ブックライブの書店員おすすめレビュー

BL のおすすめレビュー

  • ブックライブ書店員

    職場のイケメン鬼上司との関係に悩むサラリーマン・橋元。企画書を出せば全やり直し、デザイン案を破り捨てられるなど、散々な目に合っている彼の癒しは、オンラインゲーム上の友人・UMAや塩鮭とチャットで会話を楽しむひと時。ひょんな事からUMAと2人でオフ会を開くことになったのですが、その場に現れたのは鬼上司・白瀬その人で……!?

    タイトルがずばりそのままメインストーリーなのですが、キャラクターたちのすれ違い具合が某コント仕掛けのスペシャリスト(古)を彷彿とさせる絶妙さで、BがLする前からニヤニヤが止まりません。
    また、そうしたストーリー上の仕掛けだけでなく、キャラクター達の魅力も本作の見どころです。誰にでも腹を見せるわんこのごとく警戒心ゼロの生き物・橋元、イケメンでめちゃくちゃ仕事もできるのに天然気味な白瀬。そして、2人と仲良しのプレーヤー・熊田は、見た目はヤンキーなのに根は素直で忠犬キャラという、伸び代しか感じない男子高校生なのです。そんな3人がキャッキャしてるんですから、多幸感のインフレ不可避……! 橋元と白瀬が誤解や気まずい時間を越えて、絆を結び直していく過程にもほっこりにっこりしてしまいます。

    ん村先生のデビュー作『きぐるみくん』(一迅社)も顔が見えない状態での出会いから始まる物語。公園で風船を配る謎の着ぐるみに「好きです」という手紙を渡された大学生・島木と、着ぐるみで素顔を隠した彼の元同級生・葉山との不器用な恋が、本作のようなコミカルかつ優しいタッチで描かれています。BLに癒やされたい方には、ん村先生の作品を激しくおすすめします!

    2022年07月20日
  • ブックライブ書店員

    幼なじみ同士の柿谷と周防は高校卒業と同時にルームシェアを始め、共同生活もそろそろ6年を過ぎようとしています。柿谷は広告代理店のライター、周防は美容師としてそれぞれの道を歩みながらも、常に互いの一番近くにいた2人。友達と呼ぶには近すぎるけれど、はっきりと名前のない関係は永遠には続かない。そんなことは分かりきっているのに――。

    『アンチロマンス』という作品タイトルの通り、徹底的にリアルでドライな雰囲気が本作の最大の魅力! 共同生活を営んでいるアパートにはそれぞれの個室があって、食事を共にすることもありますが、そこに流れるのは淡々とした生活の空気。それだけに、柿谷が料理中の周防の方に顎を乗せたり、周防が居酒屋で居眠りする柿谷の耳元のほくろを触ったりといった何気ないスキンシップにしびれるのです……! お互いに何気ない風を装いながらも友達以上の距離に踏み込む瞬間の、緊迫感漂う空気がこちらまで伝わってくるようで呼吸困難必至!! 食えない性格の先輩・十和田(すでに彼のスピンオフが読みたすぎる)の後押しで新たな関係への一歩を踏み出した柿谷に、周防はどう応えるのか。甘くない2人の恋の行方から目が離せません!

    明治時代の旧家に生きる男たちが人間ドラマを繰り広げるシリアス作風の『憂鬱な朝』(徳間書店)が大ヒットした日高ショーコ先生。打って変わって現代を舞台に今時の若者を描いた本作には、ファンからの熱視線が注がれています。人気作を通り越してもはやBL漫画界のバイブルとなった『花は咲くか』(幻冬舎コミックス)に並ぶ代表作となるのか、次巻が待たれます!!

