あらすじ
「アルキメデス」という不可解な言葉だけを残して、女子高生・美雪は絶命。さらに、クラスメートが教室で毒殺未遂に倒れ、行方不明者も出て、学内は騒然! 大人たちも巻き込んだ、ミステリアスな事件の真相は? 1970年代の学園を舞台に、若者の友情と反抗を描く、伝説の青春ミステリー。江戸川乱歩賞受賞作。
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Posted by ブクログ
刑事の部下のような立場で読むことができました。
物語が徐々に明かされていき、どんでん返しというよりも証拠に基づいて論理的に暴いていく物語なので、自分が物語の1人になれた気がしました。
Posted by ブクログ
4.9
凄い。 どこまでも精密に作られた作品。
まず第一に
裏と表を絶妙に突いてくる。そして裏と表はとっても密接しているものだと教えてくれる。
法律のもと行った仕事だと正当化しつつ、法律なんて関係ない私が犯人に手を下してやると言う、健次郎。
そして、ラストには純朴、無垢な子供たちも
自身の正義を生きるためには手を汚すことも厭わないと思う。 あんなに敵視した健次郎も歩んだ道だろう通路を行く。
似たようなことなら、 父親に対し、近いからこそ憎しをもち、正しく生きようとするがその最中、自分から子を身籠りそして殺す選択をした事実。
これは子供だからこそできる選択。
女心もわからない鈍感男ね、といった本人が鈍感女。おなじ科白(使いたかった笑)を吐かれるし。
もっと沢山、裏と表の密接部分を感じたところはあったんだけどなぁ。 それを書くのは難しい。
そして
第二に、子供心が忠実すぎる。
本当に、正義の履き違え、思い込みと夢見がちと… 本当に大人と子供の間をよく書かれている。
青春物は相当苦手だけど これは夢見てない、リアルなものでスッと入ってくる。好きなやつ。
後半の供述には夢中になって読んだ。
内藤は、美雪が誘ってきたんだと糞男を演じたが、美雪に対して悪気はなく、なんなら誠意をもっての行動だった事実。これは衝撃を受けた。犯すことを正当化し一石二鳥等とほざき、睡眠薬を使うことを決め、
最中に怯んだが柳生を求める美雪に苛立ち犯してやろうと決意したというのに。
自分の感情をまとめることは難しい年頃。感情の行くままにそれを素直に受け入れてしまう。本当に高校生というのを良く書かれてる。
これと類似してる部分はこれ↓
学園紛争で学内に立てこもった学生の間で乱交が行われていて その行為が彼らの意義を昂める源泉であるというということ。
まぁこれは単に、吊り橋理論もプラスされ、その行為にハマってるだけともいえるけどね。笑
そして何より、371ページ
二人の好意が、愛に醸成されていくのを静かに待っておればよかったのだ。美雪も内藤もアルキの会も、どうだってよかったのだ。あれも、これも、私はおおよそ道化た空転をしていたのだ 。
これこそが子供心を忠実に再現されていると感じた。
夢中になれる何かを探していただけのこと。
そしてその事実も素直に受け入れられてしまうこと。
私はそう解釈した。
そして重大な、アルキメデス発言して亡くなった美雪。
アルキメデスは、直接的には手を下してなく、死ぬまで正当化したが、現実はそう綺麗なものになってる訳がなかった。
美雪も、自分の選んだ道を正当化したいがため
アルキメデスを心に刻んで亡くなった。
虚しいな…。
そしてこれを読んで思ったことは
「愛は世界を救うとは良く言ったもんやな」
失笑。 そっちに捉えた。笑
これ、時代背景が密に関わってくるけど
17歳はどの時代でも17歳だった。
現実と理想の狭間を葛藤する部分なんて何も今の若者とかわらない。
私の17歳も、本当にこれだった。
なんなら、17のあの頃が無知であるからこそ一番綺麗で正論を突いた意見を芯に持っていた気がする。
24歳の今は、汚れたような、本当の残酷さと本当の優しさをゲットできたような。それでも17の頃より弱くなったような感覚。
だからこそ、懐かしさとフィクションさが丁度よかった。
ミステリー部分を何も言ってないけど、 ミステリーとしてもすごくよかった。テンポがよく飽きさせない、そして一つ一つ点が繋がっていく良い感覚を最高に体験させてくれる。
持ち上げすぎ? いや、全くそんなことないわ。
この本、題名のセンスも良すぎ。
アルキメデスは手を汚さない
○○が、死んだ、倒れた、消えた
幼児が舐めた
老婆が感謝した
母が庇った …。
比喩なしに、ストレートに教えてくれる。
アルキメデスは手を汚さない、も丁寧に意味を教えてくれる。
村上春樹やエヴァのような
芯だけ明確にし、相手に考えさせ、都合よく解釈できるようにし、信者にさせるようなものではない。どっちも大好きだけど
この本は全てを教えてくれる。疑問を一つも残さない。
良書すぎる。
一つ苦労したのは、言葉のチョイスの古さ、旧字体が使われていること。
読めない漢字をスルーして半分まで読み進めて、
これは良書だから、この読み方は絶対勿体無い!と気付き
又一から読み直した。笑 次は漢字もちゃんと調べて。笑
良かった。 読み直して。本当に。
楽しかったです!!
