4.9
凄い。 どこまでも精密に作られた作品。
まず第一に
裏と表を絶妙に突いてくる。そして裏と表はとっても密接しているものだと教えてくれる。
法律のもと行った仕事だと正当化しつつ、法律なんて関係ない私が犯人に手を下してやると言う、健次郎。
そして、ラストには純朴、無垢な子供たちも
自身の正義を生きるためには手を汚すことも厭わないと思う。 あんなに敵視した健次郎も歩んだ道だろう通路を行く。
似たようなことなら、 父親に対し、近いからこそ憎しをもち、正しく生きようとするがその最中、自分から子を身籠りそして殺す選択をした事実。
これは子供だからこそできる選択。
女心もわからない鈍感男ね、といった本人が鈍感女。おなじ科白(使いたかった笑)を吐かれるし。
もっと沢山、裏と表の密接部分を感じたところはあったんだけどなぁ。 それを書くのは難しい。
そして
第二に、子供心が忠実すぎる。
本当に、正義の履き違え、思い込みと夢見がちと… 本当に大人と子供の間をよく書かれている。
青春物は相当苦手だけど これは夢見てない、リアルなものでスッと入ってくる。好きなやつ。
後半の供述には夢中になって読んだ。
内藤は、美雪が誘ってきたんだと糞男を演じたが、美雪に対して悪気はなく、なんなら誠意をもっての行動だった事実。これは衝撃を受けた。犯すことを正当化し一石二鳥等とほざき、睡眠薬を使うことを決め、
最中に怯んだが柳生を求める美雪に苛立ち犯してやろうと決意したというのに。
自分の感情をまとめることは難しい年頃。感情の行くままにそれを素直に受け入れてしまう。本当に高校生というのを良く書かれてる。
これと類似してる部分はこれ↓
学園紛争で学内に立てこもった学生の間で乱交が行われていて その行為が彼らの意義を昂める源泉であるというということ。
まぁこれは単に、吊り橋理論もプラスされ、その行為にハマってるだけともいえるけどね。笑
そして何より、371ページ
二人の好意が、愛に醸成されていくのを静かに待っておればよかったのだ。美雪も内藤もアルキの会も、どうだってよかったのだ。あれも、これも、私はおおよそ道化た空転をしていたのだ 。
これこそが子供心を忠実に再現されていると感じた。
夢中になれる何かを探していただけのこと。
そしてその事実も素直に受け入れられてしまうこと。
私はそう解釈した。
そして重大な、アルキメデス発言して亡くなった美雪。
アルキメデスは、直接的には手を下してなく、死ぬまで正当化したが、現実はそう綺麗なものになってる訳がなかった。
美雪も、自分の選んだ道を正当化したいがため
アルキメデスを心に刻んで亡くなった。
虚しいな…。
そしてこれを読んで思ったことは
「愛は世界を救うとは良く言ったもんやな」
失笑。 そっちに捉えた。笑
これ、時代背景が密に関わってくるけど
17歳はどの時代でも17歳だった。
現実と理想の狭間を葛藤する部分なんて何も今の若者とかわらない。
私の17歳も、本当にこれだった。
なんなら、17のあの頃が無知であるからこそ一番綺麗で正論を突いた意見を芯に持っていた気がする。
24歳の今は、汚れたような、本当の残酷さと本当の優しさをゲットできたような。それでも17の頃より弱くなったような感覚。
だからこそ、懐かしさとフィクションさが丁度よかった。
ミステリー部分を何も言ってないけど、 ミステリーとしてもすごくよかった。テンポがよく飽きさせない、そして一つ一つ点が繋がっていく良い感覚を最高に体験させてくれる。
持ち上げすぎ? いや、全くそんなことないわ。
この本、題名のセンスも良すぎ。
アルキメデスは手を汚さない
○○が、死んだ、倒れた、消えた
幼児が舐めた
老婆が感謝した
母が庇った …。
比喩なしに、ストレートに教えてくれる。
アルキメデスは手を汚さない、も丁寧に意味を教えてくれる。
村上春樹やエヴァのような
芯だけ明確にし、相手に考えさせ、都合よく解釈できるようにし、信者にさせるようなものではない。どっちも大好きだけど
この本は全てを教えてくれる。疑問を一つも残さない。
良書すぎる。
一つ苦労したのは、言葉のチョイスの古さ、旧字体が使われていること。
読めない漢字をスルーして半分まで読み進めて、
これは良書だから、この読み方は絶対勿体無い!と気付き
又一から読み直した。笑 次は漢字もちゃんと調べて。笑
良かった。 読み直して。本当に。
楽しかったです!!