて、現代人の心の傷をユニークなタッチで抉る異色作。 -
肉体演奏
紺野は、あるパーティの席で、樹良を知った。樹良は、国際的スチュアデスである。ひと目でその性的魅力の虜となった紺野は、あと一歩のところでスルリと身をかわす樹良を、執拗に求めつづけた。これまで女に肉体的価値しか認めなかったのが、恋情を抱くようにさえなった。そして、彼はついに、樹良を陥落させたのである。その夜、二人は激しく燃えた。ことに樹良の燃え方は、さすがのプレイボーイ紺野も驚くほどだった。しかし、次に会った時、樹良はきっぱりと拒絶したのである。あれほど燃えた樹良の拒絶する理由が、彼にはさっぱりわからなかった……。という衝撃の表題作など、全6編を収録。 -
突っかけ侍
肥前唐津藩の元御馬廻役・松村金太郎は、今では突っかけ草履の小粋な兄さん、人呼んで「わざくれ橋の金さん」だ。武士稼業はすっぱりやめてはいるけれど、実は、主君・小笠原長行の内命を受けて、ひそかに藩のため働いている……。ある春宵、将監橋の上、唐津藩の内紛で長行の反対派にまわり、藩侯の里方・信州松本藩と手を結んで、藩論を朝廷方に傾けようと企む奸人で、義兄の仇でもある周施方・長谷川番作をバッサリ。ーー粋でいなせな金さんが、同じ脱藩・小南敬助らと協力、小笠原長行を扶けて東奔西走の活躍。剣雲、侠気、哀恋が織りなす、子母澤寛会心の幕末傑作長編! <全3巻> -
深い失速
《私》は、大学病院の若い精神科医。患者の丹野明夫は、人妻殺しを《私》に告白し、フミコという名に激しい心理的な反応をみせた。が、被害者であるはずの大和田緋那子は、健在なのだ。彼女は、美貌のパイロット夫人だった……。《私》は、患者の告白の謎を追わねばならない。丹野の恩師・宮川教授を訪れると、教授はフミコの名に動揺をみせた。《何かがある?》……。一方、緋那子の夫・大和田は、失速・墜落の幻想に悩みつづけているという。冷えた夫婦の陰影が漂っていた。 やがて、丹野の水死、ジェット機の炎上と事件は続発する。《私》の前にも白い靄がかかった……。 -
女の美食
岡村は、由紀の体や顔を眺めながら、おこなうのが好きだ。由紀は、歩く時にも、ちょっとした仕種も、ゆっくりとしている。岡村は、由紀には官能の素質があると、前からにらんでいた。それはやわらかそうな体の線や、着やせする小造りの骨細な線、白いきめ細かな肌などから、そう思っていた。愉悦を覚えている由紀の顔の中で、いちばんエロチックなのは、開いた口だ。前歯が覗き、めくれた上唇のまだらな口紅の跡とか、前歯の裏側に当てられている舌の先とかの眺めが、岡村を興奮させる……。性の美食家の目にうつる女の微妙な成長を丹念につづる「美食」をはじめ、「笑いながら」など、傑作6篇を収録。 -
春の渇き
郷子は、手島によって、女としてめざめた。郷子が結婚したあとも、手島は「会いたい」といい、彼女もまた、会いたくなるのだった。郷子の中の「女」は、彼女の意識を離れて、1匹のけもののように、生きていた。そのくせ彼女は、夫の小池との間を、なんとか平常の形で保っていきたいと努力していた。そんな郷子が、手島との違和を感ずるときが来た。彼女のからだは、小池でなく、渇きを充たしてくれる第三の男を求めるのだった……。セックスと心理のひだひだを、まさぐるように描いた「春の渇き」の他に、「不妊の歌」「犬と情熱」「声と楽器」など、全9篇を収めた珠玉集。 -
官能の気配
私は、都心のホテルに泊って、4日目になっていた。最初の3日間は、仕事に打ちこみ、あとの4日間は、女を入れ替り立ち替りそのダブルベッドの部屋に引っぱりこむことを考えていたのだが、不意にギックリ腰におそわれた。ギックリ腰のまま、行為は可能だろうか? 秘策を思いついた私は、ホテルにとじこもったまま、次々と女を呼び入れて行った。白人の外国人スチュワーデス、看護婦、女マッサージ師、巫女……。さまざまな女たちとの奔放なセックスの形を克明に描いた快作「満開ホテル」の他に、異色の官能短篇小説4篇を収録した、鮮烈な作品集。 -