Posted by ブクログ
元祖青春ミステリーだそうです。タイトルは普遍的で意味深い。人類は進歩し続けると共に失う、寧ろ自分自身を殺す羽目になる。そんな一つのパラドックスを投げかけてます。トリック云々を語る推理小説ではないです。高校生の現実を明るみにだした、当時としてはちょっとしたエポックメイキング的な作品だったのでしょうか。本作は東野圭吾氏が作家を志すきっかけとなったことで有名らしいです。
Posted by ブクログ
1970年代の日本
東京オリンピックや大阪万博など景気の良い話の陰に、強引な開発や公害の垂れ流しを「多少の犠牲はつきもの」としてうそぶきながら大人たちが日本再建に躍起のなか、子供達はイデオロギーに戸惑いながら戦前からの道徳感を打ち破って、少しづつ新しい時代を自ら作り出そうとしていた。
物語はそんな空気感の狭間で起こる事件をめぐり、大人たちと高校生たちを描く。
女子高生の妊娠と中絶手術のはての死
妻子ある男性との不倫とコンクリート詰の死体
鉄ぐし差しの死体と密室
青春ものとは縁遠いかに思われる内容が次から次へと起こる。
70年代に書かれてあっという間に当時の若者たちの間で広がった小説。
私も当時このシリーズすべて読んだ記憶があり、懐かしく感じるだろうと思ったが、とんでもない。
今でも、生きている小説だった。
21世紀に入る前に作者が亡くなって、絶版していたとは……。
Posted by ブクログ
「海のはじまり」を観ていたら、
夏の本棚に本書が並んでいて、
そういえば以前購入して
積読状態とままということを
思い出して読みました。
1973年刊行なので、
時代背景を考慮した上で
読む必要があります。
なので、本書についていけない人も
沢山いると思います。
かろうじて、当時の状況を
想像することが出来ましたが、
その時代に読んでいれば
もっと高評価をつけていたはず。
高校生が今より大人びていそう
Posted by ブクログ
堕胎手術で亡くなった女子高生美雪、誰の子を妊娠していたのか…父親が相手の男を探す話と思ってたら、そこからどんどん事件が発生してきて誰がどう関わってるのか全く分からん!読み進めるたび一転していく面白い。各々の正義がこうも狂わせるか……!
Posted by ブクログ
何かタイトルが今風かと思ったけど(アルキメデスの大戦と被ってるだけかも?^^;)、国鉄とか言葉出て来るから古い作品やな!
関西地方の話やから、分かるけど、この頃から比べたら、だいぶ、交通の弁も良くなってるで!
後で、調べたけど、めっちゃ有名な作品。東野圭吾さんが、作家を志すきっかけの作品やとか…
半世紀前ぐらいの作品なんで、多少の古さはあるけど、推理小説としては良い感じ。
時代背景は、感じるな。タイトルの意味もしかり。
しかし、こんな賢い高校生おるか?ってのは思う。
西村京太郎さんばりの時刻表のトリックとか(でも、西村京太郎さんの方が後発になるのかもしれん。)、アリバイ作りとか。
アルキの会を結成して、エコノミックアニマルへの復讐みたいな大義名分で、実行したけど、結局は復讐対象と変わらんようなレベルの動機って…
今、エコノミックアニマルなんて言葉使うのかな?