    2022年07月20日
  • ブックライブ書店員

    同じ養護施設で育ってきた警察官の吐木(はばき)と小説家の円は幼なじみであり、番として結ばれた関係でもあります。オメガの円はフェロモンの異常分泌によって、番関係を結んでも他の人間にフェロモンを感知されてしまう上に、抑制剤も効かないという厄介な体質の持ち主。そんな円を守るため、吐木は出世よりも彼と一緒にいる時間を選び、所轄へと異動します。しかし、円は吐木に大きな隠し事をしていて……。

    吐木という番がいるのに他のアルファをフェロモンで誘惑し続けてしまう特異体質の円、幼い頃の事故で両親と自分の心の一部を失った吐木、そんな吐木を守るために円が吐き続ける嘘、そして2人に迫るオメガ連続殺人事件の犯人――これでもかとばかりに詰め込まれた魅力的でサスペンスフルな要素を、繊細かつ色香が立ち上るようなタッチと詩的な言葉で描き上げたなんとも稀有な作品です。自分以上に互いのことを大切に思っているのに、その思いが強くなればなるほど相手を苦しめてしまう……。どこまでも優しくて痛みを伴う関係に胸が苦しくなると同時に、それでも離れられない絆の強さを痛感させられるのです。300ページ近いボリュームを、息つく暇もなく読ませるその筆力にベテランの風格が漂います。

    相手を愛するが故に、心にもない嘘を吐いたり、あえて突き放したり、世間体を気にしたり……。恋愛の暗い部分を描きつつも、最後には必ず希望を見せてくれる。だから麻生ミツ晃先生のファンは「作家買い」をする人が多いのでしょう。会社員としての自分と1人の恋をする人間としての自分との間で揺れるサラリーマンたちが主人公の『only you, only』(海王社)、昼は人格者の上司とインターン生、夜は出張風俗の客とボーイというインモラルな関係を描いた『夜の落下』(海王社)、自分を大事にできないバーテンダーと純情な大学生の切ないラブロマンス『きっと、幸せな結末』(海王社)など、どれも名作揃い! 何度でも読み返したくなる“人生の一冊”に出会えるはずです。

    2022年07月20日
  • ブックライブ書店員

    アルファの獣人とオメガの人間という身分も種族も違う者同士の恋と葛藤を描いた超人気作『ペンデュラム -獣人オメガバース-』(フロンティアワークス)のスピンオフ作品。母親を亡くした孤児として妹とともに教会に保護されているオメガの少年ダートは、兄妹で教会を出ていくための資金を貯めようと、粗悪な抑制剤で発情を抑えながら売春に手を染めていました。「妹と2人、貧しくても平穏に暮らしたい」。そんなダートのささやかな願いは発情期の訪れと、“運命の番”との出会いによって狂い始める――

    獣人ものというとやや読み手を選ぶイメージがありますが、本作は良い意味での王道感があり、すべての腐女子に布教して回りたいほどです……!
    オメガの孤児としてシビアな環境で育ってきたダートと、貴族出身でアルファの獣人であるジュダ。本来ならば出会うはずのなかった2人が“運命”に強制されるように番となり、生まれや性格の違いから反発し合いながらも、互いの魂の美しさに触れて真の絆を育んでいく。王道感ある舞台設定で読者を作品世界にすっと誘い込んで、キャラクターたちの魅力でずっぽりと沼に引きずり落とす、そんなテクニックとパワーを兼ね備えた魔性の作品です。孤高の野良猫のような気高さと強かさ、そして不意に見せる脆さがぐうかわなダートに、貴族特有の強引さの中からにじみ出る誠実さとダートへの独占欲が尊いジュダ。そして口うるさいながらも一番ダートを思いやるタヌキ……に見えるアライグマのバロンなどなど、どいつもこいつも好きにならずにいられないぜ!