渇きの日
滝乃の体は、日常にないものへの渇きに、いらだっていた。電車の中で白い指の男を見つけて合図を送ったり、高校時代の教師を呼び出して、その渇きをいやそうとするのだが、やはり、彼女は、体が何かを求めてあぶくを出しながら煮えたぎるのを、どうすることもできないのだった。そんな彼女は、ある日、陽に灼けた上半身をむき出しにして建築現場で働いている2人の労働者と、声を交わした。間もなく2人の労働者と滝乃は旅館へ……。という「渇きの日」の他に、「処女前後」「二度目から素敵」など、全11篇を収めた魅力短篇集。 -
仮装行列
旧華族との交渉を懸念する父のすすめで、滝沢一郎と婚約した田所真木子。真木子の義父・憲介は、東洋美術館長で、重要文化財審議会の委員をしている。旧華族の東照寺公一は、徳之内元伯爵家の相続人・摂子とブルー・セックスに耽っているが、真木子の婚約を知ると、掌中の珠を失う思いに悩む。二人の結婚に執念を燃やすのは、元伯爵夫人・徳之内津留で、一郎の父・滝沢代議士は、大名華族の元家令である。この政略結婚のかげには、徳之内家所蔵の国宝絵巻屏風をめぐる、母娘の醜い争いが隠されていた……。真木子をめぐる、仮装行列さながらの上流社会の虚偽と性の腐爛を描いた大作。 -
落ちる実
大町は、ふゆのに誘われて、彼女のアパートに泊りに行く。ふゆのの妹・りえは、ふとんを3つ並べて、先に寝ていた。姉妹の真中に、大町は寝ることになるが、それは、ふゆのによって、はじめから仕組まれた筋書らしくもあった。大町は、あやしい刺激を受ける。そして、彼は、りえが、自分の友人の秋山とも交渉を持っていることに、興奮を新たにするのだった……。セックスの地図をあますところなく踏破して行く男を描くことによって、作者は、生きていることの充実をどんらんに追及する。巧まざる健康なユーモアにあふれた異色長篇小説。「肌色あつめ」第2部。 -
女歴
女性研究家の肩書きを持つ青池妙五は、熱心な実践的女性探求家である。中年男の彼には、20代半ばの後妻と、中学2年になる男の子がいる。しかし彼は、パトロンを持つ夫人をはじめ、スナックのマダム、女子大生、デパート・ガール、バーのホステスなどと、次々と関係を深めていく。好色であり、才能があり、上質の肉体的構造を持っている理想的女性を求めて遍歴する青池妙五の身に、やがて意想外の事件がのしかかる……。「誘惑」に人生の悦楽を、「情事」に人間の実存を賭ける男の、超人的な女性遍歴を、川上宗薫一流の筆致で描いた異色の長編小説。 -
女ひとり
夫の帰還を待ちわびながら、女代議士としてヒロポン絶滅を叫び、社会悪と闘う香川文江の姿を通し、人生の哀歓を訴える傑作。 -
歓ぶ女
大町が道をたずねるために立ち話をした人妻は、印象的な美人だった。彼は、偶然を装ってその人妻と再会し、数時間後にはホテルへ連れ込むことに成功していた。女の道にかけて、大町には、不可能ということがなかった。そのためには、相手の女につきまとう若い男に殴られて、失神することにも耐えた。一方、彼の友人の秋山は、芸者の菊丸にネツをあげ、「お座敷旦那」になっていた。菊丸には、すくなくも10人の男がいて、それが秋山の悩みのタネだった……。二人の男の色道修行を追いながら女の百態を描き尽した、魅力ある長編小説である。「新・肌色あつめ」の第3巻。 -
欧州色めぐり
もの書きを職業としている今井の専門は、「好色」ないしは「女体」である。だから、世間では一応、プレイボーイで通っている。彼が外国旅行をする場合、各所旧蹟にはまったく関心がない。女、動物園、食事、この3つに関心は絞られる。そのうちでも、一番は女である。彼の予定としては泊る数だけ女と寝ることである。ロンドン、ブリュッセル、マドリッド、パリと、ヨーロッパの夜を、次から次へと女を誘惑して歩く男の華麗な情事体験を描いた「欧州色めぐり」の他、「マウナ・ケアなんか」「新・欧州色めぐり」「瘋癲序曲」「沈んだ関係」を収録。心こまやかで冷酷な性の世界を描く魅力溢れる作品集。 -