「お互いに、もうお伽話の年齢は過ぎたんだぜ。汚れた世間には、手を汚して立ち向かおうじゃないか」
分かるけど、高校生やから、もうちょっと夢持って欲しい…
確かに現実は、甘くないけど、そんな割り切らんと…
Posted by ブクログ
東野氏の原点として紹介されていた作品。昔と今とで随分と推理小説の形態が変化したと感じる。昨今は奇をてらった殺害方法やストーリーに緻密なまでに張り巡らされた伏線とその鮮やかな回収、そしてどんでん返しが期待されているが、そんなものがなくても面白い作品は面白い。姉の死に関してほとんど説明がなくてもOKなのだ。現代で出版されていたら、レビューで解説が足りないとか謎が残ると言われそう。文章も難しく、昔の学生はこんな文章も読めていたと思うと、よりわかりやすく簡素化が求められている昨今の私たちは、知能指数が落ちてきているのかな、と思ってしまった。
本筋の事件よりも、最後の弁当セリ市を開催していた田中の一連のセリフに感心した。
Posted by ブクログ
単なる謎解きでなく、純粋な学者のふりをしても、結果として軍事利用される科学技術の戦争責任にまで問う視野の深さをこの題名は示している。70年代の若者の社会の偽悪に反発する風潮もうまくとらえて、見守ろうとする大人。
Posted by ブクログ
それほど古い作品だとは知らずに手に取りましたが、登場人物がなんとも言えない魅力を醸し出しているので、飽きる事なくあっという間に読めてしまいました。
推理という面では少しあっさりした作品ですが、今の学生の青春とはまた違った形の青春を感じるストーリーが魅力的です。
Posted by ブクログ
学生らしい万能感と時代が重なった結果か
時代背景(連合赤軍とか)をある程度知らないといまいちピンとこないだろうなという描写がある。
が、小粒の謎が散りばめられている点が、今読んでも面白さを感じられるテンポ感につながっていたと思う。
Posted by ブクログ
50年以上前の昭和が舞台のミステリーで、設定や進行が現代の常識や価値観からみると荒唐無稽で、その当時の映画やドラマに感じる違和感を感じた。また倫理観も、例えば女性は陰険なもの等、現代では通じない倫理観が固定概念として扱われており、現代と乖離した昭和独特の雰囲気を感じた。しかし昭和のノスタルジーに浸れる感覚から、純文学を読んでいるような感じがよかった。物語は古典的ミステリー小説のトリックなどが多く使われ、現在に続くミステリー小説の原点のように感じられたが、反面として現代の感覚で本書を読むと、使い古された感のある物語に思えた。
Posted by ブクログ
第19回乱歩賞受賞作、なんと70年代!東野圭吾が読んで作家を志した本作、勉強がてら読んでみました。
青春ミステリのはしりとも言われるこの作品、70年代の空気感は感じるがメッチャ読みやすい!
大人と子供の理解の断絶は不変的なものなのだろうかな。謎が小粒だがタイトルがカッコいいね!