    本作以外にも、ジュダとダートの子ども・シャイアとヒューゴの日常と成長をほのぼのと描いた『プチミニョン 1 -獣人おめがばーす-』や、ジュダの両親が結ばれるまでの物語『ガーランド -獣人オメガバース-』(ダリア文庫e)など、スピンオフ作品が豊富なのも、この沼の魔性ポイント。一度読み始めたら、獣人オメガバース沼から抜け出せません!(断言)

    2022年07月20日
  • ブックライブ書店員

    「兄にそうしたように俺にも足開いてくれます?」

    長年付き合った恋人・ニックに振られ、傷心中の大学教授・ルイ。ニックの弟であるテオに挑発され、思わず「自分からニックを振った」と嘘をついたことから、ルイの受難が始まります。

    「教授のこともっとよく知りたいから」とどこからかルイの住所と電話番号を手に入れ、つきまとい、謎の苛立ちをぶつけるテオ(ストーカーとしてはとても優秀)。「兄の元恋人」に向けた敵対心を孕んだ眼差しは、ルイと過ごすうちに「ルイ」個人への柔らかなものに変化していきます。やがて明らかになるのは、テオの異常なまでの兄への執着。しかし、その頃にはもうテオの心はルイでいっぱいになっていたのでした。

    「元恋人への未練」「優秀な兄へのコンプレックス」と、ニックへのいびつな思いを軸に結びついたルイとテオ。しかし、ニックもまだルイへの想いがあるのでは……と匂わせる描写もちらほら。もしかしたら今後はルイを中心とした三角関係に発展するのかもしれません俄然楽しみになってきましたところでなぜまだ続きが出ていないんでしょうか?(答:新刊発売したばかりだから)

    2022年07月20日
  • ブックライブ書店員

    「黒髪イケメンが泣いているな……」というインスピレーションだけで今作に目を留めた闇女子のあなた、非常にいい勘をしています。決して交わらなかった「1人」と「一人」による、くすぶった10年分の想いがあふれ出る瞬間、用意してますよ。

    高校時代、親友だった勝巳と牧。しかしその絆は、牧が勝己に告白をした卒業式の日に簡単に崩れてしまいます。10年後、書店員として働く牧は勝己と偶然再会しますが、その姿からは明るかった高校時代の面影は消えていました。さらに数日後、牧はガラの悪い男と路地裏に消える勝巳を目撃。離れてから10年の間に起きた出来事が、勝巳に与えてしまった変化とは?

    死んだような目で男たちに乱暴に抱かれる勝巳と、彼を「許さない」という口実で優しく抱く牧。台無しになった10年の間に生まれた溝を、ゆっくりと埋めていく数日間の出来事が、繊細な心理の推移とともに描かれます。あまりにも優しい2人の“許し”の物語に、胸が締め付けられるはずです。

    2022年07月20日
  • ブックライブ書店員

    あまりの女たらしぶりに東京の実家を追い出され、ド田舎にある親戚の家に預けられた蒼佑(そうすけ)。初恋の相手であるいとこの“みのりちゃん”との再会を期待してあはんうふんな妄想を膨らませますが、そこに現れたのはまあまあマッチョな高校教師の“穰(みのり)さん”でした。初恋の相手が男性だったという現実を愕然としながらも受け入れた蒼佑は、さらに穰のある秘密を目撃してしまい−―。

    穰が男性とわかってしょんぼりしていた蒼佑でしたが、次第に穰自身の良さに惹かれて猛烈なアタックを始めます。かたや生真面目な大人である穰は、男同士、教師と生徒、成人と未成年……とさまざまな困難に葛藤し、蒼佑の気持ちを受け入れられません。しかし、頑なな大人の気持ちをほぐすのは、いつだってストレートな愛! チャラそうな蒼佑の、見た目とは裏腹にまっすぐな愛情に、穰は徐々に心を開いていきます(蒼佑って根はいいヤツなんですよ、東京のお母さん)。そして、穰の心を動かすある事件が起こり……。

    広大な田園風景に、遊ぶ場所といえば山。そんな大自然の中で育まれる蒼佑と穰の思いやりに満ちた恋物語は、癒やし効果マックスです! 中国地方の訛りで話すマッチョで照れ屋な受(穰)はマイナスイオンの化身でしょうか。
    サブキャラである藤井兄弟や穰の家族含め、登場人物の誰もが愛おしくて、きっと読み終わるのを寂しく感じるはずです。