悦楽の傷み
綾子は、戸村との結婚を真剣に考えるようになってからのある日、クラスメートの村井に電話をした。彼女は、村井に誘惑してもらいたい気持ちだった。プレイボーイの村井は、彼女が予想した通りに、ことを運んでくれた。千駄ヶ谷の旅館で村井に抱かれたとき、彼女は、その日の冒険の原因になった戸村の浮気など、どうでもいいという気分になっていた。悦楽の中にのめり込みながら、自分の中の女が声をあげていた……。平凡な働く女性の肉体と心の奇妙な交錯を、しゃれた筆致で描いた「悦楽の傷み」の他に、「女体感応」「失神作家」「獣と会った日」など8篇を収めた珠玉短篇集。 -
陰に陽に
声優の殿川は40歳、テレビドラマの私立探偵アーチー役の吹替えで人気を得、私生活でもいっぱしのプレイボーイだった。前の細君とはずっと以前に別れ、いまは、娘ほども年の違う流実と結婚している。なのに、平凡な生活では物足りない彼は、次々に新しい女と浮気を重ねた。そして、単なる浮気に飽きたらなくなった彼は、より濃密な刺戟を求めて、やくざのヒモがいるという女と接して、スリルを味わうようになる。一方、流実にも、殿川には悟られてない秘密の時間があった……。性の実現に最大の喜びを覚え、次から次へと女を誘惑して歩く男の、華麗な情事体験を描く異色長篇小説。 -
忍ぶ糸
伊賀・上野は、鈴鹿山脈の麓にある城下町で、組紐の町でもある。千賀は、ここの忍町で生れた、人もうらやむ美しい娘だった。紅い椿の咲く頃、千賀は、組紐屋のしにせ「増住」に織子として雇われたが、そこで増住の一人息子・洋三を知った。これがヒロイン・千賀の愛の始まりであった。やがて、千賀と洋三は、将来をひそかに約束しあうが、家柄が違うことを理由に、洋三の父・大二郎は、下請けの「藤浪」の息子・良作との縁談をすすめた。愛する人との仲を裂かれて、千賀が良作の許に嫁いだ日、花嫁姿の彼女を見た近所の人々は、花が咲いたようだとささやき合った。千賀の悲しい一生の始まりだった。 -
忍ぶ橋
母の残した背徳の傷痕ゆえに、愛をも捨て、憎悪と怨念の石礫を浴びて、贖罪にのみ生きねばならぬ、哀しくも美しい女のさだめ――中桐晶子は、淡路島へ向う船に、傷心をゆだねていた。若い男と蒸発し、淡路島の小料理屋で働いていたらしい母の宮子が、ゆきずりの客を情交後に腰紐で絞殺、睡眠薬自殺を遂げた。客は、奈良の一刀彫り美術商・宗方春之と判り、ゆきずりの無理心中とみられた。宗方春之の妻・志津は激怒した。詫びる晶子に、ちぎった数珠を投げつけ、母親・宮子の罪をつぐなえと叫んだ。そして、晶子は、母の贖罪のために、宗方家の長男・知之の嫁として、志津の前にさらされることになった……。女の憎悪と怨念の石礫を浴びせる志津、女の愛も捨て贖罪にのみ生きる晶子の、哀しくも美しい日々を描く。 -
新選組始末記
著者長年の実地調査を基に、幕末の風雲狂乱の渦中にあって誠心一徹の生涯を貫いた男たち。近藤勇、土方歳三、沖田総司らの人間像を描破、新選組の全容を史実の壁に彫り刻んだ子母澤寛の代表作ーー幕末、江戸幕府の浪人対策の一つとして結成された浪士組は、本拠を京都・壬生に置いて、禁門警護の任につき、市中見廻りの役に当たった。勤皇か佐幕か、開国か攘夷か、国論はまっ二つに割れ、世はまさに日本国あげての動乱の時代であった。この時期、幕府への至誠一徹、暗殺剣の名をほしいままにし、尊攘志士をふるえあがらせた「新選組」の隊士たちは、その青春をいかに生き、その命と魂をいかに燃焼させたのか……。著者みずから長期にわたって新選組所縁の地を訪ね、あるいは古老の談を聴取して得た記録を基に、新選組結成から最後までの真のすがたを史実の壁に彫り刻んだ会心の力作。 -