Posted by ブクログ
・社会や大人に対して自分達を主張したい高校生による青春小説としても読める。そこに3つの事件が発生し心理的な攻防戦が展開されていくのが面白い。
・言葉の表現、空気感が時代性を感じるが思春期から大人へと変貌していく剥き出しの精神的な部分は今と変わらない。
Posted by ブクログ
★もうお伽噺の年齢は過ぎたんだぜ。(p.374)
3つの魅力(1)学生の頃、超ベストセラーでした。それゆえ逆に読む気になれなかったので、どんなんやったのかなあと楽しみ。(2)どうやら登場人物たちは高校生であり、この当時らしくそれ以前の世代に比してドライで、適度にシニカルで軽く、でもそれなりに反抗的、そして何かを探して焦っているように描かれてそう(読む前の予想)。読んでみて、この世代の雰囲気は出ているように思いました。まったく同世代なので、未熟なのに自分ではさばけているようなつもりになっているキャラたちに過去の自分を見るようで恥ずかしさがおもろいです。「新人類」という語が出たのはもうちょい後だったと記憶していますが、その萌芽のような世代と旧世代の大人たちの乖離と歩み寄り。(3)展開はテンポよく読みやすいです。ちょっと古い作風なのは間違いないですが、レトロさも楽しめるかも。
■簡単なメモ
【一行目】葬式は、ほどほどに厳粛で、ほどほどに盛大で、ほどほどに湿っぽかった。
【荒木之夫】二年二組。美雪とは気が合っていたらしい。
【有田】美雪を診察した産婦人科医。
【アルキメデス】美雪が最後に二度つぶやいた言葉。
【延命美由紀】美雪の友人。いっしょに琵琶湖に行った一人。ファーストネームが同じなので怪しいひとり。
【大賀】葬儀社の主任。
【大塚礼光】豊中東警察署刑事。三十歳前後。野村の権威を振りかざさない捜査方法を馬鹿にしているところがある。ということは当人は相手を威圧しながら捜査したいタイプなのだろう。
【会葬者】《女学生ってのは、全く葬儀屋にとっては最高の会葬者だね。湿っぽくて、それでいてほどほどに色っぽくて。葬式の雰囲気が、ぐっと盛り上がると言うものだ。》p.9
【亀井久美子】正和の妻。
【亀井正和】柳生の姉、美沙子の恋人。結婚三年目の妻と二歳になる子供がいるので不倫ということになる。いろいろあって現在は言い争いも小康状態で親公認のような形になってしまっている。柳生隆保にとってはそういうことはどうでもいいのだが、なんとなく好きになれないタイプ。自宅は西宮市。行方不明となる。不倫関係
【健次郎】→柴本健次郎
【高校生】《老人も高校生も、仕事がなくて金もない。そして人生に生き甲斐を見いだせないでいる》p.357。《いまの日本で、知能指数の一番高いのは、われわれ高校二年生なんだぜ。》p.366
【校長】日本史専攻。古武士のような風格を持つことが自慢。
【柴本健次郎】美雪の父。株式会社柴本工務店代表取締役社長。《いまは葬式という滑稽な儀式のさいちゅうなんだ。》p.12などと毒を含んだ物言いで妻を諭すいっぽう《美雪、仇は必ずとってやる》p.19と単純につぶやいたりもする。海千山千の実力者で警察に頼らず独自に捜査する。怪しいヤツがいたら何をするかわからないタイプ。
【柴本祥子】美雪の母。《あなたたちの中の誰なんです。美雪を死へ追い込んだのは。》p.10。美雪の死の原因を作った誰かを憎んでいる。かなりヒステリックになっているようだ。
【柴本美雪】死んだ女子高生。豊能高校二年。十七歳。父は柴本健次郎は会社社長。母は柴本祥子。死因は妊娠中絶手術の失敗だったようで学校の誰もが知っているが両親は公にはしていない。学校では美雪自身が気づく前すでに妊娠の噂が流れていたという奇妙な事態があった。
【修学旅行】四国一周らしい。柳生の事件があったちょっと後に実施。
【祥子】→柴本祥子
【庄内】豊中の一地域。《都市スラム化寸前の地域であった。》p.121。当時の庄内はよく知っているけどぼく的には雑然とした雰囲気は悪くないと思ってました。庄内市場とか有名やったし。
【武田長也】二年二組。
【田中信博】弁当セリ市を発案した。
【豊中商業高校】伝統的に豊能高校と仲が悪い。
【豊能高校】柴本美雪や主要登場人物たちが通っている高校。