    2022年07月20日
  • ブックライブ書店員

    資産家・雨宮家の跡取りとして、何不自由なく暮らしてきたα性の雨情(うじょう)は、ひょんなことから孤児の四葩(よひら)を引き取ります。αの子を宿せるΩ性の四葩は、使用人としても閨(ねや)の相手としても、雨情にとって欠かせない存在になっていきます。

    本作の推しポイントの一つが四葩の健気さ。オメガバース作品には、優秀なαとそれに反発するΩという設定が多く見られます。αの雨情は多分に漏れず有能で資産家というチート設定ですが、Ωの四葩は自分を引き取ってくれた雨情に対し非常に素直。望まれれば体を差し出し、優秀な使用人として熱心に付き従います。根を張る土地によって花の色を変えるハイドランジア=アジサイのように、雨情の元で美しく開花する四葩はかわいいの一言です。

    最初こそ将来の後継者争いを見越して四葩を引き取った雨情も、四葩のおかげで人間らしい穏やかな表情に。例えば雨情はそれまで何人もの女性と関係を持ち、セックスについて冷めた考えを持っていました。そんな雨情が初めて四葩を抱いた時に見せた、がっつく姿はDTそのものです(断言)。

    魂で結ばれた2人の結末を見守った暁には “家族”のつながりの大事さを想うことでしょう。

    2022年07月20日
  • ブックライブ書店員

    大学生の黄海(きうみ)は、違う男を毎日とっかえひっかえするヤリチンオープンゲイ。明るくノリのいいタチとして、ゲイ界隈でも有名でした。ある時悪徳業者に騙されそうになった黄海は、同じゼミに所属する隠れゲイ・黒木に助けられます。家にかくまわれたのを“ヤル気”と勘違いした黄海は黒木に襲いかかりますが、逆に拘束ベルトをつけられ、ネコの快感を知るハメに!?

    見どころの一つは、今までタチ(攻)だった黄海が、黒木に出会ったことでどネコ(受)に変貌を遂げるところでしょう。あらすじからもなんとなく感じるように、黄海ははっきり言ってチョロかわ。「そんなとこ使ったことない!」と抵抗しつつも簡単に快楽堕ちしてしまう、天性のネコちゃんなのです。
    ……まあ腐女子のみなさんは冒頭から黄海の受としてのポテンシャルに気付いてしまうかもしれませんねだって黄海はかわいいもの!!(クソデカ大声)

    非情なほどクールな黒木もポイント高め。一見物静かな美形ですが、黄海を荒々しく組み敷く姿は完全に俺様ドSです。その一方、セフレ関係を提案しておきながら、むき出しの独占欲をぶつけてくる黄海に戸惑い、どうしても気にかけてしまう純粋さが眩しい……! 

    体の関係から始まった2人がかけがえのない存在になっていく様子に、胸が高鳴ること必至です!

    2022年07月20日
  • ブックライブ書店員

    言葉で人を操る能力を持つ辰実。孤独な心を抱えた彼が旅先の海辺で出会ったのは、左手の薬指に指輪をきらめかせた青年・一士。同じ宿に泊まっていた2人は酒を酌み交わして親しくなります。その翌日、一士はなぜか辰実に「愛してるよ」と告げ……。

    一見チャラそうな一士のナンパから始まる本作ですが、「ナンパ」の軽薄な雰囲気からはかけ離れた、どこか不穏な雰囲気が終始漂っています。その理由がわかるのは第2話から。辰実の過去の回想から始まり、全てが明らかになる頃にはエモさで胸が一杯になっているはずです。ううー何を書いてもネタバレになりそうなので皆さん早く読んでください。

    『転じて恋と生き』(集英社)などに代表される繊細な心理描写とセリフ、そして切ないストーリーに定評のある早寝電灯先生。その魅力が惜しみなく詰まった今作も、泣けるわキュンキュンするわサービスシーンはかわいすぎるわで感情が追いつかないし動悸がすごい。これはもはや文学。国語の教科書に収録されるのはいつなんでしょうか。