情報銘柄
正確な株式銘柄情報に、自分の誇りを感じている佐川にとって、最近は、憂鬱の連続であった。勤め先である<週刊東京情報>に書いている彼の推奨銘柄が、外れ続けているのだ。失意の佐川は、しかしある日、耳寄りな情報を得た。河松製作所に中共から、大量のブルドーザーの発注があったという。佐川はこの情報に、情報屋としての誇りの全てを賭けた。推奨原稿を書く一方、借金して河松を20万株買い込んだのである。……兜町に生きる男の栄光と悲哀を描く標題作のほか、苛烈なビジネス戦争の実態を生々しく描く異色企業小説3篇を収録。 -
河内山宗俊
練塀小路の河内山宗俊、天下の直参、お数寄屋勤めのお坊主である。ばくちは打つ、ゆすりはする、悪い野郎の肩は持つ、病気と届けて城へも登らず、肝っ玉の太さは天下一品。11代将軍・家斉の治世、賄賂が物言い、奸臣のさばる腐った巷で、悪には悪を、弱い者には情けをと、直参の威光を利用して、胸がすくようなやりたい放題。子母沢寛の名調子が心地よい、痛快時代小説。 -
いじわるな唇
隣室に住む洋子の声が時々、那可子の部屋まで聞こえてくる。それは、罵詈に属する言葉である。まだ少女のような女に罵られて黙っている男の気持が、那可子には腑に落ちない。男は、50近い年配である。男がいない時、洋子は、若者たちを呼び入れて不埒な行為をしているらしい。ある日、那可子は、男を自分の部屋に誘い入れた。洋子の不謹慎を男に教えたい気持と、男と浮気したい気持を、那可子は、半々ずつ持っていた。男の技巧は、幼稚だった。と、急に男は、顔を踏みつけてくれと那可子に頼んだ……。変態の男と、男を足拭き程度に考えている女の、奇妙な関係を描く表題作のほかに、8編を収録。 -
損料屋見鬼控え
文政元年(1818年)、損料屋(江戸時代のレンタルショップ)巴屋の惣領息子・又十郎は17歳になってからも親から丁稚扱いをされていた。損料屋といえばいちばんの得意先は長屋。長屋から長屋への引っ越しなどではわざわざ家財道具は購入せずレンタルで済ますことが、上方ほどではないにせよ江戸でもそれなりにあった。最初の事件は巴屋の店の入っている長屋だった。大家にヘンな物音がする部屋があるので見てほしいと頼まれてついていくと、部屋の隅に見事な幽霊の姿。もともと霊感らしきものが強いとは自覚していたが、あまりに鮮明なそのお姿に又十郎は腰を抜かしてしまう。これが「事故物件」のなせる業なのか! -
夜獣
ふと魅かれた女のせいで殺人事件に巻き込まれたゴルフ練習場の食堂のボーイ、彼を容疑者として追う警察、新聞記者が、それぞれ事件を追う! 天下の名宝である30カラットのダイヤを巡る連続殺人と、深まる謎。本格ミステリー。 -
毒薬と宰相
青年宰相の名で知られ、戦後、謎の自殺を遂げ悲劇の主人公となった、ある公爵の死因の秘密を描く、ミステリー・タッチの表題作など、全9編の傑作短編集。 -
樹影
布施学園理事長の布施英之は、布施家へ養子に入る前、実家の女中・雪子に子供を生ませる。英男である。英男は、別府の愛育園で育つ。20年目に再会した時、雪子と英男は浦和にいたが、雪子が前夫と関係を続けているのを知り、英男は家出して別府に戻る。折も折、英之の妻はガンで死亡。反対派の策謀により学園を追われた英之は、布施家を去る決意をして、英男を別府に訪ねる……。豪壮な邸宅に住む裕福な人々も、逆境に耐えていきる貧しい人々も、みな三尺の影をひきずって生きている。その孤独な影を、哀調豊かに描いた話題の長編小説。 -
侠骨一代