【内藤規久夫】柴本美雪のクラスメート。いまだ「少年」に止まっている。美雪に恋愛感情を抱いていたようだ。健次郎の会社が建てたマンションのせいで家の日照が悪くなり、それが原因か祖母が身体を壊して死んだ。
【野村恒男】ある意味主人公。豊中東警察署刑事。五十歳前後。相手に威圧感を与えないので大塚には不満がられているが気にしていない。自問自答しつつ捜査するタイプ。今回の事件の被疑者たちと同年輩の息子がいるので複雑な思いが生じている。
【葉山弘行】二年一組。美雪とは同じ卓球部で美雪に気があった。軽い調子ではっきりモノを言う。
【藤田正幸】美雪の担任。国語科主任で短歌をよくする穏やかな人物。健次郎に協力を要請される。
【弁当セリ市】豊能高校二年二組の名物イベント。その日は弁当を食べたくない生徒がそれを提供しクラス内で競り落とす。田中信博が取り仕切っていた。
【マイアミ】ここでは琵琶湖のそういう名前がついた恥ずかしい水浴場。美雪が友人たちと四人グループで三泊四日の旅行をした場所。
【前川佳代子】美雪の友人。いっしょに琵琶湖に行った一人。
【美雪】→柴本美雪
【峰高志】二年二組。美雪とは中学からずっと同級。声がデカい。
【宮崎令子】美雪の友人。いっしょに琵琶湖に行った一人。
【柳生幾代】隆保の母。寡婦で生命保険の外交員。
【柳生隆保】柴本美雪のクラスメート。すでに「青年」に入りかけている。ちょっとシニカルなタイプ。クラス内の実力者。内藤とは同じ中学出身。内藤の弁当を食べ砒素中毒で倒れたが命はとりとめた。
【柳生美沙子】貿易会社OL。亀井正和と不倫している。母や弟も知っている。
【芳野】葬儀社の社員。美雪の死因をネタに柴本健次郎を恐喝する。場数は踏んでいるようだ。が、その手のことには慣れている健次郎には、逆に利用されることになり探偵役を仰せつかる。
Posted by ブクログ
東野圭吾さんが作家を目指すきっかけになった本
そういえばなんとなくプロットが似てたような
大昔の本だから時代背景違うけどそれでも楽しめた
そしてなによりタイトルが秀逸
こういう最後にタイトルの意味がわかる小説好き!
Posted by ブクログ
今ではあまり使用されない漢字や言い回しが数多く出てきて、調べながらなのでテンポ良く読む事が出来なかった。
柴本健次郎は、社長なのに感情の起伏が激しく、一方で高校は落ち着いていて頭の回転も早い。どっちが大人なのか、少し違和感を感じる。
謎解きも、あまりひねりもない。
タイトルの『アルキメデスは手を汚さない』も最後に解説しているが、このストーリーとの関連性も弱い。
ストーリーとしては悪くはないが、タイトルから期待してハードルを上げた分、物足りなさを感じる。
Posted by ブクログ
「アルキメデス」という言葉を残して死んでいった女子高生・美雪。彼女の死の真相を握る級友たちは大人たちの追及を嘲笑うようにかわしていく。クラスメートの弁当に紛れた毒、ある男の失踪、いずれの事件にも柳生という生徒が関わっているようだが・・・。
昭和47年の学園を舞台に若者の未成熟な友情と世間への反抗を示した青春推理小説。
1972年の江戸川乱歩賞、高校を舞台に人の死の真相を扱った青春ミステリーの先駆けといえる作品ですね。とはいえその青春は現代とはとても似つかないような内容となっています。解説に「青春悪漢小説」と述べられている通り、この作品に出てくる高校生たちはアウトローで小生意気で大人への敬意を知らぬ未成熟な若者です。当時はSNSは勿論、携帯の普及もない時代なので若者たちのストレスや主張は直接的な言動や行動によって示すしかないのでしょう。それが正解なのか不正解なのはさて置き、おそろしく行動的で危なっかしい青年たちが事件の中心陣取っています。一方で追及する側の大人たちはというと極一部を除き、まともな大人たちなのでさらに青年たちの生意気さを際立たせています。
物語の謎が氷解した後に残る若者たちへの印象は「分からない」、「理解できない」という意見が多いと思います。それは作中の刑事もそう感じている通り作者も納得づくの計算、本作はそんな得体の知れぬような不安定な若者像をあえて表現していると感じます。