    2022年07月20日
  • ブックライブ書店員

    周囲から恐れられ続ける顔面凶器のヤクザ・虎次が、催眠エステティシャンの天使(あまつか)に催眠エッチでトロトロにされちゃう素敵な漫画。

    『どうしてもヤリたくて学園』(講談社)の星名あんじ先生がこれまたやってくださいました。近年人気の催眠系といえば、快楽堕ち、メス堕ちなど、受けが心も体も快楽に従順になるのが定番の展開。しかし今作の主人公である虎次は、意識はしっかりした状態で体だけ催眠状態に入ってしまうのです。頭では嫌がっていても体が反応してしまう虎次がたまらなくえっち! にこやかな(うさんくさいとも言う)イケメンに喘がされて、困惑しながらおイキになられるヤクザ……最高やでぇ……(この文章はまあまあ人のいるオフィスで書かれています)。

    さらに話を追っていくと、実は虎次があまりのコワモテっぷりに初恋もまだだったことがわかります。そこから繰り広げられる天使との恋の攻防戦にキュンキュン! 頬を赤らめるヤクザ(受)は国に保護されてほしい。
    しかも天使は、『てんしくん』(竹書房)に登場するエキセントリックな天使兄弟の長男だということが判明。ファンを狂喜させ、新規を沼に叩き込む、渾身のハイテンションラブコメは必読です!

    2022年07月20日
  • ブックライブ書店員

    ミスコンで優勝できるレベルの可愛さで周囲をざわつかせる男子校のアイドル・御子柴(みこしば)と、目立つタイプではないけれどしっかり者で背が高く、地味にモテる男・野宮。全寮制の男子高校を舞台に、この2人のジレジレ、キュンキュンな両片思いが繰り広げられる、「かわいい」以外に感想が出てこないピュアラブストーリーです。

    読者もサブキャラも含め、当事者の2人以外は明らかにわかっているのです。こいつら、両思いだな、と。なのにくっつかない。きっと相手が嫌がるだろうから……と殊勝な思い込みをし合っていてくっつかない。当て馬キャラがグイグイいってもまだくっつかない。と思いきやちょっとくっつく……もちょっとくっつく……あっ離れちゃった……でもくっつく……という究極の腐女子焦らしプレイ。でもそれが楽しいの腐女子は!!!! もっと焦らして!!!

    全寮制の男子校といういくらでも引っ掻き回せるシチュエーションでありながら、ゲスキャラなどは登場せず、2人を囃し立てる仲間たちもいいヤツばかり。終始ほのぼのとした雰囲気で、ストーリーも相まってとても癒やされます。やだもう今時のDKってこんなにピュアッピュアな恋愛してるのかしら日本の未来は明るいわ……と思わず涙がにじむくらいの純愛。掲載誌が「り●ん」なのか?

    などと見守っていると、ラストは急展開。1巻の終わりまで読んでしまったら最後、2巻が気になって仕方なくなりますのでご注意ください。私はもうダメです。

    2022年07月20日
  • ブックライブ書店員

    「ハエ風情が クソにでもたかってろ」

    母親からの壮絶な虐待を経て、「D」という通り名で闇社会を生き抜く翼。自分以外は誰も信じられず、必要とあれば人をためらわずに傷つけることができる、孤独で殺伐とした人生を送っていました。そんな彼に「愛」を教えてくれたのが、年上の男・五百利(いおり)。

    温和で底抜けのお人好しな五百利は、ネクタイのセンスがちょっとダサい素敵なおじさん。しかし、実は過去に大事な人を失った経験を持っています……と、この2人のカップリングだけで高ぶる業の深い闇女子の皆さん、勝負(?)まだまだこれからです。2人の男の、心に負った傷を舐め合うようなささやかな幸せは、突然訪れた出来事のために一変。そしてその時、翼に突きつけられたある選択肢とは−−−−。