関東大震災の翌々年に入隊した、飛田二等兵。2日目にはもう、二年兵たちを相手に大立ち回りをやらかした。除隊後は、宿無しとなったところから這い上がり、あらくれ者を束ね、労働者として教育し、やがて、国家事業を請け負うようになる。昭和のフィクサーで、任侠映画「唐獅子牡丹」シリーズのモデルとなった人物、飛田勝造(東山)の波乱万丈の半生を描く! 高倉健主演の同題映画の原作小説。 -
乾いた湖
大学生の卓也は左翼運動崩れ、女子大生を相手に怪しげな闇斡旋をしている。一方、財閥の御曹司・道彦は、怠惰な生活を送っている。汚職の責任を取らされる自殺した父を持つ葉子は、世の中を見返すために、女優として成功するも、道彦が運転する自動車で事故死してしまう……。卓也が相手をする女たち、ゲイ・バーのジャニー、クラブのマダム・文枝など、多彩な人物が登場する、長篇風俗小説。 -
悪の公式
赤石定造は、香港で人を買った。定価1円。彼はその男に500ポンドの保険をかけ、阿片を吸わせ女を抱かせることによって彼の精力を涸らし、1週間めに殺すことに成功した。保険金で定造は教会を建て、カトリック信者を装いながら、教会を阿片と売春の巣窟に作りあげた。こうして手始めの「銭」を掴んだ定造は、貿易商社を設立して帰朝し、KK赤石を造りあげ、悪の公式、つまり殺人・脱税・不正輸出などなどによって、あくなき「銭」への欲望を果していく。しかし「悪の公式」は、やはり万能の公式ではない……。「銭」を得るために手段を選ばぬ資本主義の公式を鋭くあばく、長編悪漢小説。 -
ファッション・モデル
戦後10年、夏のモードに選ばれ、ドレスに身をまとい、ステージを歩く美女たち……。新時代の職業=ファッション・モデルを中心に、現代社会風俗を著者独特の犀利な筆で描いた興味深い力作。 -
薔薇はよみがえる
孤独なオフィス・ガールの懐に、ふと飛び込んできた1通の手紙が巻き起こす、若い男女の運命を描く。藤澤氏特有の青春文学。 -
密航
川口と有賀は、予科練上りの米軍通訳という経歴も同じだったし、年齢・性格も似かよっていた。粗暴な米軍人に対する共通した反感が惹き起したある事件を契機に芽生えた友情は、お互いの体内に欝積していく若さと可能性の残滓を確認しあうことで、さらに強固なものとなっていった。二人の若者にとって、未知の可能性はアメリカにしかないもののようであった。綿密な計画がたてられ豪華船に忍び込んだ二人は、満月のハワイ沖で、デッキから相次いで海中に身を躍らせた……。既成社会のモラルの中で、なお若者のエネルギーの純粋性を主張する、著者の野心作5篇を収録。 -
瓢庵先生捕物帖
町医者を営む瓢庵先生が大活躍! 人情あり、喧嘩あり、殺しありの時代小説。横溝正史が生んだ人形佐七も登場し、本格探偵小説としての読み応えも充分! -
太陽がみつめる
運は気まぐれなものである。8回表、中屋投手の乱れから、海城高校の1点のリードが危うくなったとき、早崎監督の頭に閃いたのは、度胸のいい刀根英一郎一塁手をリリーフに使うことだった。作戦は当たった。以来、刀根は大型の速球投手として腕をあげ、別所投手の再来とまで注目されるようになった。尊敬するプロの尾上捕手とも口をきく機会をえたが、これは高校野球にあるまじき卑劣な陥穽からだった。プロのスカウトが美辞をつらねて寄ってくる。巧妙なスカウト、刀根家の困惑……。英一郎の心の窓は、いつか同級生の清子に開かれていた……。文壇随一の野球通たる著者の力作。 -
還らぬ海
下田・葉山間のヨットレースで3隻のヨットが遭難し、一瞬のうちに、津田は弟と古い友人の秋吉を失った。彼は、1年前、秋吉の妻・昌子と背徳の関係にあった。複雑な感情を胸に秘めて遺体を捜索する津田と昌子……。そして、一周忌を過ぎた大潮の夜、海で死んだ人々の姿が現われるという白浜の漁村の伝説をたよりに、秋吉の母親と津田と昌子は邂逅する。しかし、微妙な愛憎の襞も、喪われたものを悼む感傷も、灰色の海は呑みこんでいく。――男性的叙情の世界を描いて他に比類ない、石原文学の傑作「還らぬ海」のほかに、「貧しい海」「獅子の倒れた夜」「白い小さな焔」「灰波」を収録。 -