Posted by ブクログ
関係のなさそうな3つの事件が、アルキメデスの会を中心に繋がってゆく。ミステリとしてはそれほどだったが、当時の高校生たちの〝ヤング悪漢〟ぶり、そして彼らとの世代の壁を感じ戸惑う刑事や教師のおじさん世代との対比がメインで、青春ミステリであることは間違いない。高校生たちのヤングぶりは、現代の高校生と比べても際立っていて、学園闘争などがあった時代だからなのか、とても生き生きとしている。アルキの会の思想は、おそらく現代の若者たちは持ち得ないもので、ゆえに現代では起こらない事件だろう。
ずっと気になっていた作品を読めてよかった。
Posted by ブクログ
1973年って、生まれる前やん。
それくらい前の作品だから、言葉遣いとか、雰囲気とかはどうしても昔感が溢れていて、若干の読みづらさを覚えた。
しかし、内容としては、こうして復刊{2006年)されるだけあって、読ませる作品であった。
トリックとか結末は、それほど驚く様なものでは無かったけれど、興味深く読めた。
Posted by ブクログ
40年も前に書かれた作品だったとは…。年齢的には、この時代の高校生たちは私にとっては親世代にあたるんだけど、どちらかと言うと教師や刑事寄りに「若いもんの考えることはわからん」という印象(笑)あまり古くささは感じさせず、若者は若者らしかった。
Posted by ブクログ
女子高生が手術で死亡
男子高生が毒入り弁当食べ
青年が行方不明から殺害発覚
女性が自殺?
刑事が事件を追う
タイトルは終盤になるほどという展開も
Posted by ブクログ
古風だと思う、言葉回しも、考え方も、何もかも。江戸時代終末から昭和にかけて、押さえつけられていた人間のエゴや顕示欲や自己実現欲が溢れ出た気がする。ダムに留められた貯水が、開門されて轟々と流れ出るような、そんな暴力的な溢れ方だと思う。責任の所在は誰にあるのか。そんなことを問いただすかのような題名ではあるが、そんなことは正直どうでもいいし、この小説においても、そこまで鮮明にそこにフォーカスできているわけではない。ミステリーとしても古風。それよりは、それぞれの登場人物の古めかしさそのものが、十分一つのテーマ足り得ると思うが、多分そこは逆に作者にしてはどうでもいいところなのかな。噛み合わなかった。
Posted by ブクログ
出張の機内で読もうと、成田空港の本屋で買った一冊。
敢えて慎重に選ばず、タイトルだけ見てさっと選んだ後に、
昭和48年に書かれた江戸川乱歩賞作品だったことを初めて
知った。
普段あまり推理小説やミステリーを読まないワタシは、
この本が青春推理の先がけであることはもちろん、そも
そも青春推理というジャンルがあることすら知らなかった。
というきわめて"うぶ"な読者の感想としては、テンポが
あって明るいものだね、というところ。テンポはよかった
けれど、この明るさは、たまにしか推理ものを読まない
ワタシが推理ものに期待しているものではなかった。
でも、この小説が書かれた時代を感じながら読むのは
なかなか楽しかった。これは今は違うだろというものも
あれば、今も言えてるというものがあったり。
主人公たちが高校生だし、もし自分が高校生のときに
読んでいたら、けっこう衝撃的だったかもしれない。
Posted by ブクログ
アルキメデスという言葉だけを残し中絶手術が原因で絶命した女子高生、同級生男子の弁当の毒混入、姉の恋人の失踪とセメント。著者は大正生まれで昭和四十八年出版だけれど古さを感じたのは始めだけですぐに気にならなくなった。ざくざくと進んでいく登場人物達や陰を陰と感じさせない高校生達の浮薄な明るさが小気味良い。
Posted by ブクログ
台詞の1つ1つ、少し芝居がかった言い回しや日照権問題、親の弁当に愛情を感じるか否かの議論など政治というか70年代の主義思想問題とでもいえるような部分に踏み込む描写、など時代をありありと感じた。
東野圭吾がこの作品に影響を受けたというのは非常に納得。
大筋、ミステリとして納得できるか、と言われたらうーん、な世界観だった…
後半、くどくどくどくど、状況確認などの描写が続くのがかったるかった