    一見唐突な始まりに戸惑う方もいるかもしれませんが、まずは一度読み通してください。最後のページをめくった時、あなたはきっと冒頭から読み直したくなるはずです。

    2022年07月20日
  • ブックライブ書店員

    印刷会社の“デキる”営業マン・三柴がどうしてもやめられないこと、それは“暴食”! スマートなイケメンがものすごい勢いで肉とご飯をかっこむ姿isとても尊い……(白米てんこ盛りの「日本昔ばなし盛り」がかわいすぎます!)。そんな三柴が気になっているのは、制作部で働く年下の白瀬。普段は冷たいけれど、仕事ができて酔っ払うとちょっとかわいい白瀬を、肉を絡めて口説き落とす三柴が見どころです。

    また、同人誌をきっかけに知り合った腐男子2人の初々しいデートや、美形の焼肉店店主と元伝説のホストのカップル未満話も収録。いろんなタイプのキャラとカップルに目移りすること間違いありません。どの話にも焼肉屋「いざ」や別カップルが登場するので、連作集としても楽しめます。ビールと肉でワイワイ騒ぐいい大人たちが、純愛に頬を染める高校生かと叫びたくなるような姿に悶絶! これだけでご飯がおかわりできちゃいます。 

    ふんだんに詰まったBL要素はもちろん、作品に華を添えているのが臨場感も肉汁もたっぷりの肉の絵。元焼肉屋店員であるダヨオ先生ならではのハイクオリティさで、じうじうと音を立てる牛タンにも、肉を食べて愛を語るイケメンにも、脊髄反射的にヨダレが出ずにはいられない罪深い一冊に仕上がっています。読めば肉が食べたくなり、さらには恋もしたくなる、いろんな意味で閲覧注意の作品です。

    2022年07月20日
  • ブックライブ書店員

    豊かな風土と平和な国民性で観光地として栄えるノラン星ソバイル国、第4王子ティルク(31歳)は猛烈に結婚したがっていた――! 婚活サイトに手を出さざるを得ないほどティルクに出会いがないのは、側近のオリバーが彼に近づく女性を全てシャットアウトしていたから。この腹黒い側近の執着に打ち勝って、ティルクは幸せを手に入れられるのか!?

    表紙を見ると、銀髪俺様系イケメン王子✕真面目で優秀だけど不器用な褐色側近のストーリーのようですが、本作は腹黒執着系イケメン側近✕ちょっぴりおバカなチョロかわ王子というカップリング。そしてこの王子、ティルク(31歳、童貞)のおバカさがなんともいえずかわいいのです。婚活サイトのプロフィール文は「年齢は31ですが20代前半によく間違われる(中略)」という、見事なまでのおじさん構文を使いこなし、婚活パーティーでは女子高生に扮してオリバーに下剤を飲ませて脱落させようという愚策を講じ――といった、今どき高校生でももっとうまいことやるぞ!と突っ込みたくなるポンコツさが愛らしい……。そして同時に、「これはオリバーが一緒にいてやらんことにはえらいことになるぞ」と全力でカプ推しせねばという謎の義務感に駆られます。もはや、イケメンオリバーがおかんに見えてくる……。

    前作『溺愛カタルシス』(竹書房)でも、良い溺愛執着攻めを描かれています。お兄一筋だったブラコンの受けが、同じサロンで働く俺様トップアーティストにグイグイ迫られて、流されほだされて落とされるのが、ああカタルシス。サービスたっぷりなエッチ描写もSo Goodです!

    2022年07月20日
  • ブックライブ書店員

    「えへへ」と笑うだけで全ての女子社員の母性本能をくすぐる魔性の愛されアラフォー・野末。何の不自由もないけれど、出世欲も結婚願望もなく同じことを繰り返すだけの日々を過ごしています。ある日、駅のホームではしゃぐ女子高生を見て、何気なく「女の子同士って楽しそうでいいな」とこぼすと、10歳年下の部下・外川に「――じゃあ、やりますか」と、“女の子ごっこ”に誘われて……。