海の地図
晶子は、啓介と、若く物憂い逸楽の夏を、海浜で過していた。ある夕方、残照の中を、喪の半旗を掲げたヨットが、入江に入った。渚へおりた晶子は、初老の船長・外村に出会い、なぜか全身に戦慄を感じた。やがて晶子は、父と外村が、今は亡き母をそれぞれ愛し、叔母もまた外村を愛していた、という隠された過去を知る。ある日、ヨットで沖へ出た啓介と晶子は、突然の嵐で遭難し、偶然、外村のヨットに救われる。外村は、かつて愛した女の遺児との邂逅に運命の手を感じ、晶子もますます、外村に魅かれていった。二人はかたく唇を交すのだが・・・・・・。長編ロマン小説。 -
黄金の椅子
百万の富を持つ孤独な老実業家をめぐる3人の妖精たち。則子、笛子、花枝のいずれに、黄金の椅子は待っているのか? 流行大衆作家の傑作長編。 -
汚れた夜
雨の井ノ頭公園の池に車が落ち、その中で女が死んでいた。残された男もののライターから、婚約者の秋月という男が浮かびあがったが、彼にはアリバイがあった。罠のにおいがした。そのにおいを頼りに、ひとりの刑事が動き始めた。すると、秋月のシロを証明した女が殺され、つづいてその女の部屋で、もうひとり中年の男の屍体が発見された。行方をくらました秋月は、いったい被害者なのか、加害者なのか? ……手さぐりで事件の核心に迫ろうとする刑事の行動の軌跡によって、戦争の傷痕と政治の腐臭とを、生き生きと描き出した、本格的な社会推理小説である。 -
雲の白い日に
静岡・清水港が見える斜面に腰を下ろし景色を眺めている、3人の女子高生。といっても卒業式は昨日終わっていて、一人はお見合い結婚が決まっていた……。彼女たちの恋愛と成長を描いた表題作と、「永遠の横顔」を収録。 -
おゝい、雲!
健哉、三和子、十郎の3人の大きな子供たちを抱えてやもめ暮しの西條健吾は、秀れた才能を持つ建築家だが、純粋さの故に世に容れられない。子供たちは、ふとしたことから三島家の美しい2姉妹と知り合い、姉妹の母で未亡人の建築雑誌社社長・房子と父親との恋愛を嗅ぎつける。しかし、房子に横恋慕する評論家・江見は、スポーツランド設計に情熱を燃やす健吾を卑劣に中傷する……。それに対して、両家の子供たちは、その友人たちと協力して陰謀に立ち向い、親たちの婚約を実現させようと活躍する……。恋と夢にあふれたエネルギッシュな若者と理解ある親たちとの、明るいパンチのきいた長篇。 -
目白三平の秘密
サラリーマン生活20数年、国鉄本社の厚生局に勤務する一級課員三十六号俸の目白三平。その日常のおかしみと淡い悲哀、ときとして起こる突拍子もない出来事を描く人気シリーズの7作目。妻に買い物を言いつかった洋装店で目撃した中年男の苦境に同情したために、目白三平は都内を走り回る羽目になるが……という表題作はじめ、11編を収録。 -
目白三平の四季
昭和30年頃の国鉄に勤めている目白三平は、シマリ家でやり繰り上手の奥さんと素直な2人の男の子と暮らしている。当時の安月給でつつましくも明るく暮らすサラリーマンの生活が、ユーモラスなタッチで描かれている。 -
命の森
東都学園大学部Jクラスに新入学した若者たちは、夢と希望にあふれていた。保守党政治家を父とする空手の名人・勝見明、元華族の娘で皇太子妃候補と騒がれたこともある美貌の冴子、日本復帰を叫ぶ沖繩青年・当麻、社長と呼ばれる謎の男・加納、なぜか彼の姿に脅える葉子、ラグビー部の乱暴者・片桐一派……。だが、明るく甘美であるはずの青年たちの、前途は困難である。当麻と冴子は許されぬ恋に苦しみ、勝見と葉子の燃えるような愛も、葉子の暗い秘密のゆえに、苛酷な運命の波に翻弄されていく……。短く華麗に花火のごとく生きて燃え尽きる若い命を、アクションドラマ・タッチで描いた青春長篇。 -
飛べ、狼