    デビュー作『春と夏となっちゃんと秋と冬と僕』(ふゅーじょんぷろだくと)で、田舎に暮らす男子高校生の日常を瑞々しく描き、BLファンをざわつかせた佐岸左岸先生、待望の2作目。
    前回が思春期の一瞬を切り抜いた硝子細工のように繊細な物語だったのに対し、本作はずっと続いていく日常を彩る温かな感情を描いた作品です。“女の子ごっこ”と称して、行列のできるパンケーキ店に行ったり、パフェやスムージーに舌鼓を打ったり……。そうして、新しいことに触れる回数が増えるたび、野末が生き生きと輝きだし、外川との距離感も上司と部下以上のものになっていく過程が本当に丁寧に綴られていて、2人の間に流れるゆったりとした愛おしい時間にどっぷりと溺れることができます。

    佐岸左岸先生の魅力の一つである詩的なワードセンスは、本作でも存分に発揮されています。「君が隣にいない明日の方がずっとこわいと思った」「年の差とかマイノリティとかそんなのは、生まれ故郷の違いとか応援する球団の違いとか、その程度のことです。なんてことありません」など、尊死不可避な素敵台詞の宝石箱……! ゆっくりと味わうように読みたい1冊です。

    2022年07月20日
  • ブックライブ書店員

    極度の世話焼き男子・木関創也は、世話の焼きすぎで相手をボロボロの依存状態にしてしまう特異体質の持ち主。そんな彼の“運命の相手”野間ゆずは、おはようからおやすみまで創也に世話を焼かれまくっても平気な、こちらも度を越したものぐさ体質です。同じ寮での暮らしは2人にとって理想そのものでしたが、ゆずのズボラさが上層部の目に止まってしまって辞職を迫られ、幸せな生活が崩壊の危機にさらされます。

    溺愛系世話焼き男子とマイペースなものぐさ男子というと、世話焼きなほうがものぐさなほうに振り回されて面倒を見るという関係性を連想します。しかし、そこは未散ソノオ先生。本作では世話焼き男子・創也が能動的にゆずを構い、そこに幸せを感じているのです。仕事も家事も完璧なスパダリなのに、ゆずに執着し過ぎて残念イケメンと化しているのが推せる〜〜〜。
    そして、王子様のような容姿で、創也になされるがままになっているゆずの、子猫の如き姿が可愛すぎて胸が苦しい……。そうやって猫可愛がりされても謙虚さと感謝を忘れないのが、ゆずの「かまわれる才能」。甘やかされているのに自立しているという不思議な存在感が新鮮で魅力的です。

    おっとりとした性格の大企業・三代目社長✕税金を搾り取るのが趣味の国税専門官のファビュラスな恋模様を描いた『上質な男とH』(新書館)や、命知らずの冒険家と世界で唯一彼の居場所を突き止められる追跡者(トレーサー)の物語『タイラント』(芳文社)でも、相手に依存しながらも心の芯は一本通った男たちが登場します。完璧ではないけれど、そこが人を惹きつけてやまない未散男子の魅力に翻弄されてしまいます。

    2022年07月20日
  • ブックライブ書店員

    飲み会からの帰り道、酔っ払ってころんだところを美人でしっかり者の小学6年生・アゲハに助けてもらった22歳サラリーマンの咲良。泥酔していた勢いでアゲハにキスを迫り、その責任を取って恋人同士として付き合うことになってしまいました。酔いから覚めて正気に戻った咲良は「こんな関係終わらせないと」と悩みますが、アゲハがあまりに魅力的でなかなか別れを告げられず……。

    正直最初は思いましたよ、小学生✕大人のBLはさすがにアウトだろう、と。でも、そう切り捨てるにはアゲハがイケショタすぎるんです! なので、仮病を使ってアゲハを避けようとする咲良の家にお見舞いに訪れ、「悩ませてごめん…オレはまだコドモだけど でも ぜったいしあわせにするから」とアゲハが思いの丈をぶつける冒頭シーンで即堕ちでしたね。だって、イケメン✕かわいいって最強なんですよ!? 咲良の親友から「(咲良を)甘えさせてやるってのはどーだ?」と吹っかけられたときに、上目遣いで見上げながら「甘えて?」と言うシーンの可愛さは、腐女子の村が2〜3つ焼け落ちるくらいの破壊力。
    そんなイケショタが小学生から中学生へ、そして高校生、大学生と育っていく過程を上下巻で見守れる幸せ……。『さよならアルファ』(ビーボーイ編集部)を読んだときにも思ったのですが、ショタの身長が年上と並ぶか追い越すかする瞬間ってたまらなく萌えますよね。

    これでもかと言わんばかりにイケショタの魅力が詰まった本作ですが、ただ甘いだけではありません。まさにタイトルにあるように、超えてはいけない「一線」はどこなのかともどかしい探り合いをしたり、アゲハの同級生から2人の関係を糾弾されたり。年の差に誠実に向き合い、壁を乗り越えていくアゲハと咲良の姿に胸が熱くなります!

    2022年07月20日
  • ブックライブ書店員

    そこに通う生徒の9割はお坊ちゃまという全寮制のセレブ校に編入し、特待生にまでなってしまったことから陰湿ないじめを受けていた澪斗。しかし、“月の君”と呼ばれて全生徒から慕われる生徒会長・月人に出会い、彼の指導生に指名されたのをきっかけに、澪斗の生活は一変します。優秀で優しい月人と過ごす学園生活は夢のようでしたが、月人には澪斗の知らない顔があって……。

    スクールカースト✕全寮制の男子校✕美貌の生徒会長✕学園に馴染めない可憐な編入生=ギムナジウムものが好きな腐女子の尊死確定案件。みんな、ちゃんと息してるー? と心配になるレベルで、正確に萌えのツボを突いてくるのです。
    さらに、澪斗の前では優しくて穏やかな月人が、他の生徒には極端に冷徹だったり、他の監督生から畏怖されていたりといった闇描写もあるからたまりません。「優しくする」→「過保護になる」→「束縛し始める」→「自室に監禁する(!)」という、月人の流れるような闇ムーブに拍手が止まりません!

    左藤さなゆき先生の人気作『インザケージ』(ふゅーじょんぷろだくと)も、執着系スパダリ攻め✕不憫受け。元カレと今カレによる受けを巡る対立、一度は受けの前から去った元カレの長年にわたる執着が、柔らかで品のいい狂気とともに描かれています。

    2022年07月20日
  • ブックライブ書店員

    「60年後庚午の元旦にまたこの海で落ち合おう」。そう言って別れた人魚と、人魚に娶られ不老不死の身となった人間・キヨが再会したのは、59年後の元旦。2人はキヨの営む薬屋で、約束よりも1年早い蜜月生活を始めます。一見仲睦まじい人魚とキヨですが、お互いに明かしていない胸の内があり……。

    怪我を負って死にかけていたところを人魚に助けられ、それから長い時を生きてきたキヨ。大事な人を看取ることに疲れた彼は、59年の間人魚を待ちながら、不老不死の呪いを解く方法を探していました。
    一方、キヨと出会う前は悠久の孤独の中に生きていた人魚。死んだ自分の仲間を弔ってくれたキヨのことが気になり、それからキヨのことを見守り、時たま陰から手を貸し、としているうちに「見るだけじゃ足らずもっと傍に行きたくなったんだ」という無垢な言葉が胸に刺さります。始まりはどこにでもある恋の形に似ていながら、その結果は“永遠の生を相手に強いる”という絶望的な落差が辛く悲しい……。人外BLでも、「不老不死の運命」をここまでシビアに描いた作品は初めてではないでしょうか? それだけに「わたしはおまえよりコンマ一秒でも長く生きて最後の人魚を見届ける」というキヨの言葉に涙を禁じ得ません。

    その羽根の色が美しければ美しいほど強い毒を持つ鳥人・鴆(ジェン)と人間の愛憎を描いた『鴆 -ジェン-』(プランタン出版)や、人ならざるものが訪れる旅館で働く人間と常世の王の切ない純愛物語『極夜』(プランタン出版)など、ファンタジーBLの傑作を多く世に送り出してきた文善やよひ先生。本作でもその魅力が余すことなく披露されています!

    2022年07月20日