次々と驚異的に記録更新をする天才テスト・ドライバーの邦光良二は、16歳で浅間の二輪レースで優勝して以来、スピードに憑かれていた。自分の運命を賭け、「何かを、この手で捉える」ために危険なレースに挑み、愛する女にも、信頼する助手にも裏切られながら、彼はヨーロッパのレースに参加する。そして、チャンピオンに挑戦する2度目の機会が、ザールで訪れた……。――先を走るチャンピオンを追う。何周目か、赤いフェンダーが後方にすっとんだ。が、その瞬間……。栄光と死を賭けて生きる孤独のレーサーを描く表題作のほか、「虚無と貞節」「鉛の部屋」「リキとタクとルリ」「悪い娘」を収録。 -
買占め
山協証券営業部長の美川道三は、熱海の旅館業者・大林、山県たちと組んで、北千住に工場をもつ東部ゴムの株の買い集めに狂奔した――。減配をうわさされるような業績のふるわない不良会社の株を、なぜ、美川たち一派は買いまくっていったのであろうか……。地下鉄工事にからむ工場買収で、33億円という大金が手に入るという情報をひそかににぎった大林たちが、東部ゴム乗っ取りのための株集めの先鋒として、美川をもひきこんだのであったが……。資本主義の裏側に仕組まれた巨大企業の利潤追求のカラクリに敢然と挑戦する、一匹狼の物語を巧みに描く野心的長編。 -
怒りの像
南海の孤島に戦死した父の遺書が、戦後の混乱のなかで異なる人生を歩んでいた兄弟を再会させた。伯父に引き取られた兄の洋一は、大学生活を送っていたが、弟の寛二は、街のチンピラの群に身を投じていた。しかし、寛二には、この世の不正を許せぬ正義の血がたぎっていた。彼の意気を買う人々や兄の支持のなかで、寛二は、街のダニどもに果敢な挑戦を決意した。戦うからには勝たねばならぬ。巨大な圧力に抗し、執拗な妨害にめげず、寛二は、無謀ともいえる闘いをつづけていく……。悪に対する純粋な怒りと人間の不屈の闘志を、一人の若者に托して謳い上げた、長篇小説。 -
青髯殺人事件
医学部学生の康子が素人探偵役で事件を解いていく! 新聞記者と老刑事というワトソン役も用意してある、短篇連作ミステリー集。サラッと読ませる職人技が見事! -
青草に坐す
初めて男女共学という、かつてない革新的教育が生まれた時代の、青年男女の哀歓を健康的に描いた家庭小説ーー船乗りの新庄啓作には2人の子供、快活な女学生の翠と中学生の誠がいる。啓作の妹の節子が結婚に失敗し、新庄家の居候になっていたこともあり、翠は周囲の大人たちの恋愛事情に巻き込まれていくことに……。美空ひばり主演で映画化もされた群像劇。 -
青春とはなんだ
正義派で八方破れの高校教師。アメリカ帰りと6尺豊かな巨体にものをいわせて、学校改革に獅子奮迅。文壇の鬼才・石原慎太郎氏が、スーパーマン教師を描き、テレビ化・映画化で大評判の痛快青春小説ーー早春のある日、山々に囲まれた小さな町の高校に、若い英語教師が、赴任してきた。病気で休職している親友の後がまに推されて、やってきた野々村健介だ。田舎町には、さまざまな青春があった。侠気から友人の不良行為の罪をかぶって退校になった少年もあれば、ロメオとジュリエットのように、親に許されない恋人たちもいた。そして学校には、おきまりの派閥争い。野々村は、それらの渦の中で、青春の姿を、自分のからだで逞しく描いて行った。……現代に見失われた、純粋な生き方を、スピーディな筆致で、明るく彫り上げた、石原文学の記念碑的な作品。 -
人喰鮫
イギリス人の青年が、いまだ開発が始まったばかりのにオーストラリアに渡り、不思議な縁と運に導かれて、釣り上げた鮫の腹の中から見つけた小箱の中にあった、ひと月前のロンドン・タイムスの記事から、オーストラリアの羊毛の高騰を予見し、大富豪になった。そして最後に、日本人の鮫釣り男と大航海に出る計画を語り合う、という綺譚。描写が的確で重層的で読み応えのある傑